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クリエイターの珠玉の映像表現や想いを、ご自宅へ。 新しいコンセプトのオンラインギャラリー 「Creative Gallery on BRAVIA」 第3弾 写真家 瀧本 幹也 氏

α Universe editorial team

Android TV機能搭載テレビ ブラビア(BRAVIA)で、プロ写真家・映像クリエイターの作品をインターネットで視聴いただけるオンラインギャラリー「Creative Gallery on BRAVIA」は、一般的な写真展と異なり、ご自宅で、ブラビアならではの大画面・高精細な表現力で時間を気にせずお楽しみいただけます。さらに、音声(BGM)を交えた写真や映像作品など、多種多様な表現が可能。作家の趣向をこらした表現や、想いも含めて、ご自宅のリビングに感動をお届けします。※ネットワークに接続されたAndroid TV 機能搭載のブラビアをお持ちの方であれば閲覧無料。 第3弾は写真家の瀧本幹也氏。今回はこれまで発表してきた「SPACE」や「LAND」、「BAUHAUS」などに、新作の「FLEUR」を加えた7作品を展示。映像作品としては、今企画のために「α1」で撮り下ろした「After the rain」がご覧いただけます。コロナ禍の今だからこそ、オンラインギャラリーを開催する意味があると語る瀧本さんに、自身の作品づくりにかける想い、写真や映像作品との向き合い方についてお話を伺いました。

瀧本幹也 / 写真家 1974年生まれ。広告写真やCM映像をはじめ国内外での作品発表や出版など幅広く活動を続ける。 写真と映像で培った豊富な経験と表現者としての視点を見いだされ、是枝裕和監督から映画撮影を任され『そして父になる』、『海街diary』、『三度目の殺人』と独自の映像世界をつくり出している。代表作に、『BAUHAUS DESSAU ∴ MIKIYA TAKIMOTO』、『SIGHTSEEING』、『LOUIS VUITTON FOREST』、『LAND SPACE』のほか、『Le Corbusier』、『CROSSOVER』など。最近の展覧会に「CHAOS」(Galerie Clémentine de la Féronniére、パリ、2018)、「CROSSOVER」(ラフォーレミュージアム原宿、東京、2018)、「CHAOS 2020」(妙満寺、京都市、2020)など。

interview photo by Koichi Doyo

外に向けていた視線の先が 自然と今、身近な世界に触れていく

――今回展示の新作「FLEUR」の被写体は花ですね。光に溢れ、とても優しい作品です。この作品が生まれた背景についてお聞かせください。

瀧本:わたしにとって花をモチーフに作品をつくることは、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックがはじまる前までは考えづらかったです。花はあまりにも王道すぎて、これまでに沢山の写真家が撮影してきたので、逆に敬遠していたところがあります。20年ほど前に花で作品を撮ってみようとトライしたことはあるものの、結局形にできませんでした。花をモチーフにするということは、ハードルが高いと感じていたのです。しかし、コロナ禍で自然と花に向き合えたのです。この作品はコロナの影響を抜きにして語ることはできません。

「FLEUR」より

――今回の展示で見せていただいているように、瀧本さんの作品というとスケールの大きなものが多いイメージを持っています。「FLEUR」とは対照的な作品群とも感じます。

瀧本:2020年より以前は、頻繁に海外へ足を運んでいました。とくに文明のない、人があまり足を踏み入れないような僻地を選んで。南極にも行きましたし、アイスランドや南米の5000m級の山などへも何度も訪れてきました。そういう場所では日が沈むだけで恐怖を覚えることがあります。車で移動していて、ひとたび故障したら生命に関わるほど。都会の常識がまったく通用しないのです。でも、実は地球上の多くの場所は、そういう環境にあるのですよね。当時のわたしは身近な場所を撮るよりも、そうした人智の及ばない、遠く離れた場所に強く惹かれていました。

しかし、それがコロナの蔓延で撮りに行けなくなった。昨年はずっと家にいなければいけないというような状況になって、仕事も作品づくりの計画もすべてキャンセルになってしまった。昨年の春は、緊急事態宣言が出る直前まで仕事をしていたこともあって、その後、2週間ほどひとりでホテルに自主隔離しました。ずっとホテルの部屋にいて、外に出るのが怖くて、あのときは本当にしんどかった。しばらくして、近所を散歩するぐらいはいいだろうと外に出て、散歩中に出会った菜の花にシャッターを切ったんです。そのとき“ああ、花っていいな”と自然に思えた。塞いだ気持ちがちょっとだけ解放されて、なんというか、うちなる喜びのようなものを感じることができたんです。改めて、写真を撮る喜びを実感できた。これまでの写真の向き合い方とは少し違ったという意味で、この経験や感覚は自分にとって大きかった。写真を撮る上での転換点になったとさえ思っています。「FLEUR」のシリーズは、このときの菜の花の写真がきっかけになって生まれたものです。

――この菜の花の作品は去年10月に開催されたKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2020でも展示されていますね。

