

『「日本の自然」写真コンテスト』(朝日新聞社・全日本写真連盟・森林文化協会主催、ソニーマーケティング株式会社協賛)は、『いつまでも守り続けたい 「日本の自然」』をテーマに、風景や動植物、人々の営みを捉えた写真を募集する、40年以上の長い歴史を誇る写真コンテストです。第42回となる今回は、全国から11,686点もの作品が寄せられました。ここでは、2025年7月26日(土)に朝日新聞東京本社読者ホールで開催された表彰式および講評会の様子と、入賞作品、受賞者の喜びのコメントをご紹介します。
表彰式では、主催者挨拶として日本写真連盟会長の渡辺雅隆氏が登壇。渡辺氏は、酷暑の中、全国から多くの受賞者が参加されたこと、そしてコンテストに多数の素晴らしい作品が寄せられ、大いに盛り上がったことに対し感謝の意を表明しました。応募された作品の中から、プリント部門最優秀賞に選ばれた富沢夏樹氏の『遠い春』を取り上げ、埼玉県在住の富沢氏が岐阜県の撮影地に3年間通い続けた熱意と努力がこの一枚に結実していると紹介。「苦労に苦労を重ねて最高の一枚をものにする」写真家たちの情熱に深く感銘を受けたと高く評価しました。
さらに日本における温暖化の兆候に触れ、自然をテーマとしたこのコンテストが、日本の自然の現状と向き合うきっかけとなることを願い、今後も朝日新聞社や森林文化協会と連携し、写真を通じて自然への理解と関心を深める場を提供していくと決意を語りました。
続く協賛社挨拶では、ソニーマーケティング株式会社プロダクツビジネス部門 イメージングエンタテインメントビジネス部 統括部長、水野雅夫が登壇。ソニーがこのコンテストに協賛して11年が経過したことに触れ、「α」シリーズや「ブラビア」が、写真文化の活性化に貢献できていることを喜ばしく思うと振り返りました。また、ソニーが掲げる「テクノロジーの力で未来のクリエイティブをクリエイターと共創し、世界中の人々に感動を届け続ける」という使命に触れ、受賞者の情熱が製品開発の大きなモチベーションになっていると語り、フォトグラファーたちへの感謝の言葉で挨拶を締めくくりました。
プリント部門は、40年以上に渡って続く伝統ある部門です。撮影者自らが紙のサイズや質感、色味にまでこだわった作品が審査対象となり、ベテランはもちろん、近年では若いフォトグラファーからの応募も増えています。今回は746名の応募者から3,739点の作品が集まりました。
最優秀賞
『遠い春』は、技術・表現・撮影者の努力と視点の深さが高いレベルで統合された、まさに最優秀賞にふさわしい作品です。厳しい現場条件の中で、これほど完璧なフレーミングができることに感銘を受けました。光の使い方も見事で、ライチョウの周囲も淡く、柔らかい光が差し込み、その可愛らしさを見事に表現しています。背景のぼけ具合も絶妙で、レンズの絞り加減が作品にぴったりと合っています。経験の浅い写真家は被写体に意識が集中しがちですが、場数を踏むことで周囲の風景全体を捉えられるようになります。この作品は富沢さんがそのプロセスを経てたどり着いた一枚だと感じました。
デジタル部門は、撮影した写真をデジタルデータのまま応募する激戦区です。今回は2,067人の応募者から7,947点の作品が寄せられました。「最優秀賞 ソニー4K賞」は、デジタルで撮影された写真をデジタルのまま4Kテレビで楽しむ新しい鑑賞スタイルにふさわしい、壮大さと美しい光の表現を兼ね備えた作品に贈られます。
最優秀賞 ソニー4K賞
【地上】
【空】
その日、太陽フレアの影響で岩手県・八幡平周辺でもオーロラが見えるかもしれないと聞いてはいましたが、まさか本当に撮影できるとは思ってもいませんでした。新潟県を拠点に活動する私がその場にいたのも偶然でした。八幡平山頂で真北にカメラを向けたところ、想像以上にはっきりと、かなりの高度までオーロラが見えていたため、少し下った「ドラゴンアイ」で撮影したのがこの作品です。日の出前、最も強くオーロラが輝いた瞬間を捉えました。
これまでにも『「日本の自然」写真コンテスト』優秀賞、入選など、さまざまな賞をいただいてきましたが、今回の受賞は特に嬉しく、光栄に思っています。旅行が好きでカメラを始めましたが、まだ訪れていない場所も多く、今後も多くの絶景に挑戦していきたいです。
