
「カメラグランプリ2025」贈呈式リポート
2025年5月16日に「カメラグランプリ2025」の各賞が発表され、ソニーの「FE 28-70mm F2 GM」が日本国内で新発売された交換レンズの中から最も優れた1本を選ぶ「レンズ賞」を受賞しました。5月30日に行われた贈呈式では、ソニーの代表者が受賞の喜びと開発秘話を披露。カメラグランプリ実行委員の代表者に受賞理由や今後のソニーに期待することなどもお聞きしました。
贈呈式で語られた受賞の喜びと開発秘話
贈呈式では、カメラグランプリ2025実行委員長の大江航氏から「レンズ賞」の賞状とトロフィーが授与されました。代表して受賞の喜びを語ったのはソニー株式会社 レンズテクノロジー&システム事業部 事業部長 岸政典です。
お客さまに新たな撮影体験を提供したいとレンズの技術を進化させてきた集大成
「FE 28-70mm F2 GM」は、Eマウントシステム初となるF2通しのズームレンズで、「ズームレンズをつくるのではなく、焦点距離の変えられる単焦点レンズをつくろう」という思いで企画・開発した商品です。F2の大口径ズームレンズとなるとどうしても大きく重くなってしまうため、F2の素晴らしい性能を維持しながら、どれだけ小型軽量化できるかは大きなチャレンジでした。レンズの小型軽量化は簡単なことではありません。レンズは本当に繊細な商品で、無理に軽く小さくしようとすると、光学性能にバラつきが出るなど、必ず大きな副作用が生じてしまいます。我々が目指しているそういったレベルではなく、常に技術に裏付けられた小型軽量です。
我々は2016年に「G Master」というレンズブランドを立ち上げ、今年で9年目になりますが、その間、レンズに関わる周辺技術すべてを進化させる取り組みを続けてきました。非球面レンズの加工、アクチュエータ、制御、生産技術など、すべての技術を徹底的に進化させ、それらを融合したからこそ、今まで実現できなかった商品を生み出せる環境が整ったと実感します。特に光学設計は多くの制約との戦いで、その制約の中で良い設計を生み出さなければいけない難しさがありますが、我々はレンズに関わる周辺技術の徹底的な進化によって光学設計の制約をどんどん取り払っています。そうすることで理想の光学設計に近づくことができ、新しい光学系が生まれ、今までなかったようなレンズが登場する。我々はそういうサイクルをまわし続けて、徐々に進化してきました。「FE 28-70mm F2 GM」は、本当にこれまでやってきた取り組みの集大成だと感じています。そのため、今回のレンズ賞は我々の開発陣にとっても非常に嬉しい受賞でした。実は先日、「FE 28-70mm F2 GM」と同じコンセプトでつくったF2通しの中望遠ズーム「FE 50-150mm F2 GM」も発売させていただきました。こちらも、市場から非常に高い評価をいただいております。このような新しい価値を持った商品をつくると、お客さまにも喜んでいただけますし、市場も一段と活性化すると改めて感じます。
今後もこのような技術の革新を続けていきながら、これまでなかったようなレンズを市場に送り出して、お客さまに新しい撮影体験を提供するとともに、このイメージングの業界をみなさんと共に、さらに盛り上げていければと思っています。
新開発の高精度なXAレンズが完成に貢献。ぼけの質感にこだわった描写性能にも注目
