MANUFACTURE 開発者インタビュー

こだわりやトレンド、アーティストの想いを1BOXに凝縮したワイヤレススピーカーこだわりやトレンド、アーティストの想いを1BOXに凝縮したワイヤレススピーカー

空間に溶けこむ秘密は、
積極的なミニマルデザイン

栗原 大輔[デザイン]

──全モデルが「Definitive Outline」という印象的なデザインを採用しています。その背景や根底に流れるテーマとは?

栗原 大輔[デザイン]

さきほどのコンセプトの話であったように「デザインの嗜好」の調査結果を踏まえながら、東京だけでなく海外のデザインセンターからも集まった総勢10数名のデザイナーがスケッチを描きつつ議論を進めていきました。その結果、「キャラクターやメカメカしさを強調するようなものではなく、空間に調和するようなミニマルなデザイン」という結論に行き着いたのです。
ただし、インテリアの完全な黒子に徹するような消極的なデザインにするのではなく、その中に何かしら「ソニーらしいスパイス」を加えたいなと考えまして・・・・・・

──それが「Definitive Outline」というわけですね。

栗原 大輔[デザイン]

はい、筐体の6面を取り囲む12辺のフレームを「Definitive Outline」(ディフィニティブアウトライン)と呼んで、奇をてらった造形や華飾に頼ることなく、「空間をフレームで切り取る」かのような洗練された存在感を醸し出すようにデザインしました。

──3つの素材を組み合わせたX9の外観には、どのようなこだわりが込められているのですか?

栗原 大輔[デザイン]

インテリアの中にはガラス素材のものがたくさんあるので、空間調和を謳った以上、それらにハーモナイズする本物のガラスパネルは我々デザイナーの中では譲れなかったポイントです。特に1BOX最高峰のX9にとっては、高品質を演出できるというプラスアルファもあるので。
それと、使用頻度の低い機能ボタンはガラスの中に隠しこんで、なるべく機械っぽさをなくす工夫をしています。側面のアルミに関しても、アルミをあしらったファニチャーとスムーズに調和することを意図して採用しました。

──X9のステンレス製フロントグリルは、ぴたっと張り付いて一体化していますね。

岡 祐介[商品企画]

ここは最後の最後まで、メカ設計がかなり苦労したところです。

栗原 大輔[デザイン]

開発当初は、筐体前面に対してぴったり真っ平らってわけにはなかなかいかなくて・・・・・・。他の一般的なスピーカーと同じように出っ張っちゃってしまい、それがデザイン的には興ざめというか、許せなかったんです。
そういった意味で、剛性を保ちながら薄くできるステンレスを採用したのはすごく大きかったと思います。本当によく仕上げていただいたなと感謝していますし、間違いなくX9の開発における最大の山場でしたね。

斉藤 健彦[メカ設計リーダー]

──音響面からのリクエストもあったのですか?

関 英木[音響設計リーダー]

はい、音響設計からも厳しい要求をしました。まず、音抜けを良くするためにグリルの開口率を上げるという課題がひとつありますし、グリル自体の厚みが厚い(ひとつひとつの穴が深い)と筒状の音になって指向性を持ってしまうので音が広がらないという問題も生じます。その点、強度が高く0.4ミリまで薄くできるステンレス素材は、音響設計の観点でもうってつけというわけです。

──しかも着脱式ですから、なおさら大変だったのでは?

斉藤 健彦[メカ設計リーダー]

そうですね。ステンレスの板を張り付けるだけなら問題ないんですが、そこに着脱の要素を入れるとなると話は違ってきます。もちろんステンレスは強度が高い素材ですが、実際はそれだけでは足りないので、「補強」と「着脱用のマグネットを忍ばせる」という2つの理由で、グリル裏面にモールド製のフレームを設けています。
この薄いステンレスにフレームを取り付ける特殊加工がいちばん難しくて・・・・・・もともと存在していた技術ではあったのですが、量産化にこぎつけるのに非常に苦労しましたね。

関 英木[音響設計リーダー]

マグネット着脱方式はコスト面でも厳しいのですが、「あえてマグネットでやろうよ」と最初からデザイナーと示し合わせて、後でメカ設計に「なんとかしてください」って無理を言いました(笑)。というのも、X9はグリルを外して聴くという楽しみ方も当然前提にしているモデルなので、一般的なスピーカーグリルのようにゴム製のキャッチャーみたいなものを付けてデザインを破壊してしまうのを避けたかったのです。

斉藤 健彦[メカ設計リーダー]

デザイン面のこだわりに関してさらに補足すると、実はフレームの部分にはグリルの穴が開いていないんです。意識せずに見ると全部穴が開いてあるように見えるのですが、エッチングという技術を使って凹みを作っているだけなんです。フレームを隠すための細かい配慮ですね。

大浦 義和[X7音響設計]

栗原 大輔[デザイン]

もっと言うと、グリルのフレーム部分はできるだけ細くするようにお願いしました。筐体前面のフレームと互いに主張しあって、アウトラインが2本に見えるのは避けたかったので。

関 英木[音響設計リーダー]

当初は「なんとか固定式のグリルで手を打ってくれないか」ということを、メンバーみんなから言われていました。でもX9はハイレゾ対応の上級モデルですから、ハイエンドオーディオの世界では当たり前のことであるスピーカーユニットむき出しで、グリルを付けない状態で音楽を楽しめるという着脱コンセプトは譲れないところでした。
もちろん、皆が土壇場までこだわったグリルですから、付けた状態でもきちんとハイレゾの高音質を楽しめる仕上がりになっていることは私が保証します。

──X7とX5に採用したマテリアルのポイントは?

斉藤 健彦[メカ設計リーダー]

X7とX5の上面にはアクリルを使っています。アクリルは軽いうえに他の素材に比べて表面が硬く、耐傷性に優れているので、NFCで毎回ワンタッチ接続する際のキズつきにくさという点も採用の理由ですね。

──スピーカーグリルの色味も工夫しているそうですね。

関 英木[音響設計リーダー]

音響設計としては最低限守ってほしい開口率があるのですが、あまり穴を大きくしちゃうと中のユニットが透けて見えてしまうという問題もあり、その折り合いが難しいポイントでした。

栗原 大輔[デザイン]

ブラックモデルのスピーカーグリルは、実は純粋な深い黒ではありません。ほんのわずかですがトーンを上げて明るくしているんですね。それによって後ろの真っ黒なバッフル板との間に若干のコントラストが生まれ、それが中のユニットを隠しこむ働きをしています。

──X3はカジュアルなラバー素材ですね。

岡 祐介[商品企画]

X3はひじょうにコンパクトなので、いろいろな場所にどんどん持って行ってほしいモデルです。見た目のカジュアル感もそうですが、当然手に持つ機会が増えますので、心地よい手触り感のラバーはぴったりの素材だと思います。