想いをカタチに

My Sony STORY vol.10「モノづくりは、答えのない謎解きの連続。その面白さを「toio」を通じて感じてほしい」のキービジュアル
#クリエイティビティを高め合う

モノづくりは、
答えのない謎解きの連続。
その面白さを「toio」を通じて
感じてほしい
Vol.10

第10回“My Sony STORY”では、自由にあそべるキューブ型ロボットトイ「toio(トイオ)」を企画・開発した田中のストーリーを紹介します。
子どものころからロボットづくりに夢中だった“ロボット少年”がエンジニアとなり、その情熱をプロダクト開発に注いでいる現在。その想いに迫ります。

ロボコンでの挫折が
エンジニアへの道につながった。

田中がロボット工作に夢中になったのは、小学2年生のころ。NHKの子ども番組『できるかな』を見て、ノッポさんをまねしながらラップの芯やフィルムのケース、発泡スチロールのトレイなどの材料を集めては、毎日のように工作を楽しんでいたといいます。

夏休みの自由研究はもちろんロボット工作。モーターや電池のキットを改造し、ラジコン操作するロボットを自作していました。当時の将来の夢は発明家。まだエンジニアという言葉を知らなかった頃で、エジソンの伝記を読んで感動したことも影響しています。その後、小学校高学年のときに高専ロボコンの存在を知り、中学卒業後の進路に地元の佐世保高専を選びました。
「toio」事業開発室の田中さんのインタビューカット

「toio(トイオ)」の企画・開発者 「toio」事業開発室 田中

高専4年生で出場したロボコンでは、地方大会でアイデア賞を受賞し全国大会へ。しかし2回戦でロボットが思わぬ断線を起こしてしまい、無念の敗退。この経験が「もっとしっかりしたモノづくりをしたい」という強い決意につながりました。

大学・大学院生のときにもさまざまなロボコンに出ていたなか、ある二足歩行ロボコンで、のちに現在のaiboを作られることになる森永英一郎さんに出会いました。森永さんは個人でロボコンに出て常勝していた有名な方で、聞けばソニーに勤めているとのこと。昼間はエンジニアとして仕事をしながらも、趣味でロボットを本気で楽しそうに作っていて、その生き方に憧れてソニーを志望し、入社しました。ちなみに学生時代には、さらに別で仕事も放課後も大活躍されている方2名にもお会いして「絶対ソニーで働きたい」と決意したのを覚えています。また原体験として幼少期の実家に「My First Sony」のグラフィック コンピューターがあったことも大きく影響していると感じています。

たくさんの人に使ってもらえる
おもちゃを作りたい。

入社当時のソニーは先代のAIBOの事業が休止していた時期で、ロボットは先行技術の研究や次世代製品の開発が中心。私自身は人を支援するロボットなど様々なロボットを研究していましたが、当時は実用面では技術面をはじめ多くのハードルがあり、なかなか製品化には至りませんでした。ロボットをつくることや研究自体はもちろん楽しいし意義深いのですが、一方で、やはり使ってもらうからこそやりがいもうまれるのも事実。そのジレンマもあり、社内でいうところの“放課後活動”を開始。仕事が終わったあと、若手エンジニアが集まって始めた“放課後活動”。ここで田中は、「子どもが夢中になれる小さなロボット玩具」をつくるというアイデアに出会います。
田中さんが身ぶり手ぶりで語るインタビューカット
それまで大掛かりな実用ロボットを開発していた反動もあり、当時の興味はシンプルで小さいものに向かっていました。最終的にロボットになるかどうかはまだぼんやりとしていたのですが、子どもが遊べるおもちゃのようなものを作りたいという気持ちでした。そんなときに出会ったのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所でゲームや次世代エンタテインメントを研究していた研究員のアレクシーさん。すぐに意気投合し、おもちゃを動かしてゲームができる仕組みって何だろう? と考え始めたのが「toio」のスタートです。

当初は製品化まで具体的にイメージしていたわけではなく、面白そうだから作ってみようという、まさにあそび感覚。業務が終わってからアレクシーさんのいる研究所に向かい、3Dプリンターと秋葉原で集めてきた部品を使って放課後活動として試作を作り続けました。
「toio」の試作品(プロトタイプ)の一部(原型から改良過程のモデル)

