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FE C 16-35mm T3.1G
インプレッション 〜ソニーが挑戦する“フルフレームシネマレンズの新要件”〜
映像作家 鈴木佑介氏

α Universe editorial team

シネマやドキュメンタリー、プロモーション映像などの幅広い映像制作用途に向けたフルサイズ対応の大口径広角ズームのシネマレンズFE C 16-35mm T3.1 G(SELC1635G)がラインアップ。
シネマレンズシリーズとしてEマウントレンズラインアップに加わった本レンズのインプレッションを映像作家 鈴木佑介氏に語ってもらった。

鈴木 佑介 氏/映像作家 1979年神奈川県逗子市生まれ、逗子在住。日本大学芸術学部映画科 演技コース卒業。在学中に撮られる方(俳優)から興味がシフトし、映像制作の世界へ。TV-CF制作の撮影スタジオ勤務、ロケーションコーディネートを経て、2004年からフリーランスの映像作家として活動。企画・演出・撮影・編集・カラーグレーディングまでワンストップで行い、プロジェクトごとに必要なスペシャリストをスタッフィングして映像制作を行う。専門分野は「人を描くこと」。特に女性の撮影や美容系の撮影の評価が高い。
現在はWeb-CFやイベント映像制作業を中心にソニー主催「αアカデミー for Professional」にて映像制作の講師やセミナー登壇のほか、映像コンサルタントとしても活動。Webマガジン「PRONEWS」、玄光社「月刊ビデオサロン」など各種メディアで執筆。 オフィシャルサイト
https://www.yusuke-suzuki.jp/

スチルレンズ≠シネマレンズ

ソニーのEマウントレンズのラインアップに加わった「FE C 16-35mm T3.1 G」というレンズ。
16-35mmのフルサイズ対応のEマウントレンズということは読み取れますが、見慣れないのは「C」の文字とT値表記(レンズの透過性を加味した実質的な明るさの指標。T3.1=F2.8とほぼ同等)での絞り値でしょうか。
映像業界に携わっている方であればピンとくるかもしれませんが「C=Cinema」。そう、映画用レンズ。俗に言うシネマレンズです。

シネマレンズ。写真を生業としている方には馴染みがないかもしれませんが、前述の通り映画用ないしは「映像撮影に特化したレンズ」です。通常のシネマレンズの大きな特徴としては、まずは「マニュアルフォーカス」であること。映像制作(映画やコマーシャル)ではフォーカスマンというフォーカス操作をする専任が被写体までの距離を測って、フォーカスを操作します。

物理的な特徴でいうと、シネマレンズはスチルレンズよりも重く、絞りはF値表記でなくT値表記。無段階の絞りリングがレンズ側にあり、180度〜200度のフォーカスリング、ズームレンズの場合はズームリングがあり各リングにはギアが付き、フォローフォーカスなどを使用してフォーカスコントロールを行うものになっています。それにより、映像の撮影時に演出や撮影内容に応じて、スチルレンズよりもち密なフォーカス操作、ズーム操作、絞り操作が可能です。 一瞬を捉えるため、オートフォーカスに最適化したフォーカスピッチの短いスチルレンズで映像を撮影した際は、フォーカス操作が難しく感じると思いますが、シネマレンズではそういったストレスが皆無になります。 そして各種リングの位置は他のレンズに交換した際にも同じ位置にあるように設計されているので、レンズ交換を行う際にフォローフォーカスなどの位置を変えることなく使用できます。 映りに関してはもちろん「美しい」のは当たり前として、スチルレンズの場合によくある「フォーカスを回した際に映像の画角が変動する」ような『ブリージング』が少ないこと、そしてズームレンズなどで寄ったサイズでフォーカスをとった後に引いたらフォーカスが合っていない俗に言う「引きぼけ」が無いこと、が従来からあるシネマレンズの要件だと認識しています。

そしてシネマレンズといえばPLマウントが主なマウントですが、ソニーはそこにEマウントでシネマレンズを展開してきました。
VENICEからFX9、FX6というCinema Lineと称された商品群を展開するソニーの「シネマ軸」への本気度が伺えます。

オートフォーカスも使えるシネマレンズ

ソニーの従来のEマウントレンズは写真・動画撮影共にAFに最適化されていますが、フォーカスリングが自由回転であるうえに、LR MF(リニア・レスポンスMF)に対応する一部のレンズを除き、フォーカスリングを回した速度に応じてフォーカス移動量が変わり、リニアな回転角ではなかったため、映画や広告などの映像制作現場では使われにくかったのが事実です。さらに映像撮影においては「フォーカス送り」というフォーカスの合焦速度が演出の一部となることがあるため、何度もテイクを繰り返す場合の「再現性」も重要になります。

