株式会社青森テレビ 様
PDFダウンロード

Networked Liveと『MLS-X1』で実現した
「ワンシステム」で「2つのサブ」

株式会社青森テレビ様は、既存の制作スタジオ・サブと報道スタジオ・サブのシステムを、ライブプロダクションスイッチャー『MLS-X1』を中心した、Networked LiveによるIPベースのシステムに更新され、2025年3月から4月にかけて、順次運用を開始されました。ソニーのNetworked Live選定の経緯や決め手、導入後の成果、今後の計画などについてお伺いしました。

株式会社青森テレビ
技術局長
佐藤 正健 様

株式会社青森テレビ
技術局 技術部
渡辺 拓樹 様

知るほどに魅力を感じ、将来に向けて「IP」へ

−制作系と報道系のシステムを「2つのままで1つ」に

佐藤様:当社には制作と報道、2つのサブがあります。今回、その両方をNetworked LiveによるIPベースのシステムに更新しました。従来は独立していた、異なるメーカーによる2つのサブを「場所や卓は2つのまま」で、1つの映像系システムに統合して更新をしました。

渡辺様:更新については、更新前の2つのサブそれぞれのメーカーに加えてソニーの計3社に、比較的自由な形での提案をお願いしました。いただいた提案は、ソニーはIP、他社はベースバンドによるものでした。IPについて当初は、ローカル局で導入しても、ポテンシャルを生かしきれず、保守管理なども難しそうな印象を抱いていました。IP特有の遅延なども不安要素でした。しかし、先行してIP化を図ったローカル局を実際に見学させていただき、導入後の感想を直接伺う中で、それらの懸念は払拭されました。IPに詳しくなくてもリモート保守契約でサポート面が安心であること、そして、遅延なども問題になるようなことはないことがわかりました。

−将来性や「リモートプロダクション」、納入実績や機材の優位性が決め手に

渡辺様:一方、ベースバンドによる更新は、この先15年といった運用を考えると、将来性に不安を感じました。今後の拡張やマスター更新時の連携などにも課題がありました。その点でIPには大きな魅力を感じました。

佐藤様:IPならばバージョンアップなどで最新の機能を使っていけます。IPを知るにつれ、「これからはIPでなければだめだろう…」と考えるようになりました。特に、今後のさまざまな状況を考えた際に「リモートプロダクション」はかなり魅力的に映りました。

渡辺様:IPのシステムにおける実績の豊富さ、個別の機材の優位性なども決め手となり、ソニーにお願いすることに決めました。

佐藤様:実際、今回の工事にあたり、工期期間中の仮設運用の為のデモ機借用や、社内各所の連絡端子盤への光ケーブル布線などにおいて、タイトで厳しい設置環境の中、工期を守り、要望をかなえていただいたことからも、我々の選択が間違いでなかったと改めて思っています。

『HDC-5500』を中心に導入された制作スタジオ(左)と、報道フロア内の報道スタジオ(右)

パワフルで機能充実の『MLS-X1』、2つのサブを1台で

−『MLS-X1』1台を制作サブと報道サブで使用

渡辺様:今回の更新におけるシステムの中核となるのが、ライブプロダクションスイッチャー『MLS-X1』です。更新前の制作サブに設置していたスイッチャーに比べて、入力は約2倍となる64in、出力は約4倍となる64outを備えています。M/E数も以前の3段から『MLS-X1』では4段に増えています。1段にキーヤーが8つあり、M/Eスプリット機能を備えているなど、1段あたりの能力も格段に高くなっています。今回は、この『MLS-X1』1台を制作サブと報道サブ双方からM/E単位で使用するシステム構成としています。日頃の運用では、報道サブでM/E1とP/P列を使用し、制作サブではM/E2〜M/E4列を使っており、同時に運用できます。

