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データプロジェクター VPL-FH300L/VPL-FW300L 開発者インタビュー | 空間に調和する円形デザインに、先進の高画質技術を惜しみなく投入したハイエンドモデル「VPL-FH300L/FW300L」の開発エピソードを開発者メンバーにインタビューしました。

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(左から)企画 沼田さん、設計 小林さん、設計 岡野さん、設計 藤田さん、設計 倉本さん、設計 松山さん、デザイナー 久恒さん

02 | ハイエンドモデルとしての存在を主張する円形デザイン

先進の高画質技術を惜しみなく投入し、高輝度・高精細を実現したデータプロジェクター VPL-FH300L/VPL-FW300L。機能美と設置空間への調和を追求し、円形のデザインを採用しました。展示会や博物館、ショールームなど、空間の美しさを訴求する会場にも適したハイエンドモデルです。
このVPL-FH300L/VPL-FW300Lの開発エピソードを、開発者チームのメンバーにインタビューしました。第2回目のテーマは「円形デザインへのこだわり」です。

違和感を覚えさせない空間調和にこだわる

― 企画の初期段階では、円形デザインではありませんでした。いつごろから円形を想定し、決定するに至ったのでしょうか。

久恒(デザイン担当): デザインの依頼を受けたのは、2年以上前のことになります。できるだけコンパクトにするという観点から、基盤や光学ユニットなどを単純に組み合わせていくと、一番効率のいいデザインは四角形になります。実際、四角形だけでも10案近く考えました。
しかし、VPL-FH300L/VPL-FW300Lは、ソニーにとってデータプロジェクターのハイエンドモデルです。技術的な挑戦はいろいろ重ねていますが、デザインにも他メーカーと徹底的な差異化が必要だと考えました。そうでなければ、ハイエンドモデルをデザインする必要はありません。

― 徹底した差異化の結果として生まれたのが、円形デザインだったのですか?

久恒: VPL-FH300L/VPL-FW300Lは、大ホールや大会議室の天井に吊り下げて使用することが多いモデルですので、デザインを考案している間、天井ばかり見ていました。デザインの大きな方向として環境調和がありましたが、何をもって環境調和とするのかずっと考えていたのです。設置される空間環境は多種多様で、ひとくくりに美術館といっても古い施設から近代的な施設まで幅広い。会議室も同様です。四角い空間もあれば円形会場もあります。
ずっと考え続けた結果、ある空間に入った時に違和感を覚えたら、それは調和していない空間なのだと思い至りました。空間には垂直線と水平線の交差があり、水平線に対して少しでもズレていると人は違和感を覚えます。会議室のライトが少しでもズレていたら、何となく居心地の悪い空間になるように、四角いプロジェクターの角度が水平線に対してズレていたら落ち着きません。プロジェクターを複数台設置するような大会場ならば、そのズレはなおさら顕著です。スクリーンが様々な方向の壁に設置されていれば、プロジェクターは当然あちこちを向いてしまいますよね。そのような会場でも極力ズレを発生させないためには、円形が最適だと考えました。

沼田(企画担当): 天井に縦や横の線が走っているような場所で、プロジェクターがずれて設置されていると違和感があります。円形は無方向性のため、どんなところに設置しても違和感がありません。設置空間への調和ということは、企画コンセプトの1つでもありました。

久恒: さらにもうひとつ、ソニーのハイエンドモデルとして、VPL-FH300L/VPL-FW300Lが持つべきステータス性を考えました。「ソニーの一番上のプロジェクター。ほら、丸いヤツ」で通じるというように、ある意味記号化する必要があると思ったのです。これはデザインの上でも、商品戦略の上でも重要です。その結果、円形デザインに決定しました。しかし、この時点ではまだサイズは800mmほどでした。

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円形デザインの実現とスリム化にこだわる

― サイズのハードルが大きく、その後、円形デザインは白紙になり、四角形でのデザイン再考を求められました。結果としてまた円形デザインに戻りましたが、どのように問題をクリアしたのですか。

