
心の赴くままに、RX1R IIIで捉える日常のドラマ
写真家 中藤毅彦 氏
中藤毅彦 / 写真家 1970年東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。作家活動と共に東京・四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内各地の他、東欧、ロシア、キューバ、中国、香港、パリ、ニューヨークなど世界各地を取材。国内外にて個展、グループ展多数開催。第29回東川賞特別作家賞受賞。第24回林忠彦賞受賞。
受け継がれる伝統と信頼
最初手にした際、大口径のZEISSレンズを装備しながらコンパクトにまとめられたスタイルに既視感と安心感を覚えました。長く続くRX1シリーズならではの伝統を感じたのだと思います。先代のRX1R IIのコンセプトを引き継ぎ、基本的なデザインを変えずに完成度を高めた進化は、使う者にとっての大きな信頼に繋がる気がします。‘35mm F2’という大口径レンズとフルサイズセンサーを備えながら、ここまでコンパクトなカメラは他に思い当たりません。また、独立した露出補正ダイヤルの装備や、直感的に把握出来る操作性の良さは特筆に値するものです。見やすいEVFファインダーと併せて初めからストレス無く撮影出来ました。高画質と操作性を高次元に両立させた希有なスナップカメラだと思います。
「nocturne」
こちらは横浜の遊園地で夕刻に撮影した1枚です。メリーゴーランドの光が、運河の水面に反射する様が幻想的で、この美しさを何とか捉えたい思いました。水面のゆらぎとメリーゴーランドの光とが、上手く対比になる様に縦位置のシンプルな構図で慎重にアングルを定めました。何枚かシャッターを切った内、最も光の具合が良かったカットです。フルサイズセンサーを装備したRX1R IIIは暗い状況にも強く、安心して余裕を持った高感度で撮影する事が出来ます。夜の都会の光を受けた空の仄明るい階調、メリーゴーラウンドの煌びやかな光の階調、運河の石垣といった微妙なディテールまでを捉える描写力はさすがだなと思いました。
街に溶け込むスナップカメラ
今回、ストリートスナップや都市風景を撮影した実感として、RX1R IIIは非常に隠密性の高いカメラだと感じました。掌にスッポリと入る小振りなサイズ感と、過度な主張の無いシンプルなデザインは、良い意味で目立ちません。シャッター音の小ささと相まって、街中でスナップをする際に周囲に威圧感を与える事無く撮影出来ました。
エスニックタウン、大久保で撮影したこの作品では、電車が通過する瞬間の光を活かし、敢えて二人の男を黒く潰してシルエットとして表現しました。モノクロ作品における白と黒とは、すなわち光と影だと思います。色彩の情報をシャットアウトして光景を光で捉え、影で描くのがモノクロならではの醍醐味です。一般的に50mmレンズが標準レンズとされていますが、被写体を切り取る感のある50mmよりも、その場の状況も捉える35mmこそがスナップにおける標準レンズなのではないかと思います。
この写真は、渋谷の歩道橋からふと下を眺めた時、トラックと誘導員の織りなす小さなドラマが目に入り、反射的にシャッターを押したカットです。咄嗟の撮影でしたが、35mmの画角に助けられて面白い状況を捉える事が出来ました。
感性が捉える決定的瞬間
東京高円寺阿波踊り協会より貸し出された腕章を付けて撮影
高円寺で毎夏開催される阿波踊りで撮影したひとコマです。同じ連が踊っている姿も撮影したのですが、それよりも出番前の待機時間の高揚感が漂う表情に魅力を感じてスナップしました。
スナップにおいて大切なのは、頭ではなく身体の反応でシャッターを押す反射神経ではないでしょうか?予期せぬ光景に出くわした時に、アッと思ったら考えるより先にパッと撮る事を心がけています。意味ではなく、直感を研ぎすませて世界を見ると、日常の中に一瞬のシャターチャンスはいくらでも潜んでいるのだと思います。
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