商品情報・ストア 月刊大人のソニー '14 Vol.18

今、ハイレゾで近くに感じる、松田聖子。

大人なら誰しも、胸の奥で響く大切な音があるはずです。あの頃の感動はそのままに、あの頃は聴こえなかったところまで。今、ハイレゾの技術だから味わえる新たな音の体験をソニーから。

アイドルからアーティストへ。時代を象徴してきた松田聖子の歌声。

松田聖子『North Wind』

松田聖子『North Wind』

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2014年12月31日、国民の視線は、NHK紅白歌合戦で自身初の大トリを務めた松田聖子に集まった。一度でも聴けば、"松田聖子の声"と強く印象づけられるその絶対的な魅力。そして、ビッグアーティストとなった現在の歌声だけでなく、あどけなさの残る少女であったアイドル時代の歌声も今再び、多くの人々を魅了していることをご存じだろうか。ソニーミュージックから発表したオリジナル・アルバム32作、全309曲が2014年12月より毎月5タイトルずつ、原音に忠実な高品質ハイレゾで順次配信されているのだ。
鮮烈なデビューを飾った1980年以降、アナログ盤からカセットテープ、CDなど、市販される音楽の記録方法は移り変わり、それぞれの時代ごとに、それぞれの持つ良さで、松田聖子の音楽は長く愛されてきた。スタジオで録音した音に最も近いという現代のハイレゾでは、どんな松田聖子に会えるだろうか。
話を聞いたのは、今回のすべてのハイレゾ音源のリマスタリングを担当した、ソニー・ミュージックスタジオ チーフエンジニアの鈴木浩二氏。実は、アルバム『SUPREME』(1986年)の録音にも参加していた、音のスペシャリストだ。さらに、今回の企画を統括している、ソニー・ミュージックダイレクト ストラテジックACグループの寺井智子氏。同じくソニー・ミュージックダイレクトの鈴木則孝チーフプロデューサーにも同席していただき、近日発売予定のハイレゾ対応ウォークマン®「NW-ZX2」とハイレゾ対応ヘッドホン「MDR-1A」で聴きながら、松田聖子のハイレゾ音源の魅力について語り合っていただいた。

あの頃、あの瞬間の、聖子さんに触れられる。

松田聖子『Silhouette〜シルエット』
松田聖子
『Silhouette〜シルエット』
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チーフエンジニアの鈴木浩二氏は、まず、松田聖子というアーティストの持つ歴史の重みに大きなプレッシャーを感じたそうだ。
「ご本人もさることながら、詩や曲作りに携わってきたのが高名な方ばかりです。もともと素晴らしい音楽を、ハイレゾでどう忠実に出せるだろうか、と考えました。実際にリマスタリングしてみて、聖子さんの声の魅力である、"高音の伸び"や"つや"といったところ...ここが、ハイレゾで非常によく聴こえるなと。ハイレゾが得意とする部分が、聖子さんの個性とぴったり合っていて、手応えがありました。曲数が多いので、まだリマスタリングの作業は途中ですが、何より、その時代ならではの聖子さんの声や音楽が生まれた空気、それらを封じ込めたマスター音源に触れられるのがエンジニア冥利(みょうり)につきますね」。(鈴木浩二氏)

