IP Liveプロダクションシステム

スペシャルレポート

※本ページは2020年11月時点での情報を基に作成しています

事例紹介
日本テレビ放送網株式会社様

IP運用ノウハウ蓄積に向け
報道素材伝送用ルーターにNMIを導入
大きなトラブルもなく安定稼働を実現

日本テレビ放送網株式会社様は、報道系の回線ルーティング設備更新にあたり、ソニーのNMI(ネットワーク・メディア・インターフェース)によるIPベースのルーティング設備を導入され、2020年3月から運用を開始されました。

IP運用の知見を得るための一歩に

今回導入をしたIPによるルーティング設備は、報道部門における伝送を目的としたシステムとなります。NNN各局への素材送りや、国会中継や緊急記者会見のような外部からの回線のライブ伝送などのルーティングを担っています。

今回のIP導入については、社内での知見を高めるための導入を検討していたところにタイミングがマッチしたというのが1つの理由です。初めて導入するIP設備でもあり、万一障害が発生しても、放送への直接的かつ大きな影響になりづらい設備であったことも加味し、導入を決断しました。システムとしてはすべてHDで運用しています。

  • 小寺 達生様
    日本テレビ放送網株式会社
    技術統括局
    回線運用部主任
    小寺 達生様
  • 梶原 悠一様
    日本テレビ放送網株式会社
    技術統括局
    報道技術部副主任
    梶原 悠一様
  • 新生 知広様
    日本テレビ放送網株式会社
    技術統括局
    技術戦略統括部主任
    新生 知広様

実績の豊富さから“NMI”を選択

今回のIP導入にあたっては、NMI(ネットワーク・メディア・インターフェース)とSMPTE ST 2110を検討しました。社としては、将来的にはST 2110が業界のスタンダードとなってゆくだろうという見通しを持っていますが、ST 2110については出始めたばかりで、今回は当社で初めて導入するIP設備でもあることから、稼働実績の多さなどを重視してNMIにしました。

初めてのIPも完全二重化で安心感

従来はHD-SDIによる32入力・32出力のマトリックススイッチャーのシングル構成で運用していた設備を25Gbps・48ポートのネットワークスイッチ2式に置き換えました。2式のスイッチにより、完全二重経路による冗長化(ヒットレス・フェイルオーバー)を行っています。SDIの設備の時は、障害が起きても経験値があるので原因がすぐに推測できることが多かったですが、IPはノウハウがないので即座に対応できるかが未知数です。その点で、二重化できたことは安心につながっています。今回は二重化しましたが、今後の運用の中で信頼性を見て、将来の導入ではシングル構成にするなどの可能性もあると思います。ルーターへの入力と出力はSDI-IPコンバーターボードNXLK- IP40F/1によりHD-SDIとの変換を行い、マルチビューアーへの出力についてはNMIで直接接続を行っています。

クリーン・非クリーン混在のシステム構成

IP伝送では、クリーンスイッチ(≒ブランキングスイッチ)を行うには非クリーンスイッチに比べて2倍の回線帯域が必要となりますが、今回のシステムでは、それらを混在させた運用にしています。例えば収録系などは、収録しながら入力ソースを切り替える使い方は考えにくいので、非クリーンで運用しています。非クリーンのチャンネルでは、ソース切り替え時に一瞬黒味が出たり、一瞬画がフリーズしたりするといった見え方になります。非クリーン箇所は選んで入れていることもあり、運用時に気になったり、オペレーションの支障になったりすることはありません。

普通に見たら見分けがつかない“LLVC”

NMIでは、伝送方式について非圧縮と圧縮(LLVC)が選択できますが、今回は非圧縮で運用しています。これはLLVCの画質の問題というわけではなく、導入した機器に対してルーティング規模が小さく、スイッチの容量やポートの帯域的に十分な余裕があり、またテストケースとして試してみたかったからです。

LLVCの画質については、事前に比較・検証も行いました。もともと圧縮されていた映像をLLVCで再圧縮する形になると、やや劣化しやすい傾向は感じたものの、画質の差は極めて軽微です。映像を2つ並べて注視して違いの指摘を受ければ「なんとなく違う感じがする」くらいの差でした。実用上はまったく問題とならない差でした。普通に映像を見ても見分けがつきません。

将来的にルーティング規模を大きくしたり、クリーンスイッチを増やしたりなどで容量や帯域に不足が生まれてくるようなことがあれば、改めてLLVCを使う可能性はあります。非圧縮とLLVCでは遅延の差もありませんし、その変更自体もIPゲートウェイの設定画面でいつでも簡単に切り替えができますので、いまはとりあえず非圧縮で運用してみています。

変わらぬ使い勝手、見やすい管理画面

日常のルーティング操作については、NS-BUS接続のハードウェアタイプのコントロールパネルを使用しています。そのため、日頃の使い勝手はSDIベースの機器と何ら変わりがありません。今回はコントロールパネルに液晶表示が内蔵されたことでわかりやすくなりました。表示内容についても、回線センターから自動的にソース名が流れてきて表示が更新されますので、切り替え時の間違いなども起きにくくなりました。

管理については、IP LiveシステムマネージャーPWS-110NM1上のGUIで設定を行っています。こちらの設定変更やクロスポイントなどのGUIは見やすく、とても使いやすいと思います。設定についてはIP特有の用語や設定などがあったりもするため、今後設定を変更する場合はソニーと相談しながら運用したいと思います。

従来のオペレーションを維持し、視認性を高めた送出卓
シンプルな機材ラック

拍子抜けするほどに少ないトラブル

導入からすでに8カ月が経過しましたが、システムはまったく問題なく稼働しています。今回の導入は、いろいろとトラブルを経験するなかで、ソニーから知識やノウハウを得てシューティングを行い、IPに関する知見を高めて共有を図ることが目論見にありました。しかし、トラブルが少なく、多少拍子抜けをしています。

IPはITですので進化が速く、提案から運用開始までの間に新しい製品が登場する場面などもありました。そういったときにも、設計を新しい製品に入れ替えるなどの対応をソニーは積極的にしてくれました。また、今回はIPが初めての導入だったこともあり、検討段階から疑問も多く出てきました。例えば製品の挙動一つに始まる数多くの質問に、逐一丁寧に回答をしてくれたことで、常にしっかりと納得をしながら前に進めることができました。

今回のIP導入が問題なく実施できたことを受けて、今後の各所の更新ではIPを選択肢に加えていく可能性も出てくると思います。今後、ST 2110が普及してきた際にはNMIとの相互接続も必然と迫られてくると思いますので、ソニーによる「NMI-ST 2110ゲートウェイ」のような製品の投入にも期待を寄せています。

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