商品情報・ストア Feature 特集記事 空間で、空気をとおして聴く“音”が感じさせてくれること いきものがかり 水野良樹が語るアナログレコード
空間で、空気をとおして聴く“音”が感じさせてくれること いきものがかり 水野良樹が語るアナログレコード

空間で、空気を通して音を聴くという事が今、ひとつの趣味、楽しみ方として増えていると思う。アナログレコードへの回帰もそのひとつかもしれない。

ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)がアナログレコードの制作・製造を復活させたニュースは2017年、大きな話題を集めた。2018年には『EIICHI OHTAKI Song Book III 大瀧詠一作品集Vol.3「夢で逢えたら」』と、ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』のアナログレコードが発売。ちなみにこの2組は、1982年10月1日に、世界初の商業用CDを発売したアーティストでもある。
同時期に、いきものがかりが、これまで発売したオリジナルアルバム7作を一挙に初LPレコード化した、完全生産限定の14枚組ボックスセット『レコー丼〜超七色(なないろ)大盛り〜』を発売。この『レコー丼』の聴きどころ、そして世の中のアナログ回帰の流れ、アナログレコードのオススメの楽しみ方などを、同グループのリーダーでソングライターの水野良樹さんに聞いた。

水野良樹(みずのよしき)
SongWriter
1982年12月17日生まれ 神奈川県出身

1999年2月、小・中・高校と同じ学校に通っていた水野良樹と山下穂尊が、いきものがかりを結成。
1999年11月、同級生の妹、吉岡聖恵がいきものがかりの路上ライブに飛び入り参加したことがきっかけでいきものがかりに加入。
2006年メジャーデビュー。デビューシングルの「SAKURA」をはじめとして作詞作曲を担当した代表曲に「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など。グループは2017年1月放牧宣言を発表。国内外を問わず、様々なアーティストに楽曲提供をする他、ラジオ、テレビ出演、また雑誌、ウェブ連載など幅広い活動を行っている。現在、J-WAVE「SONAR MUSIC」(木曜日)、RKB毎日放送「ミュージックスコップ」にレギュラー出演中。

CD、デジタルとレコードで
歌の“違い”を楽しむ

まずは水野さんの最初のアナログレコード体験から教えてください。

水野:家に親のレコードプレーヤーとシングル盤がたくさんあって、それを聴いたのが最初です。中学生、高校生の時はもちろんCDで聴く事の方が多くて、アナログを手にするようになったのは、いきものがかりとしてデビューしてからです。

デビューしてからアナログレコードを聴くようになったきっかけは、何だったのでしょうか?

水野:レコーディングの現場で、いきものがかりのプロデューサーの本間(昭光)さんや、アナログに造詣が深い先輩ミュージシャンから話を聞いたことがきっかけです。アナログとはなんぞや、という事から教えてもらいました。レコーディングスタジオは音響も整えられていて、アナログを試すには最適な場所なので、チーム内で、アナログ熱に火が点いた事がありました。自分の師匠のような存在の、レコード会社ディレクターからも、レコードプレーヤーをもらって、それが嬉しくてアナログ盤を色々と買い揃えていった記憶があります。

今回、LPレコードボックス『レコー丼』を作ろうという企画を聞いた時は、最初はどう思いましたか?

水野:アナログがチームの中で流行り始めた時に、当時もCDに加えてさらにアナログ盤を作っているアーティストがいたので、「自分達もできないですかね?」という話は、ずっとしていました。でも今よりも全然アナログブームが小さかった事もあって、制作リスクの事も考えると、話が後回しになっていました。そうこうしているうちに、僕らが“放牧”という事になって、それでディレクターから「今だったら話題になるし、やってみようよ」というお話をいただいて、その時はすごく嬉しかったです。

メンバーによるスペシャル映像『レコー丼座談会』の中で、デビュー曲「SAKURA」をレコードプレーヤーで聴いた時に、いきものがかりのボーカル・吉岡聖恵さんが「音が丸くなっている」とおっしゃっていましたが、実際、自分達が作った音が、アナログレコードになって、どう変化したと感じましたか?

