株式会社テレビ朝日 様

リモートカメラによる効率化で革新的な撮影スタイルを確立し、映像制作の新たな可能性を切り開く

株式会社テレビ朝日は、1957年に設立され、1959年に本放送を開始した民間キー局の一つです。主に地上波テレビ放送を中心に、BS・CS放送、ニュースネットワーク(ANN)、インターネット配信サービス(ABEMA、TELASA、TVer)など多岐にわたる放送事業を展開しており、報道、ドラマ、バラエティ、スポーツなど多様なジャンルの番組を制作・放送しています。また、広告、イベント、海外コンテンツ販売などの放送以外の分野にも力を入れており、メディアグループとしての多角的な事業展開を進めています。さらに、地球環境に配慮した持続可能な経営を推進し、スタジオ照明のLED化や再生可能エネルギー導入にも積極的に取り組んでいます。

株式会社テレビ朝日
技術局 技術運用センター テクニカルプロデュースグループ 兼
インターネット戦略局 AI推進部
森山 顕矩 様

撮影現場の人手不足解消と業務効率化をめざすリモートカメラの導入

昨今、従来のテレビ番組の制作に加え、配信番組やオンラインイベントなど、映像制作の業務が多様化しています。しかし、撮影現場では人手不足が大きな課題となっています。このような状況を受けて、テレビ朝日では、クオリティーは落とさずに、映像制作現場の効率化と労働環境改善をめざし、さまざまな取り組みを行っています。その一環として、リモートカメラによる自動撮影に着目しました。さまざまなメーカーのカメラを比較検討する中で、ソニーのPTZオートフレーミング機能の存在を知り、2023年の屋外イベントにてSRG-Aシリーズを活用し、実際にその効果の検証を行いました。この時点で十分な手応えを感じました。さらに、2024年の同イベントでは、発売前の『BRC-AM7』を使用し、追尾のなめらかさや、捉えた被写体のロストのしにくさを体感しました。これにより、ハイエンドモデルとしての画質や機能面の進化とオートフレーミング機能の精度の高さを実感し、今回このカメラを2台採用することを決定しました。

屋外イベントでの検証に活用されたPTZオートフレーミングカメラ『BRC-AM7』(写真手前)と『SRG-Aシリーズ』(写真奥)

多彩な機能とコンパクトサイズで撮影の可能性を広げるBRC-AM7

テレビ朝日では、スタジオや中継車に多くのソニー製システムカメラを導入しており、BRC-AM7の採用においては、色味の親和性の高さやVEオペレートのしやすさが大きなポイントとなりました。すでに導入していたリモートコントローラーなどの設備資産も有効に活用でき、スムーズな運用も期待できます。また、リモートカメラの選定にあたり、静音性も重視しました。スタジオ収録などでは極力音を出さないことが求められる場面もあるため、BRC-AM7の高い静音性は非常に満足のいくポイントです。さらに、コンパクトな筐体サイズは撮影場所の省スペース化にもつながり、カメラマンが入れなかった場所にも設置できることで、映像撮影のバリエーションや演出の可能性がさらに広がると期待しています。その他にもカメラ本体でSDメモリーカード収録が可能な点や、充実した入出力端子など、ユーザーのことを考えた細かい機能が搭載されていたことも魅力の一つです。映像現場での作業が向上し、よりクリエイティブな映像制作が実現できると考えています。

海外でのスポーツ中継において少人数のオペレーションに貢献

2025年8月にフランス・パリで開催された『TotalEnergies BWF World Championships 2025(世界バドミントン・パリ)』では、導入した2台のBRC-AM7を現地に持ち込み、中継カメラのひとつとして撮影を行い、少人数でのオペレーションを実現しました。1台は2階席サイドに設置し、もう1台は2階席コメンタリーエリアに設置しました。PTZカメラの利点を生かして、競技コート方向、コートサイドにいるリポーター方向、コメンタリーエリア方向などシーンによって切り替えて撮影しました。BRC-AM7のPTZオートフレーミング機能により、入退場する選手やインターバル中の様子を自動でスムーズに追いかけることができ、ダブルスの選手も複数人フレーミング機能で自然に撮影することができました。選手入場時には演出のため会場内の照明が暗転する場面が度々ありましたが、中継車にいるVEが他のシステムカメラと同様にリモートコントロールパネルRCP-3501を使ってアイリスやゲインをコントロールし、常に選手の姿を最適な映像で捉えることができました。このような他のソニー製機器との親和性の高さは、スポーツ中継においても重要であり、少人数のオペレーションでも高品質な映像を提供することが可能です。

『TotalEnergies BWF World Championships 2025(世界バドミントン・パリ)』にてBRC-AM7で撮影している様子

今回、海外での撮影ということで、現地に行けるスタッフの人数が限られていたため、2階席ポジションのカメラマンは同行しない最小限の体制で中継を実現しました。このような状況下での取り組みは非常にチャレンジングでしたが、BRC-AM7の導入によってクオリティーの高い撮影が実現できたと考えています。また、BRC-AM7のコンパクトさとオートフレーミング機能により、撮影スペース確保にかかるコストも最小限に抑えることができ、効率的に撮影を行うことが可能になりました。BRC-AM7は少人数でのオペレーションでも、効率的で質の高い中継制作ができることから、他のスポーツ中継での活用も増えてきており、今後はスポーツに限らず、さまざまなコンテンツやイベント中継などでもBRC-AM7の活用の可能性を広げていきたいと考えています。

現地中継車に設置されたリモートコントローラー『RM-IP500』などの機器(写真左)とリモートコントロールパネル『RCP-3501』『RCP-1501』(写真右)(技術協力:AMP Visual TV)

独自開発の自動システムとの連携にも期待

テレビ朝日では、制作現場の効率化や業務負荷の改善に向けて独自の自動撮影システムの開発も行っています。その中で、我々が開発した「自動スイッチングシステム」は、複数台のカメラ映像を切り替える業務を自動化することができます。このシステムは、マイク音声による話者特定や、顔の動きや表情に基づいたリアクション検出をAIで行い、熟練のスイッチャーのノウハウを反映したアルゴリズムにより、自然な映像切り替えを実現します。この自動スイッチングシステムとBRC-AM7を組み合わせることで、より少ない人員で質の高いコンテンツづくりをめざしており、検証を進めているところです。

撮影現場の効率化はもちろん重要ですが、BRC-AM7は、単に省人化するカメラではなく、新たな撮影手法や映像価値を生み出すポテンシャルを秘めたカメラだと思います。実際に撮影や操作を行うスタッフのフィードバックやアイデアを取り入れ、今後もさまざまな施策に活用していきたいと考えています。

システム概要

PTZオートフレーミングカメラ
『BRC-AM7』×2台

※ 本記事は2025年9月に行った取材を基に作成しています

リモートカメラシステム

リモートカメラシステムは、カメラ操作をリモートコントローラーで行うカメラシステムです。少人数でのオペレーション、カメラ設置が困難な場所、ホールや会議室などを広範囲に撮影する利用ケースに適しています。特にオンライン講義やウェビナー(オンラインセミナー)の重要性が増す中、従来の放送設備、映像制作用途以外にも、教育設備、各種ホール、会議室、Web会議(ビデオ会議)システム、ライブ動画配信や動画コンテンツ制作など、さまざまな用途にご利用いただけます。

PTZオートフレーミングカメラ
BRC-AM7

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