法人のお客様ラージセンサーカメラ 事例紹介 映画『風の中、転がる石』

事例紹介一覧

映画『風の中、転がる石』

プロデューサー 篠原哲雄様/監督 永瀬草也様/撮影 木村重明様

PXW-FS5を使用し3人の若い男女の出会いと別れで描くロードムービーを制作
4K、Log、ハイスピードなど全てが揃い、映像制作の教育現場にマッチしたカメラ

俳優や映画監督を目指す人のための養成スクール「ENBUゼミナール」で演出を学ばれた永瀬草也様の卒業制作映画『風の中、転がる石』は、ソニーのXDCAMメモリーカムコーダー「PXW-FS5(以下、FS5)で撮影されました。ゼミの講師をつとめる映画監督の篠原哲雄様が統括プロデューサーとなり、カメラマンの木村重明様をはじめプロのスタッフのサポートを受けながら制作が進められました。同作品の撮影は千葉県市川市で行われ、4K XAVCで収録するとともに、外部レコーダーに収録したHD素材を併用することで、制作スケジュールの短縮化を図っています。また、FS5のハイスピード撮影も効果的に使用されています。ナイトシーンの撮影ではFS5の感度の高さやラチチュードの広さが威力を発揮するとともに、独特のトーンを実現しています。『風の中、転がる石』におけるFS5の活用とともに、映像制作の大学や専門学校の教育現場における可能性について伺いました。

映画「風の中、転がる石」スタッフリスト

[CAST] 河原隆乃介、野々瀬隆志、丹野未結、安田幸一、月影瞳

[STAFF] プロデューサー:篠原哲雄 / 監督・脚本:永瀬草也 / 撮影:木村重明 / 音楽:マキタ マシロ / 録音:森繁和 / 整音:田中靖志 / 編集:山本彩加 / 助監督:中村圭吾 / 制作:ウトユウマ / 撮影助手:光武樹 / 録音助手:高橋渉 / 制作助手:森本将太、黄詩類、並里優子 / メイク:武本萌、渡邊夏生 / 機材協力:Ateliera A2、ENBUゼミナール / 協力:ENBUゼミナール、KOENJI K's STUDIO、Vantan Design Institute、TBYZ、亀岡華子、荒井紗恵

石は何故、転がっていくのか−−

俳優や映画監督を目指す人のための養成スクール「ENBUゼミナール」の最大の特長は、第一線で活躍するプロの演出家や映画監督が、豊富な経験や生きた知識、ノウハウを直接指導すること。“俳優や監督は実践の中でこそ成長していく”とのポリシーから、実習(作品作り)を中心とした授業を行い、さまざまな演出家や俳優、映画監督を迎えたワークショップのほか、実際に自分たちで作品を作り、舞台公演や映画館での上映を行うなど、実践的な授業のなかで生きたノウハウを学び、表現力や技術力を磨いていきます。
永瀬様は、ENBUゼミナールの卒業制作として、今回の『風の中、転がる石』を脚本・演出されました。タイトルにある通り、『風の中、転がる石』は“風”を一般社会や世の中、転がる“石”を登場人物に例え、石が転がっていくのは社会に吹く風のためなのか?「それとも石が勝手に転がっていくのか? その答えは“石”自身もわかっていないのではないか−−というテーマを、3人の若い男女の出会いと別れで描くコミカルなロードムービーとして表現しています。

永瀬草也 様 / 監督・脚本

永瀬様篠原監督から「一度、喜劇を作ってみたらどうか?」とアドバイスされ、チャレンジしてみました。坂口安吾の「喜劇、悲劇、憧憬」の3つを主題にしたエッセイ『FARCE に就て』にある「喜劇は、現実にあるものを笑うことによって皮肉って見せるもの」という文章を読み、篠原監督から「キートンやチャップリンだって単に面白いだけはない。最初に映画ができた頃から、映画の一番の根底にあるのが喜劇ではないか?」との話から、「よし、やってみよう」と思いました。連続性があり、力強い世界観を表現したかったので、木村さんには「一連で撮る作品にしたいんです」とお願いしました。