倉本(設計・プロジェクトリーダー): 企画コンセプトとして、幅700mm以下は絶対に守らなければならない状況でしたが、円形だとどうしてもデッドスペースが生じてしまい、700mm以下になりませんでした。たとえば静音性は、プロジェクターの大きなファクターです。冷却方法を工夫しないと大きな音が出てしまう。そのノイズをなるべく小さくするためには、冷却のために本体内部にある程度の空間が必要なのです。VPL-FH300L/VPL-FW300Lに求められているスペックを実現し、さらに静音設計を実現するためには、サイズを700mm以下に納めることが非常に難しかった。
ドアをスムーズに通過するために700mm以下という条件があるならば、横幅を700m以下に抑えて縦方向に伸ばすという解決方法がありました。四角形であればそれを実行できます。それで一度は四角形を求めたのですが、デザインコンセプトを受けてもう一度円形デザインで調整することになりました。

松山(設計・メカ担当): 700mm以下にサイズを納めるところから戦いが始まりました。プロジェクターの場合は、光学ブロック、電気ブロック、冷却ブロックというように、それぞれブロックを割り当てて、各担当がその中で設計を行います。そのため、「うちはこれだけ必要」とあげてくる数字はスクエアなものになりがちです。こちらはそれをまとめ、内容をチェックして、「ここの角は空いているよね」とか「ここの真ん中は使用しないよね」とか、それぞれの担当者に対して変更を求めていきました。当然抵抗はありますが、説得する際に「今回は台車に乗せてドアを通過するというコンセプトがあります。だからこの数字はどうしても必要なんだ」と説明することで、「ああそうか」とみんな頑張ってくれるのです。各担当に「ちょっとはみ出るので、ここだけ斜めにカットしてください」などという要求を行い、その小さな積み重ねを繰り返して700mm以下を実現しました。

久恒: デザインコンセプトを理解してもらえたからこそ、ここまでコンパクトに納められたのだと思います。

― VPL-FH300L/VPL-FW300Lは、厚さの3分の1が斜めにカットされた台形となっています。これにはどのような意味があるのでしょうか。

松山:なるべくスリムに見せたいということがありましたので、エンジニアとデザイン双方がアイデアを持ち寄り、検討した結果、3分の1を台形に絞った形状が生まれました。真横から見えれば本来の厚みが分かりますが、天井に設置したものを見上げた場合には台形部分は見えず、3分の2の部分だけが視界に入るので実際よりも薄く見えます。

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カラーリングで象徴性にこだわる

― 本体の周囲が黒、中心部分が白というカラーリングは、とても特徴的ですが、ここにはどのようなこだわりがあったのでしょうか。

久恒: あえて強い象徴性、記号性をつくりました。会場によって白い天井もあれば黒い天井もありますし、ホールのようなイベント会場では天井は遙か高い場所にあります。VPL-FH300L/VPL-FW300Lのステータス性として、外周が黒、内側が白という色を選択しました。
目立ちすぎるという心配もありましたが、デザインとして完全に隠す必要はないのではないかと考えました。あくまで環境は乱さず、「ああ、あれがついているな」とアピールできるギリギリのところを考慮しています。

倉本: プロジェクターには、以前から光るソニーロゴを採用しています。今回は特に、ロゴを立体的に見せたいというデザイン担当の要望があり、さらに強い印象となりました。ロゴ部分を半透明にしたことで、縁に影ができて浮き上がっているように見えます。

久恒: ロゴのサイズも従来の倍にしました。ロゴをムラなく均一に光らせるにはどうすればいいかまで、設計チームに熟考してもらいました。

小林(設計・光学メカ担当): 電源をオンしたときにロゴがふわっと光るなど、実はかなり力を入れて設計しています。調光は3段階とし、使用環境によってオフにすることも可能です。気づいてもらえると嬉しいですね。

― 次回は、「細部設計へのこだわり」をテーマにインタビューします。
 
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