商品情報・ストアヘッドホン The Headphones Park 開発者インタビュー PHA-2 開発者インタビュー

Engineer's Interview ポータブルヘッドホンアンプ PHA-2 開発者インタビュー

ハイレゾ対応を遂げた、
ポータブルヘッドホンアンプのさらなる飛翔

取材:岩井 喬

ソニー初のポータブルヘッドホンアンプPHA-1が発売されてから1年。ヘッドホンをより高音質に楽しむための手段としてポータブルヘッドホンアンプを用いるというスタイルが徐々に認知されてきているように思う。市場にはさらに多くのポータブルヘッドホンアンプが溢れPHA-1もまた当初の予想を上回る好調なセールスを記録しているとのこと。その一方で192kHz/24bit・PCMやDSDファイルといった上位フォーマットでの配信音源数も格段に増え、さらなるハイレゾ対応へのニーズもこの1年でさらに高まってきた。そして2013年秋、PHA-1をベースとしつつ、時代の要望に応える192kHz/24bit・PCM、2.8/5.6MHz・DSD対応USB-DACを新たに内蔵したハイレゾ対応ポータブルヘッドホンアンプPHA-2が誕生。PHA-1同様iPhone/iPad/ iPodといったiOSデバイスとのデジタル接続に加え、192kHz/24bitハイレゾ対応ウォークマンF880シリーズ&NW-ZX1とのデジタル接続も可能となった。まさにポータブルヘッドホンアンプのリファレンスたるPHA-1を補完してくれる心強い上級機だ。PHA-1に引き続き、PHA-2の設計を担当したソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部V&S事業部サウンド1部MDR 4課、西野康司氏に開発の経緯を伺う。

西野康司氏 写真

ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部V&S事業部サウンド1部MDR 4課 西野康司氏

「96kHz/24bit対応であったPHA-1発売後、すぐに192kHz/24bit、DSD対応を望む声が多く上がるだろうということもあり、PHA-2開発もすでに準備を進めていました。評判の良いアナログ回路部などの共通ブロックはそのまま生かしていますが、USBドライバーのインストールが必要ないPHA-1はCDフォーマットである44.1kHz/16bitを中心に細かいことを気にせず楽しめる“気軽さ”を前面に押し出したつくりです。192kHz/24bit・PCMやDSDフォーマットなど、ハイレゾ音源を深く楽しみたいというより音質にこだわるユーザーに向けて開発したのがPHA-2となります。」
PCとUSB接続した際、96kHz/24bitまでのPCMフォーマットはWindows、Macの両OS環境ともUSBドライバーを特別インストールすることなくそのまま楽しむことができるが、192kHz/24bit・PCMフォーマット再生ではUSB2.0およびUSB Audio Class 2.0に対応した環境が必要になる。Mac環境はOS X 10.6以降であれば標準対応できているためそのまま使用できるが、Windows環境ではドライバーソフトウェア『Sony Portable Headphone Amplifier USB Audio 2.0 Driver』のインストールが必要だ。またDSDフォーマットを含めたハイレゾ再生は標準的にPCに用意されているiTunesやWindows Media Playerでは多くの場合対応していないため、プレーヤーソフトも別途必要となる。PHA-2を含めたソニー製ハイレゾ対応モデルには最適化された専用プレーヤーソフト『Hi-Res Audio Player』が用意されているので予めダウンロードしておくとよいだろう。PHA-1はUSBドライバーを独自チップで構成していたが、このPHA-2ではハイレゾ環境への対応力の高いXMOS製USBドライバーを採用。ファームウェアに関してはソニーとXMOSとの共同開発した仕様のものを用いており、ウォークマンも含めた最適な動作環境を実現させているという。Windows環境では低遅延で安定性の高いASIOドライバーにも対応。またMac環境でのDSDネイティブ再生においてはDoP(DSD over PCM)方式が用いられている。

PCと接続したPHA-2

PCと接続したPHA-2

PCMとDSDという異なるフォーマットに対応するようになったこと、さらに192kHz/24bitや5.6MHzという各々の最高スペックを再生させるためにPHA-1から大きく異なるのがDACチップの変更である。PHA-2ではTI製PCM1795を搭載しているが、音質の良さはもちろんのこと、192kHz/24bit・PCMから2.8/5.6MHz・DSDまで対応できる数少ないチップであることが選択の理由であるという。またハイレゾ系音源への忠実再生を実現させるため、内蔵クロックも44.1kHz系(44.1/88.2/176.4kHz)用の22.5792MHz、48kHz系(48/96/192kHz)用の24.576MHzが個別に用意され、より高精度な完全同期復調を実施。低ジッターな非同期(アシンクロナス)伝送と相まって、一層アキュレートなDA変換を可能としている。さらにウォークマンとのデジタル接続においてはより理想的な環境が構築できると西野氏は続ける。

