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『Xperia 1 V』開発者インタビュー【カメラ編】

新世代センサーによる圧倒的な表現力
『Xperia 1 V』がもたらす多彩な撮影体験

Xperia 1 V

スペシャルインタビュー

2023/7/19

目次

『Xperia 1 V』はソニーが誇るフラッグシップスマートフォン。世界初となる2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーを搭載し、目で見た色と質感を忠実に再現するという、ソニーのカメラ設計におけるポリシーを高い次元で具現化した意欲作です。
開発者インタビュー【カメラ編】では、『Xperia 1 V』の開発に関わった3名に、新世代センサーを搭載したことにより向上した性能や機能、お客様にオススメしたいポイントなど、『Xperia 1 V』の魅力を聞きました。

  • *2023年5月11日時点。ソニー調べ。広角レンズに搭載。

MEMBERS

商品企画担当
滝沢 宏樹(たきざわ ひろき)さん
カメラ(センサー)設計担当
岡本 慧(おかもと さとし)さん
カメラ(画質)設計担当
内山 蒼介(うちやま そうすけ)さん

『高画質にこだわった新たなフラッグシップモデル「Xperia 1 V」』

まずは、ソニーのスマートフォンにおける、Xperia 1シリーズの位置付けを教えてください。

滝沢:Xperiaはいくつかのシリーズが展開されていますが、そのなかで『Xperia 1』シリーズはフラッグシップモデルの位置付けです。ソニーは、撮影用の機材やオーディオ・ビジュアルなどの製品を展開していますが、そこで培った技術が結集されている『Xperia 1』シリーズは、専門性のある機材を求めるクリエイターや撮影を趣味とする方々に感動を与える機能を搭載しています。

また、『Xperia 1』シリーズは生活にもっとも身近なデバイスとしての完成度も非常に高く、ムービーを楽しむ際のディスプレイやサウンドクオリティを含めた視聴体験にこだわっている方や、ゲームやeスポーツなどをハイパフォーマンスでプレイしたい方にもご満足いただける機能を備えています。

開発にあたって意識したことや、ユーザー像について教えてください。

滝沢:最近は若年層を中心にスマートフォンだけで撮影して、TikTokやInstagram、YouTubeをはじめとした動画サイト、SNSに投稿している方がとても多くいらっしゃいます。

大きな機材を持って動画や写真を撮るのはTPOを考える必要があり、コストもかかってしまいますが、スマートフォンなら撮影とクリエイションの敷居が低く「私もやってみようかな」というカジュアルな気持ちで作品作りをはじめる方が増えているんですね。ソニーの先進技術を結集させるという『Xperia 1』シリーズのあり方は変わりませんが、今回の『Xperia 1 V』は、スマートフォンに高画質を求める方をターゲットに設定しました。

『飛躍的な進化を支える新世代センサー「Exmor T for mobile」』

刷新された箇所がいくつもあるなかで、特に「ココを見てほしい、体感してほしい」というポイントを教えてください。

滝沢:『Xperia 1 V』のいちばんの進化は、なんといっても新設計のイメージセンサーとソフトウェアの合わせ技によって、スマートフォンなのにフルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラに匹敵するダイナミックレンジの表現を可能にしたことです。『Xperia 1 V』の開発中、試作品ができてソフトウェアが完成した際に試し撮りを行ったのですが、一瞬で今までの『Xperia 1 III』や『Xperia 1 IV』との違いを感じることができました。これまで再現しきれなかったダイナミックレンジの広さだったり、ノイズの少ないきれいな画作りだったりと、どなたでもその鮮明な解像感の進化が体感できると思うので、ぜひ手にとっていただきたいですね。

  • *LV(Light Value)2以下の照度環境における静止画の耐ノイズ性能およびダイナミックレンジにおいて。
    ソニー製のフルサイズセンサー搭載デジタルカメラとの比較。

