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上空から、地上から。
夜の鉄道写真で高感度性能が活きる
〜α7R III、α7 IIIが捉える光と闇の世界〜
写真作家 吉永 陽一 氏

α Universe editorial team

上空から捉える鉄道写真「空鉄(そらてつ)」を長年撮り続けている吉永陽一さんが、α7R IIIとα7 IIIで、夜明け前から懐かしさが漂う青森のローカル線を地上から撮影。さらに、東京の夜景をテーマに空鉄にも挑んだ。高感度撮影の印象を中心に、吉永さんが表現する鉄道写真についても話をお聞きした。

吉永 陽一/写真作家 1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積み、長年の憧れであった空撮鉄道写真に挑戦。2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などでさまざまな空撮鉄道写真を発表し、注目を集める。空撮はもとより、旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍する。日本鉄道写真作家協会会員、日本写真家協会会員。

手にフィットするホールド感と
考え抜かれた操作性を改めて実感

――α7R IIIを使うのは2度目になりますが、前回使った時から印象は変わりましたか?

改めて実感できたのは、ホールド感ですね。私の手にはこのボディの薄さ、適度なグリップの深さが手にフィットしてとてもよかったです。空撮ではカメラは絶対に落とせませんし、ブレてはいけないのでグリップは非常に重要。αはグリップがしっかりしていて信頼感がさらに増した感じです。 前回の撮影では不要でしたが、今回は冬場の撮影だったので手袋をして撮影に挑みました。それでも適度にボタンの間隔が空いているので間違って押すようなミスもありません。縦位置グリップを付けるとさらに安定感が増し、大きいレンズでも安心して撮影ができます。ありがたかったのは、縦位置でもカスタムボタンやダイヤルが手元にあること。設定画面を一々開かずにラインドで素早く的確に操作できるので、その辺りもしっかり考えられているなと思いました。

撮影プロセスがスローなローカル線。 五感で現場を感じられる作品を目指して

――前回αで撮影した時は空撮のみでしたが、今回は地上でも撮影していますよね。どこで撮影したのか教えてください。

青森県のローカル線「津軽鉄道」を撮ってきました。空撮は空を飛ぶ時間が限られているのでスピード勝負になりますが、ローカル線はプロセスがとてもスローです。あえて飛行機は使わずに列車で行ったり、青森に行くまでも寄り道をしたりしますし、下見の時には地元の人と触れ合い、温もりや距離感を味わいながら撮影します。地上で撮るときはじっくり対峙するというか、被写体に向かってゆっくり撮る、という感じです。

――地上での撮影装備を教えてください。

カメラはα7R III、α7 IIIの2台で、レンズは「FE 16-35mm F2.8 GM」、「FE 24-70mm F2.8 GM」、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」、「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」の4本を持っていきました。主にα7R IIIには広角系レンズを装着し、α7 IIIには望遠系のレンズをつけて撮影しています。 「FE 16-35mm F2.8 GM」は画面周辺の解像感が流れすぎないのが良かったですね。「FE 24-70mm F2.8 GM」は空からも地上からもオールマイティーに使える便利な1本です。「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」は望遠側も広角側も平均的に圧巻の描写が得られる、私のお気に入りのレンズ。使用頻度が高いので目の代わりになるぐらいの感覚で撮れてしまいますね。「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OS」はカメラとのバランスが絶妙で、手ブレなくしっかり描写できます。

――ローカル線を撮影する時のテーマはあったのですか?

素朴なローカル線なので、その雰囲気を大切にしながら撮りたいと思いました。空撮でもそうですが、「空気感」は常に意識しているところです。その場の雰囲気、空気、匂い、人の温もりや営みなどを、見る人が五感で感じられるように撮影しました。 いつもは雪に埋もれながら撮影するのですが、今年は暖冬の影響で、まったく雪がなくてびっくりしました。津軽は地吹雪で有名な場所ですから、いつもは横なぐりの吹雪になるのですが今年はそれもなかった。でも少ししか雪がない冬の津軽鉄道は非常にレアなので、いつもとは違う作品を撮ることができて楽しかったです。