更新に伴い、報道フロア内に移転設置されたコンパクトな報道サブ(右)、左奥ホワイトボード裏手に報道スタジオ

佐藤様:制作サブには、以前はルーティングスイッチャーを別途設けていましたが、今回は設けていません。以前はスイッチャーに同時に入力できる素材数の制約や、報道サブで使用する素材と共通化ができないという課題がありました。しかし、入出力数が充実している『MLS-X1』を導入したことで、中継や情報カメラからの映像などもスイッチャーで直接選択できるようになりました。また、1台のスイッチャーなので、制作サブと報道サブで常に同じ素材が使用できます。

報道サブはソニー製OTCシステムで運行され、通常『MLS-X1』のパネルには誤操作防止カバーがかけられる

−ソニー製OTCシステム連携で、報道サブはワンオペも可能な “大幅な省人化” を実現

渡辺様:今回の更新で、報道サブは報道フロアと離れた場所から報道フロア内に移設を行いました。『MLS-X1』や報道支援システムと密に連携する、ソニーのOTCシステムを導入したことで、CUEシートの作成が不要となり、サブ出し素材のアップロードなど人的作業も不要となりました。音声ミキシングやモニターの選択、中継のコミュニケーションライン設定などもタッチパネルによる簡単な操作が可能となり、サブの人員も、以前の複数名での態勢に対して、新システムでは1名でも運用できるものとなりました。現状は、お天気カメラのコントロールやCG修正時のフォローに、念のために人がついていますが、今後は完全な1名化を目指していきます。

−4系統の内蔵マルチビューアーもさまざまに活用

渡辺様:『MLS-X1』には4つのマルチビューアーが内蔵されています。そのうち2つのマルチビューアーは報道サブで固定使用しながら、残る2つは、専用のマルチビューアーを2式設置している制作サブの予備としつつ、特番時などには必要に応じて自由に使えるようにしています。

佐藤様:当初は「そんなにたくさんマルチビューアーは必要ないのではないか」とも思いました。しかし、実際に導入してみると、使いたくなる場面は多く、さまざまな場面で便利に活用しています。

−番組のオープニングも「クリッププレーヤー」で

渡辺様:細かい部分ではフレームメモリーの数が増えたほか、内蔵のクリッププレーヤーで動画も出せるようになりました。レギュラーの情報番組のオープニングも、以前はXDCAMステーションから送出していましたが、今は『MLS-X1』のクリッププレーヤーから送出しています。

番組オープニングが登録された『MLS-X1』の「クリッププレーヤー」ファイルリスト画面、サムネイルも表示される

渡辺様:フレームメモリーやクリッププレーヤーのファイルをPCから取り込めたり、各種設定に名前入力ができたり、マクロが使えたり、といった使い勝手の良さも実感します。頻繁に使う機能をワンタッチで呼び出せる、コントロールパネルの手前に置かれたショートカットキーや、どこからでも使えるタブレットによるメニュー操作も、とても便利です。

ライブプロダクションスイッチャー
MLS-X1

商品情報 >

システムカメラやPTZカメラは “持ち出し” も意識して選定

−『HDC-5500』とも、しっかり色が揃う『BRC-AM7』

渡辺様:制作スタジオにはマルチフォーマットポータブルカメラ『HDC-5500』を中心に、PTZオートフレーミングカメラ『BRC-AM7』を、顔出し用の報道スタジオには、プロンプターを備えた旋回型HDカラービデオカメラ『BRC-H800』を導入しました。『HDC-5500』のうち1式には、オプションの光学式可変NDフィルターユニット『HKC-VND50』を搭載しています。屋外での持ち出し用途などに備えて1式は導入したいと考えていたのも、今回ソニーを選んだ理由です。当社は、HDC-1000シリーズも保有しておりますので、我々既存のユーザーが抵抗なく使用できるように、良い部分はちゃんと継承しながら、高画質・高精細化に加え、現場の苦労を改善するような機能が増えており、ソニーのシステムカメラの大きな進化を感じています。

