vol.3 ハイレゾ聞き比べ システムオーディオ編

Walkman® Owner's Information 第3号では、
『ハイレゾ聴き比べ システムオーディオ編』をお送りします。

ヘッドホンでのハイレゾの楽しみ方とは異なる、
スピーカーで聴くシステムオーディオの個性の違いを体験してきたので、
「日経エンタテインメント!」がレポートします。

Hi・Res Audio

ハイレゾ対応ウォークマン®の、もう一つの楽しみ方 からだ全体で音を感じられる、システムオーディオの聴き比べ。

自宅に帰り、ヘッドホンを外す。アップテンポのポップスを聴きながら帰路は急いだが、自宅ではリラックスして様々なジャンルの音楽を楽しみたい。
ハイレゾ音源を、どこでも場所を選ばずに楽しむことができるのが、ウォークマン®とハイレゾ対応ヘッドホンの魅力だが、ハイレゾの楽しみ方にはもう一つある。自宅のリビングや自室のシステムオーディオで、スピーカーから放たれる音をじっくり身体で感じる楽しみ方だ。

今回は、ウォークマン®とつないでハイレゾ音源を楽しむことができるハイレゾ・オーディオとワイヤレススピーカーの、SRS-X99/X88、CMT-SX7、UDA-1&SS-HA3、MAP-S1&SS-HW1、HAP-S1&SS-HA1を紹介したい。

音響機器を日々取材し、各媒体で執筆している、IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏に話を聞いた。(以下、語りはすべて安蔵氏)

スピーカーならではの魅力を語る安蔵氏

「スピーカーで音楽を聴く」ということは、何にも代えがたい魅力。

父や祖父の時代には、多くの家にステレオがありましたよね。その前に人が集まり、レコードやCDを出してみんなでスピーカーに耳を傾けて音楽を聴く。当たり前の光景でしたが、今ではあまり見かけなくなりました。
一方、ポータブルなウォークマン®とヘッドホンは日々の音楽ライフに大活躍しています。しかし、家で「スピーカーで音楽を聴く」ということには、何にも代えがたい魅力があります。

例えば、ボリュームを上げて、低音が腹部に響くことで空気の振動と響きを肌で感じたり。ヴォーカルが中央にいて、ギターとベースが左右に、ドラムが中央奥にいることまでわかる音像と定位のリアルさだったり。ライブ音源では、あたかも自分がライブ会場にいるかのように感じることのできる臨場感だったりと、たくさんの魅力があります。もちろん、読書や自宅での仕事の際などに包み込みようにゆっくりと音楽を部屋全体に流して、浸るように楽しめることも、スピーカーならではです。そこで今回は、その「スピーカーで音楽を聴く」魅力を改めて紐解くために、さまざまな特性を持った製品ラインアップを用意していただきました。自宅のどの部屋で、どのように楽しめそうか、ご参考にしていただきたいと思います。

マイルス・デイビス『Kind of Blue』

では早速、各製品で同じ曲を聴き比べながら、体験していきましょう。聴くのは、低音から高音まで音の広がりを体験できるジャズのハイレゾ音源。伝説のジャズトランペット奏者、マイルス・デイビスの1959年の名盤『Kind of Blue』から、『So What』を選びました。『So What(それがどうした?)』は、マイルス・デイビスの口癖だったそうで、ジャズ界の帝王の座を切り拓いた彼の男意気が感じられる、お馴染みの名曲です。

最先端のワイヤレス伝送コーデックの実力を探る。

家と職場の往復、人々が多く行き交う場所など、雑踏や騒音下に身を置いても、いつでもどこでもお気に入りの音楽を安定した音質で楽しみたい、そういう目的を前提に、ヘッドホンは最適化されています。とはいえ、家に帰ったら、静寂に包まれた環境の中で、ゆったりと音楽でリラックスしたい。僕も、外出時にはヘッドホンを使っていますが、自宅では、スピーカーで音楽を聴いて楽しんでいます。
しかし、スピーカーというと、みなさん、場所を取るとか、配線が面倒というイメージが強く、敬遠されがちですよね。でも、今回の製品なら、ワイヤレスで接続できたり、非常にコンパクトになっています。自宅でもヘッドホンやイヤホンで音楽を聴いているという方には、ぜひスピーカーで良質の音を聴いていただきたいですね。