この作品は、壮大な宇宙と日本の自然、天と地が合流する瞬間を見事に捉えています。秋田県と岩手県の県境にある人気観光地「ドラゴンアイ」と低緯度オーロラの組み合わせは非常に希少で、千載一遇のチャンスをものにした荘厳な自然の姿が見る者を圧倒します。同じ写真家として「うらやましいな、こんちくしょう」と素直に思いました(笑)。もちろん、それだけではなく、画面の中央に天の川を配置する構図など、真摯な姿勢が作品全体から伝わってきます。「こんな風景が日本に存在するのだ」と教えてくれる素晴らしい一枚です。
デジタル部門に設けられた「ソニーネクストフォトグラファー賞」は、30歳以下のフォトグラファーを対象とした特別賞です。どんな被写体を選ぶか、どのように撮るか、これまでの常識にとらわれず、新しい表現に挑戦する若き才能を称えます。
ソニーネクストフォトグラファー賞
この作品では、撮影者に警戒しながらも、岩肌にいるたくさんの子どもたちに新鮮な水を送ろうと胸ビレを動かして子育てするクマノミの様子を撮影しました。魚は感情が読み取りにくい生き物ですが、こちらをじっと見つめるその目線からは、まるで子どもたちを守ろうと睨みつけているかのような強い意志を感じました。親魚と岩肌に張り付く無数の稚魚たちを一枚の写真に収めることで、ここまで育てた親魚の深い愛情が伝わるよう心がけています。
和歌山県・串本の海は本州の中でも特に美しく、多様な海洋生物と出会える魅力的な場所です。初めて潜ったとき、「ここは本当に本州なのか?」と思うほどの透明度と美しさに感動したことを今でも鮮明に覚えています。
水中は陸上とは異なる特殊な環境であるため、常にダイビングスキルの維持・向上に努めています。スキルがなければ安全に撮影できませんし、周囲の環境や生物にも悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるためです。撮影にあたっては、必要以上に被写体に接近せず、距離感と敬意を持って撮影に臨んでいます。今後も自分の作品を通じて日本の海の美しさ、水中生物たちの暮らし、そして彼らの豊かな表情を多くの人に伝えていきたいと考えています。
若い作者が「命のつながり」という普遍的なテーマを捉えた作品であり、単なる写真技術を超えて、生命の尊さという深遠なテーマを扱っている点を高く評価しました。子育て中のクマノミは、通常は近付くと警戒心をあらわにし、怒ったような顔になりますが、撮影者が何もしないと悟ると、徐々に表情が柔らかくなっていきます。この作品はまさにその瞬間を捉えたものであり、観察眼と忍耐力が素晴らしいです。技術面でも、卵の中の目と親魚の顔の両方にしっかりとピントが合っている点は見事です。ぜひまた、こうしたドラマのある写真を撮って応募してほしいと思いました。がんばってください!
ウミネコの顔は怖く見えるため、被写体としてはあまり好まれません。だからこそ「こんな行動もするんだよ」と、自分自身が笑顔になれる写真を撮りたいと思いました。ウミネコが正面を向いたほんの一瞬を逃さないよう、フットワーク重視の手持ちで高速シャッター撮影しています。α9 IIIは、RAWでのプリ撮影対応やグローバルシャッターなどの画期的な機能に惹かれて一年半前に他社製品から乗り換えました。
この作品を見た審査委員全員が思わず笑ってしまったという作品。全日本写真連盟賞は他とはひと味違う写真を選ぶという選考基準がありますが、本作品はその基準に十分応えるものでした。いかつい顔のウミネコが、かわいらしく、ユーモラスに表現されており、隣にいる普段通りのウミネコとの構図も高評価に繋がりました。
三重県にある汽水湖、白石湖で撮影しました。湖に潜った瞬間、無数のタコクラゲが視界いっぱいに広がる幻想的な光景を、一匹一匹の立体感透明感を生かして表現しました。いつでも見られるわけではない神秘的な雰囲気を伝えたいと考え、クラゲがバランスよく画面に収まる位置を探し、太陽光の差し込みや影にも細心の注意を払っています。水中では大きく重いハウジングが必要ですが、α6600のコンパクトさとバッテリー持ちの良さは大きなメリットです。
昨年に引き続き、2度目の「青森県一賞」を獲得でき、うれしく思います。前回は「樹氷たちが見ている世界」をテーマに冬山の作品を応募しましたが、今回は友人の影響を受けて撮り始めた水中写真で応募してみました。青森県の海の豊かさや、青森の海でもこんな景色が見られるのだと思ってもらえたらうれしく思います。『「日本の自然」写真コンテスト』は、自然をテーマにしたコンテストでは日本最高峰のもの。いつかはプリント部門最優秀賞をいただくことを夢見ています!