水野:僕らが、どこまで正確に耳で把握できているのか定かではありませんが、ただ、一番目立つところでいうと、吉岡の声の高い部分、CDだとちょっとひずみかける、キーンと来るような高音部分を、カッティングエンジニアの世界的な名匠・小鐡徹さんが、レコードに合わせて調整してくださり、すごく聴きやすくなりました。いきものがかりは歌ものグループなので、吉岡の高音部分が、レコードではより楽しめると思います。もちろんCDはCDでその明瞭さがいい部分だし、この7枚のオリジナルアルバムはレコーディングの環境も全然違います。だから何を基準に、音を判断すればいいのかは一概にはいえませんが、一般的に言われるアナログレコードの丸み、温もりのある音というのは、特徴としてあるのかもしれません。

なるほど、声はCDとの違いが顕著かもしれないですね。他にここは是非注目して欲しいというこだわりの部分はありますか?

水野:CDでもデジタルでもいいので、改めて僕らの音楽を聴いていただいてから、『レコー丼』を聴いてみて下さい。一番わかりやすいのは先ほど言った吉岡の「声」の部分がどう聴こえるかですが、大音量にした時に聴こえてくる音があります。「帰りたくなったよ」のイントロの第一音が鳴る前に、ピアノの島田(昌典)さんがダンパーペダルを踏む音が入っていて。そういう現場での演奏者の息遣いのようなものが、ちゃんと拾われていて聴こえるのってすごくいいと思います。

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CDやデジタルと違った“雰囲気”と、
幅広い楽しみ方ができる
アナログレコード

昨今レコードプレーヤーも様々な種類のものが登場し、手に入れやすいと思いますので、『レコー丼』をきっかけに、この世界に足を踏み入れるファンもいると思います。

水野:アナログレコードの世界は、“ピンからキリ感”がすごくいいですよね。追い求めると、オーディオファンの方のように天井がないというか、スピーカーとアンプの組合せなのか、ケーブル、電源なのか、何にこだわるかで、その楽しみ方が無限にあって。それを語り合って楽しむ方もいらっしゃるし、一方でもっと安価で手に入れても、CDや配信とは違う雰囲気を楽しむ事ができるし、幅広い楽しみ方ができる、面白い文化だと思います。

ケーブルにこだわり始めると、その“沼”から抜け出せなくなるって言いますよね。

水野:僕もプレーヤーとスピーカーを買う時に、先輩達から色々とアドバイスをいただきました。ロックを聴くのか、ジャズなのか、イージーリスニングを聴くのかを聞かれ、音楽のジャンルによって合うスピーカーが違う、と教えられました。もっというと、電源は家庭用電源を使うのか、どうするのか、とか。そういう話を聞いていると、お金はかかりそうですけど、突き詰めるのも楽しそうですよね。レコード針も3種類くらい買いました。でもセッティングとか、これで合っているのかなって今も思っています(笑)。

アナログレコードというと、パッケージから出して、プレーヤーに置いて、針を落とすまでのあの所作というか、時間、手間を魅力と感じる人もいますよね。

水野:パッケージのあのサイズが、“モノ感”を出しているし、レコードって基本的にヘッドホンで聴くものではなく、スピーカーで空気を震わせて聴くものだと思うので、ちゃんと「聴く」という態勢になりますよね。おっしゃったように、レコードを聴くまでの一連の行動、“手間”にロマンを感じる人、そうじゃない人、人それぞれだと思いますが、その手間が逆に、レコード関連のアイテムの収集など、趣味的な世界の広がりを生んでいるのかなと思います。今のブームの根底にある大きな要素は、そこなのかもしれません。

僕らが10代の頃CDが登場しましたが、やはりあの手軽さこそさが、CDが普及した大きな要因だと思うし、音楽を聴く人を増やす事にもつながりました。それに比べるとレコードを聴くまでは時間がかかるし、難しいのかもしれません。でも難しいからこそ趣味的な楽しみがあり、そこに魅力を感じる人が多いと捉えています。今のCDとデジタル音源の関係に近いのかもしれません。