「エクボの...」サビの出だし4文字で、心を揺さぶる声の張り。

松田聖子『SQUALL』

松田聖子『SQUALL』

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では具体的な曲を例に、どんな発見があるのか。歴史をひもとく意味でも、まずアルバム『SQUALL』よりデビュー曲の『裸足の季節』(1980年)から。
「私は「NW-ZX1」を愛用しているのですが、「NW-ZX2」だと、音の重厚感がいっそう増していますね。この曲をハイレゾで届ける上で意識したのは、聖子さんが「エクボの秘密あげたいわ」と、サビで声を張る部分。このあたりはまさに聖子さんの歌、聖子節、とでも言うような。その声の張った感じがとても生っぽいのが、ハイレゾの特徴ですね。生っぽいというのは、もともとマスターがそうであるからです。1980年の曲ですが、この時代の録音の手法として、今のように後で音をあれこれ調整する前提はなく、スタジオで歌ったままの魅力を直球で伝えるスタイルがあったと思います。そのリアルに感情を揺さぶる音作りをしている様子が『裸足の季節』のハイレゾ音源では、生っぽさとして伝わってくる気がします」。(鈴木浩二氏)
「私が聖子さんのアルバムの録音に初めて参加させていただいたのは、この曲から少し後のアルバム『SUPREME』(1986年)の頃です。前述した、生っぽさ、リアルに感情を揺さぶるような音作りという意味では同じで、当時は今のようにアーティストとエンジニアが和気あいあいと作っていく感じではなかったというのも、ハイレゾで生っぽく再現されている背景にあるかもしれません。現場での聖子さんのオーラが、とにかく圧倒的でした。80年代当時、声や音を後で調整する時代ではありませんし、聖子さんのオーラもあって、その現場の緊張感たるや。聖子さんは録音にいらっしゃった時点で、作品がご自身の中にきちっと入っている。現場で「歌えない」とかそういったことを言うのが歌手に許されない時代だったのかもしれませんね。アルバム『SUPREME』では、プロデュースされた作詞家の松本隆先生も立ち合われていて、確か、収録曲の『瑠璃色の地球』の録音のとき、当然、聖子さんの歌は完ぺきで、完ぺきの上にさらにご自身が「こう歌おう」「こう伝えよう」と強い思いを込める、その熱意のようなものまでがスタジオ全体に広がりました。そういうピンと張りつめた中で、優秀な方々が音楽に向き合っていた当時の空気感を、ファンの皆様にもハイレゾで感じ取っていただけると思います」。(鈴木浩二氏)

ハイレゾで引き立つ、「さしすせそ」の魅力。

松田聖子『Pineapple』

松田聖子『Pineapple』

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次の曲は、アルバム『Pineapple』より1982年にヒットチャートを総なめにした『赤いスイートピー』。
呉田軽穂(松任谷由実)が松田聖子のために初めて作曲している。「ハイレゾだと、聖子さんの歌う「さしすせそ」の発声が、より心地よく感じられますね。「スイートピー」の「ス」とか、他の曲でも、聖子さんの歌には、このサ行が魅力的なものが多いような気がします。ハイレゾは音の解像度が高いので、子音の摩擦音が、ぼやけることなくクリアに聴こえるんでしょうね」。(鈴木則孝氏)「あと、ハスキー気味の聖子さんのヴォーカルが、ハイレゾで聴くと、とても細かな部分まで聴き取れて、声の余韻が際立ちますよね」。(寺井智子氏)「そう言われると、確かに、ハイレゾだとハスキーな歌声が楽しめますよね」。(鈴木則孝氏)「他にサビの部分以外ですと、ハイレゾで聴いて、改めて、聖子さんってすごいなと思ったのは、声を張らずに歌いだす冒頭の部分です。そこからサビになり、声を張るんですが、その、張らない部分と張る部分のコントラスト、盛り上がっていく過程で違和感を生じさせない、絶妙な表現の変化が、「NW-ZX2」と「MDR-1A」の組み合わせで聴くとよく分かります(「MDR-1A」が幅広い音域を再生する技術についてはこち)。このAメロ、Bメロの声を張らない部分って、リズムがないからといって、淡々と歌ったら感動しないと思うんです。それを、聖子さんは独特な呼吸感で、優しく、少し甘えた感じでかわいらしく、声を張らずに歌う。その呼吸感がハイレゾで心地いいんです。ちょっと妖艶(ようえん)で、若いけど大人っぽい。声を張らなくても表現できる、表現力の豊かさに脱帽します」。(鈴木浩二氏)

