
α1 IIで描き出す飛行機の世界
写真家 佐々木豊 氏
「CP+2025」で写真家の佐々木豊氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。さまざまなポイントから撮影した航空機の写真を紹介しながら、撮影時の状況やエピソード、こだわりのポイント、活躍したカメラの機能、レンズの魅力などを語ります。
佐々木 豊 / 写真家 1966年京都府生まれ。これまでモータースポーツや様々なスポーツ競技を撮影。雑誌などに作品を発表。その経験を活かし、現在は航空機撮影を主に行う。どんなシーンでも自分独自の視点とエッセンスをちりばめることに主眼を置いて撮影に挑む。伊丹空港を中心に全国各地の空港で活動。日本航空写真家協会(JAAP)準会員ソニープロサポート会員ソニー αアカデミー講師https://www.instagram.com/yutaka747/
「α1 II」と「α9 III」それぞれの特性を生かし「G Master」レンズで飛行機を印象的に描く
今回は「α1 II」を持って、新千歳空港、羽田空港、伊丹空港、富山空港と4つの空港で撮影してきましたので、写真を見ながらお話させていただこうと思います。
まずは、機材の紹介です。「α1」の後継機「α1 II」が登場しました。アップデートは、被写体認識AFが可能になったところが大きいですね。今回お見せする写真は、すべて被写体認識の飛行機モードを使って撮影しています。高感度性能もノイズ処理能力がアップしていますし、グリップ部分が握りやすく、シャッターボタンも押しやすい形状に変更されました。このカメラが素晴らしいのは、5000万画素オーバーの画素数を保ちながら秒間30コマの連写を実現しているところです。しかもこのサイズ感で信頼性が担保されているのも非常にありがたいです。
今回は「α9 III」でも撮影してきました。このモデルの魅力は何といってもグローバルシャッターで、タイミングのズレがない書き出しができるところです。みなさん、秒間120コマで撮っているシャッター音を聞いたことはありますか? 120コマも切れると、もうシャッター音ではなくなっているんですよ。塊の音がするので、ぜひ店頭の売り場などで秒間120コマの音を聞いてみてください。そして、下に並んでいるのが使用レンズになります。すべて、カメラの性能を存分に引き出してくれる「G Master」レンズです
実は昨日、「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」というズームレンズが発表になりました。この新しいズームレンズに関しては、「αUniverse」内で私が紹介させていただく予定になっていますので、ぜひご期待ください。
新千歳空港では雪が積もっておらず悪戦苦闘。雪がなくても画になるポイントを探す旅へ
ここからは作品を見ながらご説明していきたいと思います。12月末、新千歳空港に行きました。でも、雪がまったくなかったんです。こういう場合は雪の写真が撮れないので、諦めて撮影ポイントを探す旅に出ます。
上の作品はたまたま車で走っていたらバックに樽前山が見えて、ちょうど新千歳にアプローチする飛行機がいい位置にいたので撮影した1枚です。機体は787-10という、787で一番大きい機体です。雪が積もった状態であれば、もっと北海道らしさが出たと思います。
こちらは新千歳の「生コン」というポイントです。最近はこの樽前山のちょうど上を飛んでくれる飛行機がとても少なくて。787はこの先を行ってしまいますし、トリプルも山のちょうど真ん中くらいと中途半端な位置になってしまうんです。以前はもう少し高く上がってくれたと思うのですが、なかなか思い通りの写真が撮れなくなっています。
雪がないので、雪が写らない写真を撮ろうと思い、上のような写真を撮ってみました。日没後に撮影しましたが、北海道は寒いこともあり、夕日と青のグラデーションがとてもきれいで透明感があります。機体は787なので、低い上がりでちょうどいい位置にはまってくれました。そして遠征の最終日、ようやく雪が降りました。
夜中から降っていたので滑走路が真っ白になってくれました。正直、「やったぞ」という感じでしたね。そこに羽田から来たトリプルが雪煙を上げてランディングしたシーンを撮影しました。生活されている人や航空関係者にとっては絶対に雪がないほうがいいと思うのですが、私たちは雪があったほうがありがたいです。次はランディング後のカットになります。
