「THE NEW CREATORS」グランプリの副賞で国際的映画賞「SFFA」の授賞式に出席

α Universe editorial team

第1回「THE NEW CREATORS」の映像作品でグランプリを受賞した美術作家の河合ひかるさん。グランプリの副賞として招待されたのが、2026年6月にアメリカ・サンフランシスコで開催された「Sony Future Filmmaker Awards (SFFA)」の授賞式だ。この体験を通しての感想や、表現者として今回の授賞式に参加する意義や価値などを河合さんに聞いた。

【THE NEW CREATORSとは】ソニーのPurpose(存在意義)である「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」に則り、ソニー関係各社がその想いに共鳴した新しい才能を見出し、クリエイターと“感動”の未来を共創していく写真&映像アワード。第1回は、年齢や経験、撮影機材に制限のないオープン形式で、写真作品の3部門、映像作品の3部門の合計6部門を設けて幅広い作品を募集し、グランプリ含む各賞を決定した。第2回の募集はすでに終了しており、2026年10月に授賞式を実施予定。

【Sony Future Filmmaker Awards (SFFA)とは】未来の映画界を形作る映画制作者を称える国際的な映画賞。次世代の映画制作者を発掘・支援し、映像や映画文化の発展に寄与することを目指している。応募は無料で、世界中のインディペンデント映画制作者を対象に、フィクション、ノンフィクション、アニメーション、イマーシブ、学生、フューチャー・フォーマットの6つのカテゴリーで構成。各カテゴリーで最終候補に選ばれた制作者、およびフューチャー・フォーマットカテゴリーの受賞者は、ロサンゼルスで開催される業界密着型プログラムに招待される。

多くの作家がリラックスして楽しんでいたパーティー形式の授賞式

――なかなか出席する機会のない世界的なアワードだったと思いますが、どのような心境で当日を迎えたのでしょうか?前夜、ソニーの方々に現地の素敵なレストランにお招きいただきまして、その後のスケジュールや授賞式の準備でどのようなことをしているのか、どのような作品がノミネートされているのか、といったことをたくさん聞くことができて、期待に胸を躍らせる夜となりました。それまでは、「自分は出席していいのかな」、「どんな雰囲気なのかな」と不安もありましたが、事前に話を聞くことができてワクワクに変わりました。

授賞式、パーティー会場入り口にて。河合さん(写真右)と同行したソニーの担当者

――「ソニー・フューチャー・フィルムメーカー・アワード」に参加した率直な感想を聞かせてください。会場に入ってすぐ、欧米と日本の授賞式のスタイルの違いに驚きました。会場には大音量で音楽が流れていて、お酒片手に踊っている方もいらっしゃって、パーティーのようなスタイルでした。ただ、来場されている方はみんなリラックスしていてウェルカムな雰囲気だったので、授賞式というよりも、映像に携わる方々が非日常を感じるためにリフレッシュも兼ねて集まっているような印象を受けました。

――授賞式に参加されて印象的だったことは?ネガティブな印象になってしまいますが、ノミネート作品に日本の作品がなかったことです。韓国や中国、台湾、タイなどアジア圏の作品は何十作品とノミネートされていて、アジア勢のパワーを十分に感じられましたが、日本から出品された作品がノミネートされておらず。同席していたソニーの皆さんも同じことを思っていたようで、問題意識の共有というか、「なぜ日本の作品がノミネートされていないのか」「どうしたらもっと日本の方がチャレンジできるのか」といったお話もさせていただきました。

授賞式、パーティーの参加者と積極的に意見交換

――日本の作品がノミネートされていない理由について、どのような話をされたのですか?このアワードに積極的にチャレンジしよう、というムードに温度差があるのではないか、このアワードの周知も大切だよねというような話をしていました。私は美術大学に身を置いてきました。大学では作家性を探求することは十分に学ぶことができますが、卒業後にアーティストとしてどのように活動していくかは個人に委ねられてしまう部分がございます。生活をしながら制作を継続するのは容易ではありません。方法もわからないし、5年後10年後の具体的プランも描きづらいです。そんな中で、アワードの認知が高まると若手作家のモチベーションにもなりますし活動におけるヒントも得ることができます。海外の様相はわかりませんが、もっとアワードに挑戦することが身近にあったりチャレンジしやすい風土があったりするのかもしれません。また、自分の視点ではSFFAは中堅の作家向けのアワードだと思っているので、中堅的なポジションの人がチャレンジしている国際的なコンペがあることを知ってもらうためにも、このアワードの存在を周知したいと思いました。そして、私自身も中長期的な目標として、いつかここにノミネートされたらいいな、と思っています。

クオリティが高く、視点が新しい作品ばかりで「新時代のクリエイター」を実感

――実際に受賞作品を観て、感じたことがあれば教えてください。マイノリティにまつわる社会的な課題や、今までは映像の題材になってこなかった問題が主軸になっている作品もあり、全体的に質が高いと感じました。特に各部門のグランプリ作品に関しては「視覚的に非常に高いクオリティを満たしておきながらも、視点がとても新しい」という共通事項が見出せたのは大きな収穫だったと感じています。難しい課題や問題をテーマとしながらエンターテインメントとしても機能していて、かつ、社会を批判するようなクリティカルな内容も、コミカルに、シリアスに、と作家それぞれの個性的なタッチで描かれていて、本当に「新時代のクリエイター」という印象です。

