進化を遂げたフラグシップ機α1 IIで魅せるスポーツ撮影第二幕

スポーツフォトグラファー 水谷たかひと 氏

α Universe editorial team

「CP+2025」でスポーツフォトグラファーの水谷たかひと氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。圧倒的な解像感やAIプロセッシングユニットを搭載したAF性能など、スポーツシーンで活躍した「α1 II」の機能をわかりやすく解説。

水谷 たかひと / スポーツフォトグラファー 1968年東京生まれ。1990年東京総合写真専門学校卒業と同時に渡仏。様々なスポーツイベントを撮影し、3年後に帰国。拠点を日本に移しスポーツイベントを追いかける。写真展・企画展等を多数開催。スポーツ関連の報道写真集も多数発刊。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員一般社団法人日本スポーツ写真協会(ANSP)会長国際スポーツプレス協会(AIPS)会員株式会社マイスポーツ出版代表取締役

αを使うきっかけになったモデルが進化。スポーツ写真で真価を発揮する「α1 II」

みなさま、こんにちは。スポーツフォトグラファーの水谷です。私がソニーのカメラを使い始めたきっかけになった「α1」の後継機「α1 II」が発売されたので、今回はこのカメラで撮影した写真をご覧いただきながら、優れた機能などについてお話をしたいと思います。まずは、セミナーのために用意された、この巨大モニターを見てください。

去年よりもはるかに大きくなり、解像感も上がっています。だからヘタな写真は出せないんです。ピントがしっかり合っていないとここまで大きく見せることはできないので、写真家は大変です。でも、新しいαはこれに耐えうるカメラになっている、というところも合わせて見ていただければと思います。今回は、私がソニーのカメラに変えてからずっと追い続けている、ホッケーチーム「ソニーHCブラビアレディース」の写真をお見せしたいと思います。以前は常勝チームでさまざまなタイトルを獲っていたのですが、私が写真を撮るようになってからは1つもタイトルを獲れなくなってしまったんです。しかし、3年目にして初めて日本リーグの優勝シーンを撮影することができました。社会人女子もタイトルを撮りましたので、その瞬間をみなさんにも見ていただきたいと思って持ってきたのが下の写真です。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F4,1/2500秒,ISO1250

これからお見せする写真のほとんどは「α1 II」で撮影しています。「α1」と同様に有効約5010万画素のイメージセンサーを搭載していますが、チューニングが非常に良くなりました。「α1」と比べると明らかに違うと言えるくらい素晴らしいものになっています。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/3200秒,ISO100

上の写真を見ていただければわかると思いますが、選手の顔も高精細で、これだけ大きいモニターで見ても肌の感じや眉毛まですべてをリアルに表現できてしまいます。有効約5010万画素という高画素のイメージセンサーを持ったカメラでスポーツを撮れるのは「α1」と「α1 II」しかありません。そのくらい素晴らしいイメージセンサーです。

質感や立体感まで表現する有効約5010万画素の高解像。ローリング歪みもなく撮影に集中できる

下の写真はボールを打つ瞬間を狙って撮っていますが、ウェアのシワや繊維の感じまで表現できていて、その解像感はうっとりするほどです。やはり有効約5010万画素という高画素のイメージセンサーを持っているカメラでなければこの写真は撮れません。画素数が足りないとここまでのディテールや立体感、肌の感じなどは出ないのではないかと思います。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/5000秒,ISO250

今回ご紹介する写真はすべてJPEGの撮って出しです。アプリなどは一切使わずJPEGデータをそのままみなさんにお見せしています。上の写真はシャッタースピードが1/5000秒と、とても速くなっていますよね。なぜそうしているかというと、F2.8で撮って背景を徹底的にぼかしたいからです。F値を絞っていくとどうしても背景がうるさくなって選手が立体的に見えなくなってしまうので、私がαを使う時はすべて開放で撮影します。そのためシャッタースピードが上がりますが、AF性能が素晴らしいからF2.8でも全部ピントが合ってしまう。ですからF2.8に設定してAFコンティニュアスで撮影しても安心です。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS,300mm,F2.8,1/2500秒,ISO200

上の写真はゴールキーパーがヘルメットをかぶって「これから試合にのぞむ」という一瞬を捉えたものですが、有効約5010万画素もあるのでかなりトリミングしています。何かに反射した光が目のあたりに入っていて、まつげの部分もかなり高精細に、リアルに表現できていると思います。これもF2.8で撮っているので背景が柔らかくぼけていますよね。「FE 300mm F2.8 GM OSS」で撮影しましたが、最近のソニーのレンズはものすごく性能が良い。とくにこのレンズは素晴らしい解像感とぼけ感を表現できるレンズです。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/5000秒,ISO320