ランディング後にリバースして、雪煙を上げているシーンです。こういうシーンを見ると興奮してガンガン撮りたくなります。しかも機体は大型のトリプル300です。
こちらは新千歳の19エンドから正面気味に撮った1枚です。ただ、この画を撮ろうと思って19エンドに行ったわけではありません。新千歳空港には2本の滑走路があって、片側を離陸、もう片側を着陸に使っているのですが、この時、離陸用の滑走路に除雪が入ったんです。そうすると、着陸専用の滑走路を離着両方で使うことになり、着陸専用のところから離陸するという、レアなケースを撮ることができるわけです。ちょうどこの時、タイの787が国際から出てきていて、「これが雪煙を上げて飛んでいくシーンを正面から撮れるんじゃないか」と移動したのですが、着いた途端に、タイの787は元に戻って離陸用の滑走路から飛んでしまいました。残念でしたが、787の着陸は撮ることができました。
被写体認識AFの飛行機モードを使えばフォーカスはカメラに任せて構図に集中できる
ここからは羽田空港で撮影した作品を見ていただきたいと思います。下の作品は第2ターミナルの展望デッキから撮ったものです。日の出が6時51分で、撮影したのが6時35分。日の出前の明るくなってきたとき、機体に反射する光を捉えました。
大画面で見るとかなり迫力がありますね。金属感が本当にきれいで、飛行機の魅力が際立つ私の大好きなシーンです。冬場に第2ターミナルに行けばこのような光で撮ることができるので、ぜひ行って撮っていただければと思います。
こちらも第2ターミナルの展望デッキから、今度は05上がりの飛行機が日の出の太陽を通過するところを狙って撮りました。このようなシーンでは飛行機認識のAFが役に立ちます。太陽に引っ張られずに、ピントを飛行機に合わせ続けてくれますから。AFでも飛行機を追い続けてくれるので、フォーカスは安心してカメラに任せることができます。
上の作品は1月に撮影しました。冬場は南風運用がとても少ないのですが、運良く南風運用を撮ることができたレアケースです。朝一で陽炎も少なく、太陽が低い位置にあるため街がオレンジ色に染まっています。遠征した2日間はどちらも南風だったんですよ。こういう時はフレーミングを固定しておけば、あとは飛行機の動きに合わせてAFが勝手に追いかけてくれるので、いい位置に来たらシャッターを押すだけです。
これは海ほたるから撮っているので、かなり距離がありますね。600mmのレンズに1.4倍のテレコンをつけて、焦点距離は840mm。離陸して、東京タワーの上で旋回しているところを撮りましたが、機体をいい感じにひねっていて飛行機の角度もよかった。時間は7時くらいだったと思いますが、陽炎も少なくていい写真が撮れました。
こちらは羽田空港で話題の新スポット「ソラムナード羽田緑地テラス」で撮影しました。今までにないアングルで撮れるかなと思いまして。午前中は低い太陽が海面に反射して、飛行機のおなかを照らしてくれるのがいいですね。タイミングよく3機をフレームに収めることができました。この写真、実はテレ端でクロップしているんです。70-200mmのレンズを使っているので、焦点距離は300mm。「α1 II」は5010万画素なので、クロップしても非常に解像度高く撮ることができます。私はクロップの機能をC1ボタンに割り当てて、撮りながらでもすぐクロップに切り替えられるようにしています。
これは富士山をバックに撮影できる新整備場駅付近から撮ったものです。2重のフェンス越しに撮っているので絞りすぎるとフェンスが写ってしまう、という状況でした。そのためF5.6で撮っています。
手持ち撮影でも安心の強力な手ブレ耐性。冬の東京は空気がきれいで撮りやすいのが魅力
上の作品は羽田空港のイノベーションシティというポイントから撮った、ランウェイ22の離陸です。冬には珍しい、南風運用でなければ撮れないシーンですが、この日は西風がとても強くて新ルートが使えず、2便だけ撮れるチャンスがありました。貴重な機会でしたが、日暮れ前、低い太陽の光が機体の下まで当たっている写真が撮れました。
これは先ほどの写真の後で撮った1枚です。これも金属感がキラキラとして美しいですね。機体の下面とエンジンのカウルに西日が反射してオレンジ色に輝いていている。青空もしっかり残っていて色温度を変えることなく思い通りの表現ができました。
