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「G Master」の設計思想や魅力を
開発陣が解説 FE 100mm F2.8 STF GM OSS 編

α Universe editorial team

Concept ~開発コンセプト~

「G Master」ならではの優れた解像力を一切犠牲にせず、前ぼけ、後ろぼけの両方を理想的な美しさに

メカ設計担当/山本哲郎

山本:ソニーではコニカミノルタから引き継いだレンズとして、AマウントのSTFレンズ「135mm F2.8 [T4.5] STF」をラインナップに持っています。ミノルタの「STF 135mmF2.8〔T4.5〕」が設計の元となっており、今もユーザーから高い評価をいただいている伝統のあるレンズです。STFレンズの魅力は「解像力を一切犠牲にせずに、前ぼけと後ろぼけを同時に美しく表現できる」ということです。アポダイゼーション(APD)光学エレメントを搭載することによって、本来は相反にある解像とぼけの両立を最高レベルで実現しています。「STF」という伝統ある称号を引く継ぐ上で、当時ミノルタで「STF 135mmF2.8〔T4.5〕」の企画から携わった開発メンバーと様々な意見交換を行いました。実際の撮影シーンでSTFが持つ理想的なぼけを最大限に引き出し、撮影領域をさらに拡張するためにはどのような仕様に落とし込むべきか、光学設計はもちろんのこと、アクチュエーターの選定から操作リングの細部の仕様に至るまで徹底的に議論して開発を進めました。 そして、ソニーの最新技術を融合させ、STFレンズが持つ高い表現力はそのままに、高速AFへの対応やレンズ内手ブレ補正機構を搭載しました。STFの魅力を様々な撮影シーンで活かせるレンズ、それが「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」です。

アポダイゼーション光学エレメントとは

アポダイゼーション光学エレメントは、レンズの周辺にいくほど通る光の量(透過光量)が少なくなる特殊効果フィルターです。絞りの近くに配置され、点像の輪郭を柔らかくすると同時に、二線ぼけの発生を抑制します。結果として、ピント面は非常にシャープでありながら、前ぼけ・後ろぼけの両方で滑らかで美しいぼけ味を得られます。

Optical Design ~光学設計のこだわり~

口径食の発生を徹底的に抑制し、画面全域で美しい円形ぼけを実現する

光学設計担当/加藤卓也

加藤:通常のレンズは球面収差をコントロールすることで解像とぼけのバランスをとっています。レンズ設計においては、後ろぼけが固くならないように設計。ただ、後ろぼけの柔らかさを重視しすぎるとピント面の解像が低下したり、前ぼけが固くなったりするため、球面収差のバランスをとることが必要になります。一方、STFレンズではアポダイゼーション光学エレメントを搭載することで得られるグラデーションの効果によって、前ぼけと後ろぼけの両方を圧倒的に柔らかく描写することが可能になります。そのため、球面収差は解像感を重視して設計することができます。ピント面の解像感、背景と前景両方のぼけ味すべてを“極めて高い次元“で両立していること、これがSTFレンズにしか成しえない最大の特徴となります。

柔らかく、とろけるようなぼけ描写とピント面の圧倒的な解像感を極めて高い次元で両立している

今回はポートレートやネイチャーフォトなど、さまざまな撮影シチュエーションで表現を活かしやすい100mmを焦点距離として選択しています。APS-Cのボディにつけた場合は150mm換算となるので、望遠寄りの使い勝手の良さもあると思います。 そして、STFレンズの特徴として、点光源のぼけに口径食がほとんど出ないというメリットがあります。一般的なレンズで点光源をぼかして撮ると画面の中心付近では丸くぼけますが、周辺はレモン型になってしまいます。この現象が口径食です。口径食を出さない設計というのは言葉にするのは簡単ですが、実際にはレンズを通る光を画面周辺まで一切遮ることなく通過させることが必要となります。そのため1枚1枚のレンズ玉の設計や鏡筒内部の部品レイアウトは格段に難しくなります。 また、レンズの周辺部を通過する光も増えるため、収差の抑制やゴースト耐性に関しても非常に難易度が高くなります。しかし、ベースとなる光学設計自体を非常に高いレベルで仕上げ、さらにソニー独自のシミュレーション技術を活用したため、画面全域で理想的な円形かつ美しいぼけを描写することが可能になりました。ポートレートを木漏れ日の前で撮ったときに、通常のレンズでは口径食が発生する影響で、背景が渦を巻いたようにうるさくなってしまうことがあります。しかし、「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」なら中心から周辺まで柔らかく美しいぼけになりますので、そのような現象は起こりにくくなります。 また今回の光学設計に合わせて、11枚羽根の絞り機構を新開発しました。ぼけの大きさを絞りで調整する際も美しい円形ぼけを維持できるよう羽根の開口形状は徹底的にこだわって調整しています。