岡本:イメージセンサーの設計を担当した私としても、広角レンズに採用した2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー、「Exmor T for mobile」にご注目いただきたいです。この新センサーと最新の画像処理技術との組み合わせで、フルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラに匹敵するまでに暗所性能が改善されました。手持ちでも、まるでプロが撮影したような写真が撮れるので、私自身楽しくなって『Xperia 1 V』を手に夜景をたくさん撮影するようになりました。

Xperia 1 Vで撮影 / 広角レンズ(24㎜) / シャッタースピード:1/15秒 / ISO:500

新世代センサー「Exmor T for mobile」

Xperia 1 Vの 広角レンズに搭載された新構造のセンサー。前機種比で約1.7倍*1に大判化した新開発の2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーで、より多くの光を取り込め、高感度・低ノイズな撮影を実現しています。
また、最新の画像処理技術との組み合わせで、フルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラ並み*2の撮影を可能にしています。

  1. *1 Xperia 1 IVの広角レンズに搭載されているイメージセンサーとの対比。
  2. *2 LV(Light Value)2以下の照度環境における静止画の耐ノイズ性能およびダイナミックレンジにおいて。
    ソニー製のフルサイズセンサー搭載デジタルカメラとの比較。

まさに、新たな扉を開いたといえる新世代センサーですが、具体的にどのような点が革新的なのでしょうか?

岡本:センサーの変遷からご説明すると、CCDやCMOSセンサーの時代を経て、2000年代後半、ソニーは裏面照射型CMOSを開発しました。この技術により、感度が向上し、コンパクトなカメラでもきれいな画像を撮影できるようになりました。そして、今からおよそ10年前に、さらに小型で省電力設計となった積層型CMOSが誕生し、それ以降カメラ機器やスマートフォンで利用されてきました。

今回登場した『Xperia 1 V』には、積層型をさらに小型化した、2層トランジスタ画素積層型CMOSセンサーを世界初搭載。従来同一基板上で形成していたフォトダイオードと画素トランジスタの層を別々の基板に形成し積層したことで、更なる高画質を作りだすことができました。

  • *2023年5月11日時点。ソニー調べ。広角レンズに搭載。

Xperia 1 IVとXperia 1 Vの広角レンズに搭載されているイメージセンサーとの対比

  • ※画像はイメージです。

岡本:暗所性能はもちろん、明るいところでの基本的な画質も一段階アップしますし、センサーの大判化によりきれいなボケ感もより美しく表現できるようになりました。ポートレートで背景をボケさせるならデジタル補正で作りだすことも可能ですが、『Xperia 1 V』は光学的性能によってしっかりと描写することができるんです。

『Xperia 1 IV』の広角レンズと比較すると約1.7倍大きいセンサーを搭載しているとのことですが、設計に苦労したことはありますか?

岡本:センサーサイズが大きくなるとXperiaが大切にしているデザイン性にも影響を与えるため、カメラのセンサーサイズの選択は慎重にならざるを得なかったポイントです。カメラ設計者としては高画質を求めて大きいセンサーを搭載したいところですが、そうするとデザインが犠牲になってしまう。最終的にセンサーサイズを1/1.35インチにして、デザインも高画質も共存させることができたのは、やはりソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が開発した「Exmor T for mobile」だからできたことですね。

『目で見たままを写し出す、圧倒的な描写力』

センサーの刷新は、画質設計の目線ではどのような変化をもたらしましたか?