開発秘話を披露したのは、光学設計部 統括部長の金井真実です。F2通しのズームレンズを設計するのは私たちも初めてで、何か1つの要素や技術だけで達成できたわけではなく、光学設計、その中で使われているレンズエレメント、それを速く正確に動かすアクチュエータ、全体を支える機構、そして製造技術と、すべての技術の進化が必要でした。まず、光学設計につきまして、公開されている断面図を見てお気づきの方もいらっしゃると思いますが、レンズ構成は過去に出した「FE 24-70mm F2.8 GM II」に似ています。数多くの設計検討を行った結果、この構成が最適だというところに行き着き、「FE 24-70mm F2.8 GM II」をベースにそれを発展した光学設計になっています。このレンズが成り立ったのは、過去のものよりも大きく、さらに1段精度の高いXA (超高度非球面)レンズの開発が間に合ったことが大きなポイントでした。また、ズームした時に繰り出し量が小さいこともこのレンズの特徴です。操作性や重心移動という観点で、繰り出しをなるべく小さくしようと意識して設計していますが、このメカ構造が軽量化にも非常に大きく効いています。
もう1点、光学設計で強くこだわったのはぼけの質感です。高レベルな解像感はもちろん、スペックや数値では表現しづらいぼけ表現にも力を入れました。このレンズにおいては主被写体を引き立てる効果もありながら、写真の大部分を占めるぼけの質感が作品を特徴づける非常に重要な要素だと考え、ぼけと解像を高いレベルでバランスをとることに苦心しました。設計だけでなく、製造段階での再現性にもこだわり、収差をレンズ1本1本、繊細に調整する工程を加えることでバラつきなく、設計通りの高い品質を実現しています。「FE 28-70mm F2 GM」は想像を超えるような描写を提供できるレンズに仕上がっていると確信しています。ぜひ使っていただき、その上で「もっとこんなレンズが欲しい」といった声もいただけるとうれしいです。私たちはその声にお応えして、それを超えるようなレンズを今後も提供し続けたいと思っています。
技術の粋を集結したレンズにプロカメラマンも高評価
続いて、カメラグランプリ2025実行委員長の大江航氏(雑誌『フォトコン』)、カメラ記者クラブ代表幹事の福田祐一郎氏(雑誌『CAPA』)のお二人に、受賞理由についてお聞きしました。
――「FE 28-70mm F2 GM」はどのような点が評価されてレンズ賞を獲得できたと思いますか?福田:ズーム全域でのF2通しや軽量性が評価されていると思いますが、個人的にはF2.8からさらに一段明るいF2でズームレンズをつくったところが素晴らしいと思っています。しかも小さい。F2のズームレンズは市場に出ていますが、このレンズは本当に軽いので、そこがとても大きな魅力であり、評価された点だと思います。ボディとの重量バランスも絶妙ですし、手にした誰もが機動力の高さを実感するのではないでしょうか。大江:やはりズーム全域F2通しのぼけ表現ですね。しかも描写にキレがあるというか、画面全体をくっきり、はっきりと高解像で表現してくれる。この2つを見事に両立している点が素晴らしいと思いました。F2.8でもズームレンズとなると単焦点並みに太く長くなる印象がありますが、このレンズは手持ち撮影も、ストラップで肩掛けしても苦にならない。本当に技術の粋を集結したレンズだと感じます。
――実際に「FE 28-70mm F2 GM」を使って撮影したプロカメラマンなど、周囲からはどのような声が聞かれますか?福田:ウエディングフォトグラファーからは、「レンズ交換をしなくて済むなど、いろいろな意味でロスがなくなった」と聞いています。ウエディングでは絶対に逃せない瞬間があるため、ロスのないことが大きな利点なのだそうです。さらに、開放から使えるのも魅力のひとつ。昔からレンズは開放で使うと画質が甘くなるという定説があって、少し絞って使う人も多いのですが、このレンズに関しては開放で使っても作品として出すことができる。ISO感度を上げようか迷ったときに開放F2という絶対的な明るさは必ず強みになります。大江:ポートレートではピントと解像感、両方ともシビアなものが求められますが、その点においてはどちらも満足できる結果だったと聞きました。しかも軽量なので、手持ちで距離やアングルを変えながらもストレスなく撮影を進行でき、さらにAFの駆動もよく、F2の開放でも目元に素早くピントを合わせることができるので、ストレスなく快適に撮影できるという声も多く聞いています。