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アナログ放送も高画質記録。
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アナログ放送もMPEG-2 TSで記録
ブルーレイディスクアプリケーション規格では、これから普及が見込まれるデジタル放送だけでなく、従来からのNTSC方式の放送や、ライン入力からの映像信号の記録にも対応しています。これらアナログの映像・音声信号が入力されると、レコーダーはアナログ-デジタル変換をした後、圧縮符号化を行うことでコンパクトなデジタルデータを生成します。そしてそれら個別に符号化された映像・音声データを多重化してMPEG-2 TS方式の1本のストリームにまとめ、ディスクに記録します。
ブルーレイディスクアプリケーション規格では、以上の符号化、多重化、記録の方法を定めています。これを特にSESF(Self Encoded Stream Format)と呼んでいます。SESFに準拠したストリームをディスクに記録することで、様ざまなブルーレイディスクレコーダーにおける再生互換性が保証されます。SESFの主な仕様は表3のようになっています。映像は、MPEG-2ビデオのMP@ML(メインプロファイル・メインレベル)で符号化しますが、ビットレートはMP@MLの規格上の上限である15Mbpsまで対応しており、高画質な記録を可能としています。
一方、音声は、1映像ストリームに対して最大で2音声ストリームまで多重化することができます。1音声ストリームあたり、ステレオまたはマルチチャンネルの音声を記録することが許されていますので、例えば、英語のステレオ音声と日本語のステレオ音声を共に記録することも可能となっています。
なお、映像記録に付随して、北米での放送で広く使われているCC(クローズドキャプション)の記録の方法も規定しています。また、ブルーレイディスクアプリケーション規格は、PAL方式の放送の記録にも対応しています。
このように、ブルーレイディスクアプリケーション規格は、アナログ・デジタルの放送どちらにも対応した高い柔軟性を持った規格なのです。
多重化 多重化ストリームの形式 パーシャル MPEG-2 TS(トランスポートストリーム)
多重化されるPSI/SI PAT,PMT,SIT,DIT
プログラム数 1
ビデオストリームの数 0または1
オーディオストリームの数 1または2
テレテキストストリームの数 0または1
(625/50システムでのみ可能)

ビデオストリーム

符号化方式

MPEG-2 Video,MP@ML
ビットレート 最大15Mbps
  525/60システム 625/50システム
フレームレート 29.97Hz 25Hz
ピクチャ形式 720×480,704×480
544×480,480×480
352×480,352×240
720×576,704×576
544×576,480×576
352×576,352×288
GOP長 60フィールド以下 50フィールド以下
CC
(クローズドキャプション)
ピクチャレイヤのuser_data領域に記録
PES(パケタイズド エレメンタリストリーム)構造 1PES=1 ビデオAU(アクセスユニット)
オーディオストリーム 符号化方式 ドルビーデジタル MPEG-1
Audio LayerII
リニアPCM
チャンネル数 最大5.1チャンネル 2チャンネル 2チャンネル
ビットレート 64kbps〜448kbps 32kbps〜384kbps 1.536Mbps@16bit
2.304Mbps@24bit/20bit
サンプリング周波 48kHz
PES構造 1PESに整数個のAU(アクセスユニット)

表3.標準SESFの規定

ディスクの特性を生かした記録/再生方法の実現。
ストリームファイルとデータベースの特性の違い
映像・音声のストリーム、またそのストリームを管理するデータベースをどのようにディスク上に配置するかを管理・実行する役割を担うのがファイルシステムです。ファイルシステムは、ディスク上の記録面を論理セクターに分割しアドレスを割り当てて管理し、ディスクへの読み書き機能を上位の層に提供しています。ストリームやデータベースは、このファイルシステムの介在により、ディスク上にファイルとして記録されています。
ところで、ストリームファイルのサイズは高画質・長時間記録によりギガバイト単位となる一方で、ストリームを管理するデータべースファイルは数キロバイトから数メガバイトと、ファイルサイズに大きな開きがあります。また、ストリームファイルは実際に映像・音声を再生する時にだけ読み込まれるのに対し、データベースファイルは、メニュー画面を表示する際などにも頻繁に読み書きされます(表4)。
これら性質の異なるファイルを混在させてディスク上の任意の位置に配置させてしまうと、アクセス時間の増加を招くことになり、効率の良いシステムとは言えません。
このような、記録するファイルの各種の特性を考慮し、シンプルでありながらもディスク媒体を用いたビデオレコーダーシステムに要求される仕様を満たすよう新たに開発されたファイルシステムが、BDFS(ブルーレイディスクファイルシステム)です。
BDFSでは、ディスク上の記録領域を、図14のようにギャザードファイル領域とリアルタイムデータ領域に分け、ファイルシステムの管理情報やアプリケーションレイヤーのデータベースファイルはギャザードファイル領域に固めて記録し、その他の映像・音声のストリームファイルはリアルタイムデータ領域に記録しています。
こうすることで、ギャザードファイル領域に記録された複数のファイルを少ないシーク回数で一度に読み込むことが可能となり、プレイリストを編集する際の応答時間やメニュー画面を表示するまでの時間が短縮されるなど、レスポンスが大きく向上します。
また、各ファイルに設定されているロバスト属性を有効にすると、そのファイルはディスク媒体上、物理的に離れた位置にコピーが書き込まれ ます。万一、オリジナルのファイルの読み込みに障害が発生した場合にはコピーを読むことで、読み込みエラーの発生確率を減らしています。
エラー対策と共に、ディスクの寿命を短くしないための仕組みもBDFSには用意されています。メディアの書換え可能回数は媒体の物理特性で決まり、通常使用の範囲では問題ない程度の十分大きな値となっていますが、特定の箇所だけを頻繁に書換えるような記録方法では、ディスクの寿命が短くなる可能性があります。例えば常に内周側の空き領域から使っていくような記録のやり方では、外周と比較して内周側の記録面の寿命が短くなる可能性があります。BDFSでは、空き領域をまんべんなく使うための仕組みを導入しており、この問題に対処しています。
  ストリームファイル データベースファイル
ファイルサイズ 大(数MB〜数GB) 小(数KB〜数MB)
読み書きの頻度 少 多
読み書きのタイミング リアルタイムの読み書きを保証する必要がある。 リアルタイムの読み書きは必須ではない。
耐エラー性 エラーの影響は局所的。
エラーの発生時は、リトライよりも
リアルタイム性を優先する。
エラーの発生は重大な障害を引き起こすため、
エラー発生時のリトライや二重書き等の対策が
必要。
BDFSでの対策 リアルタイムデータ領域に記録。
ジャンプパフォーマンスモデル。
ギャザードファイル領域に記録。
ロバスト属性による二重書き。

