鉄道絶景+α

鉄道絶景+α
第11回小田急箱根鉄道線

鉄道写真家 中井精也 氏

α Universe editorial team
α1 II,FE 50-150mm F2 GM 144mm,F9,1/1600秒,ISO3200

撮影日:7月1日 10時32分小田急箱根鉄道線(大平台〜宮ノ下)

車窓に映るアジサイ。広角の方がより多く映り込むと予想したが、乗客がはっきりと見えるため、アジサイの印象が弱くなった。そこで144mmを使いアップに変更した。窓に映ったアジサイだけを切り取るのではなく、左下にぼかしたアジサイを入れることで列車との距離感も表現している

箱根の初夏を彩る優しいアジサイの光

天下の険とうたわれた箱根の山に分け入る小田急箱根鉄道線、通称「箱根登山鉄道」の車窓は、どこまで行っても険しい山ばかり。そんな単調な車窓に変化をつけようと社員たちが植えたアジサイは、今や初夏の箱根を代表する風物詩となった。アジサイはしっかりと根を張るため、急斜面に敷かれた線路を守る「土留め」としても機能しているという。この愛らしいアジサイは、観光面でも安全面でも箱根を支えているのである。527mもの標高差を駆け上る沿線のアジサイの見頃は、6月中旬から7月中旬にかけてと長い。今回訪れた7月上旬では、大平台駅と宮ノ下駅のほぼ中間にある上大平台信号場付近のアジサイが最盛期を迎えていた。深い森に伸びる線路の両側に、色とりどりのアジサイが咲き誇る。今年は特に白いアジサイが美しく、暗い箱根の山を神々しく照らしているようだ。アジサイやサクラでも同じだが、「花と列車」という組み合わせで撮影する場合、かなり意識してバリエーションをつけないと、同じような作品ばかりを量産しがちになる。まずはアジサイと絡めた風景を直球で切り取った後は、ピントを花に合わせ列車をぼかしたり、反対に列車にピントを合わせ、アジサイを前ぼけさせて彩りに使ったりと、花と列車の「距離感」を意識して撮り分けていこう。重要なのは観察力だ。ここでは列車の側面に、アジサイが映り込むことを発見。一番ハッキリと映る焦点距離、車両を選んで、狙いすまして撮影したのが今回の見開きのカットだ。このような作品で苦労するのはピント位置だが、α1 IIは車窓に花が映るわずかな瞬間を見逃さず、走行中にもかかわらず見事にピントを追従してくれた。α1 IIで捉えた車窓に咲き誇る満開のアジサイは、忘れがたい色彩となった。

α1 II,FE 50-150mm F2 GM 150mm,F5.6,1/800秒,ISO400

撮影日:7月1日  6時45分小田急箱根鉄道線(塔ノ沢〜大平台)PLフィルター使用

上大平台信号場付近を俯瞰で撮影した。これほど深い山に街ができ、よくぞ鉄道が敷かれたものだと感動する。FE 50-150mm F2 GMは風景写真でも威力を発揮するレンズだ

α1 II,FE 50-150mm F2 GM 84mm,F2,1/400秒,ISO100

撮影日:7月1日 15時56分小田急箱根鉄道線(大平台〜宮ノ下)

薄暗い森を照らすかのような、純白のアジサイ。FE 50-150mm F2 GMで手前の花をぼかすことで立体感を演出した。花の輪郭のぼけの美しさに注目してほしい

α1 II,FE 16-35mm F2.8 GM II 19mm,F6.3,1/800秒,ISO400

撮影日:7月1日 11時31分小田急箱根鉄道線(大平台〜宮ノ下)

箱根の山深さを表現したく、探し回って見付けたポイント。列車に合わせるかのように雲が切れ、夏空が姿を現した。α1 IIだからこそ表現できる、夏らしい鮮やかでクリアな描写力に感謝!

α1 II,FE 50-150mm F2 GM 150mm,F2.2,1/4000秒,ISO400

撮影日:7月1日 7時51分小田急箱根鉄道線(小涌谷〜彫刻の森)

レンズの目の前にアジサイを置き、前ぼけにして撮影した。とろけるように美しくぼけたアジサイが、箱根登山鉄道の顔として活躍してきたモハ1形をやさしく彩る

<Pickup LENS>FE 50-150mm F2 GM

中望遠域をカバーするズーム全域開放F2という驚異的な大口径ズームレンズ。その描写力、ぼけの美しさは衝撃的で、今回はほとんどのカットをこのレンズで撮影した。レンズ径は太いが、見た目よりも驚くほど軽い。レンズの歴史を間違いなく塗り替える、名玉の登場だ。

<Photo Technique>

α1 II,FE 50-150mm F2 GM 150mm,F5.6,1/1000秒,ISO400

山でもPLフィルターは効果を発揮するPLフィルター未使用

PLフィルターは青空や海で使うことが多いが、山でも威力を発揮する。山の風景も、いわば葉が1枚1枚集まったもの。PLフィルターを使うことで、葉の表面の反射を軽減し、山全体の色に深みが出るのだ。PLフィルター使用時の写真と比べると、その差は一目瞭然だ。

<絶景EPISODE>

α1 II,FE 50-150mm F2 GM 145mm,F2,1/800秒,ISO100

名峰剣山をバックに悠々と走る撮影日:7月1日 15時32分小田急箱根鉄道線(大平台〜宮ノ下)

猛暑により乾いていた花に、まさに恵みの雨が降る。FE 50-150mm F2 GMの開放絞りで、アジサイにピントを合わせた。列車が来る瞬間、奇跡的に光が差し込んだ。葉についた水滴、精霊のように浮かぶ雨粒。レンズの持つ精緻な描写力とぼけの美しさをα1 IIは極限まで引き出してくれた

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