これは第1ターミナルの展望デッキで撮った富士山のシルエットショットです。有名な撮影スポットなのでみなさんも撮ったことがあるかもしれませんが、本当に東京は空気がきれいですよね。大阪と比べると圧倒的にきれいなので、冬場に東京に来たら、朝と夕方は撮り放題です。この時は西風が20ノットほどと強かったのですが手持ちで撮っています。「α1 II」は手ブレ補正機能がとても優秀で、シャッタースピードは1/10秒ですが手ブレなく撮ることができました。
手ブレ補正がどのくらい効いているのか検証してみようと思い、撮ってみたのが上の写真です。24-70mmのレンズをつけて、シャッタースピードは1/2秒に設定して手持ちで撮影しました。手ブレが抑えられているか拡大して見てみましょう。
どうですか。手ブレしていませんよね。私はワイパーの解像度で確認しますが、これはばっちりです。シャッタースピード1/2秒でも手ブレ耐性があるという、非常に優れたカメラです。
上の写真は第1ターミナルの南側のエリアで撮影した、機体を洗浄しているところです。羽田界隈をうろついていると結構撮れるシーンではあります。最先端の飛行機はどうやって洗うのかな、専用の洗浄機があるのかな、と思いきや、人の手で、モップで洗っているんですよね。
上の写真はソラムナード羽田緑地展望テラスで撮影しました。太陽と飛行機の位置がなかなかうまい具合に合わないのですが、いいタイミングで撮ることができて良かった。実はこの日の体調は最悪で、執念で撮った1枚になります。これだけを撮るために日の出前に這いつくばって出かけて撮影したので、そういう意味でも思い出深い1枚です。
一瞬で見えかたが変わる飛行機撮影では連写が有効。雷など予測できないシーンではプリ撮影も役立つ
ここからは伊丹空港を発着する機体を撮った作品になります。下は着陸シーンです。
こういう場面ではどうしてもローリングひずみが出てしまいますが、バックの画がまったくひずんでいませんよね。この1枚でひずみの少なさも表現できたと思います。
飛行機を撮る時、私は上の写真のようにアップ気味に撮るクセがあります。私はさまざまな雑誌に作品を掲載していますが、このくらい大きく写してしまうと誌面では扱いにくいんですよね。雑誌で1ページや見開きいっぱいに写真を使うと、製造の過程で写真の上下左右の3ミリほど断裁されてしまうので、上の構図ではかなり窮屈な写真になってしまう可能性があります。私は自分のクセがわかっているので、いつも欲しい写真の前後は連写します。その中の1枚が下の写真です。
このくらいであれば掲載しやすいと思います。一瞬で飛行機の位置は変わってしまうので、連写することで掲載しやすい画角も押さえることができるのです。
上の写真は下の雲から太陽が見えていて、とても明るい状況です。撮影データもそれを物語っていますよね。私は露出をEVFに連動させているので、こういう場面で手前から飛行機を追ってしまうとEVFが真っ暗になってしまうんです。それを避けるために、カメラの背面左上にあるC3ボタンに露出連動のオン/オフを割り当てて、すぐに露出連動をオフできるように設定しています。最初に飛行機に露出を合わせて、露出連動を切ってから追う。そうすると途中でEVFは白く見えづらくなりますが、実際には上のような写真を撮ることができます。
これはタッチダウンのシーンです。「α1 II」になり、プリ撮影という魔法のような機能が搭載されました。シャッターを切る前の瞬間をさかのぼって記録できる機能なので、今回は試しにランディング直後からシャッターを切り出して、その手前も写っているかどうか検証しました。下の写真がプリ撮影でシャッターを押す前に記録されていた1枚です。
シャッターを押す前もしっかり撮れていました。これはなかなか面白い機能ですね。鳥などと違って飛行機で活用するのは難しいかもしれませんが、雷など予測できないシーンでは有効に使えそうです。光った瞬間にシャッターを押しても、もう遅いですからね。
ライトとベイパーが同調した瞬間を逃さない人間の目を超えた「α9 III」の秒間120コマ連写
次は「α9 III」で撮った作品になります。究極のシーンで撮りたいと思って、土砂降りの中で撮ってみました。人気ポイントの千里川で撮りましたが、さすがにこの時は誰もいなくて私1人だけでした。