カメラの違いによる仕上がりの高さを伝えたい

木村重明 様 / 撮影

『風の中、転がる石』の撮影にFS5を使用するきっかけについて、木村様は次のように話しています。

木村様篠原監督から「自分が受け持つ学生の中で、すごく面白い脚本を書く学生がいるので、どうですか?」と打診があり、最初は撮影の監修をすればいいのかと思っていたら「いや、撮って欲しい」と……。実際に脚本を読んでみると確かに面白かったので、「この作品は是非、クオリティの高いカメラで撮りたい」と考えました。本来なら撮影自体を教えたかったのですが、ENBUゼミナールでは映画監督を目指す学生達に「自分が書いた脚本がどのような映像になるのか」を学ばせることを主眼においているので、今回の撮影に関しては私が担当しました。撮影から仕上げまで短期間で仕上げる必要があったため、カメラ選択とともに収録フォーマットも「スピード」と「将来性」の両立を重視した結果、「FS5を用いた4K+HD収録」という結論に達しました。また、FS5で撮った映像を学生たちに見せることで、その仕上がりの違いが歴然であることが示せるのではないかと考えました。
映像制作していく上で、プロはどこにこだわるのかを知って欲しかった。実際、卒業制作を集めた映画祭では、他の作品と桁違いに良いクオリティは学生達にも伝わったのではないかと思います。

撮影地を狭くまとめることで時間短縮と世界観の統一を図る

今回の撮影期間は2016年9月初旬、オールロケでの撮影が行われました。日数は7日間。現場の体制は木村様と助手、録音マンの3人だけなので、手が空いている人は積極的に他の仕事もサポートし、雑用的な仕事はゼミからスタッフを派遣してもらったと言います。

木村様撮影では、ロケーション選びが大きなポイントとなりました。物語の舞台は「駐車中のクルマ」が中心なので、人通りのあまりない空き地が必要。自分の頭の中にあるイメージを整理し、改めて永瀬監督と一緒に候補地を回って、最終的にメインのロケ地を千葉県市川市に決めました。その後、台本を見ながら周辺を回って場所を当てはめ、全ての撮影場所を半径2キロ以内にまとめることで、移動による時間短縮を図るほか、風景が変わってしまうことにより世界観に与える影響を抑えました。

4KとHDの同時収録で制作スケジュールの短縮と将来の4K制作にも対応

今回は、FS5でSDXCカードに4K XAVC収録するとともに、外部レコーダーでHD収録した素材をバックアップおよび編集用素材として使用しています。

木村様約50分の長編作品で、撮影素材も膨大で、後処理の作業も結構多く、今回についてはHD素材で編集を行いました。ガンマも制作時間等の都合からLogは使用せずCINEガンマを使用しています。編集は3日間、カラコレは2〜3時間で終わらせるくらいのスピード感が求められました。

永瀬様この作品では、暖色の寄りと、空抜けの青みがかった色合いが大きな特長となっています。あおり気味で撮っていただいたことで、登場人物の向こう側に広がる奥行きの中で物語が展開されていくような作品にしていただけたと思っています。物語の中で“色”がすごく生きていたので、本当にありがたかったと思います。

木村様4K XAVCでの同時収録については、永瀬監督は今後も作品を作り続けるからこそ必要だと思いました。インフラやマシンスペック、上映環境などが整った時に、4Kで再編集した『風の中、転がる石』を作ってもらえればいいなと思います。

ノーライトの撮影で活かされた広いラチチュード

『風の中、転がる石』では、ノーライトでの撮影にこだわり、自然光のみの撮影だったため、青空や太陽を背景にしたハイコントラストなシーンやナイトシーンにおいて、FS5の持つ高い感度と広いラチチュードが威力を発揮したと言います。

