
【特別企画】第5回 CREATORS’ CAMP @函館市を終えて
― 講師陣が語る、“参加者”としての挑戦と思わぬ発見 ―
2024年9月に北海道函館市で実施された「第5回CREATORS’ CAMP」。普段は講師として参加している SHOTROK氏、Kai Yoshihara氏、Y2氏が、今回は参加者としてドリームチームを結成し、3日間の映像制作に挑戦。参加者としての視点で取り組んだ彼らが、イベント当日の撮影現場での苦悩や気付き、そして改めて実感した映像制作の本質について話を聞いた。

ドリームチームによって3日間で制作された作品
■“激動の72時間”――限界を超えた3日間の挑戦

―― 今回初めて講師ではなく参加者として映像制作に挑戦されましたが、いかがでしたか。
SHOTROK氏:「こんな神回を待っていた!」というのが率直な感想ですね。普段は講師として参加者をサポートする立場ですが、ある意味オブザーバーとして「自分だったらこうする」と心の中で考えながら参加者たちを見守ってきました。しかし今回は参加者と同じ目線で、よりリアルにCREATORS’ CAMPの魅力を体感することができました。Kai Yoshihara氏:たしかにずっと刺激的な3日間でしたね。限られた時間や機材の中で、毎回しっかりと映像作品を作り上げる参加者の皆さんは、改めてすごいなと思いました。SHOTROK氏:普段のクライアントワークで、「3日間で納品せよ」なんて無茶なオーダーはさすがに来ませんからね(笑)。でも、経験したことがないからこそ全力で取り組めたし、たくさんの学びがありましたね。Y2氏:講師として変な作品は作れませんしね・・・。実際に参加者目線で作業してみると、どの場面で皆がつまずきやすいのかがよく分かったので結果的に良かったですね。今後CREATORS’ CAMPに参加される方には、できる限り事前準備をしっかりしておくことをおすすめしたいです。Kai Yoshihara氏:本当に時間との戦いでしたよね。特に最後の夕景のシーンでは、テイクを重ねるごとにどんどん日が落ちていって、画の明るさが変わるというハプニングもありました(笑)。ただ、それも含めてすごく楽しかったなと思います。Y2氏:まさにその通り!単純に「楽しかった」、この一言に尽きますね。映像制作を始めた頃のワクワク感を思い出せた気がします。

■“ゼロからの戦略”――アイデアを形にする難しさ

―― 本作品の企画は、SHOTROKさんが中心となって議論を進めていたと思いますが、始めにどのようなことを考えていましたか。
SHOTROK氏:企画を考えるにあたって、まずはこれまで講師として感じてきたことを改めて振り返ってみました。このイベントの醍醐味は「企画の多様な切り口に出会える」ことです。参加者の熱量が高ければ高いほど満足度も上がり、講師陣も惜しみなくノウハウを共有する。とても風通しの良い雰囲気が、企画の多様性を後押ししているのだろうと考えました。そこで今回は、「限界を突破しよう」をテーマに、あえて難易度の高い「ショートドラマ」に挑戦することにしました。
―― ショートドラマの企画という大きなチャレンジにおいて、特に工夫した点はありますか。SHOTROK氏:ショートドラマは、設定や台本、役者の確保など課題が多く、短期間で制作しなければならないCREATORS’ CAMPでは避けられがちなジャンルです。しかし、企画のベースとして函館市の豊富な観光資源から「癒し」というテーマを導き出し、「都会から訪れる青年」を主人公として設定するところまで議論した上で、脚本作成はAIツールを活用して時間を短縮し、役者も自分たちでこなすことでなんとか形にすることができました。

―― AIツールを活用してみて、どんな気づきがありましたか。SHOTROK氏:完成後、自分たちの素人演技に笑う場面もありましたが(笑)、「AIと人間が共生する時代」における新たな映像制作の形を体験できたのは大きな収穫でした。また、限られた時間やリソースの中でベストを尽くす難しさも改めて痛感しましたね。私は今回ディレクターを担当しましたが、完成イメージを固め、細かい部分まで言語化し、制作チームメンバーや役者に伝える。これは対人間でも、対AIでも極めて重要なスキルです。このイベントでは、撮影や編集が注目されがちですが、参加者の皆さんにはディレクターの難しさや葛藤もぜひ体感してみてほしいなと思っています。
■“カメラの向こうの戦場”――撮影現場でのリアルな苦闘

―― 今回の撮影では、主にY2さんがカメラを担当されていましたが、カメラマンとして特に意識していたことは何ですか。Y2氏:意識したことは意外とシンプルで、「カメラを動かさない」ことでした。普段はジンバルを使って動きをつけたカメラワークをすることが多いのですが、今回はストーリーをしっかり伝えることを最優先に考えて、基本に忠実にカメラを固定し、構図を大切にしました。当たり前ですが、カメラを固定するとブレが少ないので画質がきれいだし、余計な動きがないことで画面内の情報が整理されて、視聴者にとって内容が伝わりやすくなると考えて撮影していました。

