ご担当者の紹介
株式会社ムーブ
代表取締役 石野 浩一様
株式会社ムーブは、2002年に設立された映像制作会社です。名古屋エリアの結婚式場をパートナーとし、結婚式当日の記録撮影と、披露宴の最後に流すエンドロール(エンディングムービー)の制作を請け負ってきました。グループ全体で約50名の撮影スタッフを抱え、外注スタッフに頼らないクオリティコントロールを大きな強みとしています。
ここ10年、ウェディング動画の品質は、SNSなどを通じた構成・撮影ノウハウの拡散によって大幅に底上げ、均質化されつつあります。結果、価格競争に陥っている側面があり、生き残りに向けた付加価値の創出が急務となっていました。
そうした中、弊社では創業以来20年以上にわたって、撮影機材を提供いただいているソニーとさまざまな可能性を模索しており、とりわけAI映像解析サービス『A2 Production』の「自動ダイジェスト機能」に可能性を感じていました。サッカーや野球の試合などで歓声が上がる盛り上がりの瞬間を音声で検知し、自動で切り取ってくれるというアイデアが、ウェディング動画の付加価値作りに使えるのではないかと考えたのです。
私たちの主力商品は、結婚式を最初から最後まで余すところなく全収録する「記録撮影」というサービスです。しかし、このサービスは2〜3時間の動画をプロの映像制作チームがきちんと確認、編集する都合上、どうしても納品までに1〜1.5か月程度のお時間をいただく必要があり、少しでも早く式の記憶を映像で振り返りたいお客さまのためにも解決したい課題の1つになっていました。
そこで今回、自動ダイジェスト機能を活用し、全収録映像から感動の瞬間を抽出して凝縮した10分程度の予告編ショート動画を、結婚式後、最短5日間でお届けする「ブライダルダイジェスト」サービスをオプションとして提供するプロジェクトを始めました。
実際の業務フローとしては、週末に撮影された動画データを、月曜日に『A2 Production』にアップロードします。自動ダイジェスト機能によるハイライト抽出自体はすぐに終わるので、それを火曜日から木曜日のどこかで担当スタッフが確認・修正し、金曜日にお客さまが見られる環境にアップロードするという流れとなります。
修正が必要なシーンも類型化されており、拍手や歓声のないファーストミート(挙式前に新郎新婦がお互いの晴れ姿を見せ合うセレモニー)や、チャペル入場時の大歓声が落ち着いた直後に見せる家族の感慨深げな表情などがAIの検知から外れることが分かっているので、対応も容易です。
その上で、私が最もこだわったのは、2〜3時間にわたる結婚式の動画からハイライト部分をバランスよくピックアップしてくれる仕組み作りです。どうしても式は後半の方が盛り上がりますから、歓声の大きさだけで漫然と抽出するとハイライトが後半に偏ってしまいます。そこで、「ブライダルダイジェスト」では、動画をブロック分けし、その比率を維持しながら盛り上がったシーンを抽出するよう工夫しています。
なお、この機能ではシーンを抜き出す関係上、シーン間のカメラ移動・操作で発生する手ぶれが映像の前後に入り込みがちなのですが、これについてもソニーとやり取りを重ねていく中で適切に除去されるようになっています。今後、撮り方を工夫することでより軽減していけるでしょう。
そのほか、新郎新婦のお名前をテロップとして挿入するオープニングシーン抽出の仕組みを用意するなど、ダイジェスト動画としての完成度を高める仕組みを充実させています。
編集以外の、式で使われているBGMの著作権処理などといった周辺業務を含めても、作業時間はおよそ2時間。試しに人力でやってみたところ6時間程度はかかってしまったので、労力を約3分の1まで抑えられたことになります。
なお、プロジェクトは2024年初頭からスタート。社歴が最も長く、現場経験豊富なベテランカメラマンを中心に開発を進めました。彼の判断を一つの評価基準に考えていたのですが、開発を始めて間もないころに、抽出されたハイライト部分を見た彼が「できていますね」と言ったことが大きな自信になっています。
現在は「ブライダルダイジェスト」を各式場のサービスとして採用していただくべく、プレゼンをして回っているところです。我々はこのサービスを、結婚式を終えたばかりのご夫婦が、わずか1週間後から伴侶や家族、友人たちと当時を振り返れるコミュニケーションツールとして打ち出しており、“空白の1か月”を5日で埋めるスピード感も併せ、式場のプランナーからも大変なご好評をいただいています。2026年度内には提供を開始し、いずれは同業他社にこの仕組みを提供していきたいですね。
さらに、この「ブライダルダイジェスト」にはBtoBの新たなビジネスの可能性も感じています。忙しい式場支配人が、現場の状況を短時間で把握するための共有ツールとして、プランナーが自分の考えた演出で思い通りに歓声が上がったかを確認できる育成用ツールとしても役立つのではないでしょうか。すでにそういった引き合いもいただいており、今後、新郎新婦向けの「ブライダルダイジェスト」とは別のかたちで展開していく予定です。
そのほかの取り組みとしては、映像制作に特化したクラウドメディアストレージサービス『Ci Media Cloud』も導入し、活用を研究しているところです。現在は撮影した動画データのやり取りに物理HDDを使っているのですが、これをクラウド化できれば、遠隔地の方にも仕事をお願いしやすくなります。もちろん海外とのやり取りも視野に入れており、海外編集スタッフに依頼することによるコストダウンだけでなく、海外の結婚式の映像編集をこちらで引き受け、手配するといったことも考えています。
今の時代、自分たちだけでゼロから新しいものを作り出すのは非常に難しいと感じています。だからこそ、私が強く感じたのは、自分が持っていないものを持つ人や会社と“掛け算”することの重要性です。今回の『A2 Production』を使った取り組みはまさにその好例。今後も、ソニーの提供するさまざまなサービスを利用して、新たな価値を生み出し、新郎新婦や式場の皆さん、そして現場のスタッフたちに喜んでいただけるようにしたいですね。