木村様ノーライトでの撮影を踏まえて、暗部が沈まず、明部は飛ばない、しかも中間はしっかり発色させるようなカメラの設定を行いました。Picture Profileでハイを粘らせ、ローは黒をかなり持ち上げています。今回は自然光のみの撮影のため、明るいシーンで明暗差がきつい場合でも照明で暗部を起こすようなことをしませんでした。そのためラチチュード的には厳しいシーンも多かったのですが、FS5はもともと14ストップ(S-Log時)もの広いダイナミックレンジを持っていますので、CINEガンマでも、その実力を十分に感じることができました。黒ツブレや白トビのない映像を撮ることができましたね。また、撮影では常にPLフィルターを付けているので、抜けのよい青空のコントラストはそのPLフィルターで調整しています。9月の撮影なので影はかなりきつく出るし、車内外を同時に映し出すカットもあります。あまりシャープがきつすぎると、家庭用ビデオカメラで撮ったような比較的かっちりとした映像になりがちなので、できる限り柔らかくするために色々とテストした結果、パールセントのフィルターを入れることで対処しました。

ハイスピード撮影や交換式レンズを効果的に活用

今回の撮影では、主人公が川から飛び込むシーンと貯金箱を壊すシーンの2カットで120fpsでのハイスピード機能が効果的に使用されています。

木村様ハイスピードをすぐに使えることがFS5の大きなメリットだと思います。ただ、いずれも撮り直しができないシーンだったので、緊張感は常にありました。FS5のハイスピード機能には秒数制限がありますが、「エンドトリガー※」や「エンドトリガーハーフ※」があり便利です。今回はエンドトリーが使用しましたので、貯金箱が壊れてからトリガーを押せば確実に壊れている瞬間を撮れます。この機能は非常に便利ですね。この価格帯の商品で240コマ/秒のハイスピード収録ができるというのはすごいことだと思います。また、今回は使用していませんが、可変NDフィルターは本来なら非常に便利な機能だと思います。私は同じシーンでは絞りを変えず、一度決めたらずっとその絞りで撮っていきたいタイプですが、いろいろ絞り値を変えて撮る場合や、ドキュメンタリー撮影などでは非常に良い機能ではないかと思います。

※ハイスピード撮影時に本体内メモリーを活用し、過去にさかのぼって記録する機能。たとえば240コマ/秒でエンドトリガー設定の場合、RECボタンを押した時点からさかのぼって8秒間を収録できる。エンドトリガーハーフの場合は、RECボタンを押した時点からさかのぼって4秒間+RECボタンを押した後4秒間の収録が可能。

高い機動性と低消費電力

今回の撮影では、FS5を小型三脚に乗せたスタイルが中心となりました。現場スタッフが少なく、ほぼ木村様1人でオペレーションしているため、レコーダーやモニターなどカメラ周りに多くのアクセサリーが集中しましたが、小型・軽量のFS5は小型三脚で十分使用できるなど、FS5の高い機動性が生かされました。

木村様カメラが小さいと三脚も小さいもので対応できるので、スタッフがたくさんいない現場では助かりますね。今回の撮影では防波堤の上下でポジションチェンジを繰り返したりして、「FS5でよかった」と思うケースも多かったです。「全部手持ちでやった方が面白かったか?」と思うこともありましたが、あの作品独特の“ゆるいカット割”で収まらなくなってしまう。基本は芝居全体が見えるよう三脚に乗せて撮ることと割り切りました。
手持ちで細かなカット割りにしてしまうと、「1枚画の中で役者をどう動かし、完結させていくか」という基本がわからないまま撮影が進んでしまい、監督不在でも撮れてしまうような画になってしまうため、カメラはある程度固定させ、監督の演出によって作り上げていくことに専念しました。また、撮影時、私たちはポジションチェンジでもスイッチのON/OFFはせず、ファインダーやアクセサリーも含めての電源は入れっ放しのことが多いので、FS5の消費電力の少なさは大変重宝しました。

映像専門学校や大学の映像学科に最適なカメラ

木村様は、照明がなかったり、その日のうちに撮り切らなくてはならなかったりと、さまざまな意味において悪条件下で撮影することが多い学生制作の映画では、ダイナミックレンジが広いカメラで撮影し、情報を少しでも多く残しておくことが重要だと言います。