岩手県盛岡市にある岩洞湖で厳寒期(1月〜2月)に見られるダイヤモンドダストと、さらに発生条件が限定されるサンピラーとのコラボを狙いました。サンピラーの出現は日の出間もなくの強烈な朝日が見えるわずかな時間限定ですので、事前にカメラの設定と構図を十分に詰めて撮影に臨みました。絞り開放の方がダイヤモンドダストの光跡が大きく出るのですが、背景の霧氷林もきっちり写したかったため少し絞ったところが撮影時のこだわりポイントです。地球温暖化が叫ばれて久しいですが、冬の美しい風景写真を通じて関心を持ち、一人ひとりがアクションを起こすきっかけになればと思います。FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは「息を呑む」という表現がぴったりの素晴らしいレンズで、今回の撮影にも大いに貢献してくれました。
この作品を撮った日は朝から雨降りでしたが、ポピー畑で雄キジを探しながら歩いているうちに雨も止み、しばらくしたところで周囲を警戒しながら草花の種を食べている雄キジを発見。ハート型の赤い顔が正面を向くまで待っていたところ、突然振り向いて雨に濡れたポピーの茎を足で踏みつけながらカメラに向かって来てくれました。雄キジの鋭い目と野生の荒々しい動作の表現ができたと思います。カメラはα7 IVのほか、α7R IIIも愛用中。どちらも小型・軽量なことが気に入っています。
普段からよく雷を撮るのですが、この作品では「絶景での雷」に挑戦。富山の絶景として知られる雨晴海岸で撮影しました。滅多に見られない絶景の姿を捉えられたのではないでしょうか。ずっとソニーのカメラを使っており、現在愛用しているα7 IIIは5年ほど前に価格、機能、操作性のバランスが取れた選択肢だと考えています。
秋空を泳ぐように踊るように飛び交うアゲハチョウたち。短い命だけど、それを繋ぐために懸命にそして楽しげに生きる姿を捉えた。超広角の接近戦で小さな生き物を撮影するのは、もはや私のライフスタイルでもある(笑)。冬から春は星景や風景を、初夏はホタルや星景、風景を、夏から秋にかけては蝶やセミなど、小さな生き物を中心に撮影しています。
普段は自然の中で生きる野生動物や、日常生活での魅力的な瞬間を撮影しています。この作品では、野生動物の生き生きとした表情を表現したいと考え、動物同士のコミュニケーションを撮影のポイントにしました。今回の撮影ではα7R Vを使いましたが、メインの機材は発売直後に購入したα1 IIで、ブラックアウトフリー撮影と連写性能のおかげで、被写体の細かい動きの変化を捉えられるようになったことが気に入っています。
蝶の羽根が逆光による透過光で綺麗だったので、広角(16mm)で被写体に最接近して撮影しました。普段は市内の海、山、神社などをメインに活動しており、5年ほど前から野鳥や昆虫などの生物写真に興味を持ち撮り始めました。このコンテストには3年前から力試しのつもりで応募しており、今回も昨年に引き続き、和歌山県一賞をいただくことができました。ソニーのカメラは10年ほど前から使い始めており、α7R Vのほかにも、いくつかのボディを使い分けています。オートフォーカス性能が大変素晴らしく気に入っています。
普段から山の朝日を中心に撮影をしています。この作品では張り出した雪庇を大きく見せることで冬の自然の厳しさを表現してみました。また、人物を点景として入れることにより写真を引き締める効果を狙っています。
阿蘇のカルデラ壁を流れ落ちる滝雲を通して、阿蘇の雄大さ、スケール感と美しさを表現すべく、長秒露光を使ってシルキーな雲の流れを表現しました。普段は阿蘇在住ということで、ホームマウンテン阿蘇山を中心に風景を撮影しています。地元だからこそ撮れる自然現象や風景がありますが、それをただ記録するだけでなく、その瞬間の感動を伝えられる作品づくりを心がけています。α7R IIIは軽量コンパクトなため、山岳での撮影時にもフットワーク軽く撮影できるところがお気に入りです。
美瑛の美しい風景とキタキツネを題材にした作品を撮るべく週に3〜4日ペースで隣町の旭川から通っています。この冬は、作品の木がある丘に番い(つがい)のキタキツネが現れることが分かっていたので、重点的に様子を見に行っていました。撮影した当日、番いのキタキツネを見つけてカメラを構えたところ、なんと一匹が木に登り始めたため、慌ててシャッターを切って撮ったのがこの写真です。いったい何のために木に登ったのか分からないのですが、その場に居合わせることができたのは幸運だったと思います。今回の作品では野生動物が被写体ということでα1が活躍してくれました。α1は高画素、高速連写、高速かつ高精度なオートフォーカス等、野生動物撮影には最適なカメラと考えています。