上の写真は反対側のゴールラインから撮っています。つまりものすごく遠いところから撮っているということ。でも「α1 II」にはクロップ機能があるので、1.5倍に大きく撮ることができます。さらにトリミングしたのが上の写真です。撮った写真の4分の1ぐらいのサイズにトリミングした感覚ですが、高画素機なので大きくトリミングしてもクオリティの高い写真に仕上げることができます。スポーツ写真は遠いところから狙わなければならないことが多いので、トリミングをしても画質を担保できる高画素機はとても心強いです。有効約5010万画素のイメージセンサーで、シャッター方式はローリングシャッターを採用しています。ローリングシャッターのカメラで撮影するとセンサーの上から順に記録されていくので、記録している間に物が動いてしまうと曲がって記録されてしまいます。これが「ローリング歪み」です。「α9 III」はグローバルシャッターを採用しているので、ローリング歪みはまったく出ません。「α1 II」はローリングシャッターを採用しているけれども歪まないんです。厳密には歪んでいるのかもしれませんが、肉眼では確認できません。例えば下の写真を見てください。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/3200秒,ISO200

ボールを打つためにスティックを振り切っていますが、スティックは曲がっていませんよね。ローリング現象は出ていませんよね。そのくらい画像を記録する処理スピードが速いのです。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/4000秒,ISO200

上の写真も同様です。地面のボールをパンとはたいているシーンですが、ここでもスティックは歪んでいません。ローリングシャッターでここまで歪まないのは「α1」と「α1 II」だけです。これだけ速く打つとボールも歪むものですが、歪んでいませんよね。ですから、今までの感覚通りに、気を遣うことなく撮影に集中できます。普通であれば「ローリングシャッター現象が出てしまったらイヤだな」「ボールが変な形に伸びてしまっていたらどうしよう」と考えてしまいますが、そういった不安は一切ありません。

連写をしてもピントを外さずに追随するAIプロセッシングユニットの実力を検証

ここからはAFの性能について、詳しく解説していきたいと思います。「α1 II」ではAIプロセッシングユニットが搭載されました。これにより人、鳥、動物、昆虫、飛行機、列車、車と、AIがどんな被写体を撮っているのかを識別できるほど被写体認識能力が上がり、被写体を捉えて追捕するAFの精度も高くなったのです。「α1」が識別できるのは人、動物、鳥くらいですから、ここは大きな進化といえます。「α1 II」は「α1」のマイナーチェンジ版のように思っている人も多いようですが、「α1」を使い込んでいる私からすれば「何を言ってるんだ」と言いたくなるほど、そんなに簡単に片付くものではないんです。そこで、AIプロセッシングユニットの素晴らしさがわかる連続写真を用意しました。フォーカスエリアをゾーンにして、AF枠を上げて撮っていますので、緑の枠で表示されているAFの測距に注目しながら見ていただきたいと思います。

最初は手前に選手が入ってきそうなところですが、まだピンポイントで瞳を捉えています。4枚目で前の選手がすっかり被ってしまいました。でも「瞳が認識できない」とわかったら枠で顔を認識して、そのままフォーカスをキープしてくれたんです。選手の顔を再び見え始めた7、8枚目も顔認識のままキープして、ギリギリですが顔にピントを残してくれています。そして、前の選手が完全に通り過ぎた9、10枚目は顔認識の枠から瞳のピンポイントに戻りました。この一連の場面は逆光で撮っています。順光と違ってコントラストがなくなってしまうので、被写体を認識するのが非常に難しくなりますが、これだけの的中率でしっかりと瞳や顔を追従してくれるとAF性能への不安がなくなります。途中で前を横切った選手が、撮っている選手の前で止まってしまうとさすがにピントを持っていかれてしまいますが、スッと動いてくれればピントは残したままにしてくれる。秒間30コマでシャッターを切っても瞳や顔からピントを外すことはほぼなく、AFが大きく進化したことを実感しました。

上の5枚も連写で撮りました。緑の枠は表示されていませんが、これもピンクのユニフォームを着たブラビアレディースの選手の顔にピントが合っています。選手の前にスティックとボールが入っても、そちらにピントを持っていかれることはありません。実は混戦状態の中での危険な行為「デンジャラス」という反則で、グレーの選手はこの後反則を取られました。最後のカットのように「危ない!」という表情までしっかりと残せるのはスポーツ写真ではありがたいことです。

狙った被写体を捉えて離さない秀逸なAF。手前に障害物があってもピントはそのまま

さらにAF性能の素晴らしさを見ていきましょう。下の写真は選手の顔にボールが重なっていますが、このような状況でも選手の瞳にピントを残してくれます。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/3200秒,ISO200