あらゆる光を拾う高感度で ブルーモーメントのラッセル車を撮影

――ここからは作品を見ながら話を聞かせてください。これはラッセル車ですよね。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 26mm,F2.8,1/125秒,ISO20000

撮影協力:津軽鉄道株式会社 我んどのつ鉄応縁団

特別な許可の元、車庫で撮影したディーゼル機関車とラッセル車です。このラッセル車は戦前生まれで、今は現役を引退しています。通常は運行しておらず、撮ることができない車両です。ディーゼル機関車も1959年製ですが、津軽鉄道名物「ストーブ列車」を牽引するのでお目にかかることができ、もちろん撮影も可能です。 職員さんがラッセル車に光を当ててくれているので、まるでモデル撮影のようですよね(笑)。おかげで重厚な鉄の質感も出すことができました。薄暮のブルーモーメントを狙ったので三脚を持って行きましたが、時間との勝負だったので機動力を優先し、手持ちで撮っています。ISO20000の高感度ですが、思ったよりもノイズが出ず、空の質感もきれいに撮ることができました。私の場合は雑誌や本に掲載することも考えますが、それでもまったく問題ありません。 雪国の鉄道感を出したかったので、雪があるところを探して構図を決めました。足跡で凹凸がついた雪を入れ込んで、ひんやりとした雰囲気を出せたと思います。ローアングルで撮ることで、白い雪の質感、ライトが当たっている部分の鉄の質感、空の雰囲気、すべてを表現できました。いろいろな光を拾いながらもバランスの良い色味で、高感度の性能がよく出ている1枚です。

――これは違う角度から撮影していますが、どのような部分を意識して撮ったものですか?

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 60mm,F2.8,1/80秒,ISO12800

撮影協力:津軽鉄道株式会社 我んどのつ鉄応縁団

ひび割れた塗装がサメのエラのように見える部分と鉄の質感をきちんと描写できるように意識しました。ひび割れの部分がカリッと出ていて、平面的に見えそうな部分も立体的に見せてくれるα7R IIIの解像感が際立った作品です。よく見ると、窓の右下あたりに製造年と製造場所が書かれたプレートがあります。小さい文字で「大宮工場 昭和8年」と書かれているのが分かるのも、高解像だからこそですね。 まだブルーモーメントだったので空の青を強調しようとクリエイティブモードを「夜景」に設定。他の部分も青っぽくなってしまうかと思ったのですが、暖色系の明るさはそのまま残してくれて思い通りに仕上げることができました。

αのさまざまな機能を駆使して
素朴なローカル線を印象的に撮る

――ラッセル車の撮影を含め、撮影スケジュールはどんな感じだったのですか?

今回の撮影は津軽鉄道の応援団企画イベントに参加し、ラッセル車は特別に運行したものです。初日の夕暮れ時に車庫でラッセル車を撮影し、翌日は夜明けとともに撮り始め、午後は津軽鉄道名物のストーブ列車に乗車して撮影する、という流れですね。 下の作品は「川倉」という駅。津軽鉄道を訪れる多くの人が「何もないけれど素朴で好きな駅」と語る、隠れた人気スポットです。本来ならば翼を広げて大量の雪をかき分けながらラッセル車が進み、ブワーッと雪が舞い上がるのですが、ご覧の通り雪はほんの少しだけでした。

α7R III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 112mm,F3.2,1/1000秒,ISO8000

撮影協力:津軽鉄道株式会社 我んどのつ鉄応縁団

雪がないと画がさみしいので、アテンドしてくれた地元の旅行会社のスタッフさんが急遽モデルになってくれました。αはAFエリアが広いのも魅力ですね。モデルは画面の左端に置いたアングルにしましたが、隅のほうでもAFポイントを合わせることができる。今回はその恩恵を受けて助けられた感じです。結果的にいつもの冬とは違う画を撮ることができて、とても新鮮でした。 次は踏切脇から走る列車を狙いました。下の作品は踏切通過後の後姿です。

α7 III,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 524mm,F6.3,1/800秒,ISO500