「α9 III」は秒間120コマの連写ができるので、ストロボライトとシンクロする瞬間も撮れるのではないかと思い連写してみたのが上の写真です。やはりシンクロしましたね。秒間120コマは人の目を超えているので、このようなストロボライトとベイパーが同調した写真も撮ることができます。
こちらも120コマ連写で撮ることができた1枚です。アンチコリジョンライトという赤いライトとベイパーがシンクロした瞬間を撮ることができました。
有効約5010万画素の高解像で画質を担保。テレコンの活用とトリミングで思い通りに切り取る
これは伊丹空港付近、宝塚の山肌から撮っています。600mmに1.4倍のテレコンをつけたので840mm、さらに少しトリミングして大体1260mm換算になりますが、ビル群のディテールがしっかり見えるほど解像感を担保できるのはありがたいことです。
これは私の大好きな猪名川土手から撮った離陸シーンですね。冬場に撮るのが好きですが、実は雨の時も面白いですよ。着陸のリバースや、水がブワーッと飛んでいくシーンも見られるので、ぜひおすすめです。
上の写真は伊丹空港に隣接し、飛行機を近くで見ることができる「スカイランドHARADA」から撮ったものです。787のエンジンファンの大きさが際立ち、パイロットの顔も見えるくらいの画角を狙いました。ここはなかなかいい撮影ポイントなので、みなさんもぜひ行ってみてください。
ここも私の好きな撮影ポイントで、離陸シーンを撮影しました。離陸は一番パワーを感じるんですよね。787は上がりが低いので、とてもいい感じで上がってくれます。エンジンのブラストが効いた迫力ある写真を撮ることができました。
これは日没後ですが、こういうシーンでもばっちりと撮ることができます。よく見ると客室の人や個人用モニターまで見えるんですよ。
こちらは千里川から撮った定番の1枚です。ただ、この場所は今、工事で入れなくなっていまして、今後は豊中つばさ公園「ma-zika」に生まれ変わります。今年の8月に一部が開園しますが、全面オープンは2027年3月になっていますね。完成したらどんな写真が撮れるか楽しみです。
美しい背景がより機体を印象的に魅せる。5月は美しい夕焼けとともに撮影を
これは先日撮った富山の写真になります。この眺望が見られるチャンスは非常に少なく、年間で数日しかない絶景とともに飛行機を撮ることができました。立山連峰の眺望がいいと翌日の新聞に掲載されるのですが、この時も新聞に載っていました。
ここからは「α1」の写真になります。上の写真は国際ターミナルの展望デッキからスローシャッターで撮影しました。滑走路にはLEDが点灯していますが、実は高速で点滅しているので点滅の数でシャッタースピードがわかるんです。関東は電源の周波数が50Hzで、関西は60 Hz。関東は光が1秒間に50Hz×2倍=100回点滅しているので、100÷点々の数がシャッター速度になります。上の写真はライン状になっている点が25個あるので100÷25=4でシャッタースピードは1/4秒になる。光の数でシャッター速度がわかってしまうので嘘はつけないんです。
こちらも撮影場所は千里川です。夕焼けがとてもきれいで、雲の表情もよかったのでシャッターを押しました。夕焼けは秋がきれい、というイメージがあると思いますが、意外と5月がきれいなんですよね。多少、靄がかかっていたほうが夕焼けはきれいですから。上の写真も5月に撮ったものです。
こちらは新千歳空港のアルファ10というポイントから撮影しました。有名なポイントですが、夜に行くと怖いところです。雪女が出そうなくらい怖いですが、ここはエンジンランナップ、つまりエンジンをあたためるために飛行機が停まってくれるんですよ。露光時間は13秒ですが、しばらく停まってくれるのでとてもカラフルな写真を撮ることができます。
これも伊丹の千里川で撮った着陸のシーンで、バックは真っ暗でした。これは、と思って露出を切り詰めて、ラインライトが残るように撮っています。787ならではの主翼のしなりもいいですよね。
伊丹周辺では早咲きのカワヅザクラとともに飛行機を撮影しました。春は桜を撮る機会が増えると思いますが、少し角度が違うだけで撮れるシーンが変わります。この時は対角の位置をイメージして、桜と飛行機を配置しました。桜の時期はぜひいろいろな場所で、いろいろな角度で写真を撮っていただければと思います。
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