NW-WM1シリーズ

松任谷由実をはじめ、数多くのアーティストを手がけてきた音楽プロデューサー / アレンジャー、松任谷正隆。ソニーの「ZXシリーズ」を愛用しているという彼に、新しいフラッグシップモデルである「WM1シリーズ」を試聴してもらい、「ZXシリーズ」からの進化と今後の音作りの可能性を語ってもらった。
また、世界の第一線で活躍するオーケストラ指揮者の浮ヶ谷孝夫が、NW-WM1Zでオーケストラのサウンドを試聴。生楽器の音がウォークマンでどう響くのか、プロの目線で語る。

  • 松任谷 正隆が語る ZXシリーズからの進化
  • 松任谷 正隆が語る これからの音づくり
  • 浮ヶ谷孝夫が語る WM1Zで聴くオーケストラ
音楽プロデューサー 松任谷 正隆 meets"NW-WM1Z&1A"
音楽プロデューサー 松任谷 正隆 meets"NW-WM1Z&1A" 1951年、東京都生まれ。4歳からクラシックピアノを習い始め、14歳のころにバンド活動をスタートさせる。20歳ごろにプロのスタジオプレイヤーとなり、キャラメル・ママ、ティン・パン・アレイに参加。その後はアレンジャー、プロデューサーとして、松任谷由実をはじめ吉田拓郎、小泉今日子、ゆず、いきものがかりなどの人気アーティストの作品に携わる。また、松任谷由実などのコンサート構成・演出も行う総合プロデューサーとしても活躍。
ZXシリーズからの進化

バスドラムの打面を打つペダルの質感や、ギターのピックの硬さまでもがリアルな音で伝わってくる

──まずは松任谷さんに、普段愛用されているNW-ZX2と、WM1シリーズのNW-WM1Aの音を聴き比べていただきました。スティーリー・ダン『Gaslighting Abbie』(2000年)や、ノラ・ジョーンズ『Don't Know Why』(2002年)など、いくつかの音源を参考にされていましたが、第一印象はいかがだったでしょうか。

ZX2の良さである、低域から高域までのレンジの広さなどは、WM1Aにも受け継がれている感じがしました。WM1Aで驚いたのは、「音の立ち上がりの速さ」ですね。もちろん、ZX2もリアルなんですけど、バスドラムの、打面を打つペダルの質感までがリアルに伝わってくる。音の消え際もクリアで、リバーブの切れ目などもよく聴こえます。

ZX2の良さである、低域から高域までのレンジの広さなどは、新しいNW-WM1Aにも受け継がれている感じがしました。

──では次に、NW-WM1Aの上位モデル、NW-WM1Zで同じ曲をお聴きください。

(目を閉じて試聴中)なるほど……、これはすごい! ビックリしました。WM1Aでも充分いいのだけど、WM1Zはより「リアル感」がある。つまり使っているマイクの種類とか、ギターのピックの硬さとか、そんなところまでわかってしまう感じ。このクリアな音質をテレビの鮮やかさにたとえるなら、ZX2がハイビジョンで、WM1Aが4Kだとしたら、WM1Zは何だろう……8Kみたいな(笑)??

──NW-WM1Zは、無酸素銅をくり抜いて金メッキを施したシャーシを採用しているので、音全体がやわらかくなるんです。1.8kgほどある「のべ棒」から切り出しているので、本体の重さは約450gほどです。

たしかに、ずっしりと重いですが、クオリティーの高い音質が実現するのなら仕方ないのかな。ポータブルプレイヤーとしてこんなにいい音を外に持ち出せるのなら、許容範囲内かな(笑)。

──それと、NW-WM1AもNW-WM1Zも、ヘッドホンジャックが新規格なんです。既存のZX2では、アンバランス接続に対応したφ3.5mmのステレオミニジャックを採用していましたが、WM1シリーズには、バランス接続に対応したφ4.4mmの新規格のジャックを採用しました。バランス接続なので、右の音と左の音の信号をセパレートしたままヘッドホンへ送るようになっています。そのため、ステレオのチャンネル感がしっかり出ているはずです。

なるほど。そうなってくると、音作りの段階ですでにミックスの良し悪しがバレてしまうかもしれませんね。ハイビジョンテレビが出たとき、クリアな映像に制作や出演者側が慌てていたじゃないですか。それと同じことが録音業界でも起こるかもしれない。

ZX2の良さである、低域から高域までのレンジの広さなどは、新しいNW-WM1Aにも受け継がれている感じがしました。

ハイレゾには、「触覚」や「視覚」を刺激される音がある。僕にとって、いい音というのは「触れる音」なんです

──WM1シリーズには、最新のフルデジタルアンプ「S-Master HX」を搭載しています。NW-ZX2以上に音質が磨かれただけでなく、音の情報量、出力も増しているのですが、その影響は感じられましたか?