アオバズクは巣立ち後も親鳥がヒナの世話を続け、数日から一週間は近くに留まります。このわずかな期間の親鳥とヒナの触れ合いを写真に残したいと考えました。夜行性の鳥なので昼間は天敵に注意しながら寝て過ごします。親鳥の周りにならぶヒナたちがコックリコックリと眠そうに羽を伸ばす姿は、まるでエンジェル。その瞬間をじっと待ち、なんとか撮影したのがこの作品です。親鳥とヒナの両方にピントが合う被写界深度を取るため、シャッタースピードを1/60秒、絞りをF18まで攻めて撮影しています。α1の連写性能は動物の一瞬の動きを捉えるには非常に有効で、手ぶれ補正も秀逸です。5010万画素の高解像度のおかげでトリミング耐性も強く、今まででは作品にならなかったシーンを取り出せるようになりました。
厳冬期に見られる樹液の氷柱が何本も生じる珍しい状況の中、樹液を舐めにきたシマエナガが、偶然にも2羽向かい合わせになった貴重な瞬間を捉えました。そして、そんなお気に入りの一枚に出会えた時には、いろんな方に見てもらいたいという気持ちから本コンテストに応募するようにしています。『第37回「日本の自然」写真コンテスト』ではデジタル部門最優秀賞 ソニー4K賞をいただくことができました。現在はα1に加え、α1 IIも愛用中。どちらもAFの追従が優れており、生き物の撮影には欠かせない機材だと思っています。
近年、市街地に出没し世間を騒がせているツキノワグマですが、もちろん人里離れた奥山でひっそりと暮らしているクマたちもたくさんいます。そんな、身近なようで遠い存在であるツキノワグマに興味を持ち、長年観察を続けてきました。この森は広い林間の中にミズナラやブナ、シナノキの巨木が立ち並ぶ、昔から人と自然が共生してきた場所。幻想的な雰囲気の中で、森の主であるツキノワグマと出会うことができ、この作品を撮影することができました。カメラはα7R Vとα1を併用中。野生動物が活動しやすい早朝や夕刻の薄明時や薄暗い森の中で撮影することが多いので、広いダイナミックレンジや高感度に強いところ、AFが優秀なところが気に入っています。
標高約1,280mにあるこの場所では、厳冬期に一面美しい樹氷が生じ、十勝岳連峰(北海道)の織りなす山々のとても美しい造形を目にすることができます。満月期に月に照らされるこの自然を撮りたいと現地に向かったところ、山々に掛かっていた雲が一気に流れる一瞬があり、イメージ通りの広大な景色を10mmの超広角レンズで撮影することができました。キラキラと宝石のように輝く雪の様子も捉えるなど、前景にもこだわっています。ソニーのカメラはコンパクトでありながら高性能・高画質で、どのような撮影環境にも対応できる点が魅力です。厳冬期の北海道においても安定した性能を発揮してくれる、耐候性の高さも心強く感じています。
宝石のように輝くジュエリーアイス(北海道・十勝川の氷が海岸に打ち上げられたもの)を撮影したいと思っていました。撮影しながら、引き波の様子をうまく捉えることができれば、よりジュエリーアイスの輝きを引き立てることができると考え、シャッタースピードを調節しながら何度も撮影し、やっと満足できる一枚を撮ることができました。今回撮影に利用したα7R Vは高精細な描写が気に入っています。
「富士山」と「富士と名の付く百名山」の撮影に取り組み続けています。この作品は富士山に発生する雲の不思議と色彩を捉えたいと考え撮影。カメラも出さずに見ているうちに徐々に姿を現し、この年一番の富士劇場となりました。αはミノルタ時代から愛用し続けており、今ではすっかりメジャーなカメラメーカーになったことを喜んでいます。
いったい何をどう撮ったのかわからないが目を留めてしまう、インパクトのある写真を狙いました。被写体はヒメホウキムシという海中の生物です。この生物を良く知る人はそう多くないと思いますし、それをこのように撮る人もそういないと思います。一つひとつの個体をはっきり写すことによる、不気味さと美しさのせめぎ合いを意識しました。
