究極の一瞬を追い求めて ― α1 IIが拓く野鳥撮影の新境地

自然写真家 寺沢孝毅 氏

α Universe editorial team

寺沢孝毅 / 自然写真家 自然写真家。北海道生まれ。22歳のとき移住した天売島に住み続ける。海鳥の保護活動を続けながら、天売島を「小さな地球」に見立てて撮り続ける。また、海鳥や海棲哺乳類を通して極地から熱帯まで海洋環境を取材する。地球の素顔を伝えるトークや展示活動を積極的に展開中。『ギアナ高地 謎の山テプイ』、『BIRD ISLAND TEURI』など著書多数。近年は映像作品を自然番組などへ提供する。

初代α1が登場した衝撃は、いまも鮮明に覚えています。有効約5010万の高画素機でありがなら秒間30コマの高速連写を搭載したことで、高画素とスピードの両立という理想が完成したと感じました。そして、待望のα1 IIにはAIプロセッシングユニットやプリ撮影機能に加え、これまで積み重ねられてきた高解像度や低ノイズなどの技術がひとつのボディに結集されています。それでいて、ボディの小型軽量化が維持されている点は、私にとって何よりも高く評価したい進化です。実機を手にしてみると、グリップを握った感じがよく、ボタンの角度や高さなどの細部の形状も改良が施されているのがわかります。またバッテリー2個を同時に高速充電できるチャージャーや、より深い形状のアイピースカップが同梱されている点も嬉しいポイントですね。

向上した被写体認識精度が鳥の瞳を捉え続ける

α1 IIのAF性能を試すため、被写体の認識対象を[鳥]に設定し、ナナカマドの実を食べにくるツグミを撮影してみました。FE 300mm F2.8 GM OSSと2倍のテレコンバーターをつけて600mm相当での撮影です。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X Teleconverter 600mm相当,F5.6,1/10000秒,ISO6400

プリ撮影を[入]に設定し、実を啄んでいたツグミが、不意に枝先から羽ばたいてジャンプしたのを見てシャッターを押しました。その直後、ツグミは翼を閉じて少し下降し、再び羽ばたいて横方向へ飛んでファインダーから外れていったのです。このような突発的かつアクロバティックな動きに対しても、AFが鳥の瞳を捉え続け、30コマ/秒で16コマの撮影に成功しました。そのうち12コマは、0.4秒遡る設定としたプリ撮影機能によるものです。この機能がなければ撮影できたのは、わずか4コマだったことを考えるとα1 IIの進化は大きなものだと感じます。この撮影を通して、プリ撮影の有効性とAIプロセッシングユニットによる被写体認識の高い精度を、強く実感することができました。

α1 II,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm,F5.6,1/10000秒,ISO5000

こちらも性能の向上により撮影に成功したカットになります。海と断崖を見下ろす高さ100mの展望台に立ち、眼下の岩場にある巣へ飛来するケイマフリを狙って撮影したものです。このような撮影では、私は常に30コマ/秒、プリ撮影[入](0.4秒)に設定しています。さらに、抜けがよい空間をケイマフリが飛ぶことを想定し、フォーカスエリアは広めのゾーンとしました。連なるように飛翔する2羽を視認し、ファインダー内に収めたうえで、片方にピントを合わせ、海をバックに2羽が正面から迫ってくるタイミングでシャッターを押しました。その結果、プリ撮影の記録含め約2秒間、計62コマの飛翔シーンを収めることができました。そのすべてを検証してみると、AFはケイマフリを逃さず追従し続け、13コマ連続で2羽の瞳にピントが合っていたカットが記録されていたことに驚きました。秒間30コマ高速連写の性能の真価を実感した瞬間でした。

逆光でもティテールまで残る豊かな描写性能

α1 IIでは、低感度時約15ストップの広いダイナミックレンジが諧調表現を豊かにし、色飛び・色つぶれが起こりにくく、ティテールをしっかり残した豊かな表現が可能なのも大きな魅力のひとつです。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 730mm,F9,1/2000秒,ISO800

沈む太陽が海を赤く輝かせるなか、ウトウが潜水を繰り返して雛へ持ち帰る小魚を獲っている、そんな美しくも懸命な親鳥の営みを、α1 IIにFE 400-800mm F6.3-8 G OSSを装着し、逆光で撮影しました。逆光下での撮影では、鳥のシルエットが黒く潰れる心配があります。そうならないように、露出などに神経を使って撮影する場面ですが、くわえた数10匹の魚、白い飾り羽、そして目までもが豊かなディテールとしてしっかり描写されており、α1 IIの描写力の高さを実感できました。

