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航空写真家 中野耕志さん Special Interview 「僕と写真」

「人はなぜ写真を撮るのだろう。
そして、なぜ写真に心ひかれるのだろうか。」
少年のころから大空に想いを馳せ続け、
今回α77 IIとα6000を持って南の島へ
出かけられた航空写真家の中野耕志氏に、
そうした写真への想いなどをお聞きしました。

飛行機との出会い

−−乗り物 大好き!

 僕が小学生のころって、フェラーリとかランボルギーニとか、いわゆるスーパーカーブームの真っただ中だったんです。当然のごとく?僕もすっかりスーパーカー好きに・・・。それが多分きっかけになったのか、スーパーカーブームが去ったら、乗り物全てに興味の対象は広がっていました(笑)気がつけば、車はもちろん電車や飛行機を実際に見にいくことが楽しくて仕方がない少年になっていました。

−−写真開眼

 小学生の時、見るだけで満足していた乗り物を写真に残してみたいって、あれは2年か3年のころ。写真が趣味の父とともにカメラを持ち出して撮ってみたんです。まぁ、使い方も分からずの撮影でしたけど、「残す」ってことが、とにかく楽しくて楽しくて。きっと自分のものになるわけない!って思っていた大好きな乗り物を、写真に「残す」ことで、なんだか自分のものに出来たみたいな感じがして・・・。こんな感じで、僕と写真の付き合いが始まったわけです。

 いきなり話が飛ぶようですが、小学生のころ、ボーイスカウトのイベントで山歩きをする時があって、黙々と山を登っていたら、突如ゴーって聞いたことの無いような音が頭上で鳴ったんです。慌てて空を見上げると、雲の多い空に1機、戦闘機が空を翔るのが見えたんです。
その時の心臓の高鳴りは、今でも昨日の出来事のように覚えています。「心を奪われる」ってこういうことなんでしょうね。その時から、僕の興味の対象は、全て「飛行機」へ集約されることになりました。

撮影対象としての飛行機

−−永遠の憧れ

 中学生になると、自分専用のカメラを買ってもらって、休みの日には飛行場や航空基地まで遠征して、大人に交じって戦闘機を撮るのが趣味になっていました。「自分で撮って、自分で見る」というスタンスだったんですが、我ながら上手く撮れた!と思える写真を、雑誌のフォトコンテストに応募してみたんです。本当に無欲で(笑)そうしたら入賞したんです。正直「えっ?」って感じでしたが、ジワジワと嬉しさがこみ上げてきて、次も応募してみようか、また次も!と・・・。写真は、僕にとって大好きな飛行機を「残す」自己満足のものだったんですが、このことをきっかけに、ちょっと別な感覚で写真を考えるようになりました。

 飛行機は写真に撮るだけではなくて、実はパイロットになりたいという気持ちもあって、高校生のころには航空自衛隊で戦闘機のパイロットになろうと真剣に考えたりもしたんですが色々な事情で残念ながら実現には至りませんでした。
 それで大学生になった僕は、野鳥写真にも強く興味をもつようになりました。同じ空を翔るものとして鳥はもともと好きでしたから、野鳥を撮りながら写真の腕を磨いたんです。写真が上手くなると、飛行機も自分の思い描いたイメージで表現できるようになってくる。結果的に飛行機の撮影にもますます夢中になっていましたね。ただ今にして思えば、もしかしたら、「飛行機」に関われるならば写真じゃなくてもよかったのかもしれないですが(苦笑)

 だから今も撮る時は、第三者視点で飛行機を見ているというよりも、自分が撮影している飛行機を、頭の中では操縦しているかのような気分なんです。そんな気持ちをファインダー越しに投影しながら、自分が感じている「飛行機って素敵だ!」を、僕の写真を見て頂いている方に、少しでも多く伝えられるように撮っています。そのための努力は一切惜しみません!撮影前のロケハンからイメージを最大限に膨らませて、架空の飛行機を目の前に広がる空に頭の中で飛ばせてみて、どんな構図で?太陽の光は?雲の流れまでも想像して。本番には最高の瞬間を残せるように、何度も何度も撮影シーンの想像を膨らませます。

−−自分が感動しなければダメ

 写真の楽しさの大部分は、やっぱり被写体が自分にとって どれだけ魅力的なのかが大きく左右すると思います。だからまずは自分が感動しているということが大事だと思います。あの日、見上げた空を翔けていく戦闘機に心酔して、その感動が今の僕の礎になっています。だから撮影する時に、もしも自分が感動していないのだとしたら、それはいくら撮っても無意味ではないかと思います。今、撮っているものに自分は感動しているか?シャッターをきる手を休めて、ちょっとだけ考えてみて、なんだかモヤっとした気持ちになったら、その日の撮影は終了しちゃいます。

風景写真

−−飛んでいる空気感まで

 最近の僕は、風景に飛行機が溶け込んでいるような写真のイメージを追い求めている気がしています。もちろん機体そのものが放つ魅力も大好きで、そうした写真も撮っていますが、それとは別に、その飛行機が飛んでいる場所も含めるからこそ伝わる空気感だったり、リアル感だったり。それが見る人を、もっと写真に引き込むことにもつながるんじゃないかって思っています。
 今回、僕は石垣島に赴いたのですが、その美しい海と空を目の当たりにして、飛行機だけじゃなく、この美しい風景も一緒に残したいと感じました。なので、考えた末に山に登って撮ることにしました。飛行機が見下ろせて、かつ海も空も一緒に写せる構図にトライしています。道なき道を進むような山道でしたので、登っている最中は何度か自分は選択を誤ったか?なんて思いましたが、結果として、とても美しい1枚を残せたと思っています。

 今回の撮影機材であるα77 IIとα6000は、自分が想像した写真のイメージを残すのに最適なカメラでした。機動性も高いAPS-Cフォーマットなので、望遠により強いということもありますが、AF機能がとても心地良く撮影をフォローしてくれました。カバーエリアがすごく広いα6000は、構図に大きな自由度を与えてくれますし、まるで掴み取るようなAFのα77 IIは、瞬間を狙う時にとても重宝しました。これに70-400mm F4-5.6 G SSM IIを組み合わせると抜けの良い美しい描写と相まって、石垣島の青く澄んだ海や空を見事に描写してくれました。この組み合わせは、本当にお勧めですよ(笑)

今も少年のまま

−−撮らずにいられないものを!

 カメラって、ややもするとテクニック論に偏りがちで、まぁそれはそれで楽しかったりもするんですけど、それで頭でっかちになってしまって、逆に撮るのをためらうようになってしまっているとしたら、それはとてももったいないと思います。
 先ほども言いましたが、一番大事なのは「自分が感動しているか?」です。僕は今でも少年のように、突き抜けるような青い空に飛行機が横切ったりすると、静かに心の中で感動しています。それでもう、撮らずにいられない!というタイミングで撮れたなら、きっとそれは傑作になっているはずです。

−−最後に

 写真に興味を持たれて、そして撮影が好きになった方なら、きっと誰もが、思い返せば僕と同じような原体験が、きっと何かしらあると思います。「そう言えば自分って、何で一眼始めたんだっけ?」とちょっとだけ思い返してみてください。
 忘れていた写真との出会いの原体験を思い出してみると、自分が本当に撮りたかったものが改めて見えてくるかもしれません。そうした気持ちを持ちながら撮れたなら、きっと素敵な一枚があなたのカメラの中に残されていると思います。

 僕の傍らには、今もあの日の“感動”がいます。そして飽くことなく感動を探して大空を翔るものを、これからも追い続けていくと思います。

求められたことへの回答 α77II
ソニーは、オートフォーカスの次へ行く。 4D FOCUS