DACチップ

DACチップ

「PCとの接続ではUSBケーブルを通して混入してくるノイズが多く、S/N的には不利になります。これまでハイレゾデータはこのようなデメリットを抱えるPCからでしか受け取ることができませんでしたが、今回のハイレゾ対応ウォークマンのデジタル出力によってこの問題を解消することができるのです。ウォークマンの方が低ノイズで無駄な電力を使ってないため余分な輻射もありません。だからこそ高S/Nで理想的なデジタルデータがもらえるわけです。加えてウォークマン側がホストとして通信できるので、ポータブルながらも非同期伝送が実現し、PHA-2内部での高精度なリクロックも可能となりました。実は我々ポータブルヘッドホンアンプの開発部隊とウォークマン開発部隊は同じフロア内、半径数十メートル以内という環境におりますので、意見交換も密に開発できたのです。このベストなソリューションが社内で完結できたことがなによりも大きな強みですね。

ハイレゾ対応ウォークマンは独自のデジタルアンプS-Masterを用いており、高音質ばかりでなく、長時間再生にも重きを置いた効率の良さが大きなファクターである一方、オーバーヘッド型ヘッドホンなどを鳴らすにはドライブ力不足となることもある。その点、本機のような電源部に余裕のあるAB級アンプであれば、アナログライクでドライブ力を伴った高音質な増幅が可能であり、デジタル接続での組み合わせによって新たな高音質を得られるようになった。ウォークマンのデジタル接続はS-masterによる高音質を追求しているこれまでの歩みからすれば、一見相反するものであるが設計思想の違いを含め、お互いの持つ良い部分を共有できる最良の関係性にあるといえるだろう。

ここまでPHA-2で新たに採用された点を中心に述べてきたが、PHAシリーズ共通の根幹ともいえるアナログ部にも目を向けてみよう。仕様として新たに追加された要素はライン出力である。基本的なインターフェイスはPHA-1と共通のため、新たに端子を追加することはできない状態であったが、ライン入力端子と兼用することで事なきを得た。西野氏も「PHA-1を購入されたお客様からはライン出力も欲しかったというご要望も多く、私も同じようにその必要性を感じていました。普段PCに音楽ファイルをためているのでスピーカーから音を聴きたい場合はUSB-DACにライン出力が必要となるからです。ですから今回のPHA-2では実現したかった機能の一つでしたね」と語る。

心臓部となるヘッドホンアンプ出力段には電流帰還型高級ヘッドホンアンプIC、TI製TPA6120 を搭載。正負2電源によって実現したOCL方式も踏襲し、ライン出力にも生かされる低ノイズ・低歪率の高性能オペアンプTI製LME49860や35μmの厚膜銅箔プリント基板もPHA-1から引き続き採用している。さらにアナログ部ではオーディオ用フィルムコンデンサや薄膜抵抗などのパーツも部位によってハイスペックなものへと見直しを図るとともに、電源系に工夫をこらし、S/Nを良くしながら、妨害電波などの影響を受けにくいより良いスペックのパーツを選んでいるとのこと。各部への電源供給は専用の電源ICを割り当てるというこだわりようであり、高価であっても良い部品を徹底的に投入するという設計思想を貫き、PHA-1以上に電源が強化された。

「より広帯域なハイレゾ再生を実現させるためにはさらにシビアさが要求されるのですが、スペック上ほぼ最高のフォーマットを扱うので、デバイス単位でその性能出しが厳しくなるわけです。各デバイスの持つスペックの最大値を生かせるよう工夫したつくりのおかげで、実装した状態とデータ上の最高スペックをほぼ同一のものとできるようになりました。その分回路が複雑になり基板も大きくなりましたが、従来と同じ6層基板によって自由度の高い理想的なパターン配線が可能です。6面使うことで表出する2面分はシールドとして機能させています。パターン配線の上で大事にしているのはグラウンド側のラインについてです。信号はホット側を通ってグラウンドを経由し戻ってくる1周の経路で配線を考えなければなりません。ホット側は理想的な配線ができてもグラウンド側はそれよりも優先順位が低く、様々なポイントを避けつつ戻るルートを作るのが一般的です。今回は特にホット側とグラウンド側を同じ重みづけで配線していますが、それを実現するためには多層基板が必要不可欠なのです。こうした点はPHA-1でも心がけていましたが、PHA-2では検討を練り込む時間があったのでより進化していますね」と西野氏。

