株式会社長野放送 様
長野県長野市にある、フジテレビ系列の放送局、株式会社長野放送。発売からまもなく、XDCAMメモリーカムコーダー『PXW-Z300』(以下、Z300)を導入し、さまざまな番組制作・取材に活用しています。株式会社 長野放送 技術局技術部 部長 鈴木 豊 様、長野放送管財株式会社 カメラマン 羽場 勇弘 様、山岸 賢一 様に、『Z300』の導入経緯や、その魅力を伺いました。
目次
鈴木様:『Z300』を導入した技術局は、取材業務、スタジオ・中継業務、報道制作設備管理・更新などが主な業務で、ローカル情報バラエティ番組「土曜はこれダネッ!」や、「NBSフォーカス∞信州」、「グッドライフ」、ローカルニュース「NBSみんなの信州」をはじめ、さまざまな番組を制作しています。日々の制作現場では、ショルダーカムコーダーとハンディカムコーダーを、用途やシーンに応じて柔軟に使い分けるように変化してきています。前モデル『PXW-Z280』の現場評価が高かったことや、実運用をイメージした際に、現場に無理なくフィットするモデルであると感じ、『Z300』の導入を決めました。

株式会社 長野放送
技術局技術部 部長
鈴木 豊 様
鈴木様:導入にあたり重視したのは、主に3点です。
1点目は、ディスクからメモリーへという、制作体制の変遷です。ディスク記録からメモリー収録への移行は、単なる記録メディアの変更に留まらず、制作フロー全体を見直す転換点であると捉えています。ディスクという物理メディアを前提とした運用から、データ=ファイルとして扱う運用へ。その先には、クラウド連携やネットワーク経由での素材共有、拠点を越えた編集環境など、ファイル前提の制作体制があります。将来的に、クラウド活用や高速ファイル転送がスタンダードとなることを見据え、今の段階で、その土台となる環境を整えておきたいという思いがありました。
2点目は、“職人カメラ”から“万人カメラ”への移行です。ショルダーカムコーダーは、画作り以前に高度なオペレーションの習熟が求められる機材です。フォーカス・ズーム・アイリスの3連リングをマニュアルで扱うためには経験が必要であり、安定運用までに時間を要します。もちろん、スポーツ中継などでは職人的なマニュアル操作が不可欠ですが、すべての現場で常にフルマニュアル操作が求められるわけではありません。重要なのは、オート機能によって“失敗を減らす”だけでなく、経験値に左右されにくい、一定の品質を担保できるという点です。カメラマンの技術レベルや世代の違いがあっても、番組として成立する画を安定的に提供できることは、組織運用の観点でも大きな意味を持ちます。
そして、3点目は、更新のコストと柔軟性です。現在は、映像制作環境が大きく変化している過渡期であり、ショルダーカムコーダーだけを導入し、10年以上使い続ける前提の設備投資ではなく、時代の変化に応じて最適な機材を選び続けられる柔軟性を重視しました。『Z300』は性能とコストのバランスがよく、次世代環境の動向を見ながら、戦略的に更新できる選択肢であると判断しています。
山岸様:長くカメラマンの仕事をしてきましたが、扱ってきたのはショルダーカムコーダーばかりで、『Z300』のようなハンディカムコーダーを持つのは初めてでした。現場で使ってまず感心したのは、機動力の高さです。何と言っても、ショルダーカムコーダーとは比べものにならないほど軽量で、料理取材で厨房に入った時には、想像以上に小回りがききました。また、店舗のお客さんに話を聞く際にも、小型・軽量の『Z300』だと威圧感が少なく、スムーズに取材に入れます。操作性についても、扱い慣れた3連リングを備えていて、LCDアームが自在に動かせるので、ショルダーアダプターを使用した際にも問題なくモニターをチェックできます。タッチ操作に対応しているのもいいですね。