今回、『レコー丼』を作るにあたって、メンバー3人でカッティングの現場を訪れたとお聞きしました。『レコー丼』座談会でも、その様子を観る事ができます。

水野:カッティングは非常に手間がかかる作業ですし、属人的な作業能力が必要だと思いました。エンジニアの小鐵さんはキャリアを積んでいますし、色々お話をうかがっていると、レコード全盛時から脈々と受け継がれている技術があることを実感しました。レコードも大量生産されるものですが、でもそこには人の技術の“ゆらぎ”のようなものが大きく影響してくるのだな、と。それと、製品としても丁寧さを感じました。ミスが起こる時も人為的なものだし、うまくいく時も人為的なもので、だから現場で作っている方は、すごく神経を使っていい製品を作るために、日々努力されていて。単純に、製造業としても“誠実さ”がそこにあるというか、すごく素敵な事だなと思いました。

『レコー丼 座談会〜その4〜お気に入りレコード持ち寄り企画!』は、メンバーがお気に入りのレコードを持ち寄って聴いてみようという内容でしたが、残念ながら著作権等の問題で音は流せませんでした(笑)

水野:そうなんですよ(笑)。僕は「今だから」(松任谷由実、財津和夫、小田和正)と「夕陽を追いかけて」(チューリップ)、「喝采」(ちあきなおみ)の、シングル盤3枚を持って行きました。吉岡は子供の頃に聴いていたという、童謡集を持ってきて、「ぞうさん」という曲は改めてすごいと思ったり(笑)、(山下)穂尊はそもそもレコードプレーヤーを持っていないので、まずは彼に買わせなければいけないです。先ほども出ましたが、いきものがかりチーム内でアナログブームが起こった時に、まずはビートルズとジャズを聴いた方がいいと言われたので、色々と聴いて、次に邦楽のシングル盤を聴きはじめ、今は60年〜70年代の歌謡曲が好きで、集めています。
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空間で、空気を通して音を聴くという事が今、
みんなの中でひとつの趣味、楽しみ方に

アメリカではCDが衰退し、配信とアナログレコード中心という流れになっていて、日本でも昨今アナログが盛り上がってきています。若い人たちにも広がっている、このアナログ再復興の動きをどう捉えていらっしゃいますか?

水野:音楽をスピーカーで聴いたり、モノとして、趣味として楽しむ文化は、若い人を含めてすごく盛り上がっていると思います。日常的に聴くというよりは、時間を作って楽しもうとして、レコードプレーヤーを買うとか、手順も含めて楽しみとして深化している感じはします。僕らもそうでしたが、今の人達は通勤・通学の時にヘッドホン、イヤホンで音楽を聴く、ひとりで楽しむという機会が多いと思いますが、一方で“空間”で聴く事を楽しむ人が増えていると感じていて。それはクラブもそうだし、これだけDJ文化、EDM文化が流行るのも、空間の中で音楽が流れていて、その音楽に対して自分達がどう楽しむのか、という文化が広まってきているからなのではないでしょうか。レコードというものの広がりと、スマートスピーカーのようなものの広がりも、それに近いところがあると思っていて、空間で、空気を通して音を聴くという事が今、みんなの中でひとつの趣味、楽しみ方のひとつとして、増えているのかな、と。

『レコー丼』も是非スピーカーで、大音量で聴いてみたいですね。

水野:どんな環境でも聴いてくだされば嬉しいです。雑に聴いてくださっても全然いいですし、作品は生活の中にないと意味がないと思っているので。もちろんオーディオファンの方は、自分がこだわったセットの中で、好きな音質、バランスで聴いてもらいたいと思いますし、一方で、初めてレコードプレーヤーを買ってみましたという、僕ら世代より下の人にも、ラフに聴いて欲しいというか。例えばこれがスティーリー・ダンの作品とかなら、リスニングシステムの音質面もちゃんと配慮して聴かないといけないと思いますけど(笑)。いきものがかりの音楽は、どの作品も最高のミュージシャンが演奏してくれて、レコーディングについても、誇りに思うくらい恵まれた環境でやらせていただいていて、“ちゃんとした”ものを作っている自負はありますが、かといって肩肘張って聴いて欲しいかといえば、決してそんな事はなくて。なので、単純に音楽の趣味というものを越えて、『レコー丼』をみなさんに楽しんで欲しいです。

ミュージシャンの先輩から勧められて聴いたアナログレコード中で、一番衝撃を受けた作品は何ですか?

