商品情報・ストアヘッドホン The Headphones Park 開発者インタビュー PHA-1 開発者インタビュー

Engineer's Interview ポータブルヘッドホンアンプ PHA-1 開発者インタビュー

標準機となりえるニュートラルさを目指した、
ソニーの"ポータブルヘッドホンアンプ"第一章。

取材:岩井 喬

ヘッドホン市場の盛り上がりと共に、充電池を内蔵し、持ち運びできるヘッドホン用ポータブルアンプ、通称"ポタアン"分野にコアなユーザーの関心が集まっている。内外のガレージメーカーからも様々なポータブルヘッドホンアンプ製品が登場しており、オペアンプやコンデンサーなど内部のパーツを選別して自作するという熱心なファンも数多い。しかし、そうした先鋭的な市場であるがゆえに、これまで大手のオーディオメーカーは参入しておらず、決定的なリファレンスと呼べるような製品はまだ少ないのが現状だ。
このような情勢の中、ソニーからポータブルヘッドホンアンプが発売されると聞いたときは耳を疑った。しかもPCとUSB接続することでCD(44.1kHz/16bit)クオリティを遥かにしのぐ96kHz/24bit音源再生に対応、さらにはiPod/iPhoneのマルチコネクターからUSBケーブルで接続することでデジタル伝送も可能となっているという。奇をてらうことなく直球ど真ん中でポータブルヘッドホンアンプ市場へ打って出た、正統派ポータブルヘッドホンアンプPHA-1はどのような経緯で誕生したのだろうか。まずはPHA-1の音質まわりを担当した、ソニー パーソナル イメージング&サウンド事業本部パーソナルエンタテインメント事業部の角田直隆氏からお話を伺おう。

PHA-1

「ヘッドホンアンプが必要であると感じたきっかけの一つが2004年に発売したクオリアのヘッドホン(Q010-MDR1)のユーザーさん達からいただいた、"どんなアンプで駆動させればいいのか"という質問でした。当時は今ほどヘッドホングループも大きな規模ではなく、ヘッドホンアンプ開発は難しかったのですが、ここ数年、ヘッドホンビジネスも盛り上がり、ヘッドホンアンプにもはっきりと市場性があると分かってきたんです。社内的にも上層部を含め、その機運が高まってきていましたし、ソニーが作るのならばその名に恥じぬものでなければならないと、高く目標を定めてPHA-1開発に臨みました。」
そしてこのPHA-1の設計を担当したのが長年カーオーディオのアンプ、IC設計を手掛けてきたソニー パーソナル イメージング&サウンド事業本部パーソナルエンタテインメント事業部1部4課の西野康司氏だ。

角田直隆氏・西野康司氏 写真

右:ソニー パーソナル イメージング&サウンド事業本部パーソナルエンタテインメント事業部 角田直隆氏
左:ソニー パーソナル イメージング&サウンド事業本部パーソナルエンタテインメント事業部1部4課 西野康司氏

「仕事を含め以前からヘッドホンを愛用していたのですが、その当時からヘッドホンアンプはほしいと思っていました。私の持論ですが、音の入り口となるカセットデッキやCDプレーヤー、増幅段のアンプ、音の出口となるスピーカーが"オーディオ三種の神器"とすれば、現代の音楽リスニング環境は音の入り口がPC、音の出口がヘッドホン、そしてその間を繋ぐ要素がUSB-DAC付きヘッドホンアンプであると考えていまして、まさにこの要素が新たな"PCオーディオの三種の神器"といえるのではないでしょうか。ヘッドホンの高級化が進み、PCもハイパワーなスペックを持つようになりましたが、それに対してヘッドホンアンプはプアなイメージを持っていたので、ここを何とかしたいという側面もありましたね。オーディオ設計の面から行くとヘッドホンアンプは非常にシンプルな構成となっています。特にポータブルヘッドホンアンプはノイズの少ないバッテリー駆動というメリットもありますね。理想を追求してパターン設計をきちんと行った基板やハイクオリティなパーツを用いたうえで余計な部品を使わず、無駄のない設計を突き詰めた先にあるのはまさにポータブルヘッドホンアンプなのです。ディスプレイ表示やトーンコントロールなどを付加させると見栄えや機能性は向上しますがピュアオーディオからはかけ離れてしまう。PHA-1では理想的なピュアオーディオアンプ技術を凝縮するよう心がけました。」

DACチップには高級モデルにも使われるウォルフソン製WM8740を採用。ポータブル機としては高めの5V電源としていることでS/N比も高い。またアナログ回路には低ノイズ・低歪率な高品位オペアンプTI製LME49860を、そしてヘッドホンアンプ回路には高スルーレートな電流帰還型高級チップTPA6120を用いたことで過渡特性、いわゆる立ち上がり・立下りの良い特性を獲得したとともに高い周波数帯域の音の伸びの良さも兼ね備えているという。加えて正負2電源方式によるコンデンサーレス出力段を採用したことでパワフルかつ高音質にヘッドホンを駆動できるようにしている。