瀧本:KYOTOGRAPHIEでは妙満寺という由緒あるお寺で展示をさせていただいたのですが、南極での写真と菜の花の写真を大書院の中のひとつの空間で一緒に展示しました。荒々しい南極の写真7枚を畳の上に並べ、その先に菜の花の写真を一点添えました。そんな展示にしたのです。ここでは厳しい冬の先には必ず暖かな春が訪れる、そういう希望を写真に込めることができたと思っています。今回つくった映像作品「After the rain」にも、この精神が息づいています。希望を見出すような仕上がりになっているのです。

――映像作品「After the rain」の舞台は、KYOTOGRAPHIEで写真を展示した京都のお寺なんですよね。

瀧本:舞台は京都の様々な寺院です。映像の冒頭では雨が降っていますが、次第に雨が上がり、木漏れ日が差していきます。これは現在の社会状況と照らし合わせることができる。止まない雨はない。必ず日が差し、わたしたちを照らしてくれます。お寺での祈りの時間に近い感覚です。

――音楽も妙満寺の住職の方がつくられていると伺いました。

瀧本:映像の中で流れている音楽は、住職でピアニストでもある土持悠孝さんがお寺の屋根裏部屋に鍵盤を持っていき、そこで作曲し録音したものです。屋根裏部屋まで聞こえてくる虫の鳴き声までも録音されていて、今回のこの映像作品とあいまって、とても心を穏やかにさせてくれるものになりました。雨粒の一滴が大海に至るまでを想像できるような映像を作れたらという想いでした。

「After the rain」より

――コロナ禍における現在の状況が、「FLEUR」のシリーズを生み出し、新たな映像作品にもその精神が引き継がれているんですね。これからの作品づくりのスタンスも変化していく予感はありますか?

瀧本:コロナ禍の前は、どちらかというとクールと言いますか、冷静で温度感のない作品が多かったです。しかし、人の体温を感じるような写真へと、花の写真を通じて自然と移行できた気がするんです。年齢的なものも重なっているのかもしれません。とんがっていたものが、角が取れて丸くやわらかくなったような。これまでは表層的なもので表現していくことが多かったのですが、もう少し人の本質に入っていってグッと心が動くような事象に興味が移ってきました。

でも、これはわたしとしてはちょっと面白い変化だと思っています。ここまで変わることがあるんだなと思うほど。以前のような写真もまだまだ今後撮っていくと思いますが、今はまだそこへ向かう気がしません。例えば、「SPACE」のシリーズではアメリカのフロリダまで助手を連れ、大判のフィルムカメラでスペースシャトルの打ち上げを撮っていたのですが、今はそんな大掛かりな作品撮りよりも小さなカメラを使い、ひとりで軽やかに動いて撮影を行うスタイルが、現在の自分としては自然だと思います。写真の撮り方や考え方自体も少し変わってきているのかもしれません。

「SPACE」より

――今の社会状況が瀧本さんに多大な影響を与えているんですね。

瀧本:わたしだけに限らずですよね。誰もがなにかしらの心境の変化を経験しているのではないでしょうか。今回のオンラインギャラリーにしてもそう。今こうした取り組みを行う意味や意義については、コロナの影響を抜きにしては考えられません。作品づくりも同じでしょう。むしろ、コロナのことを踏まえざるを得ません。

写真にも映像にも通じる 表現に対する貪欲さ

――作品づくりについてもう少しお話を伺いたいのですが、瀧本さんが作品をつくろうと思ったときに、そのモチーフはどのように見つけてくるのですか?

瀧本:表現をなにもないところから見つけ出すのはとても難しいことだと思います。今の時代に、なにを考えて、どう世の中を見ているのか。まず、そこからスタートしなくてはいけない。時間も重圧もかかります。わたしの場合、普段の仕事や生活の中から作品づくりが派生してはじまっていくことが多いです。例えば、「SIGHTSEEING」という作品があるのですが、あれは海外ロケにいったときに出会った面白い風景を撮りためていく中で生まれてきた作品です。最初は仕事の合間に撮っていましたが、最終的には「SIGHTSEEING」のシリーズのために海外に行っていました。

今回展示の「BAUHAUS」も、ある建築雑誌の仕事がきっかけで生まれたもの。部屋の断片をグラフィカルに切り撮りたいと考えていたときにこの仕事が舞い込んできて、うまいこと合致できるのではないかと思ったのがはじまりです。仕事として撮影を行い、並行して作品づくりを進める。自分の作品に置き換えると、こんなふうに撮れるのではないかと貪欲に考えるんです。ゼロからBAUHAUSを被写体に壁を撮ろうとか、観光地の面白い風景を撮影しようなどと発想することはとても難しいことだと思います。でも、日々の生活や仕事と作品づくりが繋がっていくことが稀にある。そのチャンスを逃さずに掴むことが大事だと思っています。これは波乗りの人達がいい波を待つのに似ています。波は誰にも平等にやってくる。この先に来る波を察知して逃さないで捉えることが大事なのかと思います。

「SIGHTSEEING」より
「BAUHAUS」より

――瀧本さんのフィールドは広い。作品づくりに加え、今お話にあったように広告や雑誌などのスチル撮影に、コマーシャル動画、映画の撮影までその内容は多岐にわたります。静止画と動画の撮影では考え方や被写体との向き合い方に違いがあるのでしょうか?