LDACが、音を明瞭にする。スリーボックスタイプで、音の粒を部屋の隅々まで届ける。

最初は、スリーボックスタイプのCMT-SX7です。僕ら、コンポで育った世代は、やっぱり、こういうスリーボックスを見ると、“自宅で音楽を楽しむ”というワクワク感を覚えますよね。
まず、音質についてですが、とてもBluetoothで聴いているとは思えません。LDACは従来のコーデックの最大約3倍の情報量を送れるので、確かに、今までより、音の粒立ちがはっきりして聴こえます。例えば、『So What』の最初の静かに始まるピアノの調べで、鍵盤を叩いている音とか、ベースの弦の鳴りが、従来のBluetoothに比べると、明瞭だなと。どうしても、楽器の音が重なると、情報量が多くなるので、音がひずんだり、ザラザラする感じがあったのですが、大分、改善されていますね。

マルチオーディオコンポ CMT-SX7

あと、音の定位する範囲や音像が、「広い」と感じました。トランペットやサックス、ピアノ、ベース、ドラムといった編成が広がっているのが「見える」というんでしょうか? それは、LDACだからというのもありますが、やっぱり、スリーボックスタイプだから、というのも大きいのではないかと…。
家で音楽を聴く、というと、スピーカーの前にじっと座って聴く、というイメージが強いですが、実際は、それだけでなく、窓の外を見たり、書棚を眺めたりと、部屋の中でいろいろ動きながら音楽を聴くと思うんですよね。そんなときに、左右のスピーカーの角度を自分が動く範囲の広さに合うように動かせると、自由度が増して、音のいろいろな側面を「見る」ことができる。家で楽しむミュージックライフという意味では、実は、とても大切なことで、それこそ、音楽の楽しみの一つではないのかな、と思うんです。

ワンボックスなのに、驚くほどダイナミックに音が広がる。
ワイヤレススピーカー SRS-X88 ワイヤレススピーカー SRS-X99

その一方で、次に聴く、SRS-X88、SRS-X99のようなワンボックスタイプは、それ単体だけで、セッティングをしなくても、音楽を楽しめるという手軽さがとても魅力的ですね。ウォークマン®と、LDACでのワイヤレス接続も簡単ですし、初めてスピーカーを買う、という方は、とてもよい選択肢だと思います。

では最初に、よりコンパクトなSRS-X88から。聴くのは同じ、マイルス・デイビスの『So What』です。スネアとか、シンバルの鳴りなんかが、ヘッドホンで聴くと、どうしても頭の中で鳴っている違和感が抜けないんですけど、スピーカーは音が広がってくれるので、当然、抜けがいい。やっぱり、スピーカーで聴くのって、何ものにも代えがたい魅力がありますね。

また、ジャズというのもあって、音のニュアンスに合っているスピーカーというか、こういう小さな編成の、まとまっている感じとか、この音楽が持つ潜在能力みたいなものを、とてもコンパクトかつダイナミックに引き出されているなと。自宅のリビングや書斎といった、ニアフィールドな環境で聴くのに楽しい、まさにシンプル、コンパクトなスピーカーという感じがします。ワイヤレスだから、どこにいても、手元でウォークマン®から操作できるのもうれしいです。

次は、同曲を、SRS-X99で聴いてみましょう。うーん、思わず、曲の世界に入っちゃいました(笑)。曲の中盤、いよいよマイルスが力強くトランペットを吹き始めた辺りで、サブウーハーによる音の厚みの違いが感じられます。さらに、その音像が、上部に設けられたツイーターのおかげで、上に広がって聴こえました。ワンボックスでもここまで音が広がるんですね。

SRS-X88は、ブラックとホワイトの2色から選べます(写真は、ホワイト)

