商品情報・ストア 月刊大人のソニー '14 Vol.10
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ライブ空間いっぱいに広がる音を、そのまま封じ込める!?

大人なら誰しも、胸の奥で響く大切な音があるはずです。あの頃の感動はそのままに、あの頃は聴こえなかったところまで。今、ハイレゾの技術だから味わえる新たな音の体験をソニーから。

今まで、そこでしか、体験できなかったはずの音を、ハイレゾならどこまで記録し再現できるのか。

いつも通りの状態でお客様がいるライブに取材班が潜入し、録音させていただいた。

これまで「大人のソニー」では、ハイレゾ音源を題材に、その楽曲に秘められたハイレゾならではの聴きどころを紹介してきた。今回は趣向を変えて、ユーザー自身が自分の好きな音をハイレゾで記録したときに、どんな体験ができるのかを探りたい。
ハイレゾ音質での録音に最適なのが、より原音に近い自然な音場を再現する「DSD録音」が可能なリニアPCMレコーダー「PCM-D100」である。私たち編集部が「PCM-D100」を手に向かったのは、東京・青山のジャズクラブBODY&SOUL。空間いっぱいに音が広がるライブステージで、その実力を試してみた。BODY&SOULおよび、ジャズトランペッターの市原ひかり氏とバンドメンバー(宮川純pf、清水昭好bs、横山和明drs、紗理vo)の協力で、普段は録音禁止の場所ながら特別に録音実験を実施。その音を、市原ひかり氏本人に、ハイレゾ対応ヘッドホン「MDR-1RMK2」で、ハイレゾ音質(DSD 2.8MHz/1bit)とCD音質(44.1kHz/16bit)の両方の音質を聴き比べてもらい、感想を聞いた。
※本企画は、事前に主催者側(アーティスト・会場)の同意、許可を得て録音しております。 通常、カメラ、カメラ付携帯電話、ビデオカメラ、テープレコーダー等の録音・撮影機器による、 出演アーティストの撮影および録音は一切禁止されています。

Direct Stream Digital
DSD(Direct Stream Digital)とは
DSD方式は、音声信号の大小を1bitのデジタルパルスの濃度(濃淡)で表現し、これまでにない高音質を実現。従来のリニアPCM方式の"デジタル感"を払しょくし、原音を限りなく忠実に再現しています。

ついさきほど終わったばかりのライブの音を、真剣に確かめる市原氏。

まず、最前列の位置で録音。どう聴こえたか?

「PCM-D100」の設計を担当したエンジニアの橋本高明氏自らが、録音を行った。市原氏は普段から、自身のライブをスマートフォンを使って録音し、聴き直しているという。そんな彼女が今回のハイレゾ録音を聴き、まず口にしたのが「スマートフォンで録音したものとはまったく異なり、抑揚がアーティストの望む通りに再現されていますね」という一言だった。
その抑揚の違いが最も分かりやすい曲としてチョイスしたのは、彼女のオリジナル曲『Just Fade Away』。この演奏の録音では、「PCM-D100」を客席の一番前に設置。まずは、観客に人気の"かぶりつき"の位置でどう聴こえるかを試してみた。冒頭、彼女が靴で床を踏み、カウントする。その「カツッ、カツッ」という小さな靴音を、「PCM-D100」は逃さない。そして小さな音色から、少しずつトランペットのソロが始まり、曲が徐々に盛り上がる。

究極の臨場感とは、極小の音を録り切ることだった。

レコーダーを目の前にして、アーティストの緊張感もいっそう高まる!?

「ここまで小さな音が拾えるなら、ごくわずかな音色から、少しずつ盛り上がっていく抑揚をつけた演奏が、そのまま記録できますね。この抑揚こそ、私が普段の演奏で最も大事にしていることなんです。CD音質で聴くと、これほどの抑揚はないですね。ドラマーがスティックで「キッ、キッ」と冒頭のカウントを刻み、ピアノが小さく小さく入ってきて、だんだん大きくなる。CDアルバムを録音する際にも、エンジニアの方に「もっと抑揚を再現して」とお願いするんですが、なかなか難しくて、途中でそれ以上音が広がらなくなっちゃうんです」。(市原氏)

ライブハウスというノイズが多い環境の中でも、靴音のように微小な音が埋もれない技術(この技術について詳しくはこちら)が、片手で持てるサイズのレコーダーに込められている。また、ジャズのライブでは、ドラムやベースなど低音の迫力も醍醐味(だいごみ)だが、市原氏はどう感じたのだろう?

「ドラマーがハイハットシンバルを踏んでいて、CD音質だとどうしてもキンキンした音になってしまうけれど、音がすごく伸びています。その伸びの違いが、聴き比べるとよく分かります。ドラムの音も、胴が鳴っているパーン!という音が忠実に録れている。音の伸び、奥行き感から、「胴の長いドラムだな」と楽器の大きさまで分かるからすごい。ベースも、ブーンと楽器が振動しているのが分かります。当然アーティストは、常にその振動まで考慮して、チューニングしているんですが、その振動、アーティストの思いが本当にそのまま伝わるのがハイレゾなんですね。私のトランペットのソロも、ここまで録れるなら、もっと小さな音で抑揚をつけて吹いても聴いてもらえる。これはアーティストにとっては最高の喜びです」。(市原氏)

繊細に、複雑に、それぞれの音や声が絡み合っても、ハイレゾなら聴き分けられる。

次に、後ろの席の位置から録音。聴こえ方はどう変わったか?