木村様4K、Log収録、ハイスピード撮影、レンズ交換などの全てを備え、高い感度や広いラチチュードを持つFS5は、映像制作を学ぶ学生、特に技術系の映像専門学校や大学の映像学科でカメラマンを目指す人達の教育には最適ではないかと思います。4K撮影の教材として使用するほか、Log収録からカラーグレーディングへのプロセスを教えることもできる。撮影に関する基礎をFS5で覚えれば、他のどんなカメラでも扱えると言えます。また、さまざまなレンズが使えるのも大きなメリットです。フランジバックが短いEマウントで、マウントアダプターを付ければPLレンズも使えるので、レンズの違いによる映像の違いを教えることができるし、オールドレンズを含めて学校が持つ資産も有効に活用できます。
もう1つ、カメラの扱い方などは学校側が教える一方で、テクニカルな部分についてはソニーさんのようなメーカーが直接学生に教えるようなセミナーを開催することも効果的ではないかと思います。

監督が技術の知識を持つ重要性

一方、永瀬様は『風の中、転がる石』の撮影で、監督にもカメラの知識が必要であることを改めて感じたそうです。

永瀬様さらに一歩先を踏み出す高次元な映画を作るために必要な「センス」や「感覚」の下地となる技術の知識は間違いなく必要だと感じました。私は今後も映画を撮り続けていくつもりで、現在は映画の現場で助監督として頑張っています。「起承転結」とともに、より「序破急」を意識した物語として、『風の中、転がる石』より、さらにいい作品を作りたいと考えています。

木村様監督にも技術の知識は必要ですが、カメラより後処理のことを勉強して欲しいと思います。撮影した素材が今後、どのようなプロセスで映画になっていくのかを理解した上で演出ができる監督が増えていくことを願っています。

ドキュメンタリーなどに最適

木村様は、最近、企業VPなどのさまざまな映像制作において、FS5による撮影が増えてきたと感じるといいます。

木村様プロデューサーからFS5での撮影を指名されることが多くなってきている。つまり「売れているカメラ」であるということですね。最近では企業VPでも4K撮影するケースが増えています。4Kに対応したYouTubeやVimeoなどのソーシャルメディアを活用した短編映像では4K制作が求められています。カメラマン仲間でもFS5で民放ドラマなどを撮っている人は多いですし、映画でも少人数体制や手持ちで撮影するようなシーンが多い作品には向いていると思います。また、FS5は長期取材が必要なドキュメンタリーに適しているのではないかと思っています。大きさ、軽さも適度だし、自然モノを撮るには18-105mm F4の Gレンズなど、ズームレンズを2本くらい持っていけばそれだけで撮れる気もしますね。ハイスピード撮影ができて、その場ですぐに確認できるのもありがたい機能です。今後も機会があればFS5はどんどん使っていきたいと思います。

  • 統括プロデューサー 映画監督 篠原哲雄様からのコメント

    今回、PXW-FS5(以下、FS5)を使用した経緯は、ENBUゼミナールの学生作品ですが、内容に実践的な要素も多く、学生が冒険できる題材ではないかと思い、クオリティの高い作品に仕上がることを願っていました。そこで、作品の創られる経緯を理解していただけるカメラマンとして木村重明さんにお願いしました。
      FS5は木村さんのご提案で使用することになりました。実際、人数も限られた中で、機動性を重視する本作品の現場において、FS5は木村さんと永瀬監督の撮りたい方向にピッタリの画面を表現してくれたと思います。
      機動性とは即ち、従来の機材よりもコンパクトでありながら、例えば4Kに速攻で対応できる機能を持ちつつ、スタビライザーなどステディカム効果が出せる機材の設置にも簡単に対応できる利便性もあるということ、実際に映画館で観客を魅了できる画面を体現できたことで、その成果が発揮できたと思います。
    今後もソニーから自主映画作品に適した製品がリリースされることを期待しています。

カタログPDFダウンロード
ラージセンサーカメラ サイトマップ