色とりどりの音に溶け込みながらも、聖子さんの色が出る。

松田聖子『風立ちぬ』

松田聖子『風立ちぬ』

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続いては、アルバム『風立ちぬ』より作詞・松本隆、作曲・大瀧詠一という巨匠が手掛けた『風立ちぬ』(1981年)。 大瀧詠一作曲による唯一のシングル曲で、いわゆる"大瀧サウンド"が有名な作品だ。「"大瀧サウンド"というと、リバーブが多くて、豪華で厚みのあるバック、伴奏で知られています。ハイレゾだと、音の解像度が高いので、ストリングスとか、グロッケン、ハープ、キーボードなど多種多様な楽器が、さまざまな合いの手として用いられているのが聴こえます。また、"大瀧サウンド"である『風立ちぬ』では、同じパートを弾くギターが4人いたり、キーボードが3人、パーカッションが4人など、何人もでメロディを重ねるので、音に一体感、厚みが出ます。その厚い音が、「NW-ZX2」だと、より厚く聴こえて、またその音の重ね方の密度とか、迫力が倍増しますね(「NW-ZX2」が量感を再現する技術についてはこち)。そして聖子さんの力量とは、その厚みのある伴奏、細かな合いの手に対して、きちんと歌で入っていけて、違和感を出さず、マッチしていることですね。そこに入っていくだけでも並大抵ではないのに、伴奏と歌が対等になっているので、詩で表現された色が出て、景色が浮かんでくる。松本先生の詩ですが、「さよなら」を3回連続で言わせるとか、他の歌手なら「どうなるのかなぁ?」と思うようなことを、聖子さんは3回、すべて違う表現で歌い上げています。その表現の違いも、ハイレゾではよく分かりますね」。(鈴木浩二氏)

聖子さんの歌の歴史は、日本の音楽の歴史そのものだ。

松田聖子『Canary』

松田聖子『Canary』

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さらに続いて、1月28日に配信されたばかりの『Canary』から『蒼いフォトグラフ』(1983年)。こちらも、作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂(松任谷由実)という豪華な作品だ。「この曲は、『赤いスイートピー』のときにも話に出ましたが、聖子さんの声を張らないときの醍醐味(だいごみ)が、ハイレゾで深く伝わると思います。声を張らない聖子さんの歌は、とても大人っぽくて、余裕があって、特にサビの部分が、サビだけど、落ち着いた感じで歌う。松任谷さんらしい、ブラスを効かせた音も、大人の聖子さんを引き立てますね。このように、聖子さんの音楽には日本を代表するアーティストの方々が参加されていて、それらを時系列で聴くだけでも、聖子さんのヒストリーが堪能できます。今回のリマスタリングに際し、当時のマスターテープを聴きながら、その時代の録音の技術やマイクの種類ほか、その時代の流行、その時代の空気を失わない、ありのままの音を再現しています。全309曲を時代ごとに聴いていただくと、聖子さんの変化と同時に、音作りの現場の変化も楽しんでいただけると思います」。(鈴木浩二氏)