ぜひ、ハイレゾ音源で聴いてみてください。もちろんウォークマン®とスピーカーをケーブルでつないで、ハイレゾ音質で聴くほうが、音がいいのは間違いないのですが、ハイレゾ音源はそもそも、元の情報量が多いので、従来のBluetooth接続の、最大約3倍の情報量で送れるLDACで聴くと、完全にハイレゾ音質で再現できなくても、格段に音は良くなっています。ワイヤレスで手軽に聴きたい、という用途でしたら、結構、LDACでも聴けてしまうかなと…。持っているウォークマン®に、まだハイレゾ音源を入れたことがないという方にも、ハイレゾ音源をLDACで、聴いてみていただきたいですね。新しい驚きがあるかもしれません。ちなみに、今回の3製品で、僕なら、スリーボックスタイプのCMT-SX7を選ぶかな…。

いずれの製品も、ハイレゾの音質のクオリティーを余すことなく楽しみたい方、そしてBluetoothとLDACに対応したNW-ZX2、NW-A10シリーズに加え、ZX1、NW-F880シリーズをお持ちの方は、USBケーブルでの接続も可能です。

LDACとは
ソニーが新たに開発したLDACは、既存技術(*)に比べ最大約3倍の情報量を伝送します。LDACに対応した機器間では、ハイレゾ音源をはじめ、お持ちのさまざまな音源を高音質でワイヤレスリスニングできます。
*Bluetooth®A2DPのSBC(328kbps/44.1kHz時)
LDAC
詳しくはこちら
    対応機種
  • ・ZX2
  • ・A10シリーズ(ソフトウェアアップデートが必要)
WALKMAN A10シリーズをお持ちのオーナー様へ
本体のアップデートのご案内
「LDAC」への対応には、アップデートが必要です。本体アップデート情報はこちらをご確認ください。

USB DACアンプにハイレゾ対応ウォークマン®を繋げば、デスクトップがジャズバーのように。

一方、家に帰ったら、まず自室に入ってPCの電源を入れるという方も多いかもしれません。私も家で仕事の続きをすることが多いので、PCが生活の中心になるのはよくあることです。そんな方には、USB DACアンプ『UDA-1』とハイレゾ対応スピーカーのSS-HA3の組み合わせがおススメです。
自宅のPCをUDA-1につなげば、ダウンロードした音楽を聴ける高品位オーディオプレーヤーになりますし、UDA-1とハイレゾ対応ウォークマン®をつなげば、ハイレゾをスピーカーSS-HA3で楽しめるようになります。最大出力が23W+23W、250Kまで出せる、LR独立型の広帯域アンプを使っているので、『So What』を聴くと、シンバルとトランペットの音が重なるところがすごくシャープで、振動やスタジオの空気感まで感じられます。

これまで、USB DACアンプは、PCとの連携が主目的だったので、ポータブルオーティオファンには手が出にくいものでした。でも、UDA-1のようにハイレゾ対応ウォークマン®とダイレクト接続できるなら、使い勝手が2倍に増えて、コストパフォーマンスが高い。ウォークマン®のバッテリーで再生すれば、AC電源をつないだシステムに比べノイズが軽減されそうです。今回、ドライバースピーカーのSS-HA3とのセットで聴きましたが、PC周りが充実して、仕事も楽しめそう。デスクトップにおけるスピーカーって、なかなか満足できる音質のものがなかったけれど、これなら集中した仕事の合間に、バーボンウイスキーのボトルも開けてリラックスして音楽に浸ることもできる、大人向けのセットですね。目を閉じれば、あたかもジャズバーにいるかのようです。仕事にはメリハリと気分転換が大事ですからね(笑)。