撮影協力:津軽鉄道株式会社 我んどのつ鉄応縁団

私は大型カメラ以外ではあまり三脚を使わずに歩きながらパパッと撮っていくスタイルなので、望遠レンズでも手持ちで撮影します。奥の背景が水墨画のように見えたのでクリエイティブスタイルを「ディープ」に設定。「ディープ」は初めて使いましたが、予想通り湿度というか深みが増して、より水墨画っぽい感じに仕上げることができました。

クリエイティブスタイルやホワイトバランスを変える時は、EVFに設定が反映されるのも便利ですね。自分の作風やイメージ通りの設定になっているか、EVFで確認できるのは大きなメリットです。EVFはとても見やすいですし、EVFでも意外と電池を消費すると思っていましたが、バッテリーの持ちもかなり良かったです。

α7 III,FE 24-70mm F2.8 GM 36mm,F2.8,1/50秒,ISO400

撮影協力:津軽鉄道株式会社 我んどのつ鉄応縁団

上の作品はストーブ列車です。この時もイベント参加者で相談し、前出の地元のスタッフさんがモデルになってくれました。角巻という昔ながらの羽織やネッカチーフ、ほっかむりなどをしてもらって懐かしい昭和の匂いを演出しています。 クリエイティブスタイルの「ポートレート」で撮影しましたが、肌の質感がやわらかくて非常にいいですね。外からの明かりだけの暗い車内でライティングせずに撮ったのですが、ポートレートらしいやわらかな感じに仕上げることができました。 日中は、車内のライトをつけないので薄暗い状態です。この時はあまり感度を上げずに撮ってみようと思い、シャッタースピード1/50秒で、ひじ掛けの位置にレベルを合わせて子どもが覗き込んでいるように撮影しました。液晶モニターを動かしてウエストレベルで撮りましたが、中腰の無理な体勢。それでもボディ内5軸手ブレ補正のおかげでブレることなくしっかり写すことができました。顔認識でピントも女性の顔にしっかり合ってくれて、αのさまざまな機能が生きた1枚です。

※ラッセル車両は通常運行ではありません。
撮影協力:津軽鉄道株式会社 我んどの津鉄応縁団

見たことがない美しい夜景を撮るために
空中で静止できるヘリコプターを選択

――空からの夜景撮影では、どのようなことを表現したいと思っていましたか?

今までに見たことがないような東京の夜景を撮りたいと思っていました。日中と夜では見える景色がまったく違うので、同じ場所でも「あれ、ここなの?」というくらいわからないものです。ですから逆にそれを生かして、おもしろい作品が撮れるのではないかと思い、撮影に挑みました。

――何時くらいから、どのくらい飛び続けたのですか?

今回は薄暮から撮り始めました。この時間帯は明かりもくっきり見えますし建物などのディテールもわかりますからね。具体的には17時過ぎに離陸して、19時くらいには着陸した感じです。 いつもはコスト面を考えてセスナを使いますが、今回は夜景撮影だったのでヘリコプターをチャーターしました。ヘリコプターはセスナとは違って上空で止まることができるので、ブレなどを考え、止まっている間に撮影できるヘリコプターを選んだわけです。

――ヘリコプターだと体を固定するのがセスナよりも大変そうですね。

そうですね。セスナの時は天井に頭をつけて、体を固定していましたが、ヘリコプターの場合は天井が高くて支えがないので、いつものように体を固定できません。それだけにいろいろな面がシビアになります。動きやすい手袋を選んでカメラをしっかり持ち、ストラップも外れないように、常に細心の注意を図りながら厳しい環境での撮影でした。

――そんな過酷な状況で、吉永さんがカメラやレンズに求める性能は何ですか?

