
αレンズで風景の色彩を追求する
写真家 清家道子 氏
「CP+2025」で写真家の清家道子氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。独自の視点で地元・九州の冬を感性豊かに表現した清家氏。「α7R V」と「α1 II」で撮影した作品を見ながら、その撮影術をレクチャー。話題のレンズ「FE 28-70mm F2 GM」の魅力も詳しく語ります。
清家道子 / 写真家 福岡生まれ。カラーコーディネーターを経て風景写真家となり、九州を中心に撮影活動している。現在企業カレンダーを手がける他新聞、写真雑誌への寄稿、カメラメーカーでの講演、撮影会などを行っている。写真展2016 年「またまの宇宙」をリコーイメージングスクエア2020年「純色風景」ソニーストア2022年「光の記憶」ソニーストア2024年「水の惑星」OMシステムギャラリー2024年「美しき里・豊後高田」豊後高田市主催写真集2016年「またまの宇宙」(日本写真企画)2017年「TheGiftOfRanunculus」(風景写真出版)著書「美しい風景写真のマイルール」(インプレス)「極上の風景写真フィルターブック」(日本写真企画)「フォトグラファー直伝フィルター撮影スーパーガイド」(日本写真企画)2020年よりYouTube 清家道子チャンネルで風景写真、風景ショートムービーなどを配信中。https://www.youtube.com/@michiko_seikeαアカデミー講師 OMゼミ講師JPS日本写真家教会会員
先進技術を詰め込んだαシステムが階調豊かに描き出す繊細な色彩表現
ご来場いただきありがとうございます。今日は「αレンズで風景の色彩を追求する」をテーマにお話しさせていただきます。まずは私が使用している機材をご紹介します。発売以来、愛用している「α7R V」は風景が美しく撮れる有効約6100万画素のカメラで、もう手放せないくらい気に入っています。ダイナミックレンジが広く色彩表現が豊かなので、風景を撮る人はこのカメラを使っている人が多いです。
それから昨年末に発売された「α1 II」もさっそく使わせていただきました。私はあまり動きのある被写体を撮ることはありませんが、秒間30コマの連写でもピント合わせがとにかく速くてサクサク撮れます。さらにダイナミックレンジも広いです。私はカメラのシャッター音を気にするほうですが、このカチカチとした感じのシャッター音も面白いと思っています。カメラによってシャッター音が違うのも、ぜひ体感していただけたらと思います。さらに、私がよく使っているレンズ「FE 16-35mm F2.8 GM II」のほか、新しく発売された「FE 28-70mm F2 GM」も徹底的に使ってきたので今回ご紹介させていただきます。そしてもうひとつ、「FE 16mm F1.8 G」。実は今日、「α6700」に付けて持ってきました。こんな感じでとても小さく、軽いです。
私は「α7R V」に少し重たいレンズをつけて撮ることが多いですが、この組み合わせでは撮りかたや被写体選びがまったく違ってきます。「こんなに楽でいいの?」という感じ。こちらも後ほど作品をお見せしますので、最後までお楽しみください。
配色により構図を決めるのが清家流。水の流れはシャッター速度0.8秒で撮影
それでは作品を見ていきましょう。晩秋の渓谷を撮ってきました。「α1 II」と「FE 28-70mm F2 GM」が私のところに来たのは1月だったので、私が拠点としている九州では撮るものが何もない状況。さあ、どうしようと思っていた時、幸いなことに寒波がやってきたんです。九州の雪は長続きしないので、スマホに入れた天気図をチェックしながら雪雲を追いかけていると、ちょうど私の大好きな渓谷に雪が降っているようだったので、急いで向かうことにしました。
