31型4K液晶マスターモニター『BVM-HX3110』を使用してカラーグレーディングを行った“4K HDR 4000cd/㎡の映像制作”について、撮影にご協力いただいた ポルシェジャパン株式会社 黒岩 真治 様、映像制作をご担当された 株式会社クープ 今塚 誠 様に、それぞれの視点からお話を伺いました。
マスターモニター:BVM-HX3110制作事例インタビュー ~ 4000nitsカラーグレーディング ~【ソニー公式】
写真左:
ポルシェジャパン株式会社
広報部
部長 黒岩 真治 様
企業の広報として30年のキャリアの中で、ドイツ、日本、イタリア、アメリカの個性の異なる10の自動車ブランドの責任者としてご活躍されてきました。現在はポルシェジャパン広報部長として積極的に社会貢献にも力を入れており、ポルシェジャパン株式会社は創立30周年を迎えた2025年に自動車インポーターとして初めて紺綬褒章を授与されました。
写真右:
株式会社クープ
事業開発本部 テクニカル推進室
テクニカルスーパーバイザー 今塚 誠 様
カラーリストとして35年に渡り映画・ドラマ・CM・アニメーションなど、新作・旧作問わずさまざまな映像作品に携わっていらっしゃいました。現在は株式会社クープでHDRなど最先端技術を専門とするスーパーバイザーとして次世代映像表現を追求されています。
※本記事で紹介する『BVM-HX3110』を使った4K HDR(4000cd/㎡)の映像制作は、2024年10月以降に段階的に実施したもので、映像はWebでは公開していません。最新の映像は展示会などのリアルな会場でご覧いただけます。また、本記事は2025年10月撮影時のインタビューを基に再構成しています。
ポルシェジャパン株式会社 黒岩様
撮影をさせていただいたポルシェ・エクスペリエンスセンター東京とはどういった施設ですか?
2021年10月1日に千葉県の木更津市に開設した、世界で9番目のポルシェのブランド体験施設です。新車を展示するモーターショーやショールームとは異なり、ヘリテージモデルや実際に試乗プログラムに使用している車両を置いています。

初めて映像をご覧になった時の印象はいかがでしたか?
広報の仕事を30年続けてきた中でも、特に自動車産業においては、カタログや、広告・雑誌記事などの媒体に掲載される写真の美しさは芸術の領域に達しており、映像の美しさも高いレベルにあると思っていたのですが、今回はさらにその先の映像表現の進化があることに感動しました。
実際のポルシェを肉眼で見る、そして実際にステアリングを握りアクセルペダルとブレーキを踏んで運転するという「体験」に取って代わることはないと思いますが、それでも、進化した撮影機材と進化したモニターで見るからこそ確認できる美しさが再現されていました。直線や曲線の表現がこれまで認識していた以上に美しく驚きを感じました。

ボディのデザインや色の再現性はいかがでしたか?
日本ではポルシェの赤は特別な色で連想されています。というのも、山口百恵さんのヒット曲プレイバックPart2では、有名な歌の出だしで「真紅(まっか)なポルシェ」と歌われたからです。某局大晦日の歌番組で「真っ赤なクルマ」と歌うように言われていた山口百恵さんが、本番では芸術的必要性を貫いて「真紅なポルシェ」と歌ったという逸話もあります。今回撮影したカーマインレッドという赤は、この真紅なポルシェが綺麗に美しく表現されています。
またグリーンのメタリックカラーのボディは、接写すると塗装に含まれている不規則な粒子が綺麗に映っていて、あえて不揃いの美しさもモニターを通して感じることができます。
今回は体験用の車両のため、肉眼では意識しない細かい磨き傷などもしっかりと映ってしまいましたが、それも映像レベルの高さによるものかと思います。こだわりの撮影機材、それを再生するディスプレイの両方を開発するソニーさんだからできる映像表現だと思います。
特に印象的なシーンはありましたか?
車に乗る際に、最も多くの時間、物理的な接点となるのがステアリングです。新しい広報車はすべて自分が慣らし運転をしているのですが、その時の手のひらで感じられるステアリングのレザーの触感が、まるで触っているかのようなリアルな感覚が、映像を見ながらよみがえってくるから不思議です。