内山:通常、私たちのチームが行っている画質設計というのは、基本的にソフトウェアによる調整がメインとなっています。しかし本当のところは、画質というのはハードとソフトの両方が進化しなければ改善できないもの。その点、今回センサーが進化したというのは我々にとってもうれしいニュースで、弱点をどうカバーしていくかというよりも、このよい素材をどう生かしていくかがミッションとなり、やりがいに繋がりました。

ノイズと解像感のバランスはいつも難しい判断が迫られるところなのですが、新型センサーを搭載することによってバランスが取りやすくなりました。最終的には、ディテールが潰れがちな夜景撮影も手持ちで行えますし、静止画の耐ノイズ性能およびダイナミックレンジにおいて、フルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラ並みにクオリティが出せるようになりました。

  • *LV(Light Value)2以下の照度環境において。ソニー製のフルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラとの比較。

『Xperia 1 V』で目指した画作りのテーマについて聞かせてください。

内山:ソニーのカメラ作りのポリシーは自然な色彩と解像感です。ユーザーによって色味の好みがあると思いますが、私たちは自然の見たままを再現することにフォーカスしていて、肌の色味を忠実に描くことにもこだわって調整しています。

自然な色彩と解像感をより表現するためには、光の認識と調整がとても重要なので、ソニー独自のAI技術によって、ホワイトバランス、露出などを制御しています。AI技術によるベース制御をもとに、画像チューニングを行う際に、例えば室内の白熱灯の下で撮影した場合と外の日陰で撮影した場合とで別のパラメータを使っていたり、こういう光源の時はこういう色と露出の設定、別の光源の時はこういう色と露出の設定。というように、さまざまな条件下で試しながら、どのシーンでも見たままに近い色と露出になるよう評価・チューニングしているんです。

最終的にそれぞれの作品を作るのは個々のユーザー。そのことを頭に入れながら、まずカメラ自体はその意図通りの写真・動画が撮れるように設計しています。そうしたうえで、より幅広い表現ができるようにソフト面も充実しています。『Xperia 1 V』からは「S-Cinetone for mobile」や「クリエイティブルック」を新搭載し機能面も充実しているので、より思い思いのクリエイションを楽しんでいただけます。

S-Cinetone for mobile(エスシネトーン フォー モバイル)

S-Cinetone とは、ソニーのデジタルシネマカメラ「VENICE」の開発で培われた技術を生かして作られたピクチャープロファイルのこと。人の肌を描写する際に使われる中間色の表現力に優れ、色合いはよりソフトに、ハイライトの描写は被写体を美しく際立たせる自然なトーンを持つルックです。そのS-Cinetoneをスマートフォン向けに調整し、『Xperia 1 V』に搭載しました。

クリエイティブルック

クリエイティブルックはカメラに搭載された画作りのための機能で、Xperia 1 Vには6種類のルックがプリセットされています。表現テーマやシーンに合わせて「FL」「VV」などのルックを選ぶだけで、イメージに合わせた画作りが簡単に行え、撮影段階で写真や映像の質感や色味を思い通りの雰囲気に仕上げることができます。

『新型センサーと光学設計の組み合わせによる進化』

画質設計の観点から、レンズ設計で注力した点を教えてください。

内山:レンズは最終的に画質に与える影響がかなり大きい部分。なので、画質改善にはレンズ設計、センサー、そして画質の設計チームが三位一体になることが必須でした。例えばゴーストやフレア、周辺光量落ちなど、どのくらいであれば補正できるとかできないとかを見極め、適宜フィードバックをかけながら最適化してきました。出荷時のキャリブレーションを見直すことで、望遠のフォーカス性能もさらに最適化していますし、我々の体感としてもカメラ性能のベースアップには手応えを感じています。

『消費電力の改善とヒートマネジメントシステムで発熱を抑えパフォーマンスを持続』

各所で高機能になる一方で、消費電力の増加や発熱について気になります。

滝沢:イメージセンサーが大きくなればなるほど消費電力が上がる傾向にありますが、『Xperia 1 V』ではむしろ従来モデル*1より消費電力を軽減させることにより、発熱も軽減されました。

CPUチップセットの電力効率を従来比から約40%*2改善すると同時に、CPUの近くにあるカメラ部分の消費電力も従来比で20%*2改善することで熱の発生源を抑えました。また、ゲームのプレイ中や動画視聴をする際にも熱が発生しやすいので、ヒートマネジメントとして、熱拡散シートの体積を従来比から約60%*2拡大しました。つまり熱の発生を少なくすることと、熱を拡散して放熱する仕組みの2つの方向で発熱を軽減したんです。