ほぼ紅葉の終わっている時期でしたが、雪が降ったおかげで落ち葉の紅葉の色が蘇ってきたんです。この風景を見た時は本当に「良かった」と思いました。私は撮影する時、まず画面の中に色を配分します。例えば上の作品の場合は、水の流れを入れながら、雪の白、苔や常緑樹の緑、落ち葉のオレンジをどの辺りに配色しようか、と画角を考えるわけです。「α1 II」と「FE 28-70mm F2 GM」は初めて使う機材だったので、「この色をどんなふうに撮ったら、どんな感じに仕上がるのか」を知りたいんですよね。だからこの時は思っていたよりもたくさんの色があって良かったなと思いましたし、いい画が撮れて本当にうれしかった。午前中に撮影してお昼には雪が溶けていたので、九州の雪は本当にスピード勝負です。
上の作品も配色を考えながら撮影しました。手前と左側にオレンジ、滝の上には常緑樹の緑、と頭の中で整理してから撮っています。私には好きなシャッター速度があって、水の流れは0.8秒で撮ることが多いです。みなさんはどうですか。私の場合、「ここは0.8秒の風景だな」と何となく決まっている感じです。ここではC-PLフィルターをつけて水の反射を抑えて撮っています。そして、横位置を撮ったら必ず縦位置も撮ります。
私は雑誌の表紙を撮ることもあるので、必ず縦構図も撮るようにしています。みなさんも横、縦の両方を押さえるのがおすすめです。縦の方が様になることもありますし、お友だちと写真展をする時などは縦位置があるとキュッと締まることがありますので、できれば縦構図も撮っておきましょう。手前のオレンジとグリーン、そして上の方の常緑樹の緑が効いていますよね。このシーンを撮った時、「FE 28-70mm F2 GM」は色がいいなと感じたことを覚えています。
凍った茶畑が朝日を受けて輝く「茶畑ジュエリーアイス」を撮影
今回は「茶畑ジュエリーアイス」を撮ってきました。みなさん、初めて聞く言葉だと思いますが、これは私が勝手につけた名前です。「一体どんな作品なんだろう」と思っていらっしゃると思いますが、こちらが茶畑ジュエリーアイスです。
いかがですか、ジェリーアイスみたいじゃないですか。本来、霜が降りると茶畑はダメになってしまうらしいのですが、霜が降りてしまったら水を撒いて凍らせる、という農法があるんですって。凍ることによって霜の害がなくなり、茶葉の甘みが増すらしいです。この日の機材はすごいですよ。「α1 II」と「FE 16-35mm F2.8 GM II」の組み合わせに、「α7R V」と「FE 28-70mm F2 GM」組み合わせの2台体制。上の作品は「α1 II」を使って接写したものです。「FE 16-35mm F2.8 GM II」は接写ができます。最初は三脚を立てて撮ろうかなと上品に構えていましたが、それどころではなかった。撮っていると容赦なくスプリンクラーの水がかかるので、動き回って撮るしかないんです。
上の作品もきれいでしょう? これは狙って撮ったというか、「こういう撮り方がしたい」と思って水に向かっていったシーンです。みんなはスプリンクラーの水がかかったら逃げていきますが、私は水が来たら向かっていきました。水がかかる瞬間に撮影して、撮り終わったらすぐに後ろを向いてカメラを守り、レンズを拭いてリセットしてから再び撮影、を繰り返していました。撮影は大変でしたが、久しぶりに燃えましたね。本当に楽しくて、こんな楽しい撮影は久しぶりでした。このようなシーンではシャッター速度が大事です。流星のように飛沫を流したいと思ったら、私は1/50秒か1/80秒で撮ることが多いです。「α1 II」は手ブレ補正が8.5段分あるので、この設定ならほぼ大丈夫。ピントが速くてしっかり撮れるので、手前の茶葉にピントを固定して撮影しました。夜明け前から待っていましたが、太陽が出てくると水の粒に光が当たって輝き始めます。これが撮れた時は「やった!」と思いましたね。そしてもう1枚。
私はこれが一番好き。見てください。まさに茶葉の宝石、ジュエリーですよね。夜中にずっとスプリンクラーをまわしているので葉の一つひとつにプルンとした氷の宝石ができます。ただ、夜中に冷え込んで、翌朝に太陽が出ないと撮ることができないので、タイミングを見計らって訪れることが大事です。そして、誘ってくれた地元のカメラマンさんにも感謝です。写真は1人で撮るものですが、みなさんの協力があってこそ撮ることができた作品だと感じています。