―― いつもとは違ったスタイルで撮影してみて、新たな発見はありましたか。Y2氏:今回、私は撮影だけでなく編集も担当したのですが、編集作業を通じて多くの気づきがありました。動きのあるカメラワークで撮影した素材は、意図したショットであれば問題ありませんが、次のカットと繋げた時に速度やカメラワークの向きの違いから違和感が生まれることがあります。今回はカメラを固定して撮影したことで、カット同士の繋がりがスムーズになり、編集のしやすさを実感しました。また、画面内の動きが少ないことで、マスク処理やトラッキング、カラーグレーディングのようなピンポイントの編集が格段にやりやすくなりました。特に今回のように短期間でチーム制作する時にメリットが大きくて、少しでも編集の方の負担を減らすことで、結果的に納品リードタイムの短縮やコスト削減に繋がると思います。
―― 読者の方に向けて、撮影のアドバイスを教えてください。Y2氏:映像制作の中でも、特に撮影は「経験」に依存する部分が大きいと思います。普段からカメラを多く回せば回すほど、構図の選び方や引き出しが増えます。実際に今回の撮影では、普段と違った撮影スタイルにも関わらず、現場でさまざまな構図のアイデアが思い浮かび、その中から最適な選択をして撮影することができたと思います。あとは、すぐに実践できるテクニックとしては、同じロケーションでもレンズの焦点距離を変えるだけで表現の幅が広がり、カット数を増やせます。特に身動きがとりにくい場所では、レンズの焦点距離で変化をつけることで画のバリエーションを増やすのがとても有効な手段です。
■“演じる覚悟”――カメラの前で生まれた新たな視点

―― 本作品でKai Yoshiharaさんは初めて主演を務められましたが、いかがでしたか。Kai Yoshihara氏:普段はアクターとして出演することはないので、セリフを覚える事に必死でした(笑)。あと、アフレコを前提とした撮影だったので、表情だけで演技する必要があり、想像以上に難しかったです。ただ、実際に演じてみると、アクターにとって「今どういう画を撮っているのか」はカメラマンが想像している以上に伝わりづらいと感じました。時間に余裕があれば、スタッフが動線を実演して見せたり、アクター本人を入れたリハーサルを撮って見せたりすることで、現場の全員が共通のイメージを持ちやすくなるのではないかと思いました。
―― 撮影中は演者としてどのようなことを意識されていましたか。Kai Yoshihara氏:最も意識したことは、演技をするポジションです。これは普段カメラマンをやっているからこそ、特に気を配った部分かもしれません。背景がきれいに映るように、光の当たり方が最適になるように、SHOTROKさんとY2さんと相談しながら、立ち位置や体の向き、動きを細かく調整しました。あとは、セリフを言い終えた後も、カットがかかるまではしっかりと役に入り込むように意識したつもりです(笑)。

■“クリエイターの未来”――CREATORS’ CAMPで得られるもの
―― 最後に、今後CREATORS’ CAMPに参加される方々へメッセージをお願いします。SHOTROK氏:私は参加するたびに毎回、参加者の皆さんの前で発言していることなのですが、「CREATOR'S CAMPに参加すること」自体がセンスの良い判断だと思っています。映像制作者としての成長はもちろん、自分の限界や常識を打ち破るきっかけにもなる、可能性に満ち溢れたイベントです。SNSの普及により視聴者の目が肥えた現代、心が動かされないコンテンツは埋もれてしまって目にも留まらず、制作者には常に工夫が求められ続けています。そんな時代だからこそ、CREATORS’ CAMPの参加者は自由な発想で企画を立て、上位に選ばれる作品はユニークで斬新な切り口が光っています。「観光PR」という枠組みの中でも、「こんな表現があるのか!」と驚かされる作品に出会えるのが何より面白いです。まだ全国にはCREATORS’ CAMPを知らない方が多くいるかもしれませんが、このイベントが口コミで広まっていったら、とんでもないことになるなと密かに思いながら毎回楽しみにしています。Kai Yoshihara氏:CREATORS’ CAMPで得られるものは、カメラ機材の知識や撮影・編集テクニックだけではなく、チームで1つの映像を作る経験や、現役で活躍している講師陣の考え方など、本当にたくさんあります。中でも私が最も価値を感じるのは、「自分自身と同じように映像制作を本気でやりたいと思う仲間に出会えること」です。これから映像制作を仕事にしたい方から、さらにレベルアップしたい方まで、幅広く楽しめるイベントだと思います。Y2氏:限られた時間やロケーションの中で映像を制作するのは、正直とても難しいです。しかし、制限や条件があるからこそ、課題に集中して取り組むことができ、作品のメッセージ性が強まり、映像そのものの価値が上がるのではないでしょうか。これまでの参加者を見ても、イベントが終わった頃には、チーム内外問わず多くの方が楽しそうに交流しています。個人で活動しているビデオグラファーの方でも、他の制作者と一緒に作品を作ることで、新たな視点を得られるはずです。映像のスキルを磨きたい方だけでなく、共に取り組む仲間が欲しい方にも、ぜひ参加してほしいです。

【全国にて順次開催中!過去上位作品を閲覧可能!】
CREATORS’ CAMP公式サイトはこちらhttps://www.sony.jp/ichigan/a-universe/creatorscamp/
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