クリエイターの珠玉の映像表現や想いを、ご自宅へ。 新しいコンセプトのオンラインギャラリー 「Creative Gallery on BRAVIA」 第10弾 写真家 piczo 氏

α Universe editorial team

Google TV(TM)機能搭載 ブラビア(BRAVIA)で、プロ写真家・映像クリエイターの作品をインターネットで視聴いただけるオンラインギャラリー「Creative Gallery on BRAVIA」は、一般的な写真展と異なり、ご自宅で、ブラビアならではの大画面・高精細な表現力で時間を気にせずお楽しみいただけます。さらに、音声(BGM)を交えた写真や映像作品など、多種多様な表現が可能。作家の趣向をこらした表現や、想いも含めて、ご自宅のリビングに感動をお届けします。※ネットワークに接続されたGoogle TV(TM) 機能搭載のブラビアをお持ちの方であれば閲覧無料。第10弾は、ロンドンと日本を拠点に雑誌やファッション、広告など独自の世界観をつくり出し、幅広く活躍するpiczo氏。今回は数年前にアイスランドを訪れ撮影したフィルムの作品と、α1 IIで再びアイスランドを撮り下ろした新作をご覧いただけます。本インタビューでは、ロンドンで培った自身のアイデアを事前に伝える資料作りや異なるカメラで同じ場所を撮影することについても伺いました。

piczo / 写真家 武蔵野美術大学デザイン情報科に在学中から、ライブやミュージシャンの写真を撮影。卒業後に渡英し、London College of Communicationにて写真を専攻。ロンドンにてフリーのフォトグラファーとして活動を開始する。『i-D MAGAZINE』、『Union』、『 Beauty Paper』などの雑誌や広告など、撮影は多岐に渡る。現在は日本を拠点に、国内外で幅広く活動している。写真集に『nikki』(aptp books)、『Visitors+』(Union Publishing Limited)がある。 http://piczo.co/

撮影のアイデアをまとめる ムードボートの作成

――ロンドンを拠点にファッション写真や雑誌、広告を中心に活躍されているpiczoさん。現在は日本に戻られたとのことですが、ロンドンと日本の仕事の仕方で違うと感じることはありますか? piczo:ロンドンだとまず一度企画書のようなアイデアやコンセプトなど撮影のイメージをまとめた「ムードボード」をつくり、どういうアプローチで何を撮るのかという演出方法を「トリートメント」と呼ばれる資料にして提出します。これで落とされたり仕事が決まったりします。作成にリサーチも含めて3日くらいを費やすので、ひとつの仕事が決まるまでに時間がかかります。でもこれを作っておくと、撮影のときが楽になりますね。

――piczoさんは武蔵野美術大学(以下、武蔵美)でデザインを学ばれましたが、写真家としてのキャリアはロンドンに行ってからですか? piczo:そうですね。大学時代はバンドの写真やミュージシャンしか撮っていませんでした。ロンドンで事務所に入って、いきなりトリートメントを書けと言われて、「トリートメント?なんだその世界は!」という感じでした。その頃、メルセデスの広告案件でオプションが来たんです。あ、その仕事において候補に選ばれることを「オプション」と言うんですが、僕は車を撮影したこともないし、トリートメントもわからない。で、まずは車を借りてモデルを手配してテストを撮影しました。一応ブリーフィングはされるので、それを元にどういう風にしたいかと詰めていく感じでした。事務所の人やエージェントと一緒にウィリアム・エグルストンの車のリファレンスがいいんじゃないかとか言いながらやりましたね。最近はだいぶ慣れてきて何をトリートメントで言うべきかわかってきましたが、昔はそれがごちゃごちゃっとしていたと思います。

――つねにコンペティションがあるという環境では、トリートメントを書く力も大事なんですね。 piczo:ファーストオプションだとそのまま撮影できるような状態なのですが、他にセカンド、サードオプションぐらいまであります。日本のシステムは、じゃあ誰々さんブックしましょうとなったときに、一斉に聞かないんですよね。まずこの人に聞いて、ダメだったら次はどうしましょう、と。向こうは全部同じタイミングで聞いて、全員からオプションをもらっておく。これはアーティスト、スタイリスト、ヘアメイク、モデルや、チームの照明監督、撮影監督も同じです。プロダクションから、こういうプロジェクトがありますと仕事が来て、まずブリーフィングをされてトリートメントを作るのはフォトグラファーだけです。そのトリートメントを返してクライアントがこの人でと決定したら、ここから僕らが逆にチームをオプションするんです。予算とスケジュールの兼ね合いでファーストにあげたり。カメラマンが強ければ強いほど、そのオプションがファーストになる可能性が高いです。広告に関してはカメラマンの裁量というか、権限が結構強いと思います。国民性という気もするんですけど、仕事の進め方やスピード感がイギリスと日本では違います。日本はいろんなところに確認を取って、あーしてこーしてと。でも向こうだと、一気に進むんですけど、いきなり現場でクリティブディレクターにNOと言われて、えー!ってなることもあります。