iPhoneと接続したPHA-1  PCと接続したPHA-1

iPhoneと接続したPHA-1 PCと接続したPHA-1

内蔵ヘッドホンアンプが優れているウォークマンはアナログ接続でも充分その良さを引き出せる一方、iPod/iPhoneはデジタル接続(48kHz/16bitまで)を用いることによって幅広いユーザーを高音質でサポートしたいという想いがあったそうであるが、それにはiPod/iPhoneデジタルトランスポートが市民権を得ていることも後押しとなったようだ。さらにPCとの接続ではUSBインターフェースを介してデジタル伝送を行う手法、いわゆるUSB-DACとして機能するのだが、96kHz/24bitまでのハイレゾ対応としたのには「192kHz対応も考えましたが、48kHzから96kHzへのステップアップほどのサウンド変化は少なく、現実味のある96kHz/24bit対応としました。ポータブルヘッドホンアンプでは48kHz対応機が多いので、スタート段階から96kHz対応を検討していました」と角田氏は語る。このUSB接続で要となるUSBドライバーは非同期で接続できる独自のチップを採用していることも注目である。新規開発により88.2kHzという一般的には対応しにくいサンプリング周波数もカバーし、PC接続時の安定度の高さを獲得した。そしてUSB接続で重要となるのがこの非同期対応という点だ。PCからの信号をUSB経由で受け取る際、一般的に送り出し側のクロックを基準として後段のDACまでを同期させているが、この場合PCで発生した歪み=ジッターをそのままDACで復元してしまうデメリットが起こってしまう。そこでDAC直前のドライバー部で一旦その連続性を断ち、メモリーにデータを貯め、ポータブルヘッドホンアンプに内蔵する高精度なクロックで再度生成し直すことでジッターを低減できるのだ。

これらの理想を実現するためのこだわりとして最も重要であったのが"個別パーツごとのノイズ低減化"である。その根幹といえるのが6層構造のメイン基板だ。一般的なポータブルヘッドホンアンプでは2層〜4層程度の基盤が用いられているがPHA-1では6層とすることでグラウンドインピーダンスを下げて動作の安定を実現させるとともに、通常よりも肉厚な35μm圧膜銅箔パターンを用いてシールド効果も向上させ、内部・外来ノイズに対しての耐性も持たせている。なおかつデジタル回路とアナログ回路を分離させることで回路間干渉による不要な内部ノイズを低減してクリアなサウンドも実現した。「ピュアオーディオのパターン設計で大事なのは入力から出力まで信号経路をきれいに追うことができるように部品を配置すること。それができていない基板はグラウンドの引き回しの複雑さが音を濁す要因となります。」と西野氏。

PHA-1

昨今の小型機器には充電プロセスなどの自動化処理できるようなマイコンチップを用いることが多いが、一方でチップが発するノイズの問題も大きく、PHA-1ではそうしたマイコンチップも排除したという。その分、細やかな処理をハードウェアベースで設計しなくてはならず、苦労を伴ったそうだ。さらに小型実装パーツの抵抗も通常用いられる厚膜抵抗ではなく、蒸着で製造される純度の高い薄膜抵抗を採用した。厚膜抵抗は工程上必要な接着材が原因で周波数に反比例する1/fノイズを発生させる。ただし薄膜タイプは特殊なものなので定数変更時には勝手が効かず、回路設計の点でも苦労したとのこと。
また外来ノイズ対策の点でアルミ押し出し材によるボディも大きく貢献している。持ち運び時のボリューム誤操作やジャック部保護の観点から亜鉛ダイキャストバンパーも備えているが、特徴的なのはウォークマンやiPhoneなどの携帯プレーヤーやスマホを装着できるシリコンベルトの存在だ。ケース側面にベルトを引っ掛けるレールを設けてあり、簡単に着脱できる。またボディ天板・底板には滑り止めのシリコンが取り付けられているので使い勝手も良い。ケースのサイズ感も一緒に使うことが多いであろうスマホのサイズに合わせこんでいるのだという。

PHA-1

こうした数々のこだわりを惜しげもなく積み込んだPHA-1。実際にそのサウンドを聴くと昨今のポタアンでは味わうことができない解像度、S/Nの高さと共にアナログライクな音の厚み、音像の実在感を同時に味わえる深い音色が特長となっている。角田氏は「とにかく耳の肥えたマニアの皆さんに聴いてほしいですね。西野には"変わった音のするアンプは作らないでほしい"と予め伝えていたんです。PHA-1を我々のヘッドホン開発でも使えるリファレンス機としたかった。個性的な音色を持つポタアン市場の中で非常にニュートラルな"センター"のポイントを目指しました」とその完成度に胸を張る。西野氏も「静寂の中、一切波が立っていない摩周湖のようなきれいな水面に波紋が伝わっていくような音の広がりを目指しています。ノイズはその湖面を揺らすさざ波。さざ波を排除した鏡のような水面に芯の通った音の波紋を再現したいのです。このPHA-1もその理想に沿ったサウンド作りができました。しかしソニーとしてポタアン製品はここからスタートなので、今後の展開も楽しみにしてほしいですね。」と目を細めた。濃密で彫りの深い新たなポタアンサウンドをぜひともヘッドホンマニアの皆さまにも体感していただきたいと思う。

※iPod,iPhone,iPadは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。

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商品情報

ポータブルヘッドホンアンプ

PHA-1

原音に、どこまでも忠実に、上質なクリアサウンドを再現。ヘッドホンの性能をあますところなく引き出すポータブルヘッドホンアンプ

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