このような熱対策を行ったことで、よほど炎天下でなければ1時間通してカメラ撮影をしても動作に問題が起こらないようになりました。

  1. *1 Xperia 1 IV。
  2. *2 Xperia 1 IVとの比較。消費電力はPhotography Pro/Videography Pro利用時において。

『ビギナーからプロフェッショナルまで誰もが実感できる、表現力豊かなカメラ機能』

『Xperia 1 V』の性能を十二分に楽しむ、おすすめの使い方を教えてください。

滝沢:ここまでカメラを中心にたくさん語らせていただきましたが、『Xperia 1 V』はまだまだ細かいところで進化しているんです。

まず、クリエイターの方々にはXperiaに搭載されている「外部モニター」機能をおすすめしたいですね。これを使えば、「αTM(アルファ)」で撮影している映像を『Xperia 1 V』と連携することで、4K有機ELディスプレイで撮影中の映像を確認することができます。また、「α」から入ってきた映像を本体にそのまま保存したいという声がかなり多かったので、そのご要望を叶え、撮っている最中にバックアップ記録も可能となっています。結構マニアックな機能ですが、求めていた方にはうれしい機能だと思います。

岡本:私からはまたカメラの話になるのですが、『Xperia 1 V』で料理を撮っていただきたいですね。前々からXperiaシリーズは料理の写真がきれいに撮れると評判なのですが、『Xperia 5 IV』からは、Ai E(AI露出補正)によって、料理の露出を最適にする機能を搭載しています。料理って光によって美味しそうに見えるか否かが変わるので、露出が重要なんです。例えば白いテーブルやお皿が料理の周りにあると、その白に引っ張られて全体が暗くなりがちなんですが、AIが料理を認識してきれいに写るように撮ってくれるんです。また、料理が美味しく見えるよう色味も調整してくれるので、是非そこは撮って実感していただきたいです。

内山:ソフト面でいえば、標準カメラアプリである「Photography Pro」の設定で使えるようになった、フォーカスがどこに合っているのかを可視化できる「ピーキング」機能が便利です。機能設定画面からオンにしていただく必要があるのですが、これを使うとマニュアルでもフォーカスが合わせやすくなり、写真表現が楽しくなると思います。

  • *Videography Pro/Cinematography Proにもピーキング機能があります。

最後に、ユーザーや読者の方へ、おすすめのポイントや伝えたいメッセージなどはありますか?

滝沢:『Xperia 1』シリーズを初代から5代に渡って企画、発表してきた間に、さまざまな方からいただいたご意見・ご要望をもとに『Xperia 1 V』はしっかり性能や機能向上できたと思っています。今まで歴代Xperiaシリーズをご利用いただいていた方にも、これからお使い頂く方にもご満足いただける仕上がりになっています。ぜひ、実機をお手に取っていただければうれしいです。

岡本:『Xperia 1 V』はカメラの画質が大幅に向上して、とにかく誰でもきれいな写真、映像(特にナイトシーン)が撮影できるようになっています。もう既に購入されている方は、まだ使っていない機能を駆使しながら撮影に挑戦していただき、その写真や動画をご友人などにお見せいただければと思います。また、この製品が気になっている方は、最後までこだわり抜いたデザインを見て、そしてカメラでの撮影をお試しいただきたいですね。

内山:インタビューを通して、私自身もこの小さなボディの中に沢山の新技術が詰め込まれているんだなというのを改めて実感しました。読者のみなさんにもその一端をお伝えできたかと思いますが、やはり手に取っていただいて、体感していただくのがいちばん。美しいディスプレイや、迫力のサウンド、そして私たちが開発したカメラ。ぜひXperiaを日常の中で楽しんでください。

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