――そういうなかでpiczoさんのスタイルが生まれてきているんですね。Piczoさんの強みのひとつは、今お話しいただいたコマーシャルの世界でトリートメントを作るということがあると思います。一方でドキュメンタリー的なものも撮られています。その偶然性を大事するという考えはどこからきているのでしょうか? piczo:それは大学のときに撮っていたミュージシャンやライブのシーンが影響していると思います。どう動くかもライティングもコロコロ変わるから、その瞬間瞬間が写真は面白いなと元々思っていました。で、武蔵美のデザイン科を出ているので、トリートメントを作るときとはデザイン思考なんです。撮る前まではすごくデザイン思考で物事を考えていて、結構ロジックを作っていくんです。でも撮るときにそれを全部捨てるという感じです。

過去に訪れたアイスランド 再び巡り出会う

――Creative Gallery on BRAVIAでのワークは割と自由に撮ってくださいという依頼だったと思います。これまで色々なフォトグラファーの方が参加していますが、トリートメントを送っていただいたのは初めてでした。 piczo:もう癖になっているのかもしれないです。(ムードボードを見ながら)なんかこういうことをやりたいというリファレンスはつねに集めていて、そこからこのプロジェクトではこんなことができるかなと考えていきます。最初にお話ししたとき、2,3年前に一度行ったアイスランドの写真を見てもらいました。その反応が良かったこともあり、これをやりたいなと思いました。

――このムードボードがあったので、こんな感じで撮りたいというpiczoさんの作りたい世界観をすぐに共有できました。このシリーズは、フィルムで撮ったものとα1 IIで撮影したものが混ざっています。どのように使い分けられたのでしょうか? piczo:前回行ったアイスランドをもう一度巡る感じで撮影しました。前回は冬に行って、フィルムだけで撮っていましたが、今回はα1 IIとフィルムの両方を持っていきました。たとえば1枚目の写真はフィルムで撮影したのですが、何気なくパッと撮っているだけなので、撮ったことも覚えていないような写真です。無意識に反応していたものが、たまにこうして出てくるんです。最後は雪が積もった真っ白な風景がいいなと思って前回のフィルムで撮った写真を採用しました。これも全然覚えていないんですよ。そういう偶然性がフィルムにはあるなと思います。デジタルは逆にすぐ見られるので、枚数を撮りながら仕上がりを詰めていくことができました。また露出が足りないようなシーンではものすごく助かりましたね。

――アイスランドではどのような旅になったのでしょうか? piczo:前回と同じところに行ったり、新しいところに行ったり、どこか輪廻っぽい感じもあり、タイトルを再生じゃないですけど、転生や生まれ変わりを意味する「reincarnation」にしました。同じアイスランドを撮影することで、全体に少し厚みが出たかなと思います。前回は冬にアイスがゴロゴロしている氷河までで、その先は行けなかったので、今回はその先へ行ってみようと。春から初夏の時期に行ったのですが、アイスランドではまだ冬らしいです。6月の後半にならないと通れない道もあって、今回スーパージープに乗ってハイランドツアーに行ったんですけど、吹雪でしたね。

――氷を持っているシーン、生命を抱きかかえているような印象がありすごく象徴的な1枚でした。 piczo:このときは白夜なので、夜12時頃です。太陽は沈んでいるけど、空はまだ少し明るいぐらい。ブラックサンドでの撮影が終わって、もう帰ろうというところで、この氷を見つけました。彼女はもう寝ていたんですけど、氷を撮るにもどこかに置かなきゃいけないので、無理やり起こして撮りました。抱えているのは、もう冷たくて持てないとなっているところです。なので最初から抱いて撮るということではなく、これもいいじゃんとなった感じですね。

――その偶然を引き出すためにpiczoさんがしていることはありますか? piczo:ムードボートもそうですが、一応やることはざっくりと考えています。たとえば映像などではコンテを書いてカメラワークをすると、もうそれしか作れなくなってしまうことがあります。なので、そこまでは考えないようにしています。ある程度の方向性だけは決めておいて、あとはそのときに起こった面白いこととかハプニングとか、いい光で撮るみたいな現場での可能性を残しています。

余白を感じるレイアウト モニターで見るバランス

――今回レイアウトもpiczoさんに組んでいただきました。どのようにセレクトされましたか? piczo:写真全体の色味がウォームトーンからブルーへと変わり、最後はどんどん東に向かって行く感じで構成しています。実際見ている先は違うというような風景や前回のフィルムと今回のデジタルも混ぜてレイアウトをしています。過去の作品に新たな作品を混ぜようという試みも初めてでした。見返してみると、なんかこの写真ここにハマるなというのが結構ありました。ぱーっと見たときにドンドンドンと写真があるとしんどいじゃないですか。人物や顔は意識がそこに持っていかれるので、余韻や余白を作るといいかなと思っていました。

――作品はCreative Gallery on BRAVIAで見せることになります。4Kのモニターで見せることについてどう思われますか? piczo:モバイルデバイスはあるんですが、テレビで見せようというのは初めてです。 スマートフォンやパソコンで見ると、なんだか小さい写真だなと思ってしまうんですが、テレビは大きく見せられるのでそのバランスを意識して今回のようなレイアウトを組みました。壁面に飾るギャラリーで展示をするときと少し似ている感覚です。同じものがただ並ぶというより、左右の関係性やここは大きく、ここは小さくとテレビのモニターで見てもらうことを前提に組んだので、そこを見てもらえたら嬉しいです。

「Creative Gallery on BRAVIA」では、この記事で紹介された作品をはじめ本作品展をソニーのGoogle TV ブラビアでご覧いただけます。閲覧無料、クリエイターの趣向をこらした表現や、想いも含めて、ご体感ください。

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