夜景の場合は明暗がはっきり出てしまうので、明るい部分は白飛びせず、シャドーは潰れ過ぎないダイナミックレンジの広さですね。あとは高感度。非常にブレやすい状況なので、高感度でどこまで見せることができるか、というところです。今回の撮影では、ブレて使えなかった、というカットは意外とありませんでした。ボディ内5軸手ブレ補正に加えて、しっかりグリップできるところもブレ防止につながっていると思います。 あとはレンズが重すぎないこと。そしてピントの精度。明暗差が激しい状況でもαは迷わず的確にピントを合わせてくれたので、私は構図など自分の感覚に集中して撮ることができました。

駅周辺の街をダイナミックに表現し、
高感度撮影での遜色ない描写力を体感

――空撮の夜景作品について、撮影場所や状況などを教えてください。

空撮ではα7R IIIに「FE 24-70mm F2.8 GM」を装着し、広角で街のダイナミックさを表現しました。まずは新宿上空ですね。新宿駅というターミナル駅の性格を出すために、都庁などのビル群まで入れ込んでいます。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 24mm,F3.5,1/200秒,ISO20000

新宿は予想以上に明るくて驚きましたね。とくに左上のひときわ明るい歌舞伎町周辺はISO20000で撮ると白飛びするのではないと思っていましたが、ビルの描写もきちんと出してくれました。右上の暗い部分は新宿御苑です。昼間は緑に見えますが、夜はまるでブラックホール。こういった夜ならではの見え方がおもしろいですよね。α7R IIIの高精細で、街道を走る車1台1台までしっかり見てとれます。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 70mm,F2.8,1/1250秒,ISO32000

上の作品は新しくできた「渋谷スクランブルスクエア」を含めた渋谷駅周辺を撮影したものです。前回、αで撮影した時は建築途中でしたが、完成して、しかも夜の状態。とてもキラキラした印象ですね。 ISO32000まで上げて撮影したのでノイズは多少出ますが、いやらしくならないし、ビルの描写ものっぺりすることなくシャープに出ています。今回の撮影は「どこまで高感度に耐えられるか」という実験でもあったので、あえて常用感度の最高値まで上げて撮影してみました。時間がタイトだったので拡張までテストしませんでしたが、ISO32000でも私の中では問題なく実用できるレベル。スクランブルスクエアの屋上に人がいることまでわかるくらい精細ですから、見事なものです。

α7R III,FE 24-70mm F2.8 GM 25mm,F3.2,1/250秒,ISO32000

次は今年3月に開業した「高輪ゲートウェイ駅」です。撮影時は開発中で周辺が暗く、駅はウォーム系のLEDに照らされています。奥にはレインボーブリッジなどの東京湾岸まで写っているので、完全にミックス光。クリエイティブスタイルを「スタンダード」、ホワイトバランスをオートにして撮りましたが、見たままの美しい光景を撮ることができました。 このようなシーンではホワイトバランスの設定に悩むところですが、αのAWBは変に色が転ぶこともなく、見た目に忠実に表現してくれます。それは以前の撮影でもわかっていたので、今回は悩むタイムロスもなくて済みました。 どの駅も夜はまったく違う表情を見せてくれるので、都市の夜景撮影はとても楽しいです。次は東京ではなく、大阪界隈のターミナル駅の夜景も撮ってみたいですね。東京とはまた造形が違って、雰囲気の違う夜景空撮が撮れると思います。

状況に合わせて設定を変更するという
冒険や遊びが鉄道写真の可能性を広げる

――今回はあらゆる条件で撮影していただきましたが、改めてαの印象はいかがでしたか?

高解像でエッジが効いたシャープな表現ができ、高感度を使って手持ちでもかっこよく撮れるカメラです。一般的に考えれば、鉄道写真はかっこよさが大事だと思いますし、そこが作品性につながる部分でもあると思います。

――最後に鉄道写真を撮影しているαユーザーに向けてメッセージやアドバイスをお願いします。

状況に合わせてクリエイティブスタイルを変えて、冒険したり、遊んだりしてみると、思った以上の作品が撮れるかもしれません。αは自然な色合いで表現してくれます。私は今回「ディープ」や「夜景」などを試しましたが、想像以上にいい仕上がりになりました。同じ電車でもクリエイティブスタイルを変えるだけで違った雰囲気に見え、新しい発見につながるかもしれませんよ。 私はクリエイティブスタイルをカスタムボタンに割り当てて、ワンアクションで呼び出せるように設定しています。みなさんもこういった機能を活用して、いろいろなモードを試し、いつもとは違う作品づくりに役立ててみてください。

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