季節の風景は一期一会。絶好の撮影場所ではさまざまなレンズ・画角で撮るのが鉄則
そして太陽が上がってからは氷にグッと近づいて、太陽を入れて撮影しました。
いい場所に行ったらいろいろなレンズで撮ることが大切です。さらに引いたり、接写したり、光条を入れるために絞ったり、いろいろな構図・設定で撮ってみてください。上の作品は茶葉の間に空間があったので、「ここに絶対に太陽が入るはず」と思って狙ったカットです。そして最終的には「FE 28-70mm F2 GM」の登場です。
よく見ると、氷のジュエリー一つひとつが光条にキラキラ光っているのがわかりますよね。これはF14まで絞って、光を浴びたスプリンクラーの水が交差する瞬間を狙って撮っています。シャッター速度は1/60秒で、水の粒が線になるくらいに調整しました。1/250秒では止まって見えてしまうし、長過ぎると水のラインが消えてしまう。だからシャッター速度は常に気にしながら撮っています。
次は絞りF5.6で、このようなジュエリーを撮りました。
最後はこのような氷柱まで撮影。まだまだ見たことのない美しい被写体があるんだな、と感動の1日になりました。
黒の美しさと透明感のある描写が魅力。単焦点並みの表現力と話題の「FE 28-70mm F2 GM」。
「FE 28-70mm F2 GM」を手にしてからたくさん撮影していますが、撮れば撮るほどいいなと思うレンズです。先ほど「FE 16-35mm F2.8 GM II」をメインに使っているという話をしましたが、最近出番が少なくなっています。どうしても「FE 28-70mm F2 GM」ばかりになってしまって。もちろん他のレンズも秀逸ですが、「どの焦点距離でも単焦点並みの美しさ」とレビューでよく拝見しますし、私もそう感じています。正直、この言葉では足りないくらいで、もっとすごい言い方はないか、と思ってしまうほど美しいレンズです。
上の作品は、朝、家の近所のコスモス畑で撮影しました。朝の風景の難しいところは、白飛びや黒潰れが起きやすいところです。あとは透明感が出るかどうか。こうやって見るとコスモス一つひとつがくっきりと写り、逆光が透過光になっていて、このレンズならではの美しい風景を撮ることができたと思います。また、ゴーストやフレアが出にくいので、朝の風景や日暮れのシーンも安心して撮ることができます。これ1本あれば何でも撮れるだろうと思わせてくれる、素晴らしいレンズです。さらに、黒が非常にきれいです。美しい黒を表現してくれます。例えば下の作品。
北九州市にある平尾台で撮影したススキですが、こんな何気ない1枚も緻密に描き出してくれます。陰になっている黒が何とも美しいですよね。ススキをアップにするとわかりますが、すべての綿毛が鮮明に写っているのが素晴らしい。F16まで絞って太陽をキラッと見せているのもポイントです。
上の作品のように、夜、暗闇の中で撮っても色が出るんですね。私は暗闇で撮ると真っ黒で色みがない写真になってしまうと思っていましたが、月のまわりの彩雲がきれいに表現されています。「F2だから星も撮ってみよう」と夜に出かけてみたのですが、残念ながら星は出ておらず、ぼんやりと霧がかかり、月のまわりに彩雲が出ていたんです。その美しい色合いに「このレンズは夜の表現もいいな」と感動しました。暗いシーンや悪条件でも、良い風景が撮れるレンズは頼りになります。
雲海に撮りに行ったのですが、雲が出過ぎてしまっていつの間にか雲海の中にいたんです。展望台も真っ白だったので、この場所で撮ることにしました。「FE 28-70mm F2 GM」は、やはり黒が美しいですね。影の部分がとてもきれい。普通の公園ですが、少し陰になって霧が出て、木のシルエットがあるだけでこんなにドラマティックに撮れるのか、と感動しました。F13、シャッター速度1/60秒、手持ちで撮っています。「FE 28-70mm F2 GM」はレンズ自体が大きく見えるので、手持ちで大丈夫かなと思うかもしれませんが、意外といけます。カメラとのバランスが良く、いい感じに重さもあるのでブレにくいです。
