

鉄道絶景+α
第9回西部幹線海岸線・南廻線(台湾)
鉄道写真家 中井精也 氏
撮影日:4月22日 10時56分 西部幹線海岸線(龍港〜白沙屯)
台湾海峡をバックに走る貨物列車をα1 IIで撮影した。貨車の形式番号まで読み取れる。この精緻な描写力が、風景全体を生き生きと魅せるのだ
海岸を行く鉄道風景はまるで日本のようだ
今回の絶景路線は、日本を離れ台湾へ向かった。台湾の鉄道風景は、どこか懐かしさを感じさせる。多くの路線が日本統治下時代に建設・整備されたため、線形や駅舎の雰囲気が日本の鉄道と良く似ている。日本と同様に島から成る地域であるため、沿線風景も日本に近く、親しみやすい。そんな中、僕が注目しているのは、旧型客車で運行される「藍皮解憂號」だ。今回はこの列車が走る南廻線と、海岸線の絶景場所である「好望角」を紹介したい。日本の鉄道と同じように、台湾の鉄道車両も近代化が進み、機関車が客車を牽引する客車列車中心の運用から、電車メインの運用に変わりつつある。そんな中で「藍皮解憂號」は、2020年に引退した「藍皮車」と呼ばれる旧型客車を使用し、観光列車として走らせている。観光列車に転用する場合は、レストランカーなどに改造することが多いが、この列車の車両はほぼ当時のまま使われている。中には1970年代に日本で製造された車両もあり、その姿には国鉄時代のような趣とオーラが漂っている。この「藍皮解憂號」を撮影するとき、僕はバックショット、つまり列車の最後尾側から撮影することにこだわった。大陸的なデザインの機関車ではなく、客車を主役にすることで、まるで昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気を出せた。西部幹線の旧線である海岸線では、台湾海峡をバックに列車が走る絶景スポット「好望角」を訪れた。風力発電の風車と青い海が織りなす爽やかな風景の中、現れたのは貨物列車だった。日本の貨物列車はコンテナがメインだが、台湾ではまだまだ有蓋車が現役らしい。α1 IIで緻密に捉えた貨物列車と風景がモニターに現れたとき、思わず万歳! この平和な光景がいつまでも続くことを願いながら、旅を終えた。
撮影日:4月20日 18時05分 南廻線(枋山駅)
柔らかな夕方の光線に包まれて懐かしい旧型客車が枋山駅に入線した。構内の給水タンクが、SL時代の面影を残す。あえてバックショットを狙い、旅情を誘った
撮影日:4月20日 18時35分 南廻線(枋寮〜加禄)
夕日をバックに、旧型客車をシルエットで表現した。その姿は、僕が少年時代に見た国鉄の客車列車そのものであり、α7R Vが見せてくれた、最高の宝物だ
撮影日:4月21日 15時37分 南廻線(大麻里〜知本)
南国のヤシを主役に「藍皮解憂號」を撮影。有効約6,100万画素を誇るα7R Vが生み出す、まるでその場所に立ち、湿度とともに風景を見ているような臨場感に震えた
撮影日:4月20日 16時24分 南廻線(枋寮〜加禄)
エビの養殖場の水車が生むしぶきを主役に「環島之星」を撮影した。肉眼では写し止められない瞬間を、α1 IIとFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは見事に捉えた
<Pickup LENS>FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
ズーム全域で開放F2.8でありながら、驚くほど軽い。まるで単焦点レンズのような美しいボケを実現しつつ、驚くほどにクリアな描写力は、さすがGマスターだ。AFも高速で、流し撮り時に最適な横方向の手ブレ補正モードを搭載しており、鉄道写真でも無敵のレンズだ。
<Photo Technique>鉄道風景は画面を拡大してピントを確認する9.3倍まで拡大してピントをチェックする
今回使用したα1 IIやα7R Vなどの高画素機を使う際は、より繊細なピント合わせが求められる。基本はAFで問題ないが、僕は「ピント拡大」機能を使って、顕微鏡で見るかのように合焦しているかを確認している。「ピント拡大中のAF」を[入]にすることで、MFだけでなくAF時でも確認できる。
<絶景EPISODE>日本の旧型客車が活躍しているシーンを狙う
撮影日:4月21日 18時37分 南廻線(枋寮〜加禄)
藍皮解憂号の旧型客車が、南国の夕日に照らされ、ギラリと輝く。この客車は、1969年に日本で製造されたもの。55年間使い込まれた車体の質感に、まるで熟練の職人の手のような美しさを感じた。肉眼でも動画でも、写し止められない部分、瞬間を、α7R Vはみごとに描写してくれた
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