Cyber-shot

トニー・ウーが撮る 水中の世界

撮影テクニック

プロの水中カメラマンからの役立つヒント

1967年生まれのトニー・ウーは、アジアを拠点に、海をテーマに撮影を手がける水中カメラマンです。海の姿を専門的に記録し続けており、その独自の撮影テクニックは高い評価を受けています。世界各国で賞を受賞した作品は、多くの出版物で見ることができます。写真集『サイレント・シンフォニー』は、フランスのアンディーブで開催された第28回国際水中映像フェスティバルで、その年に出版された最優秀書籍に贈られる国際グランプリを受賞しました。


セルフコントロールを覚える

セルフコントロールを覚える

水中では、全てのものが動いています。魚などの海洋生物は泳ぎ、海流、潮、うねり、波などはダイバーを含む全てのものに影響を及ぼします。しかも、その全てが360度の範囲で自由に動き回っているので、ピント合わせとフレーミングは困難を極めます。その中で、最高の撮影結果を得るためには、できるだけ静止の状態を保つことが大切です。そうすることで、カメラのオートフォーカスを正確に機能させ、被写体をフレームに収めることが簡単になります。ダイビング中は、浮きも沈みもしない状態を常に維持し、周囲に十分な注意を払ってください。シュノーケリングの場合は、撮影のタイミングを、あなたと被写体ができるだけ静止した瞬間に合わせてください。確かに簡単なことではありませんが、努力する価値はあります。


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しっかりと構える

しっかりと構える

地上と同じように、水中でも自然にカメラを構えます。地上では、カメラ上部のシャッターボタンに人差し指を置き、カメラの右側を握ります。ただし、この一般的な方法でマリンパックを握ると、2点ほど問題が生じる可能性があります。第一に、比較的大きな手をした人の場合、誤って、マリンパックの裏側にあるボタンを押してしまう場合があります。第二に、水中では通常立った状態ではありませんので、地上と同じようにカメラを見ながら撮影することが難しい場合があります。実際、水中にいる時間の大半は、水平な状態です。そのため、こうした問題を回避するためには、後ろからカメラを握り、顔の前でしっかりと構えることです。無理のない自然なポジションで、カメラの液晶画面を見て確認できるようにしましょう。そうすれば、うっかりボタンを作動させてしまうこともなくなるでしょう。また、シャッターは中指で押す方法もあります。あなたに合った方法を、いろいろ試して見つけましょう。


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カメラについてよく知る

デジタルカメラの技術の進歩によって、あらゆる性能を持ったさまざまなタイプのカメラで、素晴らしい写真を簡単に撮影できるようになりました。とはいえ、当然、どんなに優れたカメラであっても、フルオートモードに設定するだけでは、カメラの機能を使いこなしているとはいえません。水に入る前に、ある程度カメラを操作して、取扱説明書を読んで、必要となる機能の操作方法を理解しましょう。たとえば、水中でのホワイトバランスの設定は、大変役立つ機能です。カメラにこの機能が搭載されているかどうか、どのように利用すればいいのかをあらかじめ知っておく必要があります。フラッシュのオンとオフ、マクロ(接写)機能の使用方法、画像の確認と削除などのやり方も、水に潜る前にしっかりとマスターしましょう。


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自分から近づく

自分から近づく

メインとなる被写体をフレームにおさめ、インパクトの強い画像を撮影したいとお考えのことでしょう。そのための最も良い方法は、あなた自身が被写体に対して無理のない距離まで近づくことです。近づけば近づくほど、被写体を大きく、印象的に写すことができます。それと同時に、カメラと被写体との距離も近くなるので、より鮮明でカラフルな画像が得られます。カメラのフラッシュを使用する場合は、その場を一段と明るく写しだせます。遠くからカメラのズーム機能を利用することもできますが、ズームを使用した場合、被写体との距離が遠くなるので、カメラのオートフォーカスが機能せず、フラッシュが届かない可能性もでてきます。実用的には、1.5倍を超えるズームは使用しない方がいいでしょう。肝心なことは、できるだけカメラの機能に頼らず、自分から被写体に近づくことです。


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光を見る

被写体に近づけば、もう1つ良いことがあります。カメラの内蔵フラッシュを使って、明るい写真が撮影できることです。ほとんどのコンパクトデジタルカメラに内蔵されたフラッシュは、水の状態やカメラのモデルなどの条件によって異なりますが、一般的に30cm位までしかその効果を発揮できません。したがって、被写体との距離があり、3倍ズームを使用する場合は、光が届きません。一方、被写体に近い絶好の場所にいる場合は、内蔵フラッシュを補助光として使い、写真にニュアンスを加えることができます。そのとき、注意しなければならないのは、カメラによっては、マリンパックの鏡胴部分に、フラッシュの光が部分的に遮られてしまう場合があることです。カメラの位置を合わせる場合は、この点に注意してください。失敗を恐れずに、カメラをひっくり返してみたり、横に向けたりしながら、最高のライティング効果を演出してください。


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瞬間をとらえる

瞬間をとらえる

クマノミなどの素早く動く被写体を撮影するのは、簡単なことではありません。できるだけ失敗をなくすには、なるべく太陽を背にした明るい状況で被写体をとらえることです。少なくともこの方が、オートフォーカスでのピント合わせにも有利です。体をできるだけ静止させたまま、被写体に近い場所にある、何かほかのものにあらかじめピントを合わせます。シャッターボタンを半押しして、フォーカスをロックしたまま、前もってカメラを構えて、被写体がフレームに入るのを待ちます。そして、ここぞという瞬間にシャッターボタンを押します。被写体の一瞬の動きを見逃さずとらえてください。一度で成功しない場合もありますが、この方法なら必ずうまくいきます。どうしてもうまくいかない場合は、協力的な、静止した被写体を探しましょう。


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被写体を知る

被写体を知る

水中撮影の最大の「秘訣」は、被写体を十分に知ることです。(おそらく、どのような撮影でも同じでしょう)。これから撮影するものについて、事前に情報を得るためには、ちょっとした基本的な調査を行い、被写体の行動、それが好む環境、ライフサイクルなどを理解することです。数分あれば、インターネットで簡単に調べることができます。ツアーガイドやダイビングガイドに話を聞けば、現地についてのユニークな知識を披露してもらえる場合もあるでしょう。こうした工夫の有る無しによって、賞を取れるような素晴らしい写真が撮れるか、何も撮れずに帰宅するかの違いが生まれることだってあるのです。最後に、水中では被写体をまず観察してください。撮影するものをしっかりと見ないで、大急ぎで何十枚もの写真を撮る人は、決して少なくありません。被写体を傷つけてしまう危険がありますし、特別な瞬間を撮り逃がしてしまうでしょう。たとえば、アシカと泳ぐのであれば、私なら十分な時間をかけて、あいさつをしたり、ぐるぐると泳いで海草に背中をこすりつけたり(アシカが大好きな行動です)、水の中で宙返りをしたりしてたわむれて、陽気で遊び好きなアシカの関心を引きつけます。そうやって動物の行動を全般的に観察し、彼らの考え方やコミュニケーションの仕方を理解します。そうすることで、いよいよ写真を撮るという頃には、よりよい瞬間がとらえられるのです。


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水中撮影の可能性を広げるアクセサリー

SEA&SEA

水中撮影に慣れてきたら、広角アダプターレンズや外部ストロボなど、他社製のアクセサリーでカメラの機能を拡張してみましょう。こうしたアクセサリーがなくても、素晴らしい写真は撮れますが、特別なツールを使用することで、さらに本格的な写真を撮影できる可能性が広がります。


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