

7スピーカー×8アンプ構造を実現。
1BOXの可能性を広げ、ハイレゾを日常の楽しみに

──X9に7基のスピーカーユニットを積んだ狙いとは?
関 英木[音響設計リーダー]
昨年モデルのBTX500などの経験から、小型の筐体で低域から高域まで広いレンジを再生するには、2chのフルレンジや普通の2ウェイでは難しいなというのが見えてきていました。そこで、BTX500で実績のある低域のサブウーファーと中域の磁性流体スピーカー(×2)に加えて、今回はさらにハイレゾの高域を受け持つ前面トゥイーター(×2)を搭載したわけです。
さらに、最初に商品企画が話したように「カジュアルリスニング」というコンセプトに基づいたハイレゾオーディオを実現したかったので、サービスエリアを広げる目的で上面にもトゥイーターを2つ。結果、7基積むことになりました。
──各スピーカーユニット(高域/中域/低域)の周波数特性の調整に、マルチアンプ構造が威力を発揮したそうですね。
関 英木[音響設計リーダー]
スピーカーユニットの7基構成については、私と宮本(X9電気設計)の間ですんなりと合意できたのですが、アンプ構成に関する彼の提案は「スピーカー7基に対してアンプは6基でやりたい」というものでした。
それはつまり、前面と上面トゥイーターのアンプを1台で兼用するという考え方なんです。しかし私としては、各帯域のバランスをとるネットワークの設置がスペースの問題で難しいというのを懸念していたので、そこはもう頑として「アンプ8基にしてください」とお願いしました。

宮本 謙一[X9電気設計]
あらかじめ商品企画が筐体サイズを小さめに設定していたので「困ったな」という思いはあったんですが(笑)、やりくりしてなんとか実現しました。
関 英木[音響設計リーダー]
8基のマルチアンプ構造にすることでアンプ個々の調整が可能になり、各スピーカーユニット間に最適なクロスオーバー(周波数帯域を分割するフィルター機能)をかけられるようになるんです。いわゆるハイエンドスピーカーのようにコイルや抵抗などを使ったネットワークを組まずに、担当帯域を調整できるという利点があるわけです。しかも、ハードウェア的なネットワークではできないようなバランスの取り方で。
宮本 謙一[X9電気設計]
おおざっぱに言うと、単品コンポのバイアンプ構成をギュッと凝縮して1BOXの中に入れているようなものなんです。各スピーカーユニットを専用に割り当てたアンプでドライブするという構成により、各帯域をどこで分割するかのコントロールを厳密に行えるのがマルチアンプ構造の強みですね。
──どのくらいキッチリ分けられるのですか?
宮本 謙一[X9電気設計]
1Hz単位で調整できます。今回はそれぞれの周波数帯域のデータを取ったうえで、試作機で実際に音を聴きながら、音響設計と一緒に細かく調整していきました。それとマルチアンプ構造のメリットは他にもあって、スピーカーユニットごとに最適なゲイン調整ができるというのもポイントですね。
──サブウーファー駆動用にアンプを2個用いる意図とは?
関 英木[音響設計リーダー]
X9の中域を担当する磁性流体スピーカーは、反応が速くて歪みが少ないという特長があるので音のレスポンスがすごくいいのですが、そうしますと低域がついていけなくなるという問題が生じます。そこで、遅れないよう駆動力を上げるためにサブウーファーの磁気回路をかなり強いもの――通常は15cm口径ぐらいのユニットに使うものにしています。
さらにダブルボイスコイル方式にすることで、2基のアンプから発生するパワーを駆動系にしっかりと伝達することが可能になり、磁性流体ユニットについていけるだけのスピードが実現できるというわけです。