記録を残す場面でも信頼できる高解像度

有効約5010万画素の驚くべき高解像度を、意外な形で知ることがありました。産卵前のケイマフリの求愛行動を撮影するため、早朝から繁殖地がある崖下の海岸線へボートを出した時のことです。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X Teleconverter 600mm相当,F6.3,1/2000秒,ISO12800

幸運にも岩場で交尾をするペアを撮影でき、記録した一連の画像を帰宅後に大型モニターで確認しているとき、交尾行動で雌と判明した個体の右足に足輪が付いていて、「A711」などの刻印文字が明瞭に確認できたのです。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X Teleconverter 600mm相当,F6.3,1/2000秒,ISO12800

さらに、その番号を研究機関へ問い合わせると、1999年7月11日に天売島で雛に付けられた標識と判明し、26年もの長期にわたり生存している事実も明らかになりました。ケイマフリの寿命に関する貴重な知見が、α1 IIの高性能によってもたらされたのには驚きました。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 479mm,F6.3,1/2000秒,ISO1250

また、野鳥観察において写真は、観察記録の証拠という意味でも重要です。ミヤコドリはかつて国内では珍しい野鳥でしたが、近年は生息域を広げてあちこちで観察されています。2025年5月、天売島で、私は新記録となった飛来に立ち会いました。ボート上から波が逆巻く磯で2羽を発見したとき、ちょうど手に取ったのはFE 400-800mm F6.3-8 G OSSを装着したα1 IIでした。レンズ交換することなく2羽が飛来した証拠と、鳥の特徴がわかるアップをズームレンズの利点を活かし、手持ちで撮影しました。揺れる船上での撮影にもかかわらず、αシリーズ史上最高とされる光学式5軸ボディ内手ブレ補正とレンズの手ブレ補正機構が協調し、その安定感を大いに実感しました。α1 IIは、安定した高画素撮影ができる高い機能が備わっており、こうした大事な記録を残す場面において、最も信頼できる機材だと改めて実感しました。

撮影意欲をさらにかき立てる不動のフラッグシップ機

天売島で繁殖するウトウは、雛へ与える小魚をくわえて、日没ごろから帰巣をはじめます。巣穴があるイタドリが生い茂る地面に、時速80kmで一直線に飛び込んでくるのです。その瞬間を切り取る撮影は、以前は至難の業だったものの、α1 IIを使うと難なくできてしまいます。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS 300mm,F2.8,1/5000秒,ISO6400

ピント合わせはカメラに任せ、あとは被写体をファインダーから外さないように専念するだけ。こうして羽でブレーキをかける着地寸前の姿を、実に克明に切り取ることができます。光量が不足気味でも、α1 IIにFE 300mm F2.8 GM OSSを装着するともう鬼に金棒ですね。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS 300mm,F2.8,1/2500秒,ISO12800

日没後15分が経過した薄暮の時間の出来事です。海から崖に沿って急上昇してくるウトウの姿に気づき、目前に迫るその姿を素早くファインダー内に捉えました。ピントが合った瞬間からシャッターを押しましたが、ファインダー内を直進してくる鳥が急拡大してフレームアウト。ウトウは私のすぐ脇を、爆音のような羽音を立ててすり抜けていったのです。目前に時速80kmで接近する被写体に対し、薄暗い状況でも瞬時にピントを合わせる“超”能力はまさに“孤高”と言えるでしょう。この時に30コマ/秒で撮影した1.1秒間、34枚の出来事を2.2秒で見ることができる動画を作ってみましたのでご覧ください。

最初の1枚からすべて顔周辺にフォーカスが食いついていて、リアルタイム認識AFの対応力の高さを確信しました。真正面から“超速”で迫る鳥の目にピントが食い付く様子は、ブラックアウトフリーのファインダーを覗いていても感触が伝わってきますし、手応えを感じた撮影シーンを大きなモニター画面で確認していて、目にも止まらない一瞬一瞬が手に取るようにわかったときは、何とも言えない感動で胸が熱くなります。もっと難しい瞬間や新しい瞬間の発見に挑みたいと、さらなる意欲を掻き立てられますね。α1 IIは、すべての場面で使いたい万能のカメラで、私にとって不動のフラッグシップ機です。高画素・高解像を活かして野鳥の表情や質感を表現したいですし、鳥がいる風景を緻密に写し撮って大型写真に伸ばしてみたいです。また、誰も見たことのない究極の瞬間を、これからも探し続けることになるでしょう。α1 IIの高性能を、存分に引き出すレンズにもこだわって撮影したいと思います。

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