ウォークマン®と接続したPHA-2

ウォークマン®と接続したPHA-2

こだわりのパターン配線に至る理由は、西野氏が若かりし頃担当した、ビデオデッキのチューナー設計にあったという。現在ほど基板の集積度が高くない時代、一つの筺体には複数の大きな基板がセットされていたことから輻射ノイズも大きく、フィーダー線によって受信するチューナー部は自分で発したノイズの影響を被ることになってしまうため、そのノイズ源をきれいにすることもチューナー担当の重要な役割であったそうだ。それを解消するノウハウがこのPHA-2のアルミ製ボディや6層基板の表面シールド効果などに生かされている。
「スマホは着信や発信時にとても強力なノイズを発するので、その影響を抑えるのに苦労しました」とその効能について西野氏は誇らしげに語る。
PHA-2はPHA-1に比べ、新型iPhoneやウォークマン®など接続機器とのサイズ感も鑑み、ボディサイズや重量が増したものの、そのアイデンティティ溢れるデザイン性はそのままに、亜鉛ダイキャストバンパーのリブの太さを上げ、強度アップを図っている。ヘッドホン出力端子部の真鍮リングはNW-ZX1と同じように端子部の補強や振動の抑止効果も持たせた。さらに外観上の変更点として、POWERとCHG LEDの配置がPHA-1と逆になり、電源が入った状態であることが認知しやすくなった。またゲイン切り替えの表記も“ノーマル”と“ハイ”の表記に改められ、どちらに切り替えればよいか迷うという声に応えたという(“ハイ”の切り替えはインピーダンス100Ωを超えるヘッドホンを使用するときに切り替えるとよいだろう)。
PHA-1と比較し、PHA-2は透明度が高く、低域の解像度も増し、よりパワフルでキレの良さが際立つ鮮明なサウンドとなった。ハイレゾ音源の再生能力も高く、一つ一つの楽器の分離感、音像の密度もよりよいものとなっている。S/Nの高いリアルな空間再生能力はポータブルヘッドホンアンプのなかでも上位の実力を持つといえるだろう。上位クラスを中心にハイレゾ対応ヘッドホンの数も増えた現在、そのハイレゾスペックを生かしきれるポータブルヘッドホンアンプはなかなか見当たらなかったが、PHA-2はその期待に応えるモデルとしてふさわしい実力を備えている。ハイレゾ音源の持つ高解像度なサウンドの素晴らしさを、ポータブル環境で楽しむために必要な取り組みについて、西野氏に伺ってみた。
「ホームオーディオとの大きな違いはバッテリー駆動によるクリーンな電源環境によるS/Nの良さにあります。ホームオーディオは部屋の影響やコンポーネントの組み合わせによって理想の音を追求しなくてはなりませんが、ポータブルオーディオは逆にシンプルで、ヘッドホンとポータブルヘッドホンアンプ、そしてウォークマンなどのプレーヤーだけ考えればよいのです。高品質なヘッドホンが数多く出回り、ハイレゾ音源も以前に比べれば格段に手に入れやすくなりました。我々の手掛けるヘッドホンアンプはヘッドホンを鳴らすだけのシンプルなものですが、このアンプの性能差によっても大きく音質が変わることをぜひ体感していただきたいですね。その変化はヘッドホンを変えることと勝るとも劣らぬほどのものですから、我々もそうしたことがより理解できるよう環境をつくっていきたいと考えています。」
かつてのヘッドホンはアンプ側でトーンコントロールなどを設け、それをリスナーがうまく使いこなして好みのサウンドを作るという、ヘッドホンの非力さをカバーする回路が必要であったが、ヘッドホンの性能が向上した現在はアンプ側に余計なコントロールを行う必要性がなくなり、シンプルかつピュアな増幅を行えばよいという、オーディオ的にも理想といえる環境が整った。
「PHA-1は96kHz/24bitまでのサウンドしか対応できず、昨今増えてきた192kHz/24bit音源など聴けないものもありました。PHA-2は192kHz/24bitのハイレゾ対応ウォークマンとのデジタル接続を含め、よりハイスペックなものを目指しているお客さまに満足していただけるプロダクトに仕上げることができました。ポータブルでも高音質をテーマに、リビングやベッドサイドなど、どこへでも持ち出して楽しんでいただきたい。最高音質のヘッドホンを最大限生かすサウンドを求めた時、ヘッドホンアンプは非常にシンプルなつくりにできるのではないでしょうか。PHAシリーズはその延長上にベストなソリューションを構築できるはずだと思っていますので、一歩一歩理想に近づけると信じて今後も開発を続けていきたいですね」ポータブルヘッドホンアンプの理想郷へは道半ばと、西野氏は謙虚にその心境を語ってくださった。

PHA-2

PHA-2は現在主要なハイレゾ音源再生に求められるスペックと様々なヘッドホンを生かし切る優れたドライブ能力、そして解像度を備えた、ポータブルヘッドホンアンプのベストプロダクトといえる。従来のCDスペックをはるかに超えるハイレゾ音源に込められた緻密な世界をPHA-2のパフォーマンスによって存分に味わっていただきたい。

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商品情報

ポータブルヘッドホンアンプ

PHA-2

DSD(Direct Stream Digital)を再生できるポータブルヘッドホンアンプ

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