「toio」の試作品(プロトタイプ)の一部 (一番右が「toio」の原型。一番左の製品になるまで改良を重ねていった)

開発時のアイデアスケッチ(ノートの手描き図)

開発時の(最終形態に近い)アイデアスケッチ

スタートした頃は具体的なイメージはなく、さまざまなアイデアを出し合って検討しました。子どもはキャラクター同士など何かを戦わせて遊ぶのが好きなので、物理的に戦わせたり、追いかけっこしたり、ジャンプしたり、いろいろなことで勝ち負けが判定できるようなあそびをどうやってロボットでやるかを試行錯誤していました。二足歩行ロボットなどいかにもロボットらしいものも検討しましたが、あそびの種類が少ないと長続きしないし電池がもたないと夢中になれない。だったらシンプルな台車みたいなものに自分の好きなキャラクターや作ったものを載せたほうがあそびにも幅ができておもしろいのではないか、そしてゲームのルールやプログラムをコンテンツとして入れ替えることでロボットがゲームになる新たなエンタテインメントになるのではないか、そうした発想に着目し、「toio」の原型ができました。そのためにはプログラミングした通りに動く超小型ロボットが必要で、結果的にプログラミングする機能を実装したので、まず体験したことが先で、後で機能を作りこむ形で開発しました。
「toio」の試作品(プロトタイプ)の一部(原型から改良過程のモデル)

「toio」の試作品(プロトタイプ)の一部 (一番右が「toio」の原型。一番左の製品になるまで改良を重ねていった)

開発時のアイデアスケッチ(ノートの手描き図)

開発時の(最終形態に近い)アイデアスケッチ

「toio」キューブにキャラクター(パーツ)を載せて遊ぶイメージ

「toio」に載せたキャラクターが主人公になるように手のひらに乗るようなサイズ感にし、
最終的にはレゴ®ブロックも乗せられる形状にした

当初、台車の位置を把握するために天井にカメラを設置する方法で進めていたのですが、家庭で使う子どものあそび道具としてはハードルが高過ぎますし、製品化が難しいことは容易に想像がつきました。煮詰まっていたところに、さらに仲間として合流したソフトウェアエンジニアの中山さんが内蔵するセンサーで位置を検出する方法を提案。紙に特殊印刷したパターンの種類をセンサーで検知し、それに従ってブロックが動く仕組みを生み出すとともに、ロボットの小型化の決め手にもなりました。それがブレイクスルーとなって一気に現在の形に近づきました。その段階で、ソニーの新規事業促進プログラムSony Acceleration Platform(SAP)の事業オーディションに出したところ、見事優勝。事業化に向かって動き出しました。
「トイオ・プレイグラウンド」アドバンスのカード(指令カード)

2024年発売されたはじめてのプログラミング体験にピッタリな「トイオ・プレイグラウンド」。 ベーシックは48枚、アドバンスは96枚のカードで構成されており、そのカード1枚1枚に「すすむ」「みぎかいてん」「うた」など様々な指令が印刷されている(なお、上記画像の本製品はアドバンス)

「toio」本体のセンサーでカードの印刷パターンを読み取る様子

カードには肉眼ではほとんど見えない小さな点が印刷され、「toio」本体のセンサーでその点を読み取って「toio」が動く

あそびのなかでプログラミング感覚が
自然と身につく可能性に気づいた。

試作の早い段階で同僚のお子さんに遊んでいただく機会があったのですが、何時間も夢中になって遊んだうえに「まだ帰りたくない」とまで言ってくれました。これは絶対に商品化したいという大きなモチベーションになりました。

その後、オフィス近くの小学校にご協力いただき、試作を使って子どもたちに遊んでもらう機会を何回も設けました。子どもたちの反応を観察しながら、ゲームソフトの内容やブロック構成、パッケージまで、3か月ごとに改良を重ねていきました。
子どもたちに遊んでもらっているなかで大きな気づきとなったのが、「toio」を使ったプログラミング。もともとプログラミングと相性がいいだろうという仮説はあったのですが、子どもたちがプログラミングを楽しいと感じるかは未知数でした。

ところが、中山さんが試作したプログラミングの要素が入ったパズルゲームを遊んでもらったところ、説明をしなくても、感覚で理解してすぐに楽しそうにあそび始めたのです。こちらはプログラミングという言葉は使わずに遊んでもらったんですが、何の先入観も持たずにあそびとして楽しんでいることを目の前で見て、プログラミングそのものがあそびになると確信しました。
カードを並べてプログラミング体験をする様子