どんな曲調でも粗のない完ぺきさを、ハイレゾで確かめる。

松田聖子『The 9th Wave』

松田聖子『The 9th Wave』
※2015年2月配信予定

最後に、まだ配信前のタイトルから、2015年2月配信予定の『The 9th Wave』より作詞・作曲を尾崎亜美が手掛けた『天使のウィンク』(1985年)を先行して聴かせていただいた。(2015年6月まで毎月配信予定。ラインナップの詳細はこち
「この曲も、ハイレゾで聴くと"キャンディボイス"と言われる聖子さんのヴォーカルが、また違った味わいで楽しめる作品ですよね」。(寺井智子氏)「そうですよね。この曲は、出だしはリズムがない感じで始まります。リズムがないのに、聖子さんが歌うと、単調でなく、妖艶(ようえん)になります。その表現力が改めて分かります。そして後からバーンとリズムが出てくるわけですが、リズミカルな曲をハイレゾで聴くと、バックの演奏が際立ちすぎて、歌が浮いてしまうように聴こえる場合もあります。しかし、聖子さんの場合はそれがありません。大きなリズムのパートでも、リズムにつられてガチガチに硬くならず、歌で優しく伸ばして、伴奏にマッチさせます」。(鈴木浩二氏)
「確かに、「約束を〜」の出だしと、「音符の〜」ところの歌い方で表現が明らかに変わるのが、ハイレゾだとよく分かりますね。これだけ表現が変わっているのに、とっぴな感じというか、違和感がなく、歌が浮いて聴こえないですね」。(鈴木則孝氏)「先ほどの『風立ちぬ』でも話しましたが、浮いて聴こえないというのが、聖子さんの、バックに歌をマッチさせる表現力の豊かさですよね。リズムの取り方が絶妙で、伴奏がどうであろうが、常に、ちょうどいいところにいる。サビのビートの効いた部分でも、急かすリズムに引っ張られず、わざとちょっと間をあけて歌うとか、リズミカルなパートの最後の歌の収め方とか、フレーズの取り方も絶妙です。ハイレゾのように音の解像度が高いと、粗が見えそうなのに、聖子さんにはそれがない、粗がないことを実感できる。それもハイレゾで聴いてこそですよね」。(鈴木浩二氏)
松田聖子と最高クラスの制作陣が作り上げた約30年にわたる音楽。伝説のアイドルの歌声にときめくのも、アーティストとしての実力に感嘆するのも、音楽全体の完成度に陶酔するのも、懐かしい時代を思いながら没入するのも、あなた次第。ハイレゾによって、あなたが会いたい松田聖子に、きっと会える。ハイレゾによって広がる思いを、来月も。

あの歌声をハイレゾで近くに感じるなら...
  • NW-ZX2 商品詳細はこちらから
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2014年4月〜2015年3月にご紹介した商品です。ご紹介商品がすでに生産完了の場合もございます。
商品について詳しくは、ソニー商品サイトをご確認ください。

鈴木浩二

1985年にソニー・ミュージックスタジオのレコーディングエンジニアとして入社。 数多くのレコーディングを手掛け、特にアコースティック楽器を中心とした作品で高い評価を得ている。95年からマスタリングも開始し、現在はチーフエンジニアとし て、ポップス、ジャズ、クラシックの新譜からリマスタリングまで、幅広いジャンルの仕事をしている。日本プロ音楽録音賞では最優秀賞・優秀賞を複数回受賞。

鈴木則孝

(株)ソニー・ミュージックダイレクト 制作2部/ACルーム チーフ・プロデューサー。ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル プロデューサー。1989年入社。インストゥルメンタル作品を多く企画、プロデュース。

寺井智子

(株)ソニー・ミュージックダイレクト ストラテジックACグループ 松田聖子配信及びハイレゾ企画担当

文/日経エンタテインメント!編集部

ハイレゾ音源とは?

一般的にオーディオ用のデジタル信号は、原音となるアナログ信号を一定時間ごとに標本化(サンプリング)し、それを量子化することで作られます。サンプリング周波数とは、1秒間に何回標本化作業を行うのかを表すもので、単位は「Hz」です。サンプリング周波数が高いほど得られる情報が多くなり精度は上がります。

サンプリングされた時点でのアナログ信号レベルをデジタルデータで表現することを量子化と言いますが、どれくらいの精度で読み取るのかをビット数で表しており、単位は「bit」です。bit数が高いほど、原音からより忠実に変換することが可能となります。

サンプリング周波数とbit数それぞれの数値が大きくなるほど、原音の再現性に優れ、微細な音の変化や音の余韻までも表現することが可能となります。ハイレゾ音源では、CDの「44.1kHz/16bit」規格を超えるものを指し、「96kHz/24bit」と「192kHz/24bit」が主流になっています。

従来から配信している圧縮音源では伝えきれなかったレコーディング現場の空気感やライブの臨場感を、ビット数の高さにより、楽器や声の生々しさや艶(つや)などのディテールに触れてより感動的に体感できます。

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