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商品情報・ストアヘッドホンスペシャルコンテンツ MDR-NC500D 開発者インタビュー

ノイズキャンセリングヘッドホン 「MDR-NC500D」開発者インタビュー

  • 01. 15年前から実現を切望してきたノイズキャンセリング機能のデジタル化
  • 02. アナログを超えたデジタル そのキャンセル性能と音質
  • 03. とことん軽量化にこだわり装着性を追及した「MDR-NC500D」
  • 04. この開発チームだからこそ実現できたノイズキャンセリングヘッドホン「NC500D」

04. この開発チームだからこそ実現できたノイズキャンセリングヘッドホン「NC500D」

角田   「NC500D」の制作は、大きく3つのブロックに分けられます。ひとつはデジタル信号処理。これは今まで前例がないわけですから、担当者は大変な苦労だったと思います。それを支えているのが電気回路やアナログ、デジタル含めたハードウェアの部分。最後は音響部分。この3つ全部がよくならないと「NC500D」は完成しませんでした。そのためそれぞれの部分に携わった開発者たちにとっては、苦労が大きかったと思います。

鬼頭   実は「NC500D」の開発チームは人数が多く、今ここにいる6名以外に8名。総勢14名のスタッフが関わっています。これは今までのヘッドホン開発チームとは明らかに規模が違います。
今までヘッドホン開発は、それこそ2〜3人の少人数でやってきました。ただそれだとどうしても限界がある。やはり世界初でノイズキャンセリング機能をデジタル化するならば、先ほど角田が言った3つのブロックのプロが必要だった。ただ、単にプロが集まるだけではダメで、それぞれがお互いの分野のことを理解して意見を交換できるようにしなければ意味がないんです。
それで「NC500D」の前に作った「MDR-NC60」の開発から、今のメンバーと情報を共有し始めました。「MDR-NC60」を担当したのは2人なんですが、その後ろには皆が控えていて……。

板橋   後ろから言いたい放題です(笑)。ソニーには浅田のようにいろいろな部署を経験する人もいれば、ひとつの部署でずっと突き詰めて技術を磨いている人もいる。今までは自分の分野だけを突き詰めていけばいいという感じだったんですが、今回は3つの要素を担当する人たちが、それぞれ自分の意見をぶつけ合うことができた。作っていてそれが非常に楽しかったですね。

浅田   皆、お互いの分野に対して理解があったし、ある種リスペクトしている部分もありましたからね。極端な話、ソフトウェアのエンジニアは普段ソフトウェアしか見ないんですけれども、今回の開発チームでは、ソフトウェアのエンジニアが音響のことに関して意見を言ったりします。ただそれはある程度音響のことが分かっていないと言えない。音響やドライバーユニット、デジタル、アナログ含めての電気回路、そのすべてがキャンセル性能に関わることなので、ひとつでも部品や設定を換えてしまったら全部換えることになるかもしれない。そういった点で、お互いの情報シェアリング、そしてスキルアップが非常に重要になるんです。

水内   我々もノイズキャンセリングヘッドホンのすべてを分かっているわけではないので、こうしたらいいんじゃないか、ああしたらいいんじゃないかと、お互いに意見交換や勉強しながら作っていきました。それが「MDR-NC60」の頃に、皆のスキルがグンッとあがった。音響回路の分かるソフトエンジニア、ドライバーのことが分かるデジタルエンジニアなどはあまりいないと思うんです。そういったノウハウがこのチームでできたことは、とても大きいと思います。

角田   アナログからデジタルへのステップアップは、皆一緒にという感じでした。「NC500D」の制作段階でもそこは同じ。例えば、デジタルのチームががんばってノイズキャンセル性能があがったとします。そうすると次に目立ってくるのが電気のノイズなんです。そうすると電気チーム、ここでは水内と鬼頭なんですが、彼らががんばると。ただ電気で消せるノイズと消せないノイズがあるんです。すると次は私と石田が担当しているメカががんばらないといけない。そういう感じで、必ず3つの要素が1周するんです。完成まで何周もしましたね(笑)。

鬼頭   あとはノイズキャンセル性能の測定方法についても、新しい基準を設けました。従来、音圧表示であったものをエネルギー表示にしたんです。

角田   それはエネルギー表示のほうがより人間の耳で聴いた感覚に近いからなんです。例えば同じ音量で鳴っている2つのスピーカーがあるとします。そのうちひとつをオフにしたとき、音圧は50%ではなく、70%ぐらいになるんです。これがエネルギーですと半分になります。どちらが直感的かと言えば、やはりエネルギー表示になる。
それと同じで、今までのキャンセル性能というのは、一番キャンセル量が取れているところ、その数値を競っていたんです。ところが「NC500D」はAIノイズキャンセリング機能があり、ノイズとキャンセルモードの組み合わせによってキャンセル性能が変わってきます。そのため従来の方法では表現できないんです。

鬼頭   そのため今までのような一点の周波数ではなく、低い周波数から高い周波数まで全体を包括した評価。そしてノイズにあわせた評価でないと、正しい性能評価ができないだろうと。そこから、可聴帯域周波数全部におけるキャンセル性能を1点ではなく、低域から高域までをひっくるめてエネルギーで表示することにしました。

浅田   AIノイズキャンセリング機能や3つのモードというのは、この測定方法がなければ完成しなかったものであり、この測定方法があったから「NC500D」ができた。お互いがないと成立しないものなんです。

角田   何か新しいものを作ろうとしたとき、同時に新しい性能を測定する方法も作っていかないとダメなんです。0.1mmのものを作るのに、1mmしか刻みのないモノサシでは作れない。我々は、今後ノイズキャンセリングヘッドホンのデジタル化はどんどん進み、またAIノイズキャンセリング機能なども、徐々に一般的になってくると思っています。そのとき、何より重要なのが、聴いた感じとマッチする測定方法だと思うんです。
そしてこの設計方法は毎日モノを作り続ける設計ではカバーできなかったこと。やはり我々の開発部隊、おそらくソニーの開発部隊でないと、ここまできちっとした測定方法というのは作れなかったのではないかと思います。

板橋   今回はソニーの“AUDIO UNITED”というのが実現できたと思っています。店頭でキャンセル性能だけでも体験してもらいたいです。

浅田   音質も今までと違うというのがすぐにわかると思います。僕自身も初めて音を聴いたとき、『ノイズキャンセリングヘッドホンで、こんな音があるのか!』と思うぐらい感動しました。その感動を皆さんにも味わってもらいたいです。

角田   「NC500D」は本当にソニーのオーディオ技術の集大成と言ってもいい。性能の面でも先進性の面でも、明らかに今までのノイズキャンセリングヘッドホンとは違います。胸を張ってユーザーの皆さんに使っていただける製品に仕上がっていると思います。ぜひ「NC500D」でいい音楽、いい音を聴いて感動してもらいたいです。

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