この作品では、小さなアリが大きなナナフシに挑んでいく勇気と真剣な表情を表現しようと考えました。アリとナナフシの大きさがかなり違う中、アリの真剣な様子をできるだけ表現できるようピントを合わせるのが難しかったです。なお、前回はプリント部門で大阪府一賞をいただきましたが、今回はアリがとても小さく、プリントで表現するのが難しかったためデジタル部門に応募しています。
何度も足を運んでいる西表島の豊かな植生と美しい星空、ヤエヤマヒメボタル、これら3つの要素を一枚の写真の中で収めることで、西表島の自然のエネルギーの存在感を伝えることを構想して撮影に成功した作品です。
5月の立山(富山県)で、夕陽に染まる雪景色を見つめる雷鳥の姿に、季節の移ろいを感じました。これから訪れる夏を待っているのか、雪景色を名残惜しんでいるのか。そんな思いが交差する一瞬を切り取ったつもりです。ふだんは家族の写真ばかり撮っていますが、年に2、3度ほど一人で山に出かけられる時間があり、そのときだけは自然の風景に向き合って撮影しています。
熊本県上益城郡嘉島町にある浮島神社には溜池があり、一年を通して水が張られています。朝の放射冷却が厳しくなる11月後半から、一定の条件が揃うと蒸気霧が発生します。その蒸気霧が、朝日に照らされると黄金色に輝くことから、多くの写真家がこぞって撮影に来られ、それぞれのスタイルで撮影を楽しまれています。個人的には広角レンズで浮島全体を撮影するのが好み。蒸気霧が立ちすぎず、訪れた渡り鳥の姿も撮れるくらいの日を狙って何度も通い、ようやく納得のいく一枚を撮影することができました。
ウミガメは宮古島で大人気の海洋生物であり、あえて半水面で宮古島の海の透明度とウミガメの住む環境を撮影しました。仕事柄、海の生き物を撮影することが多く、生き物の自然な姿や生活環境を乱さないように配慮しています。撮影に使ったα7 IVは、波のある環境でも被写体を追随してくれるAF機能を気に入っています。
表彰式の終わりには写真家・中村征夫氏による総評が行われました。中村氏は今回の審査を通して「日本ってすごいな、素晴らしい自然の国だな」と改めて感動したと語り、応募作品が、本格的な山岳写真だけでなく、身近な里山や里海、そこに生息する多様な動植物、さらには人々の営みまで捉えた非常に幅広いテーマを網羅していたことに触れました。
その上で「これだ」という明確なテーマに挑んでいる作品は、一味も二味も違ってくると熱弁。被写体の美しさや希少性だけでなく、作者の深い意図や情熱こそが作品の質を大きく高めると語り、具体例として以下の作品を絶賛しました。
・プリント部門最優秀賞『遠い春』の圧倒的な構図
・デジタル部門最優秀賞 ソニー4K賞『Aurora Night』の千載一遇のチャンスを逃さない判断力
・全日本写真連盟賞『海は空に空は海に』の見る人全てを笑顔にする楽しさ
最後に「受賞に満足せず、明日からビシビシ写真を撮ってほしい。今後もたくさんの素晴らしい作品に出会えることを楽しみにしています!」と、会場を訪れた受賞者、そして全てのコンテスト参加者を激励し、表彰式の幕を閉じました。
今回の『「日本の自然」写真コンテスト』受賞作品をご覧いただける巡回展は現在、日本各地で開催中。
開催場所とスケジュールはこちらからご確認ください。
ソニーストアでは、ご自身が撮影した写真やお持ちの映像を、実際の4Kブラビアに映し出してご覧いただけます。
テレビで楽しむ写真鑑賞スタイルの体験などにご利用ください。
『「日本の自然」写真コンテスト』は、日本の自然をテーマに写真を撮る人にとって憧れのフォトコンテストです。その中で最も価値のある「最優秀賞」に選ばれたことに大変驚いています。
冬羽のライチョウといえば、真っ白で可愛らしい姿が印象的ですが、実際には厳冬期の過酷な環境の中でひっそりと暮らしています。この写真では、その「可愛らしさ」と「厳しさ」という対照的な要素を一枚に収めることができました。ライチョウが見ている景色や環境を、この写真を通じて感じていただければ幸いです。
撮影地である岐阜県・西穂丸山付近では、天候が悪い日にライチョウが現れると聞いていましたが、実際に出会えるまでには長い年月がかかりました。この写真を撮影した日も、登山者が山に入るのをためらうほどの暴風と地吹雪でしたが、ホワイトアウトした背景に突然ライチョウが現れ、その瞬間、夢中でシャッターを切ったのを覚えています。
構想に一年、そして埼玉の自宅から北アルプスに何度も通い、撮影に3年を費やしました。家族をはじめ、多くの方々の支えがあったからこそ撮影できた一枚です。この場を借りて、改めて感謝の気持ちを伝えさせてください。ありがとうございました。