法人のお客様ラージセンサーカメラ 事例紹介 TBSテレビ「THE 世界遺産 -古都京都の文化財-」

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TBSテレビ「THE 世界遺産 -古都京都の文化財-」2013年3月掲載

株式会社 TBSビジョン 様

F65RAWの4Kクオリティーを番組制作とイベント展示映像にフルに生かしたチャレンジ。

「THE 世界遺産 4K 京都特別編」より
*写真提供:株式会社 TBS テレビ様

2012年11月11日、全国TBS系列でオンエアの「THE 世界遺産 -古都京都の文化財-」は、番組の一部をF65RAWによる4K撮影を行って制作されました。

この番組の4Kパートを担当した株式会社TBSビジョン 事業本部 プロデューサー 小川直彦様、ディレクターの日下宏美様、撮影を担当した柏原 聡様に、4K制作の目的や成果を、撮影から完パケまでをサポートしたソニーPCL株式会社 デジタルプロダクション事業部 ビジュアルソリューション部 チーフテクニカルスーパーバイザー 諏佐佳紀様と、ビデオエンジニアである同部 チーフビジュアルテクニシャン 島澤健一様に制作ワークフローについて伺いました。

なお、記事は撮影途中の9月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

世界遺産条約採択40周年を記念して4Kコンテンツも同時制作

「THE 世界遺産」という番組は、1996年に放送を開始した「世界遺産」から数えて、今年で16年目を迎えます。この間一貫して、最新のテクノロジーを活用して、人類の貴重な文化遺産とそれが誕生した国や地域の魅力を視聴者に伝えてきました。同時に、つねに新しい技術や製品、表現の可能性に意欲的に取り組んできました。アナログ放送時代にHD制作を開始したこと、F35によるRGB 4:4:4撮影による番組制作もその一端ですし、2010年にBS-TBSで3D 制作の「THE 世界遺産 3D GRAND TOUR」をスタートさせたのもそうした取り組み姿勢の現れと言えます。

今回のF65RAWによる4K制作も同様の挑戦ということになりますが、もう一つの背景、目的もあります。実は、2012年はUNESCOの世界遺産条約が採択されて40 周年という節目の年でもあり、世界各地で記念の会合が開催されており、最終会合が京都で開かれます。世界各国から関係者が集いますので、会場やイベントで4Kの高精細な映像で京都の魅力を知ってもらいたい、そのコンテンツも同時に作るということです。

京都駅前広場での4Kプロジェクター SRX-T420を用いた特設シアターにおいて4K上映の様子。

世界中の世界遺産関係者が集まる国際会議場にて84インチの4K BRAVIAでの4K上映。

“陰影”という日本独特の美意識をF65 のクオリティーで表現

撮影は、F65/SR-R4により4K/60p で行っています。F65RAW の最大の魅力はフル4K、しかも8K CMOS イメージセンサー搭載という超高精細な映像にあります。今回の作品では、この高精細・高解像度の画質を活用することはもちろんですが、同時に、暗部の階調表現の豊かさを生かしたいと考えました。古都・京都が舞台でもあり、谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」で表現したような、単なる明暗ではなく、日本の美意識の根幹ともなっている陰影や色を表現することです。

夏の京都の風情に溢れた賑わいの空気感を4K/60pで撮影。

そこで、世界遺産の史跡・建造物だけでなく、昼夜の京都の町家の風情や、祇園祭などの伝統的な祭事も取り上げています。日本の、あるいは京都ならではの文化や伝統、生活様式みたいな部分まで広げて、海外から来る専門家に見てもらいたいとの思いもありました。

夏の京都の風情に溢れた賑わいの空気感を4K/60pで撮影。

真夏の炎天下の中の撮影とあって、カメラの表面温度は大変高温になりましたが、安定したパフォーマンスを発揮しました。 本体を冷却するファンのモードは運用に応じて選択できるようになっています。

高精細というインパクトと、豊かな階調表現による臨場感

まだ撮影途中の段階ですが、プレビュー確認などを通して4Kの魅力を実感しています。高精細な映像美は、予想通り圧倒的なもので、3Dとはまた異なる臨場感と迫力があります。町家の空気感やシズル感といったものまでが画面に表現されています。

大判センサーならではの高感度と広いラチチュードを活かした夜間の撮影。人々の表情から街のネオンまで忠実に撮像する事が可能です。

美しい竹林の撮影。水平8K画素を誇るF65のイメージセンサーにより、細い木々の一本一本を精彩に捉える事ができます。

また、もう一つの狙いだった暗部の階調、陰影の表現についても十二分に満足できるレベルです。たとえば、重要文化財杉本家住宅の撮影では、ローソクだけで撮ったり、あえて逆光で撮ったシーンもありますが、特に黒の再現性の豊かさや、歴史を感じさせる柱、さざ波のような畳目の風情に至るまで非常に魅力的に映し出されています。

