自然写真家 野口純一 × ソニーFE 400-800mm F6.3-8 G OSS
ワイルドライフ撮れたてレビュー
第1回 これが800ミリズームの描写力だ!

自然写真家 野口純一 氏

CAPA掲載記事の転載

野口 純一 / 自然写真家 自然写真家。1968年、埼玉県生まれ。沖縄県在住。2輪・4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道に引かれ、2000年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに2002年より写真家として活動を開始。写真は自然の中に生きる生命の姿を師として独学で学ぶ。北海道の野生生物を中心に始まった撮影対象は、美しい野生の姿を追い求めて世界中にそのフィールドを広げている。幅広い媒体に作品を提供しながら、沖縄県を拠点に活動している。公益社団法人 日本写真家協会 (JPS) 会員。Instagram :https://www.instagram.com/junichi_noguchi/

3月にデビューしたソニーの超望遠ズームレンズFE 400-800mm F6.3-8 G OSS。ソニー初の望遠端800ミリの望遠性能と、最新の光学設計による高画質を備え、ワイルドライフ撮影に大注目の1本だ。今回から3回にわたって、野口純一さんがこの最新レンズを実写レポート。初回はその800ミリ望遠力と描写力に迫ってみたい。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/1600秒,ISO1600

生命の躍動を捉える迫真の描写性能1トン近くにもなる巨体が激しくぶつかり合う。雄のアメリカバイソンの闘争シーンを望遠端の800ミリで撮影した。周囲にはほかのバイソンもいて、これ以上近づくのは危険という距離。800ミリの望遠性能と緻密な描写力により、飛び散る雪や草まで含めた大迫力で写すことができた。アメリカ・ワイオミング州にて撮影。

キレのいい描写性能がリアルな写真表現を可能に

自然の環境にある動物や鳥を撮影するためには、長い焦点距離のレンズが必要だ。私はこれまで600ミリ以上の焦点距離が必要な場合には、FE 600mmF4 GM OSSやFE200- 600mmF5.6-6.3 G OSSを使用。1.4倍や2倍のテレコンバーターを併用して、遠くにいる動物たちのアップの撮影を行なってきた。そこに来て登場したのがこのFE400- 800mmF6.3-8 G OSSだ。その情を聞いたとき私の脳裏に浮かんだのは「テレコンバーターなしで望遠端800ミリは絶対に便利」と「でもズームレンズで400〜800ミリ。画質的にどうなのだろう?」という期待と不安が混じったものだった。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/1250秒,ISO1600

生きものの細部まで写しとる800ミリの望遠力×描写力捕ってきた魚を食べているミサゴ。周囲を警戒するなかで、こちらに視線を向けた一瞬を捉えた。羽毛のきめ細かな描写、立体感のある体つきの再現、なにより鋭い目とその周辺の鮮明さが、飛びかかってきそうなほどのリアルさを生み出している。アメリカ・フロリダ州にて撮影。

その後、実際にレンズを入手して、撮影拠点である沖縄・石垣島でテスト的に撮影。画質も十分なレベルと確認することができ、いざ本番。最初の撮影地、アメリカ・フロリダ州で撮ったミサゴの写真(上の写真)をチェックしたときには驚いた。800ミリのズームレンズでここまで写るとは!私のような自然写真家が、レンズやカメラの描写性能の高さにこだわるのは、被写体が生きもの≠ナあるからだ。彼らは、個体ごとに特徴的な色や形、模様を細部にまで身につけている。だから、鳥の羽の1本1本の線、動物の毛並みの線や輝きなどを、余すところなくシャープに捉えることができればできるほど、彼らをリアリティ高く写せるのだ。

ごく細部までシャープに描写目の周りの拡大画像。細かな毛や眼球の輝きまでもがシャープに描写されている。

ED (Extra-low Dispersion) ガラスを6枚を含む19群27枚のレンズを最適に配置することで、色収差をはじめとした諸収差を抑制。これにより画面全域、ズームの広角端から望遠端までの高い解像性能を可能とした。自然風景の細部までの繊細な印象や、野生動物の毛皮や羽毛の細かな線や質感まで、シャープに写し出す画質性能がこのレンズの大きな魅力だ。

そうした私の描写へのこだわりに見事に応えてくれたのがこのレンズだった。「Gレンズとなってはいるが、このキレのいい描写力はGマスタークラスだ」というのが私の掛け値なしの実感。それに加えて、ボケがとても美しいのもこのレンズの大きな魅力だ。シャープさと自然で美しいボケ味が両立することで確かな立体感が生まれ、より生命感のある作品が生み出せる。このレンズとテレコンバーターで幅広い望遠撮影に対応できるので、シンプルな機材システムで完結し、撮影時・移動時問わず機動性が格段に高くなった。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 550mm,F8,1/125秒,ISO1600

400〜800mmのズーム域を生かしてシーンを最適な構図で捉える(550mm)しがみつく赤ちゃんとともに、キホオテナガザルの母親が木の枝を次々とつかんで渡ってきた。こうした状況では、ズーミングによる構図づくりが威力を発揮する。素早く中間の焦点距離に調整し、豊かな森林の様子が感じられる構図で撮影した。ベトナムにて撮影。

そこには400〜800ミリズームの利便性も関係している。撮影ポジションが制限され、かつ撮影対象が動き回ることも多い野生動物撮影。単焦点レンズでは最適な構図に整えるのが難しいケースでも、素早いズーム操作で自分が撮りたいと思うフレーミングで撮影ができる。400〜800ミリというズーム域がまた絶妙で、使いたい焦点距離がここに詰まっている。

ズームの画角調整を利用して素早く最適な構図に整えて撮影できるもし800mm単焦点であったなら、同一の撮影ポジションでは被写体が画面いっぱいになるような撮影状況。こんなシーンで少し背景を広めに取り込みたいという場合でも、ズームの画角調整で望みの構図で撮影できる。

生きもの撮影、特に野鳥撮影ファンの方には本当におすすめの1本。このレンズで、心ゆくまでワイルドライフの豊かな撮影体験を味わってほしい。

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