たしかに。ZX2では9分目くらいの音量で聴いていたけど、WM1Aでは7分目くらいの音量で、聴感上は同じレベルに感じました。普段、ZX2で聴く時は、パワー不足が気になる時もあり、ポータブルヘッドホンアンプPHA-3を使ってパワー感を補っているのですが、WM1Aなら、ヘッドホンアンプがなくても繊細な音をそのままリアルに聴くことができますね。

ヴォーカルの表現力についてはいかがでしょうか?

──「音のリアルさ」という意味で、スタジオのモニタースピーカーで制作中に聴く音と、実際に録音された音との違いは気になりますか?

そこがいつも悩みどころなんですよね。スタジオでは、自分専用のモニタースピーカーの音を基準に、楽器を重ねていくんです。「こういうアイデアだから、こういう音色の楽器をかぶせて」「こういうオケの音(ボーカルのないトラック)だから、こういう歌い方のボーカルを録って」というふうに。

──スタジオで鳴っているスピーカーの音こそが、イメージ通りの音なんですね。

ところが、それをマスタリングの工程で44.1kHzのCDフォーマットに変換することで、どうしても音質がグッと下がってしまう。音楽家としては、せっかく腕によりをかけて作った大皿料理を、タッパーに詰めて冷凍されちゃったような感じでちょっと辛いんですね(笑)。それがハイレゾになって、大皿料理のままお客さんに出せるようになった。

──作り手が音に込めている意志やイメージも、より正確に伝わるようになったわけですね。

たとえば、ドラムの音像って、ドラマーが叩きながら聴いている音と、ドラムの正面から聴こえる音は違うわけじゃないですか。四方から違う音色を出すドラムの場合は音バランスに左右差があるので、どちらのアプローチを選ぶかによって、曲全体の「音空間」をどう聴かせたいかが変わってきます。その空間のなかで鳴っている楽器やボーカルはもちろん、ノイズも音楽の一部なんです。

──椅子がきしむ音や、ブレスの瞬間や、ちょっとした衣擦れなど。

そう。これまでの再生フォーマットだとその音質も半分以下になってしまっていた気がする。もちろん、人間の耳には補正能力があるから、聴こえてくる歌や演奏からイマジネーションをふくらませることはできるのだけど、「音としての再現」はできていなかった。それがハイレゾでは、あたかも「その空間にいるような気分」で、一つひとつの音に近づいて味わい尽くすことができる。しかもWM1Zなら、「音に触れるような感覚」になれるかも。

──「音に触れるような感覚」というのは?

まるで楽器に触れて、音の振動を感じるようでした。とくに強く感じたのはベースですね。「ブンッ」って弦をはじいたときの、指の強さ、指の腹のどこで弾いているのかまで見えるような。手を伸ばせば、その楽器やプレイヤーに手が届くような臨場感が、オーディオの醍醐味だと思う。「聴く」という行為は「聴覚」だけど、「触覚」や「視覚」を刺激されるような音もある。だから、僕にとっての「いい音」というのは「触れる音」なんです。

ZX2の良さである、低域から高域までのレンジの広さなどは、新しいNW-WM1Aにも受け継がれている感じがしました。
これからの音づくり

音の情報量、クオリティーが高いので、これからのレコーディングのやり方が変わるかもしれない

──NW-WM1AとNW-WM1Zは、どんなジャンルの音楽を聴くのに向いていると思いますか?

僕の愛聴盤のアナログレコードは、デイヴ・グルーシンという、ピアニスト / プロデューサーが、シェフィールド・ラボというスタジオで、ダイレクトカッティング・レコーディングしたアルバムなんですね。好きすぎて3枚ほど持っているんですけど(笑)。そういう、編集やマスタリングなどの工程をあまり経ていない音源を聴いてみたいです。あと、僕はSA-CD(スーパーオーディオCD)のサウンドが気に入っていて、すべてのCDを高音質録音されたSA-CDで出し直して欲しいくらい大好きなんですが、なかでもチェロリストのヨー・ヨー・マのアルバムは一時期、毎日聴いていました。ああいうアコースティックなサウンドが、WM1Zは似合うでしょうね。

好きすぎて3枚ほど持っているんですけど(笑)。

──じつはWM1シリーズは、SA-CDに使われていたDSDという録音フォーマットを、バランス接続時にネイティブ再生できるようになったんです。まさに松任谷さんが求めていたSA-CDクオリティーを楽しめます。

