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商品情報・ストアヘッドホンスペシャルコンテンツ MDR-NC500D 開発者インタビュー

ノイズキャンセリングヘッドホン 「MDR-NC500D」開発者インタビュー

  • 01. 15年前から実現を切望してきたノイズキャンセリング機能のデジタル化
  • 02. アナログを超えたデジタル そのキャンセル性能と音質
  • 03. とことん軽量化にこだわり装着性を追及した「MDR-NC500D」
  • 04. この開発チームだからこそ実現できたノイズキャンセリングヘッドホン「NC500D」

02. アナログを超えたデジタル そのキャンセル性能と音質

角田   アナログと比べてデジタルの利点は、まずキャンセル性能があがったことです。今までのフィードバック式のノイズキャンセリングヘッドホンの基本的な概念は、ハウジングの中にあるマイクロホンで常にプラグから入ってくるソースの音とハウジングの中の音をリアルタイムで比較して、その差分を判別。それがノイズということになり、その差分(位相)を反転してドライバーユニットに加えることでノイズをキャンセルしていました。
ただそのときに、普通に戻すだけではソースの音とキャンセルする音に時間差があり、ある周波数ではハウリングを起こしてしまう。そこでハウリングを起こすような周波数をカットして、キャンセル信号を戻しているんです。

浅田   今までは、周波数のカットをアナログのフィルタで構成していましたが、それだとカットしたくない信号までカットしてしまうというジレンマがあったんです。今回、フィルタをデジタル化することによって、本当にハウリングを起こす周波数だけをカットして、あとはすべてキャンセル信号に使ってやれる。このためにアナログよりもキャンセル性能があがったんです。

角田   また本機で特徴的な機能としてAIノイズキャンセリング機能があります。「NC500D」は3種類の騒音の性質に最適化されたキャンセリングモードを持っています。これは、ハウジングのところにあるボタンを押すと、約3秒間周囲の音を解析。この結果より3つのキャンセリングモードの中から、自動的に最適なモードを選んでくれるというものです。

浅田   もともと、ノイズキャンセリングヘッドホンは、飛行機の中で使われることが多かったので、機内で最適に聴こえるようキャンセル特性が設定されていました。ただ昨今は飛行機以外にも、電車やバス、オフィスで使われる方も増えてきました。それならば使う環境によってキャンセル特性を変え、ノイズごとにキャンセリングフィルタを用意しなければいけない。これはデジタルだからこそ実現できたことなんです。

角田   浅田のチームはいろいろなノイズを解析するため、どこに行くにもレコーダーを持って録音していましたから。それこそ一時は、周りから変な目で見られることもあったようです(笑)。

浅田  常にレコーダーで音を録らないと気がすまないんです(笑)。日々ノイズを解析していくと、このキャンセル特性はバスにはいいけれど、飛行機にはあまり適していないことなどが分かってきました。その結果、大きく分けて3つのモードがあれば、日常のノイズをカットできるのではないかという結論に達しました。
 また、静かな場所でノイズキャンセル機能が効きすぎると、気持ち悪くなるということも分かりました。そういった周囲の状況を判断して制御できる、大げさに言えば“考えるノイズキャンセリングヘッドホン”を作りたかったんです。

板橋   ただ3つの特性を決めるまでが大変で、最初は録音してきたノイズを部屋の中で聴きながら解析をしていたのですが、やはり部屋の中と外とではノイズの聞こえ方が違ってきます。本当は、製品がオープンになるまであまり外には持ち出してはいけないのですが、より良い製品を作るために、皆でバスに乗ったり、飛行機に乗ったりしてフィールドテストを重ねました。それがあったからこそ、ここまでのキャンセル性能を持たせることができたと思っています。

水内   そしてもうひとつ、音質もとてもよくなりました。ヘッドホンの音質については、今までも角田を中心としてやってきました。そこに板橋のDSP技術を上手くミックスして、最終的にはヘッドホンチームとして、こういう音にしたいという明確な意思を持って音を作っていったんです。今までのノイズキャンセリングヘッドホンだと、キャンセルはするけれども音質はイマイチというイメージもあったかもしれません。ですがこの「NC500D」は音質にも徹底的にこだわりました。むしろ音質がよくなるからこそ、デジタル化したといってもいいぐらいです。

角田   音質があがった理由は、「NC500D」に搭載されたデジタルイコライザーの力によるところが大きいです。ノイズキャンセリングヘッドホンは、限られた電力で最高の効果を出すために低域を持ち上げたような、Hi-Fi用のヘッドホンとはかけ離れた特性を持たせるんです。これがアナログのイコライザーだと、複雑な周波数特性や大きなゲインの上げ下げにに対応できないことがある。しかしデジタル化されたことによって、精度がよくなり今までとは比べ物にならないぐらい音質があがっています。これは板橋が苦労して、高音質のデジタルイコライザーを作ってくれたからなんです。

板橋   もちろん僕ひとりだけの力ではなく、チーム全員がいたからこそ完成したものです。開発チームのメンバーは、ヘッドホン以外でもいろいろなオーディオ関連の部署と仕事をして、様々な経験、ノウハウを蓄積しています。それを「NC500D」に凝縮することができた。また、いろいろな人の意見を現場で聞くことができたのも大きかったですね。
僕は入社当時からDSPを担当していたのですが、昔は『デジタルの音はね……』という感じがありました。でもそれは技術的なものが追いついていないだけであって、“デジタルだから音が悪いんじゃない”ということをずっと言いたかった。今回、やっとそれが言えるような製品が完成したと思っています。テレビの場合、アナログ放送とハイビジョン放送を比べて、アナログのほうが綺麗だという人は少ないですよね? 「NC500D」は、デジタルでもいい音で音楽が楽しめると、認めてもらえるきっかけになれればと思っています。

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