表4.ストリームファイルとデータベースファイルの特性の違い


図14.ファイルの特性に応じた領域を提供するBDFS


映像・音声ストリームの記録に適したファイルシステムの構造
新しいディスクや、全消去を行った直後のディスクに記録する場合、一般にファイルは連続した論理セクターに記録されます。しかしその後、編集によってファイルやその一部を消去していくと、ディスク上のあちこちに小さな空き領域が発生します。この領域は、新たなファイルを記録する際に使われますが、その結果、1つのファイルがディスク上で分割されたいくつかのデータのかたまりによって構成される状況となります。
このような、ファイルを構成し、連続な論理セクターに記録されたデータのかたまりを、BDFSではエクステントと呼んでいます(図15)。

図15.エクステントの概念図

1つのファイルが複数のエクステントから構成されている場合、あるエクステントから次のエクステントと次々にエクステントを読む動作を繰り返すことで、ファイルの読み出しが行われることになります。
ところで、あるエクステントから別のエクステントに移る際には、ディスクの回転数を変化させ、光ピックアップを移動させる必要があります。このアクセス時間は最大で0.8秒ほどになります。この間、ドライブからはデータが取り出せませんが、映像・音声のデコード・表示は継続して行われます。このとき再生が途切れるというような障害が発生しないよう、エクステント間で発生するアクセス時間の影響を吸収するような仕組みが必要です。ブルーレイディスクのシステムでは、ディスクからの読み出しを行うドライブは、ストリームの再生速度よりも高速にストリームを読み出せるので、デコード前のストリームをバッファメモリーに一時的に蓄積することができます。そしてエクステントの接続点でドライブからデータを読み取ることが出来ない間は、バッファメモリーに蓄積しておいたデータを連続的にデコーダーに供給することで、アクセス時間の影響を見かけ上なくしています(図16)。バッファメモリーを搭載するシステムにおいては、バッファメモリーのサイズの規定や、リアルタイムに変化するデータ蓄積量のスケジューリングを巧みに行うことが重要となります。少なくともディスクからの読み出しにおいて画像・音声を途切れなく再生できるためには、次のエクステントからの読み出しが可能となるまでに、バッファメモリーに蓄積されたデータが空にならないようにすればよいことがわかります。これがシームレス再生に必要な連続供給条件になります。

さて、連続供給の条件を満たすには、いくつかの方法が考えられます。BDFSではディスク上のあるエクステントから任意のエクステントにジャンプしても、バッファが空にならないようなエクステントの最小サイズを規定しています。つまり、エクステントの最小サイズに制限を加えることで、次のエクステントへのジャンプの前に十分な量のデータをバッファに蓄積できるようにしているのです。エクステントの最小サイズの規定は、ファイルを記録する時だけでなく、部分消去を行い、残りをシームレスに接続する、といった既存のファイルを変更する際にも適用され、ファイルを構成するエクステントが常にこの最小エクステントサイズ以上の大きさになるよう、適切な配置が行われます。最小エクステントサイズは、ディスクからの読み出しレートと、ドライブのアクセス時間から算出される値となっています。ところで、ディスク媒体上の欠陥により使用不可のセクターがある場合には、やはりデータの読み出し・書き込みができなくなりますので、以後そのセクターを使わないように印をつけておく必要があります。この欠陥の数は固定されたものではなく、ディスクの使用中にもゴミなどの影響で増加することがあります。そのため、使用中に欠陥が発生することも考慮して、使用不可のセクターがある程度生じた場合でも、データの連続供給を保証できるよう、BDFSの連続供給のモデルは考えられています。

図16.バッファに蓄積されたデータ量の遷移と、連続供給の条件(ジャンプパフォーマンスモデル)


用語解説
◎シーク回数
ピックアップがディスクにアクセスする回数のこと。また、目的のトラックに移動するための時間をシーク時間と呼びます。

◎ロバスト属性
データを二重書きするかしないかを設定するフラグのこと。データベースファイルがディスクの傷などで読み取り不能になるとストリームの管理情報がなくなり再生できなくなってしまいます。そこでデータベースファイルについては同じデータを2カ所に書いておくことでどちらか一方が読み出し不能になっても正しいデータが読みとれるようにしておく必要があるのです。

◎論理セクター
ファイルシステムの利用者に提供されるディスク上の読み書きの最小単位です。ここでの「ファイルシステムの利用者」とは、AVストリームやデータベースを読み書きするアプリケーションレイヤーを指します。
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