瀧本:あまり分けて考えていないように思います。例えば、今回の映像作品でいうと、とても写真的な仕上がりになっています。写真集を見ているような、ページをめくる感覚で次の映像に移っていける。そんな余韻の残し方というか、時間の使い方をしています。

写真のいいところは、まず要素が少ないことです。音楽が流れることもないですし、時間の制限もありません。見た人が自由に解釈でき、イマジネーションを広げることができます。一方、映像の場合は、つくり手が時間を決めて映像を流します。無音の映像というのもあまりない。逆に時間や音楽などが混ざり合って総合芸術になっていくのが映像作品です。さらに映画の場合は、ここに演者による芝居、ストーリーが入る。脚本や演出なども加わり、より総合芸術としての厚みが増していきます。

――今回の動画作品もそうですが、お仕事で撮られた写真や映像も、どれも瀧本さんらしいというか、芯がぶれていないように思います。クリエイティブなものへの向き合い方にはどんなこだわりがあるのでしょうか?

瀧本:写真でも映像でも、常によりよくしようと思いながら撮影に臨んでいます。広告の仕事などはさまざまなところから要望が加わってくるのですが、でも撮影している時は無我夢中で。そうした時の心境は過酷だとかそういった感情は軽く超えていくんです。ただただよくしたい、まだ見たことのない風景に出合いたい。この熱量は大事にしたい。発注いただいた広告であれ、個人的な作品であれ、CMであれ…すべて取り組むときの意識は共通しています。

ただ、ちょっと天邪鬼なところもあって、あるものを撮るとしたら、普通はこう撮るよねってところを全否定することがあります。普通の見え方をまず疑ってみる。自分が楽しめる、魅力を感じるような撮り方が、ほかにないかどうか探るんです。それはこれまで自分でも見たことがない表現だったりするわけですが、突き詰めて探求します。このあたりは自分としても結構大きいクリエイティブなものへのこだわりに繋がっているのかもしれません。

――「Creative Gallery on BRAVIA」という取り組みについてはどう思われましたか?

瀧本:新作の映像作品を撮って見せることができる点がとても良いと思ました。映像作品の発表の場として4Kモニターというのは理にかなっていると思います。

――映像作品「After the rain」での撮影はα1を使ってもらいましたが、使い心地はいかがでしたでしょうか?

瀧本:まず、握ったときのボディの質感がいいですね。自分にしっくりくる握り心地というのは、カメラを扱うものにとっては身体が触れるところなので、とても重要なポイントだと思います。今回の「After the rain」は写真と映像のちょうど中間にあるような作品になっていると思うのですが、これにはやはり、カメラの影響が大きいです。α1はとてもコンパクトで、それでいてあのような繊細な動画が撮影できる。“いいな”と思ったところから撮影に入るまでのアクションがすごく短く済むのもいいと思いました。直感で反応できるんですよね。これはまさに今の気分に合っています。

10年ほど前であれば、動画を撮影する場合、ムービー用の大きなフィルムカメラを使い、大勢のクルーを連れて大掛かりな準備が必要でした。すると、どうしてもいい光を撮り逃してしまったり、予定調和な撮り方になってしまうことが起こりうるんです。今回は写真をスナップする感覚で動画が撮れた。これは大きな魅力ですね。写真と動画をその時々の気分で切り換えられる。その軽やかさは趣味の範囲を超えて、仕事においても十分応用可能です。機材がこれをもたらしてくれているというところが革命的だと思います。

ただ、機材が便利になる一方で、さまざまな課題がわたしたちに投げかけられているように思うんです。文化としての写真や広告の仕事などの事を考えたときに人が育っていかないこともあるのではないかと。例えば、わたしがデジタルで撮るようになると、現場では助手がいらなくなるんですね。これまで必要とされた助手の仕事をカメラ本体が賄ってしまう。これはこれで問題です。機材が便利になっても、そこに人がついていかない状況が生じてくるのではないかと感じています。

――確かにカメラの進化に対し、わたしたちがどう併走していくかはとても大事なテーマですね。写真や映像を撮るのは、あくまで“人”です。

瀧本:機材が進化しても、しっかり精神論を語れる人が出てくるような環境づくりは大切です。望む画がどんどん撮りやすくなっていく今だからこそ、ここはわたしたちがしっかり考えなくてはいけない大事なテーマだと思っています。

「Creative Gallery on BRAVIA」では、この記事で紹介された作品をはじめ本作品展をソニーのAndroid TV ブラビアでご覧いただけます。閲覧無料、クリエイターの趣向をこらした表現や、想いも含めて、ご体感ください。

ご自宅のブラビアおよび、東京・札幌・名古屋・大阪・福岡の全国5カ所にあるソニーストア店内のブラビアでも作品をご覧いただけます。

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