撮り慣れた場所でも違って見える色のカッコよさ。開放F2ならではの秀逸な表現が魅力
F2の明るいレンズだからこそ、こういった画も撮ることができます。
よく見ると、水滴の中に小さなコスモスがびっしり写り込んでいるんですね。「F2ってこんなにぼけるんだ」と思って。今までは望遠でしかできなかったようなぼけ表現も、これ1本で撮れるのが素晴らしいところです。この時も立ち位置を変えながら、ピンク、黄色、緑がいい感じに入るように、背景の配色を考えて撮っています。
上の作品は雪を玉ぼけにするためにフラッシュを使い、遠くの島にピントを合わせてF2で撮っています。フラッシュを使うと同調速度があるため、私はシャッター速度を1/200秒前後に設定します。フラッシュを使って風景を撮る時は、夜明け前や日が沈んだ後の青い時間がベストです。太陽が上がってしまうとフラッシュを焚いても光の明暗差がなくなってしまうので撮りづらいと思います。今年、九州で冬の風景をたくさん撮影して、「FE 28-70mm F2 GM」は「色がカッコいい」とういう結論に辿り着きました。なぜカッコよく感じるのか私なりに分析した結果、表面的な色だけではない色も表現してくれるからだと思っています。例えば葉の表面であれば、緑だけではなくその影の部分、緻密な部分まで全部表現してくれるのではないかと。加えて黒が美しいので、それらが折り重なって「色がカッコいい」という表現になるのではないかと思います。
このような撮り慣れた場所でも「FE 28-70mm F2 GM」で撮るとまったく違って見えるんですよね。
軽くて取り回しが楽な「FE 16mm F1.8 G」。撮影最短距離15cmで接写も楽しめる
ここで「FE 16mm F1.8 G」も少し紹介させてください。とても軽く、F1.8なのにレンズが前に飛び出ていないのでフィルターをつけることもできます。
これは山口県の小野田市で撮ったものです。レンズの実力が気になったら夜に撮ってみるとわかります。夜の風景をきれいに撮れたら、もう合格です。とてもきれいですよね。これはLEDで炙りながら撮っています。このレンズは撮影最短距離が15cmなので、レンズのすぐ前で撮ることができます。
こんな感じですね。接写は自分だけの世界をつくることができるので本当に楽しいです。実際に撮影したのが下の作品になります。
「α6700」と「FE 16mm F1.8 G」の組み合わせはとても軽いので、カジュアルに撮影できるのも楽しいところ。下のような感じで、片手でも気軽に接写できます。
こんなラフなスタイルで撮れてしまうので、今までの撮りかたとはあまりにも違って楽しくて仕方ありません。F1.8のぼけ感は下のような感じです。
そしてPLやハーフNDなどのフィルターもつけることができます。下の作品は、鯉が泳ぎ、水没林のある山口県の池で撮ったものです。フィルターを付けるとスローシャッターなどいろいろな表現ができるので、撮影がより楽しくなります。
写真を撮影しながら動画も撮影してショートムービーをつくってみましたので最後にこちらもご覧ください。
ムービーの中には夫婦滝や由布川峡谷など水に濡れてしまうようなシーンもありましたが、αは防塵防滴で水にも強いので、このような美しい動画を残すことができました。静止画だけではなく、動画も残しておくことはとても大事です。今後は動画を撮る人がさらに増えると思うので、今のうちにいい場所に行ったら必ず動画も撮っておきましょう。そうしないと「あのとき動画も撮っておけばよかった」と後悔することが多くなると思います。ということで、αを使った静止画や動画をご紹介しましたが、αはレンズが豊富できれいに撮れるので本当に撮影が楽しいです。そして動画もたくさん撮れます。みなさんもぜひ静止画や動画を、αの美しい画質で残していただきたいと思います。今日はありがとうございました。
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