(NW-WM1Zで試聴中)これは……困りましたね(笑)。今までに聴いたことのない音。ここまでのクオリティーになってくると、もうレコーディングのやり方まで変わるかもしれないですね。適当な環境でレコーディングしたものは、聴けなくなってくると思う。

──再生機が進化すれば、レコーディングの仕方も進化していくと。

当然そうなりますよね。機材や楽器が変われば音楽も変わる。たとえばMP3の時代は、音の厚みでごまかすというか、みんな足し算で音楽を作っていました。でも、WM1Zの高音質な音を知ってしまうと、引き算で作りたくなります。ピアノ演奏なら、それをどのくらい立体的な音で録れるのか、マイクの立て方、アンビエンスのバランスなどにこだわると、ピアノの音だけで一つの「空間」や「表情」を作れるから、楽器数がだんだん減っていく。そのほうが、かえって多弁な音楽になっていくんじゃないですかね。

──最後に、今回聴き比べたNW-ZX2、NW-WM1A、NW-WM1Zのご感想をお願いします。

とにかく、WM1シリーズの音を聴いてしまうと、ハイレゾ以前の音はタッパーに密封して冷凍された料理のような(笑)、音が凝縮されている印象を持ってしまう。それがZX2で、大皿のまま食べられるようになって、音楽が生きてくるようになった。新フラッグシップのWM1Aは、いままで以上に情報量とパワー感があがったので、まるで素材の良し悪しが引き立った新鮮な料理のよう。そして、その上をいくWM1Zは、全体の味わいはもとより、素材一つひとつの味まで吟味できるほどの完成度。作り手が「こんな音にしたい」とイメージする、まさに「理想の音」を聴いている感じがします。すでにZX2をお持ちの方は、ぜひ同じヘッドホンで、同じ曲で、違いを聴き比べてみてほしいですね。

とにかく、新しいモデルの音を聴いてしまうと、ハイレゾ以前の音はタッパーに密封して冷凍された料理のような(笑)
オーケストラ指揮者 浮ヶ谷 孝夫 meets"NW-WM1Z&1A"
オーケストラ指揮者 浮ヶ谷 孝夫 meets"NW-WM1Z&1A" 1953年埼玉県川口市生まれ。1978年に渡独してベルリン芸術大学指揮科のヘルベルト・アーレンドルフ教授に師事。1986年にはポメラニアン・フィル(ポーランド)のドイツ演奏旅行の指揮者に抜擢され、欧州デビューを果たす。その後は欧州のさまざまな交響楽団の客演を経て、2003年にはブランデンブルク国立管弦楽団フランクフルトの首席客演指揮者に就任。2008年、ブランデンブルク州プラッツエック首相より文化功労賞受賞。現在はドイツに在住。
WM1Zで聴くオーケストラ

コンサートホールの演奏前に漂う「静寂」さえも表現している

──ハイレゾ音源を楽しめるウォークマンの新しいフラッグシップシリーズ最上位機種NW-WM1Zでは、これまで表現が難しかった「アコースティックなニュアンス」もカバーしています。ぜひドミートリイ・ショスタコーヴィチ『交響曲9番』をお聴きください。

(試聴中)おお……(笑)! なるほど、既存の最上機種ZX2と聴き比べると、音の違いがよくわかりました。オーケストラ音源の場合、その場で鳴っている音をどれだけ再現できるかが重要ですが、WM1Zで聴くと、音が空間の中で立ち上がってくる様子がとてもよくわかります。

恐れ入りました。すごいですよ。

──ハイレゾは楽器の音だけでなく、音が鳴る「空間」も、より忠実に再現されている、と。

そう。とくに「静寂」の再現力ですね。指揮者が指揮台に立ち、コンダクトを振る前。お客さんも静まったときの、「何の音もしていない音」がある。その空間の中から、例えばティンパニがポン、ポン、と始まり、そこにまた新たな音が重なっていく……。演奏前の緊張感は静寂があってこそなんです。それがCDでは再現できていなかったけど、WM1Zでは「静寂の音」までも表現されています。

──新しいフラッグシップシリーズでは、浮ヶ谷さんがおっしゃった「静寂」の再現性にもこだわっています。

指揮台に立ったときに、聴こえていないけど感じている部分、それがCDではカットされているから違和感があって耳が疲れるのかもしれないですね。ハイレゾ音源は長時間聴いていても耳が疲れないので驚きました。

──「耳が疲れない」というのは?