長野放送管財株式会社
技術業務部門 カメラマン
山岸 賢一 様
羽場様:4K ExmorR CMOSイメージセンサーを3板式で搭載し、感度F12の高感度を実現している点はありがたいです。1/2型センサーによる番組や取材、イベント収録用途に適したほどよい被写界深度、そして、3板式ならではの高い色分解性能はすぐに実感できました。フルマニュアルレンズで直感的な操作ができることはもちろん、手振れ補正の精度も高く、オートフォーカス性能についても、『PXW-Z280』よりもさらに信頼性が増した印象です。ビューファインダーがなくなり、LCDモニターを採用しているところに若干不安はありましたが、今後はLCDモニターが主流になっていくと思うので、私としては、積極的に使って、早く慣れていきたいと考えています。

長野放送管財株式会社
技術業務部門 カメラマン
羽場 勇弘 様
羽場様:汎用性の高いVマウントがカメラ側面に搭載されているので、ポータブルデータトランスミッター『PDT-FP1』、スマートフォン、モバイルバッテリー、オーディオレシーバー、そのほか、サードパーティ製アクセサリーを簡単に装着でき、撮影のセットアップがスムーズに行えます。たとえば、USB Power Delivery(PD)対応のモバイルバッテリーを装着しておけば、ホットスワップで電源を切り替えられるので、長時間のスポーツ中継にも重宝します。
山岸様:電子式可変NDフィルターを備えているので、たとえば、雪山でスポーツ映像を撮影する際にも安心感があります。日中の晴天、しかも地面は雪、照り返しと合わせて真夏以上の光量になる場面もありますが、電子式可変NDフィルターを使用することで、カメラの露出設定を変更することなく、瞬時に、なおかつ無段階で明るさを調整することができます。あとはやはり、軽さも大きな魅力です。長野県は山が多く、山岳取材を頻繁に行っているのですが、ひと昔前までは、ショルダーカムコーダーを担いで登っていきました。それはもう、大変でした。しかし今後は、山岳取材も『Z300』で十分カバーできますし、海外ロケの際の機材量も飛躍的に減ると思います。細かい部分ですが、重心が後ろにあって、バランスを取りやすくなったのも評価したいポイントです。1日密着取材など、長時間の撮影でも疲れにくく、撮影が終わった時の疲労感が想像以上に違いました。

海外ロケの現場にて。『Z300』で十分カバーでき機材量も飛躍的に減る
羽場様:スロー撮影などに『Z300』を活用するのもおもしろいと考えています。たとえば、料理撮影で、フライパンの上に分厚い肉を乗せた瞬間に跳ぶ油をスロー撮影して、印象的な映像に仕上げるなどのような、これまでとは違う撮影方法、スタイルを積極的に取り入れていきたいと考えています。もちろん、そうした試みができるのは、ハンディカムコーダーの画質が、従来使用していたショルダーカムコーダーのそれと比べても遜色のないレベルに達してきたからにほかなりません。
山岸様:小型・軽量ながら、従来使用していたショルダーカムコーダーと肩を並べるような性能・機能を備えた『Z300』は、“ミニENGカメラ”と表現してもいいのではないでしょうか。以前は、画質を考えると、ENGカメラ(ショルダーカムコーダー)で撮影をするといった考え方でしたが、そのような、これまでの常識が変わりつつあるのだと思います。

鈴木様:先述した通り、『Z300』の導入は、まもなく訪れるであろう、ファイル転送時代への先行投資だと考えています。また、近年は、ディレクターやアナウンサー、営業などが自ら撮影する機会も増えており、「操作が難しそう」という、心理的ハードルを下げることも重要です。地方局における人材難を見据え、特定の技術者に依存せず、一定品質を安定的に提供できる体制を構築すること。それが“万人カメラ”という考え方であり、“職人カメラ”と“万人カメラ”の2つの顔を持つことこそが、『Z300』の最大の魅力と言えるのではないでしょうか。

※本ページ内の記事・画像は2026年3月に行った取材を基に作成しています