FE C 16-35mm T3.1 Gはシネマレンズの名を冠するとおり、絞り、ズーム、フォーカスギアを持つ従来のシネマレンズの形を踏襲し、もちろんフォーカス、ズーム、絞りリングの回転角も「リニア」になっています。スチルレンズでは出来なかったち密なフォーカス操作が繰り返し再現できるようになりました。 それだけであれば単なるシネマレンズに過ぎませんが、ソニーは「シネマレンズ=マニュアルフォーカス」という要件を根底からひっくり返しました。そう、シネマレンズでありながらオートフォーカスも使用することができるのです。切り換えは簡単で、レンズ前玉側のフォーカスリングを前後に動かすだけでオートフォーカスとフルマニュアルフォーカスの切り換えができます。オートフォーカスにすることでCinema Lineと称されたFX9やFX6はもちろんα7シリーズなどソニーのEマウントカメラならではの高速オートフォーカスも使うことができながら、状況に応じてマニュアルフォーカスもきちんと使用できるのです。3連リングに採用されているギアもサードパーティー製のフォーカスギアがきちんと装着できます。 さらに従来のカムコーダーのようにパワーズーム機能も付いていて、レンズのサーボズームも使用することができます。シネマ、ビデオ、様々なくくりがありますが、マニュアルとテクノロジーを融合したハイブリッドなレンズがソニーが目指すこれからのシネマレンズなのだと感じました。1本70万円強と一見高価に見えますが、オートフォーカスもパワーズームも使用できるシネマレンズとして捉えるとそのコストパフォーマンスは良いものなのかもしれません。 シネマカメラも従来のSuper35mmセンサーだったものが、近年フルフレームセンサーへと変化しています。「シネマレンズ」と聞くと敷居が高く感じる方も多いと思いますがFX6やα7S IIIなどで映像制作をしている方、これから本格的に映像制作を仕事として始めようと思っている方にはおすすめの一本かもしれません。実際にFX6と組み合わせてみると、レンズの重量のおかげで小型のボディに対してもバランスもよく、手ブレ補正が無くても案外手持ち撮影ができる印象です。

オールドスクールな表現手法を現代のテクノロジーと最新の美しさで

この「FE C 16-35mm T3.1 G」の画質はG MasterのFE 16-35mm F2.8 GMの光学設計を彷彿とさせる印象で、美しさは十二分。広角ながらぼけを生かした撮影が可能です。

パワーズームが付いたことでカメラは被写体から離れながらもレンズはズームで被写体に寄っていく視差効果を生かした、いわゆる「目眩ズーム」的な撮影が簡単にできるようになりました。手持ちでカメラを前から後に動かしながらサーボズームで寄ったり引いたりしてみました。

手持ちで目眩ズームテスト

またパワーズームの速度もサーボズームユニットのスイッチで切り換えが可能です。絞りリングのクリック切り換え、絞り(アイリス)のロック、サーボズームのオン/オフ、サーボズーム制御、ズーム速度の切り換え、など全てレンズ側で操作できます。

現在は16-35mmと広角1本しか展開されていないので、撮影できるものが限られており注目度はまだ低いかもしれませんが、将来ラインアップが拡充されるようなことがあれば、そのときに「所持できる便利なシネマレンズ」としてマニュアルとテクノロジーを融合したソニーのシネマレンズの魅力が発揮されるのではないかと感じています。

ソニーが挑戦する新時代シネマレンズ。課題はあるが、可能性の宝箱

さて、ここまでは前向きな印象をお伝えしましたが、実際に使用してみての及第点と、感じたところがいくつかあるのが正直なところ。そこをお伝えしないことには嘘になってしまうので、心を鬼にしてお伝えします。 まずは中途半端なビデオライクなレンズフードに疑問を感じました。かつE PZ 18-110mm F4 G OSSに同梱されている角型バリア付きレンズフードのようにフード側で蓋の開閉ができるわけでもない上にレンズキャップはスチルレンズと同じようなキャップ。70万を超えるレンズでこれは正直無い。
かつ、レンズキャップを外してみると、溝があるので円形のフィルターが一見入りそうですが、なんと入りません。

賛否両論だと思うのが、このレンズフード。フィルターが入るわけでも、蓋が開閉するわけでもなく、フレンチフラッグが装着できるわけでもないのは残念。

レンズスクリューのように見えるが、円形フィルターの装着はできない。

取り外しはネジでの圧着式。ロッドとフォローフォーカスを装着した上でこのフードを装着すると、レンズ交換のたびに着脱が必要になる

シネマレンズはマットボックスを使用する、というのが前提であるかもしれませんが、レンズ側がこういった作りであれば普通に円形フィルターも使える形にすべきであったと感じました。影で使用するフィルターはNDだけでは無いのだから、レンズフードもただのフードでなく4×4のフィルターが入れられるような仕組みであったり、ハレ切り(フレンチフラッグ)を付けることができる、もしくは付いているようなデザインになっていれば利便性はもとより、もっと「シネマレンズ」の高級感が出たのではないかと思います。その辺りの気配りがあったら喜ぶ人は多いと思います。 ただ、そうした外的なものはオプションなどで今後対応はできると思いますので、検討していただくとして問題はカメラとレンズ側で特に連携が無いことに少しがっかりしました。テクノロジーの塊であるソニーであれば、このレンズの発売の段階で、もっと仕掛けがあっても良いはずなのです。 例えばカメラ側でフォーカスポイントをA点とB点、C点などを決めた上でその間のフォーカスの速度を設定できたりズームをしながら絞りをコントロールした動きを記録しておいて、何度も再現できたり、調整できたりすればもっともっと可能性は広がるはず。 「映像制作は最後はマニュアル操作」というのは多くの人が感じる所ですがその慣例の象徴であるシネマレンズに対して、ソニーはオートフォーカスというものを提案したのですからカメラとレンズをテクノロジーで組み合わせて、もっとうまく生かして欲しいというところはαユーザーとして強く言わせていただきます。 そして、最後にブリージング(フォーカス時の画角変動)についてです。シネマレンズはブリージングが少ないことが当たり前になっていますが、私的にはまあ、ズームレンズだから仕方ないのかもしれませんが最小限には収まっている印象でした。気にならない方もいるかもしれませんが、シビアな方は一度試された方が良いかと思います。

ブリージングテスト

MFもAFも使い分けできるのがソニーのシネマレンズの特長

最後になりますが、このレンズは前述したとおりソニーだからこそできる、マニュアルとテクノロジーの融合だと思っています。「伝統を大事にしながらも、使えるテクノロジーは使った方がいい」というのが私の考えでもあります。今までの通り、フォローフォーカスを使用するもよし、オートフォーカスを使うもよし。ソニーの「シネマレンズ」の挑戦と展開に期待しています。

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