鉄道絶景+α

鉄道絶景+α
第14回磐越西線

鉄道写真家 中井精也 氏

α Universe editorial team
α9 III,FE 16-35mm F2.8 GM II 35mm,F5.6,1/500秒,ISO800

撮影日:10月4日 12時27分磐越西線(尾登〜野沢)

地元の方々が農村風景を美しく彩るために植えられたコスモス畑。その美しい舞台には「貴婦人」と呼ばれるC57がよく似合う。つぶれやすいC57のディテールも見事に表現できている。良い煙にも恵まれ、満足のいくカットとなった

SLの限られたチャンスは機能を駆使して挑め

今回の被写体は、JR磐越西線を走る「SLばんえつ物語号」だ。晩秋の季節感を意識しつつ、SLならではの迫力をα1 IIとα9 IIIで狙った。何よりも煙が重要視されるSLの撮影は、通常の車両撮影とはアプローチがまったく異なる。一般的にSLはいつも煙を吐いて走っているイメージがあるが、実際には上り坂や駅の出発など、限られた状況でしか煙を吐かないため、撮影ポイントがかなり限定されてしまう。しかも「SLばんえつ物語号」の運行は土日祝のみで、朝10時に新津を出て昼過ぎに会津若松に到着し、15時27分に会津若松を出て19時くらいに新津に着く1往復のみである。煙を撮影できるタイミングは多くないため、煙を吐く場所には多くの撮影者が集中し、場所の確保もひと苦労だ。特に駅の出発シーンでは車両下側からドレーン(下のシリンダーから出る白い水蒸気)が出ている瞬間が最も迫力があるので、そこはぜひ狙っていきたい。最初の見開きで掲載したコスモスの撮影ポイントは前日のロケハンで見つけたもの。ベストな位置を確保するために、前日から待って撮影した。SLの撮影では煙が出ても、風で流されたり、気温で色や量が変わったりするなど、なかなか思い通りの煙になることはない。ベストな写真にはさまざまな要素が組み合わさるため、まさに一筋縄ではいかないハードルの高さがあるが、そのぶん撮れたときの喜びはひとしおなのだ。その点、α1 IIでのSL撮影はとても快適だ。「AF-C」と、被写体認識対象を[車/列車]を組み合わせれば、体感的には100%ピントが追従する。ハードルの高さの要因の1つだったピント合わせをカメラ任せにできることで、煙の状況に合わせた蒸気機関車の躍動感を重視した構図作りに専念できるのだ。

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS 300mm,F2.8,1/4000秒,ISO400

撮影日:10月19日 12時59分磐越西線(喜多方〜山都)

煙を意識した定番の縦構図。風で煙がわずかに左に流れたので、撮影しながら構図を修正した。FE 300mm F2.8 GM OSSの描写力で背景からSLが浮かび上がっているようだ

α9 III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 164mm,F9,1/30秒,ISO125

撮影日:10月19日 15時57分磐越西線(喜多方〜山都)

動輪とキャブの部分だけを、α9 IIIで流し撮り。ピントをカメラ任せにできることで、SLが持つ動感と迫力を重視した構図作りに専念できるようになったのは明らかな強みである

α1 II,FE 300mm F2.8 GM OSS 300mm,F2.8,1/500秒,ISO800

撮影日:10月5日 10時45分磐越西線(東下条〜咲花)

トンネル越しに続いていく線路と、奥にいるSLが、まるで立体図を見ているような臨場感とともに表現されている。FE 300mm F2.8 GM OSSの圧倒的な描写力が光る1枚だ

α1 II,FE 28-70mm F2 GM 39mm,F18,1/320秒,ISO12800

撮影日:10月4日 15時58分磐越西線(喜多方〜山都)

鮮烈な色のヒガンバナ。曇天を白いキャンバスに見立てて、絵画のような印象に仕上げた。このように車両が小さくしか写っていなくても、煙が出れば絵になるのはSLの魅力だ

<Pickup LENS>FE 300mm F2.8 GM OSS

いわゆる「サンニッパ」と呼ばれる定番レンズだが、このレンズは卓越した描写力を備えながらも、驚くほど軽やかに扱える。手にするたびにその軽さに驚かされる。開放絞り時のボケは秀逸で、このレンズを使うことが1つのテクニックであるかのような、唯一無二の表現を可能にする。まさに神レンズだ。

<Photo Technique>

今の時代、撮影時にはクマ対策が必須

毎日のようにニュースをにぎわすクマ問題だが、鉄道写真においても人ごとではない。山に入るなら、熊スプレー、熊鈴、電子ホイッスルは、必ず携帯する必要がある。過度な準備は恥ずかしいと考える人もいるかもしれないが、もう危険度のステージは変わっていることを、認識しておくべきである。

<絶景EPISODE>

α1 II,FE 28-70mm F2 GM 28mm,F2,1/8秒,ISO12800

絵本のワンシーンのような幻想風景撮影日:10月19日 17時39分磐越西線(喜多方〜山都)

秋の日没は早く、新津行きが津川駅を出るころには、すでに夜汽車の趣を見せている。FE 28-70mm F2 GMの開放絞りで、感度はISO 12800まで高めて流し撮り。印象的な白い煙が水鏡に映り、まるで絵本のワンシーンのような、幻想的な作品に仕上がった。α1 IIとG Masterが生んだ、奇跡の1枚

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