

音楽ファンのフィードバックを生かし、
アーティストのバックアップを受けた特別な低音

──X7とX5は、ミュージックトレンドに合わせた音作りがテーマになっていると聞いています。
大浦 義和[X7音響設計]
冒頭のコンセプトのところで話がでたように、今回はこういったカジュアルなスピーカーを買われる方々の「音の好み」を調査しています。その中でR&BやHIP HOPという、いわゆるクラブミュージックのジャンルを主に聴いていることが浮上し、海外のヒットチャートでも多くランクインしていることがわかってきました。
そこで曲の分析を進めていくと、かなり低い周波数の音がキーになっていることが共通していて、その低音成分っていうのはソニーも含めてこれまでのスピーカーでは完全には再生しきれていないのかな・・・・・・という見解に至りました。
──その後、どのように調査や音作りを進めていったのでしょうか?
大浦 義和[X7音響設計]
思いきって、本場であるアメリカまで調査に行きました。日頃からそういった音楽を聴いている人たちに実際にいろいろな音を聴いてもらって、そのフィードバックを細かく分析していって、どのような低域の効かせ方をしていけばいいのか、その方向性をしっかりと見定めてきました。
あともう一点、今回はとても運が良くて、ソニー・ミュージックのサラーム・レミさんにもご協力いただきました。
──音楽プロデューサーのサラーム・レミさんですか?
大浦 義和[X7音響設計]
はい、そうです。そのときは開発初期の試作機の音を彼に聴いてもらって・・・「こういう方向にもっていくと、もっと良くなるんじゃないかな」など音作りの方向性について意見をもらいながら、少しずつ音の出し方を変化させるというやり方で進めていきました。
──そして定まった音作りの方向性とは?
大浦 義和[X7音響設計]
やはり、極めて低い周波数をしっかり再生することが最近の音楽に対しては有効だと、さきほどの調査と合わせて確信しました。あと逆に、「スペース感」って呼ばれている高音がキラキラと飛び散るような高域の広がりも、R&BやHIP HOPなど低域重視の曲を気持ちよく聴くには重要ですね。より低い音を出すなら高域もより充実させていかないとバランスが取れないので、音作りではそこもキーポイントでした。

──そういった低域重視のサウンドを実現するために、どのような構造を採用したのですか?
大浦 義和[X7音響設計]
何度か話題にのぼっていますが、今回は「まずサイズありき」でのスタートだったので・・・・・・昨年のBTX500やBTX300より小さいのに、それよりも低い音を出さなければならないというのはなかなか厳しかったですね。
それから皆でいろいろと悩みながら試行錯誤した結果、X7とX5は「各スピーカーユニットの役割を明確にできる2.1ch構造」を採用することが決まりました。つまりサブウーファー側でしっかりと低域を出して、中高域は両サイドのユニットにまかせるというやり方で今回の調査で見つかった課題をクリアしていきました。
──X7は特徴的なパッシブラジエーターを2つ配置していますね。
大浦 義和[X7音響設計]
スピーカー設計のスタンダードである「前面配置」にこだわったX7にとって、このデュアル・パッシブラジエーターが今回の低音実現の鍵になっています。
当然、薄型の筐体なのでダンパーレスの平板なものにせざるを得なかったのですが、そうするとサスペンションとなるダンパーがないので、大きく振幅した時にバタバタと暴れて制御が困難になるという問題に直面しました。異音が出たり、まわりの構造物にぶつかってしまったりというその現象を抑えるために何度も試作と実験を繰り返して・・・・・・全部で15種類ぐらい作ったと思いますが、形状や構造に工夫をこらすことでなんとか解決しました。これにより安定した状態でより長いストロークをとれるようになったので、このサイズからは想像できないような深い重低音を実現できました。
──X7のサブウーファーも強力な磁気回路を用いているとか。
大浦 義和[X7音響設計]
駆動力を司る磁気回路の部分が、サブウーファー全体の厚みの半分以上を占めています。いろいろな制約があって最初はこの半分くらいの厚さのものを使うつもりでしたが、全然パワーが足りなかったので次から次に30種類ぐらい試作した結果、ひじょうに力のあるユニットができ上がり、満足のいく深みのある低音に仕上がりました。

──X7の中高域ユニットも相当試作されたのでしょうか?
大浦 義和[X7音響設計]
低域を充実させていくと、どうしても中高域が埋もれてくるので、そこを改善するために13種類ぐらい作ったはずです。具体的には振動板に使う材質の配合バランスを調整してみたり、エッジの形状を変えたりすることで中高域の再生帯域を広くとることができ、かなり納得のいくものが完成しました。
──X5のパッシブラジエーターは背面にレイアウトされていますね。
関 英木[音響設計リーダー]
X5に関しては「X7よりもコンパクトにする」というのが至上命題でもありましたので、リアパッシブ(背面配置)という手法を採りました。これはスピーカーの王道ではないのですが、その副産物としてパッシブラジエーター自体の面積に余裕が生まれるので、X7のようなトリッキーなエッジ形状にしなくても十分な低域を得られるのが利点ですね。

──X7の低音には特に柔らかさを感じます。
大浦 義和[X7音響設計]
まず「音の好み」調査の段階で、低域を2種類に分けて捉えることにしました。「アタックベース(ドンドン)」と、それに付随する「ディープベース(モワッとした低域感)」の2つで、「ディープベース」は耳で聴くというよりはクラブなどで体感するようなサウンドですね。
「アタックベース」のみだと最近のミュージックトレンドに対応できないことが調査でわかっていたので、「ディープベース」の部分をいかに表現するかを強く意識して開発しました。そこが音の柔らかみとして醸し出されているのでしょう。
関 英木[音響設計リーダー]
もちろんX5も「ディープベース」の部分を再生できるのですが、X7はよりローエンドをしっかり伸ばした深いところまで出せるのが特長です。2つのモデルの低域の違いを端的に区別するとX7は「深い重低音」、X5は「豊かな重低音」という表現になると思います。
──X3のサウンドを体感すると、そのサイズからは想像できない低音に驚きます。
岡 祐介[商品企画]
商品企画としては「片手でつかめるサイズ感」は譲れなかったので、「X7とX5の音作りを踏襲して、このコンパクトサイズに凝縮してください」という無茶を言っています(笑)。それと、充電の手軽さという点でもマイクロUSB充電にもこだわりました。20Wの出力を保ちながら、こういったことをクリアするのは容易ではなかったです。

関 英木[音響設計リーダー]
X3もパッシブラジエーターを前後に2基積んでいまして、しっかりとした低域を再生するためにストロークをしっかりとれるよう、ちょっと溝も彫っています。サイズ上の制約でやむなく2基をキャビネットの前後に配置しているのですが、まわり込み効果で低域がちゃんと増強されて聴こえます。ここらへんが音の面白いところですね。
──X3のワイドステレオ機能は、セパレートに慣れている方には嬉しいですね。
関 英木[音響設計リーダー]
1BOXの欠点を補うという意味もありますが、こういったサウンドモードは我々の遊び心の部分でもあるんですよね。いろいろな場所に持ち運んで広いところで聴いたときに「おっ」っていう反応を引き出せる機能で、私も気に入っています。
──サラーム・レミさんは、完成した音を聴いてどのような感想をもらしましたか?
関 英木[音響設計リーダー]
開口一番「Sounds Good!」と。
大浦 義和[X7音響設計]
私はそのとき、中国の工場で部品チェックをした後でヘトヘトになってホテルで休んでいたのですが・・・・・・向こうの様子が写真付きのレポートで送られてくるわけですよ。それを見ると、最初の頃はすこし疑っているふうな態度だった彼が、徐々に前のめりになって食いついてきていて、最終的には握手してみんなで肩組んでYeah!みたいな状況になっていました(笑)
手前みそになりますが、X7とX5だけでなく、市場で売れている他社のモデルも一緒に聴いてもらったうえで高い評価をいただけたので、かなり完成度の高いものができたのではないかと自負しています。






