UDA-1、SS-HA3ともにシルバーとブラックの2色から選べます

寝室には、音の広がりを重視。 スピーカーの材質は、お好みの音楽ジャンルにあわせて。

デスク周りやリビングもそうですが、寝室に広がる音空間も一工夫ほしいですよね。次は、MAP-S1とハイレゾ対応スピーカーSS-HW1の組み合わせです。さすが、最大出力100W、マルチオーディオプレーヤーシステムをうたうだけあり、音の広がりは段違い。これなら、たとえばベッドの上に寝転んで聴いたとしても、シャワーを浴びるように音が降ってくるようで、ハイレゾ音楽を満喫できそうです。『So What』を聴くと、トランペットのアドリブソロのところや、その鋭く飛び出る低音にびっくりさせられました。その秘密は、SS-HW1の木製の筐体と、ピアノと同じ塗装をほどこして、板材の加工に2カ月かけていることにありそうです。特に低音がよく出ていて、スタジオとかホールで聴くレベルのスケール感です。僕はこういう木のスピーカーの“鳴り”が好きなんです。ウッドベースの“鳴り”が、木のスピーカーでお腹にくるようなリアルな響きで、まるで楽器のように鳴るスピーカーです。MAP-S1はハイレゾだけでなく、CD再生機能やラジオチューナー聴取の機能も備えているので、休日にのんびり寝室で過ごす際にも、この多機能性がうれしいですね。

MAP-S1は、シルバーとブラックの2色から選べます

高音のスピード感が、身体を駆け抜ける。 低音のビート感が、心地よく身体を揺らす。

そして最後は、HDDを搭載した、HDDオーディオプレーヤーシステム HAP-S1とハイレゾ対応スピーカーシステムSS-HA1の組み合わせです。前述のUSB DACアンプ『UDA-1』と同じアンプ構造で、最大出力40W+40WのLR独立型広帯域パワーアンプを搭載。利便性が高まっているのは、Android搭載のウォークマン®が前提ですが、HDD Audio Remoteというアプリをダウンロードすることで、本体に入っている音楽をHAP-S1のHDDへコピーすることができます(Wi-Fiルーター経由)。これであれば、簡単にコピーできるし、コピーすれば、音楽をサクサク、アプリから快適に操作ができて、これはとても便利です。

『So What』を聴いてみましょう。各楽器が重なったリフのところなど、SS-HA1のアルミニウム・キャビネットの剛性が高いことと、新開発の高感度スーパートゥイーターのおかげで、音速度が非常に速いと感じます。さきほど、私は木のスピーカーの鳴りが好きだと言いましたが、 SS-HA1なら、もしかして、ロックなど、さらにアップテンポだったり、ビート感の強い曲だと、もっとスピードを感じられるのかな? ちょっと私のハイレゾ対応ウォークマン®から、マイケル・ジャクソンの『BAD』ハイレゾ盤を聴いてみてもいいですか? やはり、冒頭からのビート感が、こちらのほうが伸びて聴こえ、テンポも心地よく感じます。HAP-S1のチューニングはフラットで、どんなによいスピーカーが来ても、対応できそうです。
個人的には、ジャズやクラシックで、広い帯域の音を楽しみたい人には、MAP-S1、ロックやポップスの低音のビート感を楽しみたい人は、HAP-S1がおススメでしょうか。

普段聴いている音楽で試してほしいから。お持ちのウォークマン®をつないで聴く、システムオーディオ選び。

例えば、人がリラクゼーションサロンなどでマッサージを受けて、身体が「心地よい」と感じるように、システムオーディオで聴く音楽も、ユーザーそれぞれがリラックスできる“ツボ”があると思います。
私たちは普段、家電量販店で機器に触れることはできますが、多くは店頭であらかじめ用意されたサンプル用のコンテンツで機器の実力を試すことになります。でも、コンテンツの好みは人それぞれ違うので、実体験するには普段聴いている音楽で試すのが、一番。自分にとっての心地よさのスイートスポット、“ツボ”の部分に効いているかが分かると思いますよ。
前回のヘッドホンと同様、今回のシステムオーディオについても、ぜひ、お手元のハイレゾ対応ウォークマン®にお気に入りの音楽をハイレゾで入れてお近くの店舗に行き、実際につないで聴いてみてください。これまで聴こえなかった音など、新しい発見がきっとあるはず。ハイレゾ対応ウォークマン®とシステムオーディオで、ハイレゾ音源を浴びるように聴いて、身体で感じてみてください。心地よく感じられれば、それがあなたに合ったシステムオーディオです。

ご紹介したシステムオーディオを体験できる場所はこちら

  • 東京・銀座 ソニービル
    ソニーショールーム

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  • ソニーストア 名古屋

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  • ソニーストア 大阪

    地図はこちら

安蔵靖志 IT・家電ジャーナリスト

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