受賞作品が次々と発表された

――受賞作品はどれも刺激的で、学びになることも多かったのですね。受賞作品の傾向は読めましたが、自分が数年でどうにかできるレベルではない、ということもわかってしまうくらいレベルが高いと感じました。おそらく仕事で映像制作をしている方たちが集結して、お金を集めてつくっているような作品ばかりだったので。自分は今、個人で作品を制作しているため、まずはもっと大きくならなくてはいけない。ですから、10年後といった長いスパンでの目標にしています。――授賞式への参加は、表現者としてどのような価値があると考えていますか?「世界のクリエイターは、このクオリティで作品をつくっている」ということが確認できたので、自分が目指すべき10年後、20年後の姿を具体的にイメージできるようになったのはクリエイターとしての大きな収穫だったと思います。――中長期的なスパンで河合さんが目指していることは?チームでの制作を考えています。授賞式の会場にはいろいろな国のテーブルがありましたが、やはり皆さんチームで参加しているのがわかったので、「1人じゃなくていいんだ」ということは強く実感できました。自分がこれからどういうルートを進んでいくのか具体的には詰め切れていませんが、少しずつチームでの映像制作が可能になるように、仲間集めも活動の1つとして進めていきたいと思っています。

今回の体験を話すことで人と繋がりを持ち、チームで作品制作をする基盤づくりを進めたい

――関連アクティビティとして「ソニー・ピクチャーズ・スタジオツアー」に参加されたそうですが、印象に残っている体験などはありますか?私は小さい頃から映画が好きでいろいろな作品を観てきたので、「あの映画も、この映画もここで撮られていたんだ」と感動しました。ツアーの冒頭にシアタールームでスタジオについての説明動画を観るのですが、「スパイダーマン」など私の好きな作品も紹介されていたので、最初から気持ちが高まりました。

ソニー・ピクチャーズ・スタジオの敷地内には巨大な虹のアートが

その後も、実際に映画で使用された小道具の展示エリアや、実際の撮影場所を巡り、心躍る素敵な時間を過ごすことができました。巨大倉庫のような撮影スタジオの大きさにも圧倒されましたし、「こんなに大きなグリーンバックでCGを撮っているのか」とワクワクしっぱなしで。こういった映画の現場を目にしたことでも「ハイクオリティの作品は、到底1人ではつくれない」ということを強く感じました。映画に没入するためには、高いCGの技術や圧倒的な映像美によるリアリティ、さらに多くの人と大きな設備が不可欠です。すごく当たり前のことですが、現場で見て世界のクオリティをしみじみと感じることができました。

スタジオツアーではアカデミー賞で授与されるオスカー像のレプリカを持って記念撮影ができる。「実際に持ってみると、重くてびっくりした」と河合さん。

小さい頃や学生時代に観た大好きな映画の衣装や小道具が所狭しと並んでいるのを見てテンションが上がった

――ソニーが副賞としてアワード授賞式への招待を提供することに、どのような意義があると考えていますか?SFFAへの出席は、私にとって目指すべき目標を設定できる絶好の機会となりました。学生や若いクリエイターにとっては長期的な目標をより具体的に設定できる機会になると思いますし、普段から仕事で映像をつくっている方にとっては、間近にある目標として捉えることができる。そういう意味でも、非常に意義のある副賞だと思います。――河合さんは、SFFAをどのようなコンペだと捉えていますか?自分の勉強不足もありますが、国際的なコンペで入賞するのは広告映像かアニメーションか映画か、というイメージが強く、アートフィルムというジャンルの立ち位置が弱いように感じていました。でも、SFFAはアートフィルムの作品も多く見られましたし、エンターテインメント的なものでもなければ、5分程度と短い尺の作品もありました。このように、尺に制限がなく、フィクション・ノンフィクション・ドキュメンタリーといったジャンルで応募できるのは大きな魅力ですし、このようなコンペがもっと増えたらうれしいです。そして、今はSFFAという素晴らしいコンペがあるのだから、もっと多くのクリエイターに認知してもらってチャレンジする人が増えるといいな、と思っています。――この経験をどう次に生かしたいと思っていますか?このような国際的なアワードの授賞式への参加はなかなかできないこともあり、友人知人、まわりのクリエイターなど、たくさんの人から「どうだった?」と感想を聞かれました。私はこういう機会をいただけたからこそ、聞かれたことについて具体的に話してまわりに広める使命があると思っています。そして、話をすることで多くの人と繋がりを持ち、チームでチャレンジするための基盤づくりも進めていきたいです。――今回の一連の体験を通して感じたことなど、これからクリエイターを目指す若者に向けてメッセージをお願いします。「THE NEW CREATORS」はグランプリをいただくと、副賞としてこのような素晴らしい機会が待っているので、何回でもチャレンジして欲しいと思います。どんなコンペも、応募して失うものはなにもありません。もし落選したとしても、受賞作品を観て、知ることによって、なぜ自分が選ばれなかったのかを分析できて学びになると思いました。ですから、受賞作品はもちろん、いろいろな作品をどんどん観て欲しいと思っています。今はSNSを活用しているクリエイターも多いので、応募に迷われている方はぜひ入賞された方々の活動を追ってみてください。作品を観るのは楽しいですし、ヒントにもなりますよね。最後になりますが、私は、駆け出しの作家です。応募を迷われている皆様と一緒に「映像を作ること」、「作品を観ること」を盛り上げていけたら嬉しいです。

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