レコードからCDへの移行期だった1990年代に、CD録音の指揮を40枚くらい手がけたんですが、録音したCDの音を長時間聴き続けていると、耳がとても疲れてしまっていたんです。レコードよりも音の解像度は上がったはずなのに。それ以来、CDで音楽を聴く機会が圧倒的に減ってしまいました。でも、ハイレゾは2時間でも3時間でも聴いていられそうでした。生理的なものかもしれませんが、「これならまた音楽をたくさん聴きたい!」と思いましたし、レコーディングもやりたくなりましたね。

これならまた音楽をたくさん聴きたい! 手前から新フラッグシップのNW-WM1Z、NW-WM1Aと、既存機種のZX2

──同時に複数の楽器から音が奏でられるクラシック音楽。各楽器の分離感はいかがでしょうか。

空間を感じられるということは、奥行き感の再現性も高いわけです。そうすると、一つひとつの楽器を探しやすいんですよ。先ほど、ショスタコーヴィチの曲を聴いていて、3つのトランペットの音色をきちんと聴き分けることができました。これは、コンサート会場にかなり近いですよ。従来だと音が「だんご」になってしまって、和音としては聴こえても、ここまで聴き分けることはできませんでした。これは大きな違いです。

オーケストラが鳴っている空間に入り込んだような体験ができる

──ところで、指揮台の上から聴くオーケストラの音って、どんな音なのでしょうか。

味のよく染みたシチューみたいな感じ(笑)

じつは、そんなにいい音でもないんですよ(笑)。ホールにもよりますが、生演奏を聴くという意味では、残響と楽器音が混じり合う真ん中あたりの席が一番いい音で聴けることが多いですね。味のよく染みたシチューみたいな感じ(笑)?具の味もしっかりあって、全体でほどよく交じり合っているような。

──NW-WM1Zは、コンサートホールのもっとも良い席で聴いたときの音に近づいていますか?

wie italienische Pizza!

かなり近づいていますよ! いま、ドイツのテレビで流れているピザ屋のCMコピーが、「wie italienische Pizza!=まるでイタリアのピザのよう!」なんですが、それで言うと、いままでのウォークマンは「ホールとは違う音」、ハイレゾウォークマンは「まるでホールの音のよう」、そしてWM1Zは「ほとんどホールの音!」ですね。ただ、ここまでくると、次は録音技術にもっと期待を寄せてしまいますね。ハイレゾには奥行きまで再現できるポテンシャルがせっかくあるのだから、そこをもっと活かした録音ができるようになったら、もう鬼に金棒ですよ。

──新しいフラッグシップシリーズのモデルでは、バランス接続時に、ハイレゾの主流であるPCMよりアナログの表現に原理的に近いDSD音源をネイティヴ再生できるようになりました。今おっしゃった「奥行き」にこだわっていますので、最後にぜひDSD音源も聴いてみてもらえますか?

想像の上をいく音です

セルゲイ・ラフマニノフ『交響曲第2番』ですね。(試聴中)……もう、笑っちゃいますね。なにこれ! 先ほどハイレゾ音源でショスタコーヴィチを聴いたときは、「これ以上のいい音なんて想像できない」と思ったけど、想像の上をいく音です(笑)。ここまでいくと、最高級のスピーカーとアンプで聴く音と遜色ない。それどころか、もっといい音かもしれないですね。先ほど感じた奥行きの問題も、平面と立体の差を感じるくらい完全にクリアされています。まさにオーケストラが鳴っている空間に入り込んだような体験ができます。WM1Zは、クラシックも存分に楽しめるプレーヤーだと思いました。

ウォークマンWM1シリーズ

ウォークマンWM1シリーズ

NW-WM1Z / WM1A Hi-Res

「音」に込められた想いまで、耳元へ

商品詳細 ソニーストア

Signature Series
ハイレゾリューション・オーディオ(ハイレゾ)対応のウォークマン® WM1シリーズ2機種、ステレオヘッドホン『MDR-Z1R』、ヘッドホンアンプ『TA-ZH1ES』。構造も素材も従来の常識にとらわれることなく高音質を追求。アーティストが伝えたい音楽の感動や空気感を再現しています。ヘッドホンによる音楽体験を"聴く"から"感じる"領域へ革新するSignature Series (シグネチャー・シリーズ)。
  • ウォークマンWM1シリーズ NW-WM1Z/NW-WM1A NW-WM1Z商品詳細 NW-WM1A商品詳細 WM1シリーズ 開発者インタビュー
  • ステレオヘッドホン MDR-Z1R MDR-Z1R商品詳細 澤野弘之×MDR-Z1R スペシャルインタビュー MDR-Z1R 開発者インタビュー
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