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ハイビジョン放送をそのまま記録。
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MPEG-2 TSとは
ブルーレイディスクアプリケーション規格の特長としてまず、MPEG-2 TS(トランスポートストリーム)方式による記録が挙げられます。MPEG-2 TSは、主にデジタル放送で採用されている映像・音声・データの多重化伝送方式で、伝送したいビット列をある長さごとに分割してヘッダーを付加し、最終的に188バイトのTSパケットと呼ばれる単位にして伝送します。MPEG-2 TSは、通信路の伝送方式と親和性の高い188バイト固定長の短いパケット、複数のチャンネルを多重化できる、電子番組表(EPG)の情報を多重化できる、などの特長を持ち、より放送に適した方式となっています。ブルーレイディスク規格では、デジタル放送と同じMPEG-2 TSを記録方式に採用することで、MPEG-2 TSをほぼそのまま記録できるようにしました。具体的には一週間分の番組表の中から該当する番組の情報だけを抽出するなどの、放送特有の管理情報・番組情報の一部を変更する処理を行うだけで、映像・音声などのデータはそのまま記録します。つまりダウンコンバートや再エンコードをせずに、ハイビジョン放送の高精細映像や高音質な音声を放送時のクオリティのまま記録することができます。また、将来登場するさまざまなデジタル放送もMPEG-2 TS方式を採用する予定ですから、新しく開始される放送にも比較的容易に対応させることができます。

フルTSから特定のチャンネルを抜き出して記録
ブルーレイディスクアプリケーション規格では、複数のチャンネルが多重化されたフルTSから録画したいチャンネルを構成するパケットだけを抜き出して再構成したパーシャルTSをディスクに記録します。ディスクに記録する際には、一部の不要な情報の削除や再構成、著作権情報に従った処理を行いますが、画質や音質に影響を与える符号化データ(エレメンタリーストリーム)のレベルでの変更は、基本的に行いません。そのため、画質・音質の劣化がなく、放送時のクオリティを保ったままでのディスクへの記録・再生を実現しています。
日本以外にも、アメリカATSC(Advanced Television Systems Committee)のDTV (Digital TV)、ヨーロッパのDVB(Digital Video Broadcasting)といったデジタル放送がありますが、パーシャルTSによる記録は、これら海外のデジタル放送を記録する際にも適用できる親和性の高い記録方式です。

 

デジタル放送の多チャンネル化とMPEG-2 TSの関係
放送衛星には、地上局から送出される放送電波を中継する中継器(トランスポンダー)が複数個搭載されています。アナログ方式のBS放送では、1本の中継器で伝送できるチャンネルの数は基本的に1つでした。対してBSデジタル放送は、中継器1本で、2つまたは4つのMPEG-2 TSを中継していきます。さらに各MPEG-2 TSには複数のチャンネルを多重化できるため、アナログ方式と比べてチャンネル数を大幅に増やすことが可能となりました。このようにBSデジタル放送では、情報圧縮により1チャンネル当たりに必要となる伝送ビットレートを減らし、空いた帯域に別のチャンネルを入れることで、限られた伝送帯域をより効率良く使用しています。
デジタル放送のもう1つの大きな特徴は、データ放送です。データ放送は画像・音声といった素材と、それらの表示を制御し、さらにユーザーからの入力に反応する動作を定めたBML文書から構成されています。データ放送の素材やプログラムはそれぞれファイルとして制作され、データ放送の画面はそれら数多くのファイルを組み合せて構成されています。ファイル群は最終的に受信機が内蔵するメモリー上に展開されて実行されますが、ファイルを伝送する方法もMPEG-2で規定されています。これはデータカルーセル伝送方式といわれるもので、ファイルは、まずセクションという形式に分割され、決められた周期で放送局から繰り返し送出されます。受信機は任意の時刻から1周期分のデータを獲得し、受信機内のメモリーに展開することで、ファイルを復元しています。
また、デジタル放送の非常に便利な機能として電子番組表(EPG)があります。電子番組表は、SI(番組配列情報)と呼ばれる情報をもとに作られていますが、SIのテーブルもセクション形式でMPEG-2 TSに多重化されています。
以上のように、MPEG-2 TS方式は、複数のチャンネルを1本に多重化してシリアル伝送できるという特長を持つだけでなく、さらにファイルや番組情報をセクション形式と呼ばれる方法に従って映像・音声に多重化して伝送することが可能であるなど、よりデジタル放送に適した多重化方式です。デジタル放送に対応したレコーダーは、こうしたデジタル放送の特長を損なうことなく記録・再生できることが求められると考え、ブルーレイディスクアプリケーション規格では、MPEG-2 TSの形式を保ったまま記録する方法を採用したのです。
映像 プロファイル・レベル 水平ドット数 有効走査線数 アスペクト比 標準最大
ビットレート
(映像のみの値)
MP@HL 1920,1440 1080i 16:9 22Mbps
MP@HL 1280 720p 16:9 22Mbps
MP@H14L 720 480p 16:9 12Mbps
MP@ML 720,544,480 480i 16:9または4:3 8Mbps
音声 符号化方式 MPEG-2 AAC LC プロファイル
チャンネル数 最大5.1チャンネル
ビットレート 標準ステレオ 最大144kbps
高音質ステレオ(圧縮Bモード) 最大256kbps
マルチチャンネルステレオ 最大384kbps
サンプリング周波数 48kHz、独立ラジオ放送では32kHzも使用可
*他に低階層の縮小動画もあります。