宮本 謙一[X9電気設計]
アンプはステレオ用に2個入りワンパッケージというのが普通なので、スピーカー7基だと1個余ってしまうんですよね。だからその要求はちょうどよくて、ふたつ返事でOKしました(笑)
関 英木[音響設計リーダー]
それと、X9のサブウーファーはストロークがかなり長いうえに速く動くので、グラスファイバーを張り合わせたハイブリッド構造にするなど振動板もいろいろと工夫しました。
宮本 謙一[X9電気設計]
ユニットの反応速度とアンプの関係についてもう少し話しますと、実は今回、ホームオーディオで使っているクラスのアンプと、それより出力インピーダンスが30%ぐらい低いドライブ素子を使ったものを比較・検討してみたんです。
インピーダンスが高いとやはり音が少しやわらかくなるというか、悪く言うとなまってくる傾向があるので、最終的にインピーダンスが低いスピードのある方を採用したのですが、そこも大きく寄与していると思います。カチッとスピードを出すためには、スイッチング素子のインピーダンスが低いほうがいいので。

──当然、両サイドのデュアル・パッシブラジエーターも遅れるわけにはいかないですよね。
関 英木[音響設計リーダー]
そうですね。通常だとダンパーという、パッシブラジエーターの動きを制御するサスペンションを付けたりするのですが、この高出力にしては珍しくダンパーのない平板なパッシブラジエーターを採用しました。これで機械的なロスが減らせますから、サブウーファーの鋭い動きにもついていけるわけです。
でも、その反面、振幅が大きくなると不均一な動き――ローリングと呼ばれる現象なんですが、ねじれるような動きが起こってしまいます。それによって音がズレたり異音が出てしまったりするのですが、その問題に関してはエッジの形状や厚み、オモリの位置などトータルバランスを調整することで対処しました。
──タンジェンシャル構造と呼ぶ独特の溝が彫ってありますが、どういう効果が得られるのですか?
関 英木[音響設計リーダー]
本当はパッシブラジエーターを丸くしたかったのですが・・・・・・決められたサイズ内でスペースを考えると四角形状しか選択肢がなく、そうなると角の部分の動きがいちばん厳しくなって突っ張ってしまうんです。溝を彫ることで角の部分に余裕を作るというか、伸びたときにすこし余裕を吐き出して他の部分の動きについていけるようになるわけです。
サブウーファーの全周の溝は、ストロークを長くしていったときに純粋により伸びやすくするためのものです。これはクイックエッジと呼ぶのですが、反応速度を速める手法のひとつでもあります。

──これだけユニットが激しく動くと、バッフル板の剛性が問われるのでは?
斉藤 健彦[メカ設計リーダー]
今までのバッフル板には使ったことがない高剛性の素材でできています。硬いうえに、見た目の美しさにも配慮して平滑な面を作らなければいけなかったので、金型温度をかなり高く上げないと成形できなかったですね。技術的に相当難しく、手強い要求でした。
──ガラスに覆われている筺体上面にも、音質追求の秘密があるとか。
関 英木[音響設計リーダー]
上面のガラス素材にこだわったとデザイナーが話していましたが、音響設計の立場としては「まいったな」というのが正直なところです。側面のアルミ板についてはスタビライザー(揺れを抑えて安定させる)効果という音響メリットがあるのですぐに同意できたのですが、ガラスだけは困ったなぁと(笑)
というのも、スピーカーの筐体というのは「響かせるところ」と「固めるところ」を考えなきゃいけないのですが、セットの上面に重しを置かれてしまったので、かなり厳しいなぁ、どうやったらうまく響かせられるんだろうと・・・・・・
──どうやって解決したのですか?

関 英木[音響設計リーダー]
今日はガラスを外したキャビネットを持ってきたので、ちょっと見てみてください。射出成形という手法を使っている樹脂なのですが、リブ(筐体を補強する構造体)の形状を私のリクエストで不均一にしてもらっています。メカ設計としてはハニカム構造のような均一なリブにしたいところでしょうが、そうしちゃうと材料特有の「泣き」というのがある特定の周波数で出やすいんです。そこにガラスが乗っかることで、さらにその傾向が強調されるという懸念があったのです。
やっぱり、リブ形状を均一にするかランダムにするかで音の鳴り方がだいぶ変わってくるんですね。色々なマテリアルを使うというデザインのテーマをサポートするために、音響面ではこういう見えないところにもこだわって設計しています。
岡 祐介[商品企画]
初めて見たとき、平行の線がひとつもないので感動しましたね。































