
超望遠の新境地へ。ソニー FE 400-800mm F8 G OSS 実写レビュー
スポーツフォトグラファー 水谷たかひと 氏
水谷たかひと / スポーツフォトグラファー 1990年に東京総合写真専門学校卒業と同時に渡仏。さまざまなスポーツイベントを撮影し、3年後に帰国。拠点を日本に移し、スポーツ競技やアスリートたちを追いかけている。日本スポーツ写真協会(ANSP)会長。国際スポーツプレス協会(AIPS)会員。株式会社マイスポーツ出版代表取締役。2023年シーズンよりソニーHC BRAVIALadies のオフィシャルフォトグラファーに就任。
超望遠ズームとは驚きのコンパクトさ
まず、望遠端800mm・F8.0のズームレンズでありながら、この小ささと軽さには本当に驚かされました。ソニーαシリーズとFEレンズ群を使い始めて以来、「コンパクトで軽い」は正義だと実感しています。このレンズもその信念を裏切らず、私の撮影装備の中で大きな武器になると確信しました。現在もFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSを使用していますが、本レンズはそれに比べて若干のサイズアップと重量増に留まっており、機動性が損なわれていません。スポーツやモータースポーツの撮影では、撮影場所の移動が多いため、軽さと機動性は非常に重要です。性能については後述しますが、やはり「小さくて軽い」というのは最大の正義だと改めて感じました。
スポーツ撮影の強い味方
スポーツやモータースポーツでは被写体までの距離が遠いのが基本になります。やはり800mm等の超望遠レンズが欲しくなりますね。被写体にもよりますが、レンズにテレコンバーター装着や、後からトリミングで被写体を大きくする方法はありますが、使用するレンズ一本で、アップでビシッ!!!と撮影したいという気持ちは、私含め多くのユーザーさんも感じているかと思います。こちらは遠い場所から800mmで速いシャッタースピードを用い、アップでビシッと狙ったものになります。新しいチャレンジができる、表現方法が増える等、焦点距離が800mmになった恩恵は多くなったと感じましたね。ワイド側400mmの焦点距離もちょうど良いので、どの焦点距離で狙うのかも楽しみになります。
さらに、400-800mmという超望遠レンズでありながら、インナーズームであるというのは驚きです。インナーズームのメリットは多数あり、その中でも防塵防滴に優れる点に注目しています。スポーツやモータースポーツではアウトドアでの撮影がメインになりますので、雨や砂埃等の自然環境の影響を受けます。酷い場合はレインカバーで対応しますが、インナーズームであれば防塵防滴性能が格段にアップしますので、安心感が段違いなのです。これは野鳥・飛行機・鉄道等の撮影ジャンルにも言えることではないでしょうか。インナーズームですのでレンズが伸びません。このサイズのままで撮影に挑めますし、非常にバランスとハンドリングが良いので撮影に集中できる点もメリットですね。
AF性能はまさに圧巻。驚異の追従性
AFの合致速度や追従性については文句無し!!!「凄い」のひとことにつきますね。使用したカメラはα9 IIIで、スピードに特化したカメラを使用しました。グローバルシャッターのおかげで速い被写体でもミラーレス機特有の歪みが全く出ませんし、400-800mmとの相性は抜群でしたね。1/250秒でコーナーを立ち上がるバイクを手持ちにて流し撮りした作例になります。ヘルメットにフォーカスを設定し追従させていますが、見事に追従し合致しています。AF設定はワイドやトラッキング等、どれを選択しても被写体を素早くとらえて追従させる能力は圧巻です。レンズが持つAF精度が素晴らしいですね。
テレコン装着でも劣らないの解像感
FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの凄さのひとつにテレコンバーターを装着しても解像感の劣化を感じさせない点があります。いやいや800mmにテレコンバーター装着したら解像感落ちるでしょと正直思っていました。1120mmですよ1600mmですよと。パソコンのモニターで確認すると、本当に劣化が感じられないし、テレコンバーター装着していたかな???と目を疑う仕上がりに驚きました。作例もストレートを加速中のバイクを追従させていますが、テレコンバーター装着しても合致と追従性は良く、それもヘルメットの質感を高く保ったままピントが合っているのが分かると思います。標準で望遠側が超望遠の800mmも関わらず、さらに焦点距離を伸ばせるとなると撮影スタイルが無限に拡がる可能性を感じましたね。
全ての作例で感じて欲しいのは単焦点レンズにも劣らない解像感の高さです。どの焦点域を使用しても、ただ単にピントが合致しているということだけではなく、バイクのカウルやライダーが着用している革ツナギ等のリアルさが非常に高い質感で表現されています。「Gレンズ」の超望遠ズームレンズにも関わらず、この解像感の良さには脱帽です。驚きです。さまざまな超望遠レンズを使用し続けている私ですが、超望遠ズームレンズは単焦点の超望遠レンズよりは随分と劣るんじゃないかと思っていました。まず200-600mmの超望遠ズームレンズの解像感の良さに気付き、この400-800mmでさらに良くなった解像感に嵌ると思っています。
先にも述べましたがこのレンズが持つパフォーマンスには驚かされます。焦点距離、解像感、サイズ感、AF精度の高さなど、超望遠ズームレンズの持つ可能性を飛躍的に向上させたといっても過言ではない出来の良さを感じました。スポーツやモータースポーツ含め、野鳥や動物、飛行機や鉄道の乗り物系の被写体にマッチするズームレンズですね。私からひとつアドバイスすると、このレンズは手持ち撮影でも使い勝手はよいのですが、超望遠ズームレンズであるということを忘れないでいただきたいと思います。焦点距離が長いレンズであると「ブレ」が発生しやすくなります。「ブレ」を抑えるには一脚や三脚を使用することをお薦めします。もちろん手ブレ補正機能も装備しており、上手に併用することにより「ブレ」を抑えられた作品を作り出すことができるでしょう。ピンぼけとブレは全く違うものになりますので、ブレ対策にも気を配りましょう。価格も比較的抑えられており、800mmの超望遠レンズを身近に使用できるのも魅力的ですね。新たな作品撮りに無限の可能性を秘めた超望遠ズームレンズを多くのユーザーさんに使用していただきたい。新しい扉がきっと開くと思いますよ。
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