誰かに使ってもらい、喜んでもらえることが
モノづくりのモチベーション。

「toio」はロボットに自分の好きなキャラクターを載せて相撲のようなゲームをプレイしたり、プログラミングで思い思いに動かしたりお絵描きしたりと、幅広いあそび方を用意しています。さらに、「toio」はあそびの基盤となる仕組み(プラットフォーム)のようなものですから、自分で自由にあそびを考えることができる余白があることも大きな特徴です。

私はどんなあそびにも余白があったほうが楽しくなると考えています。あそびが決まってしまうと飽きてしまうこともありますし、余白があるからこそ自分の創意工夫次第で無限のあそびが生まれると思うからです。とくに「toio」は物理的な実世界のあそび。自分のアイデアをすぐに試せるだけでなく、人のアイデアをみて刺激を受けて、また新しいアイデアがうまれることもある。ほかの誰かと楽しさやアイデアを共有したり刺激し合えるというのはとても重要なことだと思います。
テーブル上でカードを使って「toio」で遊ぶシーン
カードを組み合わせてあそびをつくる「toio」のイメージ

道路を作って走らせたり、紙工作と組み合わせたり、音にあわせてダンスをさせたり、カードを組み合わせてさまざまなあそびに挑戦することでプログラミングを楽しんだ原体験に

考えてみると、これは、モノづくりそのものにも通じています。「toio」も自分だけで考えていたら今の形にはならなかったでしょう。センサーを内蔵することに至ったのは仲間がいたからで、壁を超えること、別の道が開けるのは、仲間とモノづくりをすることの醍醐味だと思います。

私がモノづくりを好きな理由は大きく分けてふたつあります。ひとつは、誰かに使ってもらって喜んでもらえること。ロボットもそうですし、プライベートでは家族が喜んでくれるのがうれしくて料理をしています。もちろん自分がおいしいものを食べたいという気持ちもありますが、自分がおいしいだけではモチベーションが続かない。誰かに喜んでもらうことが一番の力になります。

もうひとつは、未知のものを知りたいという好奇心。ロボットが好きになったのは未知のものだらけだったから。工作の知識だけでは足りず、電気や物理の知識も必要。モノづくりは無限の謎解き問題を与えてもらえるようなもの。一生飽きないゲームみたいなものかもしれません。

「toio」のあそびは無限。
プログラミングの楽しさを原体験として持ってほしい。

おもちゃとしてスタートした「toio」は私たちの想像を超え、プログラミングを学ぶツールとしても広がっています。今では子ども用だけでなく、中高生や大学生の学びの場でも活用されるようになりました。プログラミングというとデジタルの世界と考えがちですが、思考としてはアナログとデジタルの境はありません。「toio」は生まれたときから当たり前のように使ってきた体をそのまま使うだけなので、直観的に使えるのがいいところ。幼稚園児、小学校低学年のお子さんはまず体でプログラミングの感覚を身に付け、そのあとにバーチャルな世界や記号の世界を経験すると、現実の感覚とひもづいてより深い感動や全身感覚での楽しみが得られるのではないでしょうか。

今後、ロボットやAIがある生活が当たり前になっていくなかで、それらを使いこなしたり、共存する世の中がやってきます。小さいころからロボットに触れたり、プログラミングをして相手(ロボット)の視点に立ってみたり、考え方や行動原理を理解する機会があれば、ロボットやAIのような新たな仲間たちに対しても先入観だけで判断せず、多様性の一種として自然と一緒に過ごせる、協力しあえるようになるのではないかと思います。

「toio」はさらに活躍の場が広がり、今では研究機関・先端分野にまで拡大しています。正確に位置がわかり群ロボットとしても扱いやすい「物理×デジタルの最小単位」が、実験やプロトタイピングの共通言語になり得ることにも気づきました。私たちの想像をはるかに超えて活用される様子を見て、子どもたちだけでなく大人にとっても「toio」がモノづくりの楽しさ、創造力を刺激する存在になっていると感じています。使う方たちの無限の発想が私たちエンジニアにとっても大きな刺激。今後、また新しいあそびやロボットを生み出すことにもつながっていくと思います。
「toio」事業開発室の田中さんのポートレート
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