佐藤様:スタジオの『BRC-AM7』は、電動昇降ペデスタルに搭載されており、主に平日の情報番組のオープニングやエンディングで、ハイアングルショットを中心に使用しています。納入時に『HDC-5500』の分光特性に沿うように用意された709toneのルックをあてることで、スタジオ内でカラーマッチングが取れるように調整をしていただいており、混在して使用しても色味に違和感がありません。これにより、より一貫した映像制作が可能となっています。

制作スタジオ内の『HDC-5500』

電動のペデスタル付き三脚を介して、
制作スタジオ内の高所に据えられた
『BRC-AM7』

渡辺様:『BRC-AM7』には、オートフレーミング機能が備わっています。この機能は、被写体(人物)をカメラが自動で追尾し、自然な構図で自動調整しながら撮影を行う機能です。現在のところ番組内での活用には至っていませんが、導入直後に行ったテストでは、その有用性を実感しました。今後は、中継などの場面で、このオートフレーミング機能を活用し、より効果的な映像制作をめざしたいと考えています。

マルチフォーマットポータブルカメラ
HDC-5500

商品情報 >

PTZオートフレーミングカメラ
BRC-AM7

商品情報 >

「参院選特番」で生きた、IP化の“迅速性”と“柔軟性”

−IPだから実現できた 「参院選特番」 のネット・地上波2番組同時制作

渡辺様:IP化によって、日頃の番組でのモニターレイアウトの変更や、システム変更も「ライブシステムマネージャー」の画面上の設定を変えるだけで即座に行え、とても迅速になりました。例えば、特番の準備や復帰の作業も、ごく短時間で済むようになりました。

佐藤様:導入からわずか数か月の間にあった参院選では、地上波の番組がスポーツ中継のため延長があるかもしれずライブ配信を先にスタートしました。制作サブとスタジオから、先行してライブ配信での参院選特番をスタートし、スポーツ中継が終わったところで、地上波向けの特番をスタートしました。ライブ配信向けは、報道サブからの配信に切り替え、完全に別の2番組を同時に制作しました。この編成や運用は「素材のマルチユースが可能な新しいシステムならできるだろう」ということで実現したものです。

さらに、IPのポテンシャルをフル活用した番組づくりへ

−「画面に入って教えてもらえる」IPならではの “リモート保守”

渡辺様:IP化によって得られたのが、保守の安心感です。リモート保守契約の導入で、遠隔でリアルタイムに対応をしてもらえるようになりました。今のところ、大きなトラブルはありませんが、技術担当者にかかる負荷が減りました。

佐藤様:リモート保守では「操作がわからない」といった場面でも、リモートでメニュー画面に入っていただいて、確認をしていただいたり、教えていただいたりできます。現場からも、すでに数回利用していると聞いています。従来のシステムではなし得なかったことです。

マスタールームに隣接するマシンラック(左写真・右奥)、ラックは従来の5本相当から、2サブ合わせて3本とコンパクトに

−リモートプロダクションで、今後IPをフル活用へ

渡辺様:現時点でIPのポテンシャルをフル活用できているとは思っていません。今後さらに、導入の成果を実感できる場面が出てくるはずです。まずは、毎週月曜日に行っている情報番組の定点中継などで、新規に導入したカメラコントロールネットワークアダプター『CNA-2』を活用した、カメラのIPリモートコントロール化などを考えています。

佐藤様:『CNA-2』には、遠隔地からカメラのアイリス調整やモニタリングをする機能が備わっており、ベテランのVEオペレーションを新人が学ぶような場面でも活躍してくれています。『CNA-2』の導入で、既有の『HDCU-1500』などもシステムに統合できるのも大きな魅力です。来年、または再来年には、「青森ねぶた祭」の IPサブからのリモートやワイヤレス中継にもチャレンジをしてみたいと思っています。

※本ページ内の記事・画像は2025年8月に行った取材を基に作成しています

Networked Liveとは

お問い合わせはこちら PDFダウンロード
Networked Live サイトマップ