記事の内容と合わせて、より具体的に体感いただけるように、
当日のライブ音源から『Can you repeat the past?』の一部を撮影した写真と一緒に公開しています。
※この動画は、「MP3音源」です。「ハイレゾ音源」は、東京・銀座 ソニービル ショールームや、
ソニーストア 名古屋、ソニーストア 大阪で1曲すべてを視聴していただけます。

もう一つ、市原氏が、ハイレゾ録音を聴いて発したのが「演奏風景の奥行きが分かる」だった。そんな曲の代表として同氏が選んでくれたのは、ジャズのスタンダードナンバー『Body & Soul』と、バンドのオリジナル曲で10月発売の新アルバムに収録される『Can you repeat the past?』。両曲は、少し後ろの席の位置から録音することに。市原氏は、ライブに足を運ぶとき、どんな楽器からも等しい距離の席に座り、奥行きを感じながら演奏を楽しむのが好きだそうだ。
「聴き比べると、ハイレゾのほうが、トランペットの音が厚いですよね。その厚さが奥行き感を出している。CD音質で聴くと、ペシャっとしています。あと、舞台左から、ピアノ、ベース、トランペットの私、ドラムの4人で演奏していますが、CD音質で聴くと、みんなが中心に集まって、満員電車の中で窮屈に演奏している感じ。でもハイレゾだと、前後左右まで奥行き感が分かるし、ピアノも"胴鳴り"(楽器の胴体部分が共鳴すること)を手がかりにピアノ自体のサイズ感まで見えてきます」。(市原氏)

極小の音も、奥行きも、ライブをまるごと、リスナーに届けたい。

どの楽器がどの位置にいるか、目をつむり、音だけで分かるか試すのも楽しい。

「私が10月に出す8枚目のアルバムも、ハイレゾ音源でも出るので、とても楽しみです。トランペットって、自分から遠いところで音が鳴る楽器なので、自分の音色を直に聴くことはできない。お客さんの耳には絶対になれないんだ、そうあきらめていました。でも、「PCM-D100」があれば、自分の演奏をリアルに確認できます。それどころか、ここまで録れるなら、自分のライブを録ってライブ音源として販売できそう。「PCM-D100」が、アーティストの活動をこれから大きく変えるかもしれないと思いました」。(市原氏)
今回の録音実験では、演奏以外にも、お客様の拍手や歓声からキッチンでお皿を洗う音まで、その場の音をたくさん拾うことができている。一人の演奏を間近で録音する場合でも、編成全体を距離を置いて録音する場合でも、「PCM-D100」に内蔵された可動式高感度ステレオマイクロホンにより、ライブ録音の味わいが、さらに広がったと言える。私たちも録音する位置に合わせて、マイクの角度を左右に変えて行った(可動式高感度ステレオマイクロホンについて詳しくはこちら)。それも「PCM-D100」がどんな空間でも録り切れることの証拠であろう。音楽だけでなく、自然の音、列車の音など、ほかにもライブ録音の面白さがありそうだ。ハイレゾによる大人の新しい趣味を見つけるべく、今後も実験的な企画にトライしていきたい。

ハイレゾで記録する、再現するなら
  • PCM-D100 商品詳細はこちらから
  • MDR-1RMK2 商品詳細はこちらから

2014年4月〜2015年3月にご紹介した商品です。ご紹介商品がすでに生産完了の場合もございます。
商品について詳しくは、ソニー商品サイトをご確認ください。

市原 ひかり

1982年、東京都出身。2005年、ポニーキャニオンよりアルバム『一番の幸せ』でメジャーデビュー。山下達郎、竹内まりや等のレコーディングにも参加。10月には8枚目のアルバムを発売予定。初めてハイレゾ音源でもリリースされる。本格的なパフォーマンスと、女性ならではの感性をそなえた「新しい、ジャズの、ひかり」として、もっとも注目を集めるジャズ・トランペッターである。

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7th Album Precioso

7th Album
Precioso

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南青山BODY&SOUL

外国人向けの情報誌「東京ジャーナル」にNo,1のジャズライブハウスとして選出。1988年に「アメリカ大使館公認遊興施設」に認定され、2006年にはJAL機内に「BODY&SOULチャンネル」が常設されたこともある。チック・コリア、ハービー・ハンコック、スティービー・ワンダー、ナンシー・ウィルソンなど世界的なジャズ演奏家、シンガーたちが来日すると必ずと言っていいほど立ち寄るのが、このジャズクラブである。

> 詳細はこちら

文/日経エンタテインメント!編集部

ハイレゾ音源とは?

一般的にオーディオ用のデジタル信号は、原音となるアナログ信号を一定時間ごとに標本化(サンプリング)し、それを量子化することで作られます。サンプリング周波数とは、1秒間に何回標本化作業を行うのかを表すもので、単位は「Hz」です。サンプリング周波数が高いほど得られる情報が多くなり精度は上がります。

サンプリングされた時点でのアナログ信号レベルをデジタルデータで表現することを量子化と言いますが、どれくらいの精度で読み取るのかをビット数で表しており、単位は「bit」です。bit数が高いほど、原音からより忠実に変換することが可能となります。

サンプリング周波数とbit数それぞれの数値が大きくなるほど、原音の再現性に優れ、微細な音の変化や音の余韻までも表現することが可能となります。ハイレゾ音源では、CDの「44.1kHz/16bit」規格を超えるものを指し、「96kHz/24bit」と「192kHz/24bit」が主流になっています。

従来から配信している圧縮音源では伝えきれなかったレコーディング現場の空気感やライブの臨場感を、ビット数の高さにより、楽器や声の生々しさや艶(つや)などのディテールに触れてより感動的に体感できます。

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