ソニーイメージングギャラリー 銀座

© Takuya Nakamura
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第15回公募セレクション作品 中村 卓哉 作品展 鬼界

赤く染まった海。海底から沸々と湧き出す熱泉。絶えず噴煙を上げる火山。そして鬼のような来訪神が人々を追いまわす奇祭。まるで異世界へ迷い込んだような光景が広がる鹿児島県・薩摩硫黄島。平安時代末期には鬼界ヶ島(きかいがしま)と呼ばれ、流刑地として罪人から恐れられた絶海の孤島である。
この島が誕生したのは約7300年前。当時、南九州の縄文人を文化もろとも殲滅(せんめつ)させたという巨大な海底火山の噴火にともない、世界最大規模のカルデラ「鬼界カルデラ」が形成された。薩摩硫黄島はその外輪山の一部である。

島の火山がつくり出す温泉は、血流のように地中を巡り海へと流れ出す。その際、鉄分やアルミニウムなどが海水の塩分と反応することで、幻想的な色合いで海が彩られていく。この不思議な現象は「海中オーロラ」とも呼ばれ、この海にしかない特異な景観をつくり出している。

かつて、この地で起きた膨大な熱エネルギーの放出は、BIGBANGのように破壊と再生を繰り返しながら現在の生物圏を形成してきた。その痕跡を辿るように幾度となく海へ潜り、硫黄ガスが噴出する火山にも登った。しかし、ファインダー越しにとらえたのは、幅約25km、最大水深約600mにもおよぶ巨大カルデラの極々一部にすぎない。

薄暗いマグマのような色の海に漂っていると、他の魚たちと一緒に溶けていくような感覚になる。それは、全てをリセットし原始へ回帰しようとする地球の強い意思なのだろうか。古来より人智を超えた恐ろしい存在や破壊的な自然現象を鬼と呼んできた。それらと対峙した時に抱く畏怖の念の向こう側に、私の心を揺さぶり続ける唯一無二の世界が存在する。

中村 卓哉(なかむら たくや)プロフィール

水中写真家。
10歳の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。海中世界の命をテーマに新聞や雑誌に連載も多数掲載。講演会、テレビ、ラジオへの出演などで環境問題を言及するなど活動の幅も広い。8K映像の水中撮影や編集なども手掛け、ドキュメンタリー番組の撮影や映像提供も豊富である。

著書に「海の辞典」、「わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山・川・海」、「パプアニューギニア 海の起源をめぐる旅」、「辺野古-海と森がつなぐ命」、「海のメッセージ 地球・人間・時代」など。

第2回日本写真絵本大賞 優秀賞