高倍率マクロレンズが切り開く極小の大宇宙
FE 100mm F2.8 Macro GM OSS

TOPPAN株式会社 チーフフォトグラファー「匠」 南雲暁彦 氏

α Universe editorial team

南雲暁彦 / TOPPAN株式会社 チーフフォトグラファー「匠」 1970年神奈川県出身 幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。日本大学芸術学部写真学科卒TOPPAN株式会社 BX事業部エクスペリエンスデザイン第一本部クリエイティブ部所属 チーフフォトグラファー「匠」世界中300を超える都市での撮影実績を持ち、風景から人物、スチルライフとフィールドは選ばない。近著「ライカで紡ぐ十七の物語」玄光社APA会員 知的財産管理技能士多摩美術大学統合デザイン学科非常勤講師

人の視覚に対する欲求というものはすごく強く、そして大きいものだ。そのジャンルはさまざまで、もっと遠くのものを大きく見たい、もっと広い世界が見たい、暗い中でももっと見えたら、小さな世界をのぞいてみたい、など。つまりそれは見たことがない世界への憧れであり、興味や探究心を満たす最も重要なエレメントになっている。何せ人間は自らが得られる情報の約8割を視覚から得ているのだから。今回はその中でも極小の空間に存在する、無限の世界への扉を開いて行こうと思う。それを可能にした新しいマクロレンズを撮り下ろしの作品とともに紹介しよう。僕がこのレンズを使って表現した世界をまずは見ていただきたい、PLフィルターを2枚使用したクロス偏光法というテクニックで、小さなプレパラートの上に自ら作った結晶を撮影したものだ。

Art Work 01 -Crystal Series-

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F7.1,1/250秒,ISO100
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F6.3,1/1250秒,ISO100

撮影方法はかなり単純

このクロス偏光法というのは結晶の持つ複屈折という特性を利用した撮り方で、実はとてもシンプルなセットで撮影ができる。用意するものはP Lフィルター2枚と結晶の乗ったプレパラート、LED懐中電灯。以上である。それをレンズ軸上に一直線に並べるだけだ。結晶の作り方もプレパラートに結晶化したい材料を溶かした水溶液を数滴垂らしておしまいという極めて単純なもの、半日もすれば結晶が出来上がる。今回は簡単に手に入るクエン酸、マグネシウム、尿素、ビタミンCを使用した。これはFE 100mm F2.8 Macro GM OSSのレンズ単体で1.4倍、さらに2倍のテレコンバーターの使用で2.8倍の撮影が可能になるというスペックが表現を生み出す土台となっている。また特筆すべきはこの2倍テレコンバータSEL20TCを使用しても画質の低下がほとんどないという事、さらにカメラ側のAPS-Cクロップを使用すればファインダーの中には4.2倍にも拡大された世界が広がっていく。システムの総合的な画質、画力が圧倒的だ。クロス偏光法はレンズにつけたP Lフィルター回すと画面が暗くなるタイミングで虹色が浮かび上がり、ちょっと見惚れてしまうほどの美しさや楽しさを味わえる。出来上がった結晶によって色の出方がかなり違うのでそういう期待を込めた結晶作りも楽しめる。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F7.1,1/1000秒,ISO100
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F7.1,1/1000秒,ISO100

これは上の作品の一部分を等倍表示したものだ、この興味深くも美しいディティールを見てほしい。

ソニーのレンズではないが、今までの等倍が標準だったマクロレンズでは、ここまでの世界を表現するのは難しかった。拡大率を上げるために中間リングやベローズという拡大専用の補助機材が必要だし、そうなると画質やユーザビリティーは犠牲になっていく。テレコンバーターも2倍となると大きく画質が落ちるものが多い。今回このレンズが登場したことで非常に手軽で、遥に高画質にこのような撮影が可能になった。何を一番言いたいかというと、今までの花や昆虫といったマクロ然とした被写体の枠を超えて、もっとクリエイティブに、もっとユニークな作品制作を楽しむべきだ、ということだ。その創造への扉を開けるキーがまた一つここに誕生したと思って欲しい。このレンズにはそういうポテンシャルが秘められている。レンズの進化に恥じぬよう、フォトグラファーもその表現力を進化させ、腕を磨いてこそ写真文化の未来が見えてくる。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F5.6,1/160秒,ISO100
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F5.6,1/160秒,ISO100

これも上の作品の一部分を等倍表示したものだ、Land of Jewelsという作品名はこれを見たときに決めた。

作品一つ一つの名前は結晶が見せてくれた世界観からインスピレーションを受けて命名した。それほどこちらの感性を刺激してくるビジュアルの誕生だったと言うことだ。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F6.3,1/200秒,ISO100
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F7.1,1/160秒,ISO100
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F7.1,1/160秒,ISO100