また、解像感や色の再現性も高評価です。風景写真の場合は森林の緑や空の青、夕暮れのオレンジなどグラデーションの美しさが作品づくりに大きく関わってきますが、発色に不自然なところがまったくなく、ナチュラルに表現できるのも魅力です。――ここ数年のソニーの連続受賞についてはどう思われますか?福田:カメラではフラッグシップ機の「α1」、連写性能に優れた「α9」、高画素機やスタンダードモデルを揃える「α7」と、レンジの広さというか層の厚さがあり、ユーザーのレベルに合わせてくまなく揃えていますし、レンズにおいても長くミラーレスモデルを手掛けてきただけにラインナップも豊富です。しかも、その技術をベースに新しい商品がどんどん出てくるというサイクルが出来上がっていて、すべて完成度の高い商品に仕上げているところが多くのユーザーに支持されているのだと思います。
大江:ミラーレスカメラというジャンルの中で、最先端技術を常に追求する姿勢が連続受賞に繋がっていると感じます。カメラではフラッグシップ機からコンパクトな7Cシリーズ、動画向けの機種と、ユーザーが用途に合わせて選択できるようにさまざまなモデルを展開している。その層の厚さも評価されているように思います。
今後もソニーにしかつくれない、新しい驚きがある商品に期待
――カメラもレンズも豊富に揃うαシリーズですが、シリーズ全体としてどのような印象をお持ちですか?福田:これから写真を始める人にすすめやすいイメージがあり、それがソニーの魅力だと思います。ステップアップしても自分のレベルに合うカメラやレンズがあり、ずっと写真を楽しめるようなラインナップになっていますから。大江:一言で言うと「盤石なラインナップ」ですね。弊社の雑誌「フォトコン」でもフォトコンテストを毎月6部門で行っていますが、αを使われている人が多くいらっしゃいます。中・上級コース、初級コースとレベルによって部門が分かれていますが、どの部門でもまんべんなくαシリーズが使われている。しかもネイチャー、シティスナップなど被写体のジャンルも幅広い。レベル、ジャンルともに幅の広さや盤石さを編集担当者として日頃から実感しています。
――今後、ソニーにはどのようなことを期待していますか?福田:カメラもレンズもすべて出尽くしていると思いながらも、先日「FE 50-150mm F2 GM」が発売されて、ある意味驚きでした。他の焦点域でもF2のシリーズが出てくるのではないかと期待してしまいます。もちろん、焦点距離が伸びればピントがシビアになるなど、難しい部分があると思いますが、ソニーにしかつくれないレンズがあると思うので頑張って欲しいです。大江:レンズだけではなく、カメラもグローバルシャッターを採用するなど、「そうきたか」「それができるのか」ということを実現してきたのがソニーです。ミラーレスカメラもこれだけ普及して選択肢も増えていますが、カメラ・レンズ問わず、新しい驚きがあるような製品をこれからもどんどん出して欲しいと期待しています。
カメラグランプリとは写真・カメラ専門の雑誌・Web媒体の担当者の集まりであるカメラ記者クラブが主催し、カメラグランプリ実行委員会の運営のもと1984年から開催されており、組織された選考委員が1年間(毎年4月1日から翌3月31日まで)に日本国内で新発売されたスチルカメラ・レンズ・カメラ機材の中から各賞に値するカメラや撮影機材を選出します。各賞は、最も優れたカメラ1機種を選ぶ「大賞」、交換レンズの中からも最も優れた1本を選ぶ「レンズ賞」、一般ユーザーがWebサイトから投票する「あなたが選ぶベストカメラ賞」「あなたが選ぶベストレンズ賞」、大賞・レンズ賞を受賞したカメラを除くすべてのカメラと写真製品・機材を対象に大衆性・話題性・先進性に特に優れた製品を選ぶ「カメラ記者クラブ賞」の5部門があります。
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