【STFレンズ】
女性の前後の点光源に注目すると画面の周辺でも点光源は円形を保ち、口径食はほとんど発生していない。また点光源の周辺はエッジがなく、とろけるようになだらかにぼけている。
【STFレンズではない一般的なレンズの例】
画面の周辺で点光源がレモン型になり、口径食が発生している。点光源の周辺にもエッジが残っている。

マクロ域切り替え機能を搭載したのは、
美しいぼけ描写を存分に楽しんでもらうため

山本:前ぼけも後ろぼけも美しいレンズですので、草花の撮影シーンなどで活躍すると想定し「マクロ域切り替え機能」を搭載しました。花のピントが合った部分のキレのある解像力と、前後のとろけるようなぼけ描写のコントラストはSTFレンズでないと味わえない世界です。被写体を画面に大きく写して、近接撮影ならではの大きなぼけも楽しんでいただきたいという思いから、「最大撮影倍率0.25倍の近接撮影」は開発当初から必ず達成すべき目標としていました。

加藤:実はEマウントの交換レンズでメカニカルにレンズ群の間隔を切り替える「マクロ域切り替え機能」を搭載するのは「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」が初めてです。これだけの解像力、光学性能をマクロモードで実現したのは画期的だと思っています。これだけコンパクトな鏡筒サイズに複雑な切り替え機構を収めてくれたメカ設計チームには感謝しています。単に被写体に寄れるだけではなく、寄ったときの解像とぼけのコントラストがSTFレンズでは特に際立っていますので、ぜひお試しいただければと思います。

Mechanical Design ~メカ設計のこだわり~

独自開発のシミュレーション技術と新開発アポタイゼーション光学エレメントで課題を克服

山本:STFレンズは、アポダイゼーション光学エレメントの搭載により美しいぼけが得られる一方で、高速AFとの両立が技術的な課題でした。一般的に、アポダイゼーション光学エレメントの透過光量のグラデーションは位相差AFセンサーの信号に影響を与えます。そのため、アポダイゼーション光学エレメントを搭載するレンズは位相差AFの対応が難しくなるのです。コントラストAFのみの対応であればハードルは下がるのですが、より高速な像面位相差AFへの対応は何としてでも解決したい課題でした。この課題を解決する鍵となったのが新開発のアポダイゼーション光学エレメントとシミュレーション技術の進化です。「エレメントの透過光量のグラデーション分布を正確にコントロールする技術」「エレメントを通った光がイメージセンサーの信号にどのような影響を与えるのかをシミュレーションする技術」、さらに「その情報を処理するエンジンと正確なAFを実現するソフトウェアの技術」、ソニーが持つこれらの最新技術を集約させたことで技術的な課題をクリアし、コントラストAFのみならず、像面位相差AFにも対応させることができました。

AマウントのSTFレンズは素晴らしい表現力を持っています。ただ、MF専用のため、気軽に使っていただくにはハードルの高いレンズでした。だからこそ「高速AFに対応したSTFレンズをEマウントのラインナップに加えることで、より幅広いシーンで、より多くのお客様に、STFレンズが持つ美しいぼけと高い解像力を味わっていただきたい」、このような思いから開発メンバーで検討を重ねたことで、高いレベルの高速AFを実現することができました。たとえばポートレート撮影のシーンにおいて、被写体が動いていてもα7R IIIやα9に搭載されている瞳AFとコンティニュアスAFの組み合わせでスッと簡単にピントを合わせられます。MFのSTFレンズユーザーの方からすれば「こんなに簡単に撮れていいの?」と思われるかもしれません。これまで諦めていた撮影シーンにもぜひ持ち出していただきたいです。