結晶というと観測や観察、記録のためというイメージが強いかもしれないが、今回はもっと身近で自由なサイエンスアートとして、表現する楽しさ、その美しさを伝えたいという撮影設計だった。ただ、正直ここまで結晶の表情が豊かなものだとは、、改めてそれを引っ張り出したFE 100mm F2.8 Macro GM OSSに価値を感じてしまう。レンズは素晴らしい、あとは使う側の問題なのだ。もちろんあの掃除に使うクエン酸がこんな結晶になるんだ、などという知識も得られ、それも面白い。何度も言うが、本当に難しい撮影ではない。この極小世界への扉を開くための好奇心とちょっとしたコツがあれば誰にでも楽しめるものだ。そして撮影が上手くいったその時、この作品のように虹の雨が心の中にも降り注ぐだろう。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F5.6,1/1250秒,ISO100

さて、今回の作品製作はこれで終わりではない。この作品制作がさらに僕のイマジネーションを刺激し、今までの作品の進化も促した。この結晶を使ったCrystal Seriesをさらに作品に使用したものだ。

Art Work 02 -Cosmos Series-

かつての僕の作品に水と油を使用した「Beautiful Border」というもがある。その時は等倍のマクロレンズに2倍テレコンを使用したのだが。気に入っている作品で著書に掲載したり、個展を開いたりしたことがある、その時は「美しき境界線」というテーマでの制作だった。https://akihiko-nagumo.com/archives/galleries/beautiful-border-『IDEA of Photography 撮影アイデアの極意』(玄光社)比較のために参照して頂きたい。その時はこれがベストだったのだが、今回同じ被写体を使って出来上がったビジュアルは、これを超えて宇宙を表現するに至った。さらなる高倍率にも関わらす高画質に表現されている、まずは作品を見て頂こう。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F5.6,1/20秒,ISO1600
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F5.6,1/30秒,ISO3200
α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F6.3,1/2000秒,ISO6400

これも極シンプルな撮影方法で製作した作品だ。先ほど紹介した著書に撮影方法は全て書いてあるが、水と油を入れた透明な器の下にタブレットを置き、それを光源として利用。それを真上から撮影しているだけである。ではこの色彩やコントラストはどこから来るのか、という事だ。今回はそのタブレットに映し出す光源とする画像にCrystal seriesの作品を使用している。こうする事で作品はオリジナリティーマシマシになっていく。「オリジナリティー」それは作品にとって得難く、大事な事だ。自分の作品がレンズやカメラの進化も相まってここまで成長し、新たなシリーズとして昇華させることができるのはとても嬉しい事だし、満足感も大きい。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F7.1,1/20秒,ISO1600

これもコツを掴んでハマると本当に楽しく、ずっと宇宙を旅して気がつくと朝が来てしまうような撮影だ。だんだんと宇宙を創造しているような気にさえなってくる。セットはとてもミニマムなので自分の部屋の中でも全然できてしまう。テレコンバーター無しでも1.4倍の撮影が可能なので、それでも十分撮れるし、そうすれば開放f値が明るいので撮りやすいという利点もある。これも作品制作における幅というわけだ。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F6.3,1/50秒,ISO3200

こんなに極小な世界でも、背景の美しいグラデーションに無限の空間を感じる。このレンズのぼけ味、といってしまうのも勿体無いほどのスケールと緻密さだ。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F4,1/40秒,ISO800

人は考え、感じ、表現することを忘れてはいけない。作品がそう語りかけてくる。人間だけが持っている文化的豊かさはそういうところから生まれ、それが生き甲斐となっていく。食糧(料理)でも、棲家(建築)でも、衣(ファッション)でも、人はそれらを文化として進化させ、豊かさとしてきた。もっと生きるために直接的ではないと思われる芸術においても同じことで、逆にどうやら人間は芸術がないと存続できないらしい。お腹を満たす食事のように、心の栄養は不可欠ということだ。アートとしての写真もその一旦を担っている。

α1 II,FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + 2X Teleconverter,F2.8,1/80秒,ISO1250

「このレンズは性能がすごい。」

解像度がすごいとか、手ぶれ補正がすごいとか、高倍率だとか。そういう事ももちろんだが、それを証明できるのは一枚の優れた写真でしかない。だからスペックの数字を見てではなくて、そういう作品を撮ることができて初めて使える言葉だ。「このレンズは凄い。」と改めて思う。写真家としては、こんな凄いレンズが生まれた時代に、凄い写真を生み出さないわけにはいかないのだ。AFや手ぶれ補正を使わなくてもそう感じる。それがG Masterの名に恥じぬ、このレンズの本質をついた性能だとも思う。さて、拡大率や画質が生み出す作品の話をしてきたがこのレンズは決して拡大専用のレンズではない、明るい中望遠レンズでありスタジオでの物撮りやポートレート、風景やスナップでも活躍するレンズだ。僕はマクロレンズを紹介するときに、何本ものレンズを持っているのと同じぐらい活躍のフィールドは広いと言うのだが、それをさらに押し広げたレンズだといえる。そして最後に、これを手にした、あるいは手に入れたいと思うフォトグラファー達に何を言いたいのか、それは「枠を取っ払いもっと楽しんで欲しい」この一言につきる。そうやって生まれた作品はきっと見る人の心の栄養となっていくし、それは作り手として最高の喜びにもなっていくのだ。FE 100mm F2.8 Macro GM OSS、その為の鍵がここにある。

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