それから、ポルシェの最新モデルの最上位グレードであるターボには、クレスト(ボンネットのエンブレム)にターボ専用色「ターボナイト」が使われています。このメタリックグレーの色も映像で見ると、これまでのポルシェクレストにはないメタリック感が立体的に浮き出て見えます。
もう一つ、タイカンのヘッドライトも極めて綺麗に映っていました。ランプの透明度も高く、肉眼でも見ることができない高解像度で、ランプの中の「HDマトリクスLEDヘッドライト」の文字もクリアに見え、この点も感動的でした。

走行シーンの印象はいかがでしたか?
やはり、自動車は走行している状態で見られる工業製品であり、その様子をポルシェ・エクスペリエンスセンター東京で撮影していただいてわかったことも多くあります。 ポルシェのリアデザインの特徴として、左右のテールランプをつなぐ繋ぎ目の無い横一直線のLEDライトストリップがあるのですが、走っている映像でもまっすぐな日本刀のように綺麗にはっきり表現されています。
今後の映像制作に期待されることは?
ポルシェというスポーツカーにとどまらず、自動車という工業製品が持つ美しさを、この映像表現の技術を通じて、多くの人に見ていただきたいと思います。自動車の魅力を伝える素晴らしい自動車専用のTV番組がいくつか制作されているので、広報の視点ではそういった番組でこの映像表現技術が採用され、最高の映像を再生する場があればいいなと思います。
株式会社クープ 今塚様
今回の映像制作の撮影から編集の流れについて教えてください。
今回の撮影では、ソニーのVENICE 2を使用しました。16ストップのラチチュードとカラーグレーティングの自由度が高いRAWデータにより豊かな階調表現が可能になりました。ポストプロダクション作業では、BVM-HX3110をリファレンスとして被写体となるポルシェの機能的な美しさを重視して仕上げました。クライアントモニターにはBRAVIA A95Lを使用しマスターモニターと比較をした際に、家庭での見え方として正確に表示することができました。撮影から仕上げまで一貫したカラーマネジメントで最高の映像表現を追求できたと思います。

実際にBVM-HX3110でグレーディングされていかがでしたか?
HDR映像の表現において最も重要なのは最高輝度ではなく、主観的に見た印象で被写体の輝度を決めることだと改めて感じました。
例えば、被写体であるポルシェを「どう見せたいのか、どう感じてほしいのか」という目的意識を持つことが不可欠です。ポルシェの機能的な美しさを、高いリアリティをもって表現するためには、BVM-HX3110の輝度4000nitsをフルに使うことを目的にするのではなく「見せたいモノをよりリアルに見せる」ことが目的であり、そのために被写体の表現力としてBVM-HX310の1000nitsでは足りないことがわかりました。今回あえて1000nitsの制限を設けず4000nitsという大きな器で全体のバランスを確認できたことで、期待以上の仕上がりになり自分自身でも驚いています。

ポルシェという素材をグレーディングするにあたってこだわったポイントを教えてください。
今回の映像表現は、クリエイティブで視覚的な映像表現ではなく、被写体となるポルシェの機能美を再現することでした。単に明るくするのではなく、ボンネットの反射、影の中のディテール、ボディの金属部分や塗装の真の光沢と質感といった、ひとつひとつの要素を正確に表現することにこだわりました。自然光と照明下の違いは、光の当たり方や質感の違いをリアルに感じることができます。鮮やかで目を惹くボディーカラーと周辺環境と調和する落ち着いたシェードカラー、それぞれのリアルな色再現を感じてほしいです。それから上質な革のステアリングやラグジュアリーなインストルメントパネルといった細部の質感と高級感も感じて欲しいです。
クープ様でBVM-HX3110を編集室へご採用頂く際に、他に評価された点はありますか?
BVM-HX3110は、BVM-HX310に比べて視野角が広がり、上下左右から見ても色やコントラストの変化が少なく、複数人でプレビューする際に安定した画質を共有できました。
また最大輝度の切り替え機能は、4000nitsから400nitsまで複数の最大輝度設定*に対応していますので、目的や環境が異なる多様な制作に対応したカラーグレーディングが可能です。今回の映像制作でも、この切り替え機能が最終的なクオリティーに大きく貢献しました。
*Ver. 2.0より最大輝度設定は4000/3000/2000/1000/700/600/500/400に対応

今後のソニーのマスターモニターに期待することはありますか?
強いて言えば、最先端の映像技術を追求している私にとっては、さらなる最高輝度の向上と映像の表現力を引き上げるHFR(ハイフレームレート)に期待しています。次はどのような仕様のものが登場するのか楽しみです。