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写真家 井上浩輝氏 野生のキタキツネに恋して 〜RX10 IIIが写し出す印象的な動きと表情〜

α Universe editorial team

北海道最高峰の旭岳を望み、「写真の町」として知られる東川町。この地に居を構え、野生動物や風景を撮り続けている写真家・井上浩輝氏。「ナショナルジオグラフィック」2016年フォトコンテストのネイチャー部門で日本人初の1位に輝き、世界中から注目を集める写真家の一人だ。ユーモラスでストーリー性の高い、画力のある作品は、いったいどのようにして撮られているのか? 井上氏に自身の創作活動を語っていただいた。

井上浩輝/写真家 1979年、北海道札幌市生まれ。東川町在住。北海道を中心に「いま生きている風景」を追う注目の写真家。昨年、米国の自然科学雑誌「ナショナルジオグラフィック」の「トラベルフォトグラファーオブザイヤー2016ネイチャー部門1位」を日本人として初めて受賞。現在、プロの写真家として写真展を開催するほか、地元北海道の撮影ワークショップや講演会など、幅広く活躍中。

習性を知ることで
シャッターチャンスが増える。

僕がキタキツネを撮り始めたのは、神出鬼没なところに興味を惹かれたからです。
キタキツネは意外と頭がいいので、「見つけた」と思ってもすぐに隠れてしまうんです。大抵のキツネは逃げてしまいますが、逃げないキツネが20匹に1匹くらいいて、そいつと僕の車を使ってかくれんぼすることもあるんですよ。こっちが大げさに「わーっ、見つかったー」って逃げ隠れしていると、キタキツネも楽しくなってきて最後には尻尾を振って飛びかかってくることもあります。
今回は機動力抜群のRX10 IIIを持って、キタキツネの撮影に出掛けました。
キツネは群れを作らず、単独生活をしています。彼らはできる限り争いをしないように、工夫して生活していると思うんです。例えば、キツネとキツネがばったり出会ったとしますよね。その瞬間、彼らは口の大きさ比べを始めるんです。「くわー」って大きく口を開いて。その結果、口を大きく開けた方が勝ちで、負けた方が伏せをする。勝った方はひっくり返って背中のニオイを地面にこすり付けます。負けた方は耳を後ろに倒して、相手と目を合わせないようにして去っていきます。
そんな習性を生かして撮ったのが下の写真です。

RX10 III、F4、1/500秒、ISO500、458mm

このキツネと出会った時、僕はずっと腹這いで撮っていました。腹這いだったものだから、向こうは自分が勝ったと思い、背中を地面にこすり付けたんです。こすりつけた後はすぐに去って行ってしまうんですが、ちょっと惑わせてやろうと思って、僕もひっくり返って背中をこすりつけました。自分が勝ったフリをしたわけです。そうしたら、向こうが「いや、俺が勝ったのに」と、また背中をこすり始めて。その時にシャッターを切りました。
下の写真も同じキタキツネです。自分が勝利して安心したのか、耳が下がってリラックスした瞬間を撮ったもの。おだやかな表情も見せてくれました。

RX10 III 、F4、1/500秒、ISO400、600mm

キタキツネの情報をかき集めて
相手になりきることが大切。

被写体となる動物の生態を知ると、俄然、写真が撮りやすくなります。相手になりきることができますから。自分の経験だけでは絶対に足りないので、人が経験したことを、人が誰かから聞いたことをまとめている文献を読みあさるんですよ。
キツネを撮ろうと決めた時から、キツネを待っている間はずっとインターネットでキツネの文献を読み続けました。さらに、キタキツネに関する学術論文まで探すんですよ。北海道大学や東京大学の演習林にもキツネがたくさんいますから。キツネがどんな行動をとっているのか、調べている人たちがいるんです。論文はどれを見てもわかっていないことが多いのですが、ひとつわかっているのは「キタキツネは夜行性ではない」ということ。ホンドギツネは夜行性ですが、キタキツネは夜行性ではないということだけはわかる。それぐらい、彼らは気まぐれなんです。でも、ある天気のときはこんな行動をしがち、というのは、それを読んでいると見えてくる。
みなさん「キタキツネなんてそこら辺にいっぱいいるよ」って言うんですけど、実際には少ないんですよ。そういう論文を読んだり、人がまとめたものを読んだりしなければ、ここまで頻繁に出会えるようにならなかったと思います。
下の写真は、たくさんの情報を元にして出会ったキタキツネ。オートフォーカスで真ん中あたりにフォーカスポイントを置き、目の位置でフォーカスロックしてキツネが構図の中央に来るようにズラして撮影しました。

RX10 III 、F4、1/500秒、ISO640、599mm

人間界とは離れた自然の中で生きる
キタキツネを撮り、作品群に。

下の写真は、背景が日陰になっている場所で、1mほどの距離から望遠の400mmで撮影したもの。雪によるレフ板効果でキタキツネが明るく照らされています。RX10 IIIは24-600mmという超高倍率ズームレンズを搭載しているので、画角が自在なのも魅力ですね。後ろは若干灰色がかっているので、その灰色をグッと沈み込ませて印象的に仕上げました。

RX10 III 、F4、1/500秒、ISO320、400mm

この余裕の表情がいいですよね。彼は知床のキツネで、その典型的な顔立ちをしています。美瑛のキツネは鼻がもっと高いんですよ。表情だけでなく、地域による顔立ちの違いがわかるのも、撮っていて楽しいものです。
北海道には、地域によりさまざまな歴史があります。だから、その歴史を知ることも大切。その土地を愛してきた人たちのことを考えるのも、僕の撮影の信条になっています。
今後は、人間の存在を意識していない、気付いていないキタキツネを撮りたいと思っています。キツネにこちらを見られてしまうと、それだけで今の僕にはつまらない。 北海道のキタキツネは、その9割が人間と接触しているんですよね。美瑛の美しい丘を行くキツネがいたとしても、そこは農地ですから。人間の手が入ったところを歩いているわけです。食べものだって、外に出された人間や農家のゴミを食べたりします。そう考えると、人間とまったく関わりを持たずに生きているキツネは、意外と少ないんです。
シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」で「ワイルド・グース・チェイス」という言い回しが出てきます。「ワイルド・グース」は野生のアヒルのこと。作品の中では野生のアヒルなんていないから、探しても無駄なことだとされていて、「そんなのムダだよね。ワイルド・グース・チェイスだよね」と使う言葉。高校生の頃に読まされたその作品の台詞が頭の中に残っていて、「野生のキツネも実はいないのではないか」と思ったんです。 そこで、この言葉をもじって、「ワイルド・フォックス・チェイス」っていう作品群にしてみると面白いんじゃないかなと考えました。
すでに札幌や地元の東川町では「Wild Fox Chase」という名称で個展を開催しました。今後もそんなキタキツネを追い続け、どんどんシリーズ化してみなさんに発表していきたいと思っています。

――次回は井上氏にRX10 IIIの魅力や撮影テクニックを語っていただきます。

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