アクティブスピーカー「ARA-ZX1」開発者インタビューアクティブスピーカー「ARA-ZX1」開発者インタビュー

03 和紙技術を使ったコーン紙は、譲れない唯一のパーツ

関   SRS-ZX1のキーパーツとしてスピーカーユニットがあるんですが、これは伊藤と2ヶ月ぐらい悩みながら製作していきました。SRS-ZX1に採用している大きさのユニット(写真参照)で、大きな音を出すと、今までのスピーカーだとなかなか解決できない現象が多くあったんです。それを解決したのが、Σ型磁気回路です。これは2つのマグネットのN極を対向させて、反発磁界を作っているんですが、磁極の流れがまさにΣのような形になるんです。こうすることで、ドライブ力が強力に出るのですが、単純にそれだけを入れても、求める音は出せないんです。
伊藤   この音を実現するのには、ソニーが今まで培ってきたノウハウというのが大きかったですね。今回のユニットでは、フチのエッジ部分を波々の形にしています。これはすでに現場から退かれた技術者の方の技術とアイディアなのですが、SRS-ZX1を製作するのにあたり、いろいろとアドバイスをいただきました。またホームオーディオを担当するメンバーとも合流して、意見をもらいました。こうした技術力の継承、そして繋がりがあるからこそ、SRS-ZX1は完成したと思っています。
関   またパーツで言うと、スタート当初から試行錯誤をして、本当にいろいろな部品を新しくしました。もう最初とはまったく違うものになっているといってもいいほどです。ただ一貫して変えなかったものがあるんです。それが振動板にある白い紙の部分。コーン紙と呼ばれているものなんですが、1300年以上続いている和紙の技術を使ってできています。このコーン紙でないと、しっとりとした中域が出ない。僕らの好きな音が再現できなかったんです。
伊藤   なぜ和紙かというと、普通の紙に比べて強度があるからなんです。これは和紙の製造工程が関係しているのですが、和紙は紙の原料となるパルプを砕く「叩解」と呼ばれる工程が非常に繊細で、繊維をほぐすよう叩いて回しているんです。こうすることで繊維の強靭性が増し、強い紙に仕上がる。振動したときもしっかりと音を伝えられるんですよ。
しかし工場などで作る紙は、荒っぽく繊維をブチブチと切ってしまうので和紙と比べるとどうしても弱くなってしまうんです。
関   和紙というのは華奢に見えるんですけれども、非常に強いんですよね。その和紙を使った音に私も惚れ込んでいまして……。“コーン紙のところは変えない!”それが自分のポリシーとしてありました。ただそのほかのパーツは、それこそマグネットから何から何まで、全部変え、そのつど伊藤が泣きながらプログラムを変更していました(笑)

伊藤   これはひとつの例ですが、スピーカーのキャップだけでも5通り以上、実際のユニットは100通り以上の組み合わせを試しました。素材によって音の響きはかなり違います。まさに生もの。それにあわせて音質も追い込んでいかなければならない。パーツがひとつ変われば設計の細かい部分までそれにあわせて変えなければいけないんです。
関   毎夜、課内で試聴会をやっていたんですけれども、試聴するといろいろとアイディアが出てくる。そうすると、夜のうちにこそこそっと細工をして、次の朝に「これで今日の夕方までにプログラムを調整して」って伊藤に頼むんです。そしてその夜の試聴会にあわせると。かなりむちゃくちゃな要求を毎日していました(笑)。ただそうすることで、サウンドエンジンのほうでも見えてくる部分がある。お互い段々と積み重ねていくように完成に近づけていきました。
↑ このページの先頭へ

01010101

BACK BACK