表2.BSデジタル放送の映像・音声フォーマット


図9.BSデジタル放送の送出システム


用語解説
◎TS:Transport Stream,トランスポートストリーム

◎ES: Elementary Stream, エレメンタリストリーム。圧縮符号化によって生成されたデータ列。

◎PES: Packetized Elementary Stream, パケタイズドエレメンタリストリーム。ESをある単位ごとに分割し、復号化時刻、表示時刻などの情報をヘッダーとして付けたもの。

◎SI: Service Information, 番組配列情報。 選局や電子番組表(EPG)の情報。

◎BML:W3Cで定義されたXHTML 1.0とCSS 1、CSS 2をベースに動作記述言語としてECMAScriptを採用し、さらに放送サービスに必要な機能を拡張した言語体系。

◎MODEM:MOdulator DEModulator (変復調装置)

◎CA:Conditional Access (限定受信)

◎CAS:Conditional Access System (限定受信方式)

◎EPG:Electronic Program Guide (電子番組表)
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図10.BSデジタル放送の受信システム


図11.MPEG-2システムのトランスポートストリーム

ビデオ符号化器やオーディオ符号化器からは、圧縮符号化されたデータ(ES:エレメンタリストリーム)が出力されます。これら複数のESの間の同期を取るために、復号化時刻や表示時刻など(タイムスタンプ)をヘッダーとして付加したものがPES(パケタイズド エレメンタリ ストリーム)です。PESパケットの長さは固定されておらず、可変長です。MPEG-2 TSは複数のPESを1本のビット列に多重化したもので、PESパケットを細かく分割し、長さ188バイトの固定長のTSパケットに格納しています。リアルタイムのデータ伝送においては、受信側のバッファが破綻しないよう、送信側と受信側の間で同期を取る必要があります。そのための基準時刻情報(PCR)が、TSパケットのアダプテーションフィールドには含まれています。TS多重化の際には、PAT・PMTと呼ばれるチャンネル(プログラム)を特定するための情報も多重化されます。MPEG-2 TSでは、複数のチャンネルを1本に多重化できることが大きな特長です。上の図の例では、(V1,A1)、(V2,A2)という、2つのチャンネルを1本のMPEG-2 TSに多重化しています。


MPEG-2 PSとMPEG-2 TSの違い
映像・音声・データ多重化の方式を定める規格をMPEG-2システムと呼びますが、MPEG-2システムではMPEG-2 TSの他に、もう1つMPEG-2 PS(プログラムストリーム)と呼ばれる多重化方式も規定しています。MPEG-2 PS方式を採用した身近な再生メディアとしては、DVDビデオがあります。DVDビデオは、映像・音声・字幕などの情報をMPEG-2 PS方式で多重化してディスクに記録しています。
MPEG-2 PSは、パックと呼ばれる単位を並べたストリームです。パックは、基準時刻情報をパックヘッダとして持ち、0個以上のPESパケットを含みます。MPEG-2 PSは1チャンネル分に相当する映像・音声のPESを多重化することが出来ます。
DVDビデオでは、1セクターのサイズが2,048バイトの固定長という記録メディアの性質に合わせて、1セクターに1パックを格納しています。そしてビデオやドルビーデジタルのPESパケット1個を1パックに格納することで、図13のようなシンプルな構成になっています。
MPEG-2 PSは、可変長のPESパケットサイズをセクターサイズに整合させるなどしてシンプルな構造にすることができるため、再生専用のDVDビデオで採用されました。

□MPEG-2 AACに対応
音声の符号化方式としては、高圧縮ながら、高音質でデコード(再生)時の負担も軽いMPEG-2 AAC LCプロファイルが用いられています。
MPEG-2 AAC(MPEG-2 Advanced Audio Coding)とは、従来の音声コーディングよりもより高い効率を目指して、1997年4月にISO 13818-7として標準化された音声コーディングです。もともとはMPEG-2の音声部分として開発が開始され、ソニーをはじめ、多くの企業や大学によって標準化されました。MPEG Audio Layer 1、2、3よりも高品質、低ビットレートを目標に開発されています。

図13.MPEG-2システムのプログラムストリーム

ここでは、MPEG-2 TSとの比較のため、DVDビデオのMPEG-2 PS(プログラムストリーム)の例を挙げます。MPEG-2 PSはパックの並びで構成されますが、DVDビデオでは、パック長は1パック=1セクターとして2048バイトに固定されています。パックヘッダには、復号器の動作の基準となる時刻情報(SCR:System Clock Reference)が入っています。DVDビデオ規格では、1つのパックにビデオのPESパケットが一個、あるいはドルビーデジタルのPESパケットが一個というように、PESパケット一個を入れることを基本としています。これは、セクターの単位で行われるディスクアクセスとの整合を取ることで、構造をシンプルにするためです。DVD独自のナビゲーション情報もパックとして多重化されています。MPEG-2 PSでは、MPEG-2 TSでいう1チャンネル分に相当するビデオ・オーディオPESしか多重化できません。

用語解説
◎TNS:Temporal Noise Shaping
信号レベルの大きな所に量子化ノイズを集中させる技術。
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