今回お見せした写真でわかると思いますが、「α1」と比べるとAFを合わせる速さや正確さは格段に上がっています。ですから「α1」を持っているから「α1 II」は買わなくていいかな、と思っている人は本当に考え直してみてください。おそくら「α1 II」を使ったらその差に愕然とすると思いますので、ぜひ体験していただければと思います。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/5000秒,ISO250

上の写真も同じですね。これもトラッキングで奥の選手にピントを合わせて追っていたので、手前の選手にピントが移動してしまうことはありませんでした。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/5000秒,ISO1250

これはリーグ戦でチャンピオンを獲ったときのシーンです。選手がバーっと集まってみんなで喜んでいますが、相手チームの選手が手前にいますよね。だから下手をすると相手チームの選手にピントが合ってしまいますが、「α1 II」は喜んでいる選手にトラッキングで合わせておけば、あとはシャッターを切るだけ。もう手前にいる相手チームの選手にピントが行くことはありません。実は、前を横切っている相手の選手はキャプテンなんです。足元に黄色いテープで「C」とあるのがキャプテンの印です。私としては、悔しがっている相手チームの選手と、よろこんでいるブラビアレディースの選手たちを対比で見せられるいい写真を残せたと思います。

プリ撮影で気付いた写真の新たな世界。ピントも外さず自分の武器になることを実感

「α1 II」は、「α9 III」で搭載された「プリ撮影」という機能が搭載されているのもポイントです。私の場合はシャッター半押しの状態で被写体を追従するので、シャッターを切ったところから写真を記録するのが通常です。でもプリ撮影はシャッターを切る最長1秒前まで記録できます。コンマ何秒まで細かく設定できるので、私は0.3秒や0.4秒に設定してプリ撮影をオンにしています。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/5000秒,ISO250

上の写真はプリ撮影で撮れたものです。私は30数年スポーツ写真を撮り続けてきたので、「撮り逃すなんてあるわけがない」と思い「α9 V」では一切この機能を使っていませんでした。機能に頼らずとも撮り逃さない自信があったのです。でも今回は、ソニーさんから「1回使ってみて」と言われたので、仕方ないと思いながら使ってみたところ、もう手放せなくなってしまいました。今は常にプリ撮影を入れています。プリ撮影を使うことで、今まで自分が「いいな」と思っていた瞬間以外にも新しい世界があることに気づかされた、ということです。この写真は0.4秒でプリ撮影を設定していました。全く予測がつかないところから選手がゴール前に飛び込んできたので、感覚的にはシャッターボタンを押したのはこのシーンよりも遅かった。だから絶対にボールに飛び込んでいる瞬間は撮れていないと思っていました。でもプリ撮影を入れていたおかげで撮ることができたのです。プリ撮影が素晴らしいのは、ある程度被写体を捕まえておけばほぼすべてにピントが合っているところです。ただ記録してくれるだけではない、というのが素晴らしい。これを撮れたことでプリ撮影は自分の武器になると実感しました。ここからは作品らしく撮ったものをお見せしたいと思います。下の写真は、試合前にフィールドに水をまいている時間に選手たちがミーティングしているシーンを撮影しました。

α1 II,FE 400mm F2.8 GM OSS,400mm,F2.8,1/5000秒,ISO200

水まきをしていると細かい飛沫がミーティングしているところまで広がって幻想的な雰囲気をつくり出します。こんな状況でもピントはBRAVIAの文字のところにしっかり合います。こういうシチュエーションでAFを使うとフォーカスに迷ってしまってなかなかシャッターを押せないことが多いのですが、それもありませんでした。その結果、気に入った1枚を撮ることができたのです。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS,300mm,F2.8,1/4000秒,ISO640

この写真は一生懸命ボールを追う選手の後ろ姿です。全面AFで撮っているので本来の「α1 II」であれば頭部にピントが合ってもおかしくありません。でも、この時は偶然足元にピントが合った。結果、フィールドの水を跳ね上げた躍動感あふれる瞬間を、高解像で表現することができました。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS,300mm,F2.8,1/4000秒,ISO1000

上の写真は「α1 II」のすべてが詰まったような写真です。シュートを打つ瞬間になりますが、この時はつま先がピンと立ってボールを思いっきり叩くような感じになります。この体勢でもきちんと顔と瞳にピントが合っていますし、ローリング現象も一切出ていません。ボールも歪んでいません。有効約5010万画素という高画素のおかげで上がった水しぶきもきっちりと表現できている。これは自分の中でも非常に良い瞬間だなと思いました。多くの魅力が詰まった新しいカメラ「α1 II」を、ぜひみなさんも手に取って、使ってみていただきたいなと思います。

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