4Kコンテンツとしてはもちろん、結果的に情報量が縮小されるハイビジョン放送でもそうした魅力を視聴者に伝えられるのではないかと期待しています。

そうした意味を含めて、今後のF65を使ったコンテンツ制作には大きな可能性を感じています。もちろん、番組ですべて使用するには制限があるかもしれませんが、たとえば今回のように4K制作して番組、イベント映像などにマルチユースする方法や、4K素材をトリミングしてHDに活用するといった手法も考えられます。さらに映画やドラマ、CMなどで、用途やシーンに応じて4K収録とSStP収録を使い分けるといったテクニックも使えば、より幅広いコンテンツ制作に活用できるかもしれません。今回の撮影では使用していませんが、最大120コマ/秒のハイフレームレート撮影も魅力的です。4Kクオリティーのハイスピード撮影は、CMをはじめとしたハイエンドコンテンツ制作に威力を発揮すると思います。現場でのフォーカス合わせやプレビュー確認に使える4Kモニターも今後の期待の一つです。

屋内、屋外問わず、様々な箇所で撮影を行いました。日本の美意識の根幹となっている陰影や色の表現も今回のテーマでした。

無償提供のタブレット向けアプリケーション「F65Remote」によりWifiでのF65のコントロールが可能。カメラのステータス確認が出来るほか、撮った素材をプレビューしたい場合の再生操作も行えます。

4Kコンテンツの制作を終えて

今回のプロジェクトを通して、一番に感じた事は、フル4K撮影で制作したコンテンツの圧倒的な映像の力でした。
2012年11月11日に放送された「THE 世界遺産 古都京都の文化財」篇において、その一部に4Kで撮影した素材をHDにダウンコンバートして放送しました。通常のハイビジョン撮影された素材に交じって番組が編集されましたが、4K映像が明らかに高品位の映像として際立っていました。

番組放送やイベント上映の後、4K映像についてと、その映像の美しさ高画質感について、多くの関心と反応を聞くことが出来ました。
テレビ番組、CM、映画にかかわらず、本当に美しい映像、本当に力のある映像を視聴者は求めているという事について、私達映像制作者はもっと自信をもっていいのではと感じました。そして4K映像はそうした映像作りを行うにあたり、これからの映像制作者にとって、非常に効果的なツールになるのではと考えています。

株式会社TBSビジョン
事業本部 プロデューサー 小川直彦 様

F65の4Kクオリティーは、単に高精細であるというだけでなく、空気感と呼べるようなものまで再現される印象を持ちました。最終的にハイビジョン放送される番組でも、そうした質感を視聴者に提供できるのではないかと期待しています。

株式会社TBSビジョン
ディレクター 日下宏美 様

4Kは、3Dと同様に非常にインパクトのある新しい可能性だと思います。単なる明暗ではなく陰影といった世界まで表現できます。撮影も3Dと違い、効率的に進めることができ、制作の立場からするとメリットが多い先進のテクノロジーです。

株式会社TBSビジョン
柏原 聡 様

F65の4K画質は、まさに驚愕的なものです。この高解像度の画と、カメラマンが表現したい画が撮れるという意味でも、これまで映画・テレビ・写真の間にあった"壁" を取り除いてくれる可能性を秘めていると思います。

F65RAW のクオリティーをフルに生かすためにまず大マスターを作成し、最適化した状態でHD完パケ、4K完パケを作るフローを採用。

今回のコンテンツ制作では、F65/SR-R4のポテンシャルの高さをフルに生かしたいと考えていました。つまり、DCI準拠のフル4K(4096×2160)の高精細であり、60p収録の高画質を最大限に表現することです。また、4K展示映像と番組に使用することも前提条件となります。

そこで、まずF65RAWデータの4Kクオリティーを徹底追求した大マスターと呼べるものを作成し、上映・放送の規格に最適化した形で4K完パケ、HD完パケするワークフローを採用することにしました。番組として放送するものは、それに合ったカラーグレーディングや色を再調整し、4K完パケにおいては同様にモニター表示するものとプロジェクター表示するものを、それぞれの特性や仕様に合わせて調整します。これにより、それぞれのコンテンツを楽しむ人に、F65の4K制作の魅力を伝えることができるのではないかと期待しています。

具体的には、現場でプレビュー確認した素材は、F65RAWをネイティブサポートするノンリニアカラーグレーダーを用いて1080/60pのオフライン編集用素材を作成します。同時に「F65RAW Viewer」で現像し、4K対応ノンリニア編集機でカラーコレクション後、ラッシュ試写を行い、素材の確認を行いました。この作業を繰り返しながら、制作の方々に最も良い状態で確認してもらえるようにしています。すべての撮影が終了したら、編集・仕上げに入っていく予定です。こういったフローを踏むことは、確実に魅力的な4Kコンテンツを作り、それを番組でも活用するという意味では最も確実な方法と言えます。当社が展示映像やCM制作で蓄積してきたF65RAWを使ったコンテンツ制作の経験やノウハウでサポートできればと思っています。

ソニーPCL株式会社 デジタルプロダクション事業部
ビジュアルソリューション部 チーフテクニカルスーパーバイザー
諏佐佳紀 様

今回の作品は、F65の最大の特長である8K CMOSイメージセンサーがもたらす高精細な映像の魅力をフルに生かした点にあると思います。多くの方にイベントや番組を通してその魅力を実感していただきたいと思います。

ソニーPCL株式会社 デジタルプロダクション事業部
ビジュアルソリューション部 チーフビジュアルテクニシャン
島澤健一 様

F65は4Kだけでなく、HD SStP収録も可能ということで、特にCM 制作の分野で徐々に普及しています。撮影から完パケまでの効率的なワークフローを提供することで、一層の普及を図っていきたいと考えています。

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