水野:先輩方からは、まずビートルズのモノラル盤を聴けと言われる事が多かったので、買って聴いて、まず何を思ったかというと「当時の若者はこれを聴いていたのか」という事でした。僕らは色々なメディアでビートルズの音楽を聴いていますが、当時の人はこの音を聴いていたのかと、ピントが合いました。
それは音質だけの問題ではなく、アナログ特有のある種不安定なところだったり、スピーカーで空気を震わせて聴いていたりとか、そういう環境的な要因が重なった上で、「これを聴いていたんだな」と思いました。
曲を作っている側からいうと、ビートルズの曲ってアナログで聴いてもCDで聴いても、MP3で聴いても、メディアや音質云々は関係なく、曲自体が圧倒的にいいじゃないですか。スーパーのBGMで流れているのを聴いても「いい」と思えるし。だから媒体を問わず、いい曲であるというところが、すごいところでもあって。そこは作っている側が試されますよね。

音楽は聴く場所や環境によっても、伝わり方が違いますよね。

水野:音楽って音だけを聴いているのではなく、その環境にも影響されるし、レコードなんてまさにそうで、イヤフォンで聴いているのと、家でリラックスしている中で、スピーカーが空気を震わせる音を聴く状態とでは、感じ方、伝わり方が全然違うと思うんです。
人間の五感ってバカにできないと思っていて、僕は6年前に仕事でイギリスに行った時、リバプールまで足を延ばして、その時これは聴くしかないと思って、リバプールの街の景色を見ながらビートルズを聴きました。その時もびっくりして、街並を見ながら「この街から世界に行ったんだな」と思って。あの音楽は、この街で、色々な経験をした中から出てきたメロディなんだと思うと、またピントが合ってくるんです。これは小田急線で聴いているのとは違うと思って(笑)。どう説明していいのかわからないのですが、あんなに世界的にヒットして、あんなに普遍的になったものが、実はローカルなものだった瞬間があった、という事を初めて知ったんです。それはやっぱりその場所で聴いたからわかった事だし、そういう話を先輩達から聞かされた時は、お説教にしか聞こえなかったけど(笑)、でも実際に行ってみると「そういう事か」って実感し、納得できました。だから“音楽”を構成しているのは“音”だけではなく、作った環境、聴く環境も大きな要素になっているので、レコードというものが、新しい楽しみ方のひとつとして選ばれるのはいい事だと思います。僕等や、僕等より下の世代が聴いていた音楽とは、違って聴こえるというのはあるはずです。でもそういう音楽の楽しみ方、出口が増えて、バリエーションが豊かになる事は、すごくいい事だと思います。

いきものがかりのライヴのバンマスであり、水野さんにアナログ盤の魅力を教えた“先輩方”の一人、音楽プロデューサーの本間昭光さんにも、『レコー丼〜超七色(なないろ)大盛り〜』を聴いた感想、アナログの楽しみ方をインタビュー。

『レコー丼』を聴いて、特に本間さんが手がけた作品で感じた、音の変化を教えて下さい。

本間:自分が手がけた作品だと、リズム寄りの作品はより骨太に、バラード寄りのシルキーな仕上がりの作品は、より艶やかに響いている印象です。

アナログ世代から、アナログ未体験の人へアナログの魅力を教えて下さい。

本間:アナログの魅力として、程良い歪み感と程良い揺らぎ感と可聴域の幅広さがあります。そこがデータには現れない「温かみ」や「迫力」につながるのだと思っています。また、セッティングやパーツの組み合わせによって、自分でコントロールして好みの音に近づける、マニアックな楽しみ方もできるところも魅力です。

本間さんオススメの、これはぜひアナログ盤で聴いて欲しいという名作を教えて下さい。

本間:最新の洋楽は、ほぼビニール盤(アナログレコード)も発売しているのでデジタル音源と聴き比べるのが楽しいです。古い名盤の数々はファーストプレスをレコード屋さんで探して是非とも手に入れてください。スタンパーが新しいものならではの音の瑞々しさが体験できます。そんな中、自分のいちばんのオススメはピンクフロイド『The Dark Side of the Moon(狂気)』(1973年)の、ブルートライアングル盤です。マスタリングの違いで、通常盤とは全く別物と呼べる迫力があります。
空間で、空気を通して音を聴くという事が今、みんなの中でひとつの趣味、楽しみ方に にいいね

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