軽量化が求められるEマウントのためアクチュエーターも新開発し小型に

加藤:開発に当たっては小型・軽量システムとしてのアドバンテージを持つEマウントのレンズなので、描写性能だけではなく、小型・軽量化という点も重要視しました。しかし、STFレンズの特徴のひとつである口径食の発生を最大限に抑える光学設計にするとどうしても各レンズの重量が重くなります。その結果、レンズ群を駆動するアクチュエーターにも負荷がかかるため、アクチュエーター自体も大きくなってしまいます。その問題を解決すべく、今回、山本を含むメカ設計のメンバーが小型かつ高出力性能をもつ新たなアクチュエーターを開発してくれました。そのおかげでこのようなサイズを実現することができました。

山本:レンズを前から覗いてみると、フロント側に大きな防振レンズが入っているのがわかります。口径食を抑えるためにレンズの径が大きくなる点に加え、至近側の光学性能を極限まで引き上げられるように検討を進める中で、防振レンズに大きな重量を持たせる光学設計案が出てきました。これを動かそうとすると従来の技術の延長線上ではコンパクトなサイズを実現できません。そこで電気設計者、制御設計者も含めて検討と試作を重ね、新しい制御システムを開発しました。大きなレンズをより効率良く動かせる防振用のアクチュエーターを開発できたことで、高い光学性能とレンズ内手ブレ補正機構の両立を実現しています。 また、このレンズは動画撮影も意識して開発しています。単純にフォーカスを動かすだけならば、アクチュエーターの選択肢は広くあります。しかし、動画に対応できるレベルとなると話は別で、静かに駆動するアクチュエーターを選定することが必要となります。チームで検討を重ねた結果、このレンズではダイレクトドライブSSM(DDSSM)を選択することがベストだ、という結論に至りました。口径食を抑えた美しいぼけの世界を、ぜひ動画でも楽しんでいただきたいです。 加藤:ソニーは多種類のアクチュエーターを内製しているため、その中から光学設計に最適なアクチュエータータイプを選定し、さらにレンズ毎に最適なチューニングができることが強みでもあります。実は、光学設計案では防振レンズをもう少し軽くする案もありました。しかし、「G Master」として出す以上、やはり光学性能が第一だと考え、今回の仕様を採用しました。メカ設計のメンバーは大変だったと思いますが、素晴らしいアクチュエーターを開発してくれて本当に感謝しています。DDSSMは圧電素子の超音波振動を利用してフォーカスを駆動するソニー独自のアクチュエーターですが、さらにこのレンズのためにフォーカスが動いたときの振動などが最小限になるようチューニングしています。そのため、非常にスムースで速く駆動し、動画撮影中の音も気になりません。光学式手ブレ補正機構も搭載していますので、どなたにでもとても扱いやすいレンズだと思います。

最後に

加藤:STFレンズの「ぼけ」について話してきましたが、「そんなにぼけ味は気にしていないよ」という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方にこそ使っていただきたいレンズです。使い込むことで「あ、ぼけ味がきれいとはこういうことなんだ」とわかっていただけると信じています。ピント面の極めて高い解像感と前後のとろけるようなぼけによる表現の立体感、きっと写真の楽しみが広がると思います。 山本:STFレンズのぼけの違いは、ぼけに「芯」があるということです。ぼけの中心はしっかり残しながら、その周辺がなだらかに消えるようにぼけていきます。大きく背景をぼかすだけがぼけではないということです。被写体の前でも後ろでも、ひとつひとつの小さなぼけが生み出す表現がワンランク上